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≪背中の靴跡シリーズ≫ 『彼女と彼』~後編~

ようやく書き上がりましたー!
良かった、無事に終わって……ホッ、とただただ安堵です。
話的にはこんな文章でどうなんだ、と不安しかありませんが、一先ず、尻切れだけは拭えたかな、と(ヲイ★)

というわけで、『恋人なりたて期』リクエストに関してはこれにて終了と言うことで、yikumi様、しおしお様、どうかご容赦願います。
すみません、こんなもので……(_´Д`)ノ~~
少しは、これからまだまだ幸せになるぞぉー!って雰囲気はあったでしょうか。
そういう話にしたかったので、読み終わって、これからますます幸せになってくんだろうなwと思って貰えたら嬉しいです。
あまり期待するほどではありませんが、完結編、追記よりどうぞ~♪♪

※台風21号がすぐそこまで来ていますね(>o<;)
 無事に通り過ぎてくれることを祈るばかりです…。




≪ 彼女と彼~後編~ ≫背中の靴跡シリーズ


いつものように階段を下りてきて……すぐに気付いた。
手塚がいつも座っている席の周囲に、柴崎達よりも若い女性隊員3人が取り囲んでいる。
楽しそうな高いはしゃぎ声が姦しく響いていた。
「うわぁ…! 思ってた以上に手塚三正の髪、サッラサラ~!! 綺麗っ!!」
「いつもみたいに髪をセットしなくても、十分素敵です~ッ!!」
「いつものツンツンにした手塚三正も、今のサラサラの手塚三正も、両方カッコ良くて大好きです~ッ!!!」
誰かがそう言った途端、キャーッ! と悲鳴と歓声が凄い。ヤダ言っちゃった!!! なに言ってんのよアンタ!!! と金切声の三重奏。煩すぎて、手塚の非難や否定の声は見事なまでに掻き消される。
手塚の方へと向かう筈のあたしの足取りが重くなって――――途中で止まってしまった。
…………なんでだろう。
モヤモヤした気持ちが胸に湧いて、視線を逸らす。
見たくない。でも、またキャーッと騒ぐ声に、やっぱり気になるのか視界がチラリと彷徨ってしまう。
女子に囲まれた手塚の姿は、柴崎からはよく見えない。
だけど、どうやら触られていた手を払い除けたようで、少し女子の囲みが広がり苛々したような手塚の声も聞こえた。
「やぁん、駄目ですかァ? 残念ですうっ!!」「やっぱ硬派なんですねぇ! こんな風に女子に触れられるの、恥ずかしいですかァ?」「すみませぇん、でもついつい触りたくなるくらい手塚三正の髪が綺麗でぇ!! あ、シャンプーの匂いがするっ?!」
またもや、キャーキャーと煩いこと甚だしい。囲む三人は手塚の様子なんてどこ吹く風だ。
邪魔だ、失せろ、と怒気を孕んだような声で手塚が言っているのに聞いてないのか聞こえないフリをしているのか、「こういうストイックで硬派なトコロがまた素敵―ッ!!」「これぞ『ザ・男!』って感じですよねー!!」「手塚三正とお付き合い出来る柴崎三正が羨ましいッ!!」などと口々に言いながら、手塚にまたにじり寄ってすぐ傍まで近づいている。

…………やだ、な。

やめて。
思って――――思ったことに動揺する。
手塚はあたしのものじゃない。
…………ちゃんとわかってるのに、悶々とした嫌な気持ちが湧き上がる。
これは、独占欲?
無遠慮な若手女子隊員が手塚に触れてる――――たったそれだけなのに、嫌だなんて。
手塚はあからさまな塩対応で、こんな感情はまったく不要なのに。
なのに。

なんだか胸の奥が重苦しくて、止まった足が動かない。

……どうせなら。いっそ嫌な自分を演じればいいじゃないの。
スタスタと手塚の元に歩み寄り、ニッコリと笑って「待たせたわね。行きましょ」と声を掛ければ済む。そうすれば手塚はホッとした顔をしながら立ち上がり、あたしの手を取ってくれるだろう。
彼女達は不服そうな顔であたしを睨みながらも、何も言えずに引き下がるに違いない。

