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2018.07.26 (Thu)

≪背中の靴跡シリーズ≫ 『一歩先へ vol.9(完)』~『1つだけの願い』番外編~

≪ 一歩先へ~vol.9~ ≫背中の靴跡シリーズ『1つだけの願い』番外編

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1つだけの願いシリーズ、完結です。
……初夜後を済ませた2人には、きっと幸せな未来が待っていると信じていますw






【More・・・】

≪ 一歩先へ~1つだけの願い番外編~vol.9 ≫背中の靴跡シリーズ


……綺麗……毬江ちゃん、綺麗……。
今日は小牧少将と毬江ちゃんの結婚式だった。
未だに耳が少し不自由な毬江ちゃんは、ごく身内の結婚式を望み――――小牧少将は毬江ちゃんの望むまま、小牧家が代々所有している森の教会(小さいが由緒はある場所だ)で、夢のように幸せな結婚式を上げた。
式場の費用も掛からない上、結婚式の規模が想像よりも小さくなった分、浮いたお金は毬江ちゃんの衣装や料理に充てたんだと、小牧少将は言っていた。
その言葉通り、ドレスだけでなく、小物に至るまで毬江の身に付けているすべてが一流品で、その本物の輝きがより一層毬江を可憐な天使のように際立たせていた。
それだけでなく、幸せで堪らないという気持ちが毬江の内から滲み出ていて――――毬江は喜びに満ち、光のオーラを纏っているかのように眩さに溢れていた。
幸せオーラ全開の新妻を、蕩けきった表情で、誇らしげに愛おしげに見つめる小牧。
そんな2人の様子だけで、十二分に出席者達は当てられ惚気られている気分になるくらい。
…………綺麗…………本当に、綺麗…………。
もう何度目かのその言葉を心に繰り返す。
――――毬江ちゃん、本当に良かった――――……
いよいよ、新郎新婦が神に誓う時が来た。
『汝を妻とし、今日よりいかなる時も共にあることを――――幸せな時も、困難な時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死がふたりを分かつまで愛し、慈しみ、貞節を守ることをここに誓います』
神父の言葉の意味を噛み締める――――この2人はこれまでも実践してきたことばかりだ。
「誓います」
小牧の凜とした声が教会に響く。次いで毬江の緊張した声が続いた。
そして、その言葉に偽りはないと――――小牧少将が毬江ちゃんのベールをそっと取り、誓いのキスを送る。
…………長い、二人の誓いのキス。
想い合う二人に相応しい誓いの言葉に相応しい、心の籠ったキスだった。
ゆっくりと離れた2人の目が薄らと開いて――――互いを見つめた瞬間に零れた幸せな微笑みに胸を討たれる。
…………幸せになってね。
感動が襲ってきて、思わず涙ぐみそうになって慌てて俯く。
例え感動の涙であったとしても、人前で泣くなんてことはしたくない。