こんなところで立ち尽くすなんて、その方がみっともない。

そう思うのに、身体は言うことを聞かず。
彼女達の姦しい声は、ひっきりなしにずっと続きてる。
「そうそう、ずっとお聞きしたかったんですけどぉ……手塚三正は柴崎三正のどこが好きになったんですかぁ?」「やだぁ、そんなの決まってるじゃなーい、聞くだけダメージ受けちゃう~! だって柴崎三正は超が付く美人だものっ!! 美人すぎてあんな事件まで起こるくらいで――――美人も大変ですよねェ!!」「ほぉんとカワイソーで同情しましたもん。ストーカーとか怖すぎですう!!」「……でもぶっちゃけ、結果的には良かったですよねェ! なんたってそのまま手塚三正とお付き合いすることになって!!」
結局はなんだかんだ言ってもやっぱり、柴崎三正が羨ましいですう!!! お似合いの美男美女で羨ましいですう!! と騒ぐ彼女達の声が煩くて堪らない。

……気持ち、悪い……

わかってるのに。
こんなの日常茶飯事だったじゃない――――学生時代は露骨な嫉妬心を露わにしたことを散々言われてきた。
図書隊に入ってからも不毛な嫉妬は買わないように疑われるような行動は絶対にしないように気を付けていたけれど、それでもあたしに向けられる嫉妬の目は執拗にあって、それに対しては平然とこの身を晒してきた。……その方が最終的には『柴崎はこういうヤツだ』と流して貰いやすいから。

だから、こんなの、全然、なんでも、ない……。

と。

「…………柴崎さん? どう…」
ふいに掛けられた声に驚いて顔を上げると、そこに居たのは小牧だった。
小牧もあたしを見て驚いたらしく、言葉が尻切れになり目を瞠って――――その目を姦しいロビーに向けて、それだけでなんとなく事情を察したらしい。
困ったような複雑な顔をして「……嫌な場面に遭遇したね。……ちょっとあっちで座ろうか」と優しく労わるように肩に手を置いた。
紳士的な態度で、自販機の傍の椅子へとあたしを誘導してくれる。
思わぬ小牧の登場だったが、そのお蔭でようやく身体の呪縛が取れたようで、なんとか足を動かせた。
ようやく、見なくて済む。
なのに。
あたしを追い駆けるように、堪忍袋の緒が切れたかのような手塚の怒声が耳に飛び込んだ。

「……どれだけ俺が柴崎のことが好きだったか、柴崎への想いを大事にしてきたか、知らない癖に、勝手なこと言うなッ!!!」

――――え?
飛び込んで来た言葉に、胸がギュッと鷲掴みにされたかのようだった。
これまでの重苦しいような気持ち悪さが嘘のように消え、急に熱いものが取って代わってゆく。
あまりの衝撃に、思わず躓きそうになったあたしを小牧が支えてくれて事なきを得たが――――顔まで熱くなって困った。必死に小牧から見えないように深く俯く。
隣では小牧が小さく噴き出していた。
「……まったく……手塚は要領が悪いんだかいいんだか」と笑いながらそんなことを言うのが聞こえた。
――――あたしは、胸がいっぱいで何も言えない。
俯いたままで足を動かし、ようやく椅子に辿り着く。静かに腰を下ろしたが顔の熱さは引かない。
小牧は自販機で缶コーヒーを買ってくれて、柴崎に手渡した。
顔は上げられなかったけれど、ありがとうございます、と受け取り、そのまま飲むことなく手に持った。
小牧はプルタブを開けると自分にも買った缶コーヒーに口をつける。
「……まぁ……もう伝わったと思うけど、手塚の気持ちはそういうことだから。
――――もうしばらくは玉砕組が続くかもしれないけど――――柴崎さんもだから、お互い様だよね」
話し掛けてきた小牧の口調が、いつもと同じでホッとする。
確かにもう大丈夫。――――あんな爆弾発言を聞いちゃったら嫌な気持ちだって吹き飛ぶ。
「――――わかってます。……手塚の気持ちを疑ったワケでもないですし」
普通に受け応えられた自分にホッとする。
無様なトコロを見られたことは恥ずかしかったけれど、むしろ小牧で良かったかもしれない。小牧なら空気を読んで流してくれるだろう。
と思ったのに。
意外にも小牧はさっきの柴崎を突いてきた。
「うん。……でも、それでも心配になるのが恋愛の機微っていうか――――柴崎さんも、いわゆる普通の『恋する女の子』なんだね」
小牧の言葉に顔が熱くなる。
「~~こ、恋、とか……、別に! 付き合いだしたばっかの人様の彼氏に、よくもまぁキャーキャー騒げるなって呆れて、」
……少しムキになってるような口調で言ってしまって――――小牧がふふ、と笑ったのに酷く居心地が悪い。
「そんな顔じゃなかったけど? 泣き出しそうなのを我慢して必死に堪えてる子供、みたいな感じだった」
「~~~~そんなわけ…っ」
「ちょっと、ホッとしたんだよね」
小牧の言葉の意図がわからず、言葉が返せない。
「最近の手塚って、柴崎さんに言い寄って来る男達には殊の外警戒心募らせてるっていうかピリピリしてるっていうか――――そのうち、独占欲強すぎて嫌だって柴崎さんに引かれちゃうんじゃないかって実はちょっと心配もしてたんだけど……でも、さっきの柴崎さん見て、ようやく手塚の気持ちがわかったなぁ。――――柴崎さんも少しずつ素の顔を見せたりするようになったんだね、そりゃあ手塚も気が気じゃないだろう。……まぁ、手塚がそんな風に柴崎さんの素を引き出していったんだから、自業自得ではあるんだろうけど。
正直、さっきの場面に遭遇したのが俺で良かったって、手塚の為に思ったよ。柴崎さんのあんな顔――――美人で隙のなかった柴崎さんが、無防備で庇護欲を掻き立てられるような顔してるんだもん、フリーの男なら呆気なく落ちるだろうね。
ああ、もちろんそれは柴崎さんのせいじゃない。――――むしろ、そうやって笠原さんや手塚以外の人の前でもふと自分の気持ちを見せられるようになったのは、ある意味柴崎さんにとっての大きな成長かもしれないとすら思うけど――――けど、これまでそんな顔を見せて貰えなかった大多数の人には刺激が強いと言うか破壊力抜群というか――――。……まぁ、そんなわけで手塚が余計に今、必死になって柴崎さんを守りにかかってるワケだけど。出来れば重く感じずに見守ってやってくれるとありがたいな。
――――それともう一つ。手塚の周囲に女性が群がってたら、柴崎さんも手塚と同じように嫌な気持ちになるんだってわかって、ちょっと安心した。お互い様だったら、手塚の気持ちが柴崎さんにもわかるだろうしね」
……流石は小牧と言うべきだろうか。
よくもまぁ、言いにくいことをこうもサラリと伝えられるものだ、と舌を巻く。
少し悔しくなって、皮肉っぽいことを口に乗せてしまう。
「……小牧教官はなんでもお見通しなんですね。流石は彼氏歴の長い人は違いますわ」
「うん、彼女との付き合いからいろんなことを教わったからね――――特に、気持ちを伝える大切さ、とかね。
……例えそれが嫉妬のような自分の嫌な部分だったとしても、時には素直に表に出して伝えた方がいいこともあるってことまで――――恥ずかしながら経験もした。……柴崎さんも、きっとこれから経験していくと思うよ」
柔らかな口調でそう返す小牧に、自分がまるで子供のような気がしてまた恥ずかしくなる。
俯いたままのあたしだから小牧には表情は見えてない筈なのに、ふ、と小牧が微笑む気配がした。
……あたしらしくもない。
どうすればいつもの饒舌に戻れるだろうか、と頭の片隅で探り始めた。

と。

「~~~~柴崎っ、――――って、あ…っ?!」
突然の声に驚いて顔を上げてしまった。
見ると、あっちも驚いたようにこっちを凝視する手塚で――――その手塚の顔がみるみる強張ってゆく。
「~~こ、小牧、一正…が、…な、なんで…っ」
固い手塚の声。
――――と、隣で小牧が吹き出すのを堪えているかのような気配がした。
手塚が憮然とした表情で立ち尽くす。
そんな手塚に小牧がなんとか堪えて、声を絞り出した。
「~~っ、て、手塚、話…終わった?」
「――――は、いえ…、話ではなく一方的な騒ぎに巻き込まれていたまで」と酷く堅苦しく手塚が返すのに、また小牧の肩が揺れた。
柴崎はビックリしていた――――上官に向ける眼差しではなく、睨むような鋭い目で手塚は小牧を見つめる。
「……こちらも、その、……柴崎と、なにか……」
言葉を濁しながらも責めるようにも聞こえる手塚の口調に、小牧がぶっくく、と堪えられずに笑いを零しながら「~~し、嫉妬…っ、」なんて呟いたものだから、手塚は苦虫を噛み潰したような顔になった。
笑いながらも小牧が、「~~手塚が、他人に見せたくないって思うくらい、可愛い顔してた柴崎さんを、俺は匿ってあげたつもりなのになぁ」なんて肩を震わせながら言うものだから、流石に、あたしも居た堪れない。
「……あの、じゃあ、あたし、手塚と行きます。――――コーヒー、ありがとうございました」
そう言って立ち上がったあたしの手を見て――――手塚の口角が、む、と下がった。
「……後で柚子茶買ってやるから……寝る前はそっちの方がいいんだろ」とムキになったように言って、あたしの手を握る。
それを見た小牧が、完璧に上戸に落ちたのがわかった。
ますます手塚の顔が剥れた。
「……柴崎、連れて行きます。失礼します」
珍しく小牧に向かって他人行儀な口調でそう言うと、あたしの手を引いたままロビーに出る。
放してくれそうにない手に戸惑いながらもロビーを見回せば、さっきまで騒いでいた年下の女子3人の姿はなく、代わりに、いつの間に来ていたのか同期女子達の姿が見える。
「ほらねー、やっぱ、あっちに居たでしょ?」
「教えてあげたんだから、感謝してよねー!」
「柴崎、告られてたの? 誰かに連れてかれてなかった? 大丈夫?」
「しっかりしなよ、手塚ぁ! 柴崎待ってたくせに、見過ごすなんてダメダメじゃん!」
「そーそー! ロビー中に大告白を響かせるくらいなら、ちゃあんと柴崎に言ってあげなさーい!」
きゃはは、と笑う同期の言葉に、手塚が真っ赤な顔をしながら「うるさいッ!! 黙れ!!」と怒鳴る。
もっとも同期の女子達にはまったく効果もないが。
「あーゆーのは、本人に言わないと意味ないのぉ! 手塚ってばホント恋愛は駄目だねー」
「ちゃあんと、柴崎に言ってあげるのよぉ!!」
「頑張れ手塚ぁ、ほらしっかり柴崎掴まえてェ……って、うわっ、手ェ繋いでる!!」
「うわぁ、ラブラブ~ッ!!」
指摘された途端、手塚が慌ててパッと手を離した。
「~~ホントお前らうるさいッ!! お前らがそうやって騒ぐから柴崎が気に、」
「あら、あたしのせい? いーじゃなーい、付き合ってるんだもん」
そう言って手塚の大きな手に触れて、キュッと握ってやった。同期の女子がまた騒いで、やっぱ柴崎のが強い! 尻に敷かれてるぞぉ! なんて言ってる。
あたしの行動に驚いたように目を瞠った手塚の顔が、みるみる赤くなって――――ヤダ、ホントこいつって可愛い、と思う。
「ほら行こ」
ニコッと手塚に笑いかけてやったら、手塚じゃなくて同期達が黄色い声を上げた。
手塚に勿体なさ過ぎるー! とか、柴崎可愛すぎるう、とか、しっかりしろ、手塚ぁ! なんて囃し立てる。
下駄箱で靴を履きかえてる最中もずっと、まだ横槍は飛んできた。
「いくら柴崎が主導権握ってても、肝心なトコロを〆るのが男ってもんだぞぉ!」
「ほぉんと、さっきの台詞、柴崎にちゃーんと言いなさいよ!」
なんて。
うるさい、と呟きながら、サンダルを履いたあたしの手を手塚が掴んだ。

2人して、外に出る。

出てすぐの奥まった暗がりで、今日は、もう抱き締めてくる。
いつもなら、ほぼ通る人も居ない奥まで歩くのに。
「…………早くない?」
「……余裕ない」
グッと抱いて来る力もいつもより強い。もちろん苦しくはないように調整されているけれど、手塚の気持ちのような気がしてあたしも腕を回す。
「仕方ないわねー」
「…………なに……話してたんだ?」
小牧のことだろう。
「別に。あんたがキャーキャー後輩たちに騒がれてるのを見て、小牧教官は気を遣ってくれただけよ」
そう言うとあたしの頭に手塚の溜息が降って来た。
「…………ごめん」
「いいわよー。あんたの人気は知ってるし、気にしてないわ」
「…………」
あたしの耳元まで手塚の顔が沈んで来た。手塚の吐息を耳元や首筋に感じて、震えそうになる。
「…………手塚?」
「…………ん、」
「……どうかした?」
「…………」
手塚の息が素肌に掛かる――――どうしてだか、今日は殊更それが気になって焦る。
手塚が触れる部分から熱が煽られるような感覚がして――――手塚から滲む男の気配だろうか。翻弄されそうな気がしてきてこれは駄目だと、慌てて手塚の背中を叩いた。
「~~~~て、手塚、」
上擦りそうな声を叱咤して、距離を取ろうとするのにビクともしない。
焦る。
――――と、首筋にまた吐息がかかって、みっともない程震えてしまう。

「…………気に、した……」

ボソリ、と呟いた手塚の言葉に、意味が解らずに瞬いた。
「……上官に……。正直、これまで、こんな気持ちになったこと、なかった」
そう言ったかと思ったら、急にグイッと持ち上げられたかと思うような衝撃と共に、唇に熱いものが被さる。
熱い。
激しい。
頭で何も考えられなくなって、体中が燃えそうな気がする。
長く重ねられていた唇が離れた時には、荒い呼吸で全身に力が籠らなくなっていた。
恨みがましく睨みつけてやろうと思ったのに、怒られるのを覚悟して泣くのを堪えてるみたいな手塚の顔を見て、そんな気が失せる。……というより、むしろなんだか愛おしいような気さえしてしまうのだから、不思議なものだ。
そっか……、小牧が言っていたのは、こういうことなのかもしれない。
自分でも嫌な感情だとか駄目だと思う気持ちだとしても、それを伝えることによって、むしろその方がいい時があると。
ふ、と笑みが浮かんで手塚に向かって手を伸ばすと、許された子供が泣き笑いをしてるかのような顔で優しくあたしを包み込んだ。ふわりと馴染んだ香りに身を委ねる。
「…バカねぇ」
「……ん、……だな」
手塚の香りに包まれながら、あたしも手塚を抱き締める。
「……けど……バカなあんたも、嫌いじゃないわ」
そう言うと、手塚がふ、と笑った気配がした。
しばらく二人で黙ったまま抱き締め合っていたら、やがて手塚の腕に力が籠った。
「…………ごめん、な……、俺、約束……守れない、かも」
「約束?」
なんのことだろう?
少し考えてみるが何も浮かばず「なに?」と手塚に返す。
手塚は言い難そうにしていたけれど、あたしは促すようにゆっくりと大きな背中を撫でた。
言い淀むような気配が何度か――――辛抱強く待っていると、ようやく、絞り出すような声が聞こえた。

「……離せない。…………多分、もう離せない、……お前に本気で好きなヤツが出来ても……」

「ホント、バカねぇ」
言いながら手塚と距離を取ろうと押したら、ギュッと込められた力――――離したくないと縋り付くみたいだと、ふと思う。もちろん手塚だからそれも一瞬で、名残惜しそうにちゃんとあたしの身体を離してくれるのだけど。
手塚の顔を覗き込むようにして目を合わすと、わざと半眼で睨むように見つめる。
「……このあたしが、生まれて初めて本気で好きになったヤツが言う台詞? もっと自信持っていいんじゃないの」
そう言ってやれば、手塚の顔がみるみる赤くなる。
だけど今度はしっかりとあたしを見て、真剣な顔して口を開いた。

「…………好きだ」

突然の言葉の破壊力に、どうしていいのかわからなくなって慌てて手塚の胸に顔を埋めて隠す。
~~~~そ…っ、それ、今、言っちゃえるって……、
衝撃が凄くて、動揺するばかり。
こうして、時に真正面から素面で大切な言葉を手塚は口にする。茶化すでも冗談に乗せるでもなく、胸を射抜くかのように真摯な口調であたしに伝えて来る。
――――あたしには絶対出来ないことだ。
バクバクと壊れそうなくらい打ち出した心臓の音は手塚に伝わりそうで、顔や身体の熱も全部バレてそうだけど、気付いているのか気付いていないのか、手塚はそんなあたしを大事に大事に包み込んだ。
あたしの中が手塚の香りで満ちてくる。
熱くて、甘くて、安心出来る、あたしだけの場所。

――――離せないのは、むしろ、あたしの方…だよね。

身を委ねながら思う。
それは確信だ。
幸いなことに、手塚も、そう思ってくれてる。
だとしたら。

一生離れなくて良いように、すればいいんじゃない。

柴崎の頭に甘やかな熟語が浮かぶ。

二人で歩んでゆく人生。
それは酷く幸せなことに思える。
だったら。

あたしだって、手塚を動揺させてみせる。
…………プロポーズは、あたしから。
手塚の破壊力には敵わないかもしれないけど、あたしもあたしなりの方法で、あんたを幸せにしたい。
あたし達2人だけのことばっかじゃなくて、手塚の家族も巻込んで、みんなが幸せになるようなことまで。

あんたが意地張って認めないことでも、本心が欲していることは背中を蹴り飛ばしてでも叶えてあげたいって思ってるんだからね。

――――そんな柴崎の考えはほどなくして実現することになるのだが、この時の手塚はまだ知らない。



 < Fin >



********************



という訳で、あとがきです。
後編では、リクエストの内容のうち、『嫉妬』をメインに持って来たかったのですが……良く考えると、手柴って『嫉妬』が結構難しいんですね! ということに気付きました★
そりゃまぁ、告白されるシーン見てモヤモヤしたり、苛立ったりはするでしょうけれど、それって純粋な嫉妬と言うのとはちょっと違うよなー。と。
嫉妬するってことは、自分よりも相手の方がどこかで優れてたり対等だったりして『焦る』感じもある筈かなぁ、と思うと、手塚や柴崎の場合は本人は結構完璧なのと、お互い以外にあんまり他人に心が揺れるとも思えないトコロがあるから、玉砕告白のシーン見ても『自分が彼や彼女の地位から揺らぐ』とは思えないと思うんですよねー(苦笑)
ということで、今回、手塚にちょっとは嫉妬して欲しくて……小牧さん出しちゃったよ!(笑)
とはいえ、小牧さんだから勘違いされるようなことはまったくしないし、結局は嫉妬っていう程の嫉妬にもならなかったですけどねー┐('~`;)┌
これでもいろいろ嫉妬の相手を考えたんですヨ!(言い訳)
手塚が本気で焦るのは、郁ちゃんがもちろん一番のライバルなんですが、次いで、小牧&堂上だな、と。
というか、それくらいしか、手塚が焦る対象って居ないような気がしました(笑)
柴崎の場合だと、一番嫉妬する(困る)のは、郁ちゃんだろうなァ…。手塚と郁ちゃんが、ってなったら、柴崎は絶対身を引くと思う(自分より郁ちゃんの方がいいと思って)から、それはそれで救われない心情になりますよね…。
そういう意味では、柴崎の方が難しいだろうけど、郁ちゃん以外の存在は手塚の中にほぼないから、郁ちゃん以外の相手になら『嫌だな』って気持ちがせいぜいで『取られる』とまでは思わないだろうなって思える。(まぁ…手塚があまりに女性に興味がなさすぎる★)
……と、つらつら書いちゃったけど、とりあえず、【嫉妬】って内容を突き詰めると、意外に手柴に嫉妬は難しいお題だなって思ったりもした私です(笑)

というわけで、リクエストで期待したのと違うー! という雰囲気で終わっちゃったかもしれませんが、所詮ツンデレラの頭ではこれくらいが限界と諦めてご容赦願いますね。

さて、次のお話なんですが、まだ全然です。
リクエスト的に言えば、ジレジレ期が人気なんですねぇ、、、、、どっかにネタ落ちてないかな!(笑)
正直、今まだ空っぽで、ネタもないです……トホホ。
そんなわけで、次はまた随分先になるんじゃないかと予想されますが、また『ひょっこり』と出てるかもしれないので、思い出した頃に覗きに来てみて下さいねw






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しおしお様は魔法使いですか?(笑)

しおしお様

またもや絶妙なタイミングでの、前作『彼女と彼』へのコメントありがとうございます(笑)
先程、新作『花言葉』をアップしましたよ(笑)
なんなんですかね、『彼女と彼』からこっち、しおしお様のコメントと私の次の話のアップのタイミングがガチすぎる!(笑)
魔法使いかなんかだろうか、と本気で思いましたですよ(笑)

さてさて。
冷蔵庫の処理は、我が家に限ってなかったんですー。
というのも、新築で太陽光を付けていたもので、晴れてくれていたため冷蔵庫くらいの電力は死守出来ていたんです。
自家発電コンセントの関係で、部屋の照明までは無理でしたけど。
お蔭で、昼間の明るいうちに夜の事まで全部済まさないと真っ暗でした。
でも、エアコンをどこの家も点けないので、普段より少し外の気温が涼しいような気がしました(苦笑)
まぁ、そんなこんなの停電から早1週間…………最近の時間の経つ速度の速さに付いていけない私です…………。
しおしお様も、いろいろと影響があったようで、本当にお疲れ様でした!
台風の日よりも数日後くらいの方が、疲れを身に染みて感じますよね。
しおしお様もなんとか乗り切って下さいね!

この作品でも、前作同様、『手塚に適わないなァ』と柴崎が想っていることは出てきましたよ(笑)
素直に想いを口に出せるのは、本当に手塚と郁ちゃんの一番の利点ですよね。
堂上さんと柴崎は、そんな相手がパートナーになったからこそ、上手くやっていけてるんだと思います。

と、話が逸れまくっているので、コメレスに。

> とにかく柴崎さんがかわいい‼
ありがとうございますー!!!
いや、柴崎は本当に可愛いと思います。
無自覚に素を出しちゃ、絶対いけません。そりゃもう手塚は気が気じゃないです!!(笑)
気が気じゃない手塚が気が動転したら、今度はこちらは爆弾発言(笑)。柴崎好きだー好きだー攻撃が半端ない(笑)
でもそんな意外な2人を見て、またヤラれちまう外野続出で、当分は手塚も柴崎もお互いに玉砕組が殺到して気が気じゃないんでしょうね(苦笑)
そうしてまた、素のループ…………でもう、『勝手に2人で幸せになって下さい』と言うしかないですよ、やっぱり!(笑)
お互いに想い合う二人を見て、そんな二人に憧れる子達まで居て、もう本当にややこしいの一点張り★
男も女もオバちゃんも、そりゃもう、ノックアウトですよね(笑)
可愛すぎて本当に堪らない2人だな、とつくづく思います。

> 自分で気づいてない自分のよさを、相手が気づいてくれて、(以下略)
そうなんですよねー! そこが手柴のいいところだと思うんですよね、まさしく!!
自分で思う自分、以上の自分の良さをちゃんと理解して、全部包み込んで受け入れて、『そこがいいところ』だって分かってくれてる……時にそれを伝えてくれる、そんな関係だから、手柴の絆は深いのだと思います。
いいところも悪いトコロも全部ひっくるめた、全部を正面から受け止めての『好き』だからww
そんな手柴だから、本当に私も離れられませんww

> それと、手塚に「好きだ」と言われて柴崎さんやられちゃってますが、その前に「生まれて初めて本気で好き」っ言われてますけど、ちゃんと聞いてた?柴崎さんのがっつり向き合った告白ですけど!
ちゃんと伝わっているとは思いますが、柴崎は自分で照れちゃってペラペラと喋っちゃうので、手塚が柴崎以上に衝撃を受けて照れちゃうと柴崎自身が居た堪れなくなることをなんとはなく理解(?)しているために、すっごい衝撃を受けててもそれを全面に出すことは頑張って堪えているのではないかと思います(笑)
柴崎は難しいから、自分で言っちゃって、多分「~~ヤダ、言っちゃった!」と内心ではめちゃめちゃ動揺してると思うから(笑)
手塚の場合は自分で言った言葉は、正面から伝えるつもりで言ってる為に、手塚自身に照れはないためにダイレクトに柴崎に伝わったら柴崎の方が衝撃が大きいのかな、と(笑)
そのあたり難しいですが、でも、しおしお様に柴崎の台詞を褒めて貰えて、私自身は天に舞い踊る気持ちでいっぱいです!!!(笑)
本当に些細な言葉まで丁寧に汲み取って、そうやって感じて貰えて、こんな至福はありません!!

次作は完全にまだ未定ですが、また何か書けたらいいなーw
またお時間ある時にでも覗きに来て下さいね(*^^*)


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リクエスト、ありがとうございました!

yikumi 様

長らく……と言う言葉で言えないくらい、長らくお待たせいたしました!
リクエストありがとうございました!!
リクエストして下さった内容を頭の中でグルグルさせていると、ふとお話が浮かんだりして、本当に想像のきっかけとさせていただけるので、こちらこそ、リクエストして下さってありがとうございました!
なのに、最初にも言ったように、本当に忘れるくらい時間が経ってしまってすみませんでした((((((((--;)

私もyikumi様と同じく、2人を生温かく見守る同期になりたい!(笑)
時にはからかって、手塚を弄って、柴崎の素の可愛い反応を見たりして、楽しみたいです!!
柴崎もまた、本当に心から好きになった人と付き合うことが初めてなので、生まれて初めてのこの恋愛に、キュンキュンしたりドキドキしたりしながら毎日を送ってるんじゃないかと思うんですよねw
で、時にはポロリと顔に出ちゃうときなんかもあったりして……そういう柴崎の表情は、これまでの柴崎の表情とはまるで違ってドキリとさせられる表情をしている気がするんです!
手塚のことを考えていたりすると真剣に考えてしまってて、それが取り繕う意識もする間もなく、ポロッと顔に出る……可愛すぎます!(笑)
ふと手塚に言われた言葉なんかが頭を過っちゃったりなんかしたら……
いやもう、可愛い表情過ぎて、男たちは全員持ってかれるんじゃないでしょうか!(爆)
そして、大慌てで警戒を振り回す手塚(笑)
手塚の嫉妬はとどまることを知らず……ですね。でも嫉妬されて嬉しい、と思うことは柴崎にとっても初経験ではないかと思うので、そんな中でも自分は愛されてるんだなーって実感してまた柴崎は可愛くなるに違いないのです!(笑)

小牧さんは、私も手柴が好きなので、そんなにチェックはしていないのですが(ヲイ★笑)、正直、堂上さんよりもカッコいいと思いませんか?
きちんと『大切なことは伝えなきゃ伝わらない』ということを、身を以て知っている人でもあると思うし、相手に対する人間観察力も凄く優れている人なので、手塚は実は小牧さんとよくバディを組んでいたことは、いい見本になっているんじゃないかと思っています。そういう意味では、態度に出しちゃう堂上さんと口で伝える小牧さんの2人を師匠と出来る手塚は、いいトコ取りとも言えるかもしれません(笑)
いやー、彼氏にするなら、堂上さんより小牧さんでしょう(笑)

柴崎は、手塚のように飾らない言葉で真っ直ぐに愛を伝えることは出来ないですが、自分の気持ちを上手に伝えることが出来る人間なので、手塚は柴崎らしい物言いに振り回されつつもちゃんと柴崎の愛を実感出来て好きになるのだろうし、柴崎は柴崎で、直球で来る手塚の想いにやられちゃうんでしょうねww
そして、そんな二人は互いに補い合いながらピッタリと来る、素敵な2人なんだと思いますww
やっぱり、手柴っていいなぁ…と改めて思いますね!

素敵なリクエストを本当にありがとうございました!!!

コメレス遅くなりましたm(__)m

ママ様

無事に完結しましたが、完結してすぐにブログ放置になっておりました(((((^^;)
すみません。

> 柴崎にしても手塚にしても付き合ってる人に誰かが話しかけてるのを見て嫉妬する…って事を初めて経験してるんじゃ無いでしょうか。
ですよねー。
一番モテる2人ですが、2人共好きになった人と付き合ったことがない2人…(苦笑)
彼や彼女に、仲いい人が出来たとしても「あ、そう」で本心から終わっちゃうようなお付き合いしかしたことがないと思いますね。
大事にしていないわけではないけど、「気持ちが離れちゃったんなら仕方ない」で流してしまえるくらいしか、相手のことを見れていない。
「気持ちが離れたら嫌だな」と思う程の強い気持ちを相手に持ったことはなかったでしょうね。
そういう気持ちを嫉妬というならば、手塚も柴崎も初めての嫉妬をこれからいっぱいするんでしょうねー。

> 待ち合わせの時のワクワク感とか、それこそ誰かに話し掛けられるのを見て嫉妬するとか。
そうですね、本当にそうですねー!
こういうのは、初めて2人が経験して、そして、ますますまた互いにのめり込んじゃう元になるんでしょうねww
知り合いから友達にスライドしてからも長い2人ですが、こういうワクワク感やドキドキ感に、また吊り橋効果で好きになるww
どんだけ、中坊の恋愛やねん!とツッコみたくなる程ですが、その初々しさがまた手柴の良さかとww
もちろん、経験値はあるし、処女や童貞じゃないんですけど、でもなんか初々しいのが手柴なんですよねー。
で、経験値あるから、始まっちゃうとエロいとか(爆!笑!)もう堪らんツボです!!(笑←妄想ぶっ飛び過ぎ(笑))

同期女子は、ようやくこうしてからかえるようになったことに、しばらくは楽しくて弄り倒すと思います(笑)
一々、手塚の反応が可愛いし(笑)
でも、あんまり弄り過ぎると、今度は柴崎が嫉妬しちゃうよー(笑)
でも柴崎に怒られるのは手塚で「……一々反応するからからかわれるんだからね!」と言われる(笑)
まぁでも、こうやって公に認められていくのは柴崎にとっても嬉しいんじゃないかなww
そうやってまた、はにかむ柴崎とかが見れて男子が騒いで手塚が嫉妬して…………エンドレスループの出来上がりですね!(笑)


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 管理人ツンデレラが妄想の赴くままに、自由奔放に二次小説やホームパロディを書き綴っています。時々、近況をぼやいたりもします。
 現在、二次小説としては、アニメ『こばと。』と『図書館戦争』を書いています。
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