と。

肩に少しだけの重み。あったかい大きな手。
そして、全部お見通しだとでも言うように、そっとあたしの頭を引き寄せる光の優しい掌の温もり。
光の胸が、あたしを隠してくれる。
~~~~もう、もう…っ、……ひかるの、バカ…っ
光への憎まれ口を心の中で叩いて、なんとか涙をやり過ごす。
~~~~朴念仁のくせにっ…! こんな時に……こんな風に抱き寄せるとか、恥ずかしい…っ! ~~~~人の結婚式の最中に隣の美女に手を出すとか、ホント信じらんないっ!
必死で悪態を繰り返して、なんとか気持ちを落ち着ける。
そうこうするうちに、教会中に拍手が湧き上がり――――結婚式が終わりの合図。
毬江ちゃん達が、ゆっくりと祭壇に背を向け、退場する。
光を罵倒することでようやく涙の気配が失せたあたしは少し顔を上げ、幸せそうに寄り添って微笑む小牧少将と毬江ちゃんを見ることが出来た。
…………本当に、幸せそのものの2人だった。
じーん、と感動する気持ちをなんとか宥めながら、2人を見つめて拍手した。
ゆっくりと近づいてくる2人。
あたしの前に来た時――――毬江があたしにブーケを差し出した。
「……これ……柴崎さんに」
「受け取ってあげて。毬江ちゃんがどうしても柴崎さんにあげたいんだって」
横から小牧少将まで口添えしてきて……、あたしはこんな時、どうすればいいのかわからなかった。
初めての結婚式。
生まれて初めての結婚式で、こんなサプライズ、いくらあたしでもプチパニックだ。
「~~え……、え…っ、で、でもッ、こここれは毬江ちゃんの――――」
「……貰って、下さい」
人前で話すことが苦手な毬江ちゃんが、皆が注目している中でキッパリとそう言った。
それでもまだ迷うあたしに、小牧少将が「受け取ってあげてよ。……柴崎さんには、披露宴で祝賀の舞を踊って貰うし、そのお礼と思ってくれれば」と畳み掛けた。
…………どうするのが、正解……なの?
不安な気持ちで見上げた目線が、光の優しい瞳と合って、光が微笑みながら頷くのを見て意を決する。
震えそうになる手を出すと、毬江が嬉しそうにブーケを乗せた。
しっかりと、受け取る。
「……あ…りが…と……」
言いながらふいに涙腺が緩んだ。
こんな時は笑顔で受け取るものだろうに、込み上げてくる想いを堪えられず、ポロリと涙が零れたのがわかった。
あたしの涙に、毬江の大きな目が驚いたように更に大きくなったけれど、何も言わずに大人びた表情で慈しむように微笑んだ。
胸がいっぱいで、あたしの声の方が掠れておかしなことになってしまう。
「~~~~し…っ、幸せに、なって……っ……、!!!」
それだけ言うのが精一杯で――――毬江達はありがとう、と言うと歩を進めて目の前を過ぎて行った。
毬江ちゃんから貰ったブーケに顔を伏せるあたしを、光がまた引き寄せて隠してくれた。
せっかくの花束が、涙の雫で、少し濡れてしまった。
嬉しくて。
幸せで。
恥ずかしくて。
……いろんな感情が、自分のものじゃないみたいに上手く整理出来ずに渦巻く。
そんなあたしを受け止めて、宥めてくれているのは、ずっとあたしを撫でてくれていた光の大きな温かい手。

悔しいな。

そう思う気持ちもあるのに、この優しい手には抗えない。

この腕の中では、あたしは自分の中に生まれる想いに素直になってしまう…………。

ホント、なんなのよ。
ずっと守ってた。
守ってあげたいと思ってた。
あたしが、あんたを守る、と決めていた。
なのに。
いつの間にこうなっちゃったの?
守ってた筈のあたしが守られてる。
すっぽりと包み込まれてる。
…………だけどね。
不思議と、居心地がいいの。
ううん……良すぎるの。
あんたに抱き締められて――――安心してるあたしが居る。

悔しいな。

悔しいのに…………嫌じゃない。
嫌じゃない自分が、また悔しくて。
悔しいのに。
でも。
包み込まれて――――幸せなの。
あんたに包まれて、あんたの香りに満ちて、それが――――すごく、幸せ…なの。

幸せで。
でも、悔しくて。
やっぱり……悔しい――――最後の最後で天邪鬼なあたしが顔を出し、……あたしは、あたしを抱き締めるその腕に八つ当たりのように噛み付いた。

     *

「~~いて…っ、お前なぁ!! 煽ったり噛んだり……なんなんだよ、もうっ!!」
耳元で上がった声に――――急に、意識が浮上した。
瞼を抉じ開けて――――でも、視界いっぱいに映るものが目に入りきらず、よくわからない。
「…………な……に…?」
身を起こそうとして――――酷く気怠い身体の奥から何かが流れるような感触があった。わけのわからない感触を必死にやり過ごすために無意識に手に力を籠めた。ギュッ…と何かにしがみ付いたら「~~~~う…う、わ…っ、」と上擦った低音がして、あたしの身体ごと揺れた。
寝起きで上手く力も入らず滑り落ちそうになり――――だけど、グッと包み込まれる。
光の香り。
光の温もり。
……ハッとする。

「~~ちょちょ…ッ?! なななななんでっ…?!」

プチパニックだ――――あたしったら、あたしから光にしがみ付くような体勢で――――要するに、しっかりと抱き付いてたのだ。
慌てて光から離れようと身を起こそうとして――――動いた瞬間に身体に疼きが走り、何かが自分の中から流れ落ちる感触――――。
~~ッ?! や…ヤダっ、こ、こんな時に生理?!
すぐ傍に光が居る――――羞恥のあまり顔が燃えるように熱くなる。
動こうとした身体を止めて、必死にやり過ごす。
……とはいえ、流れ出る何かを止める術はなかったけれど。
「~~だ、だいじょうぶか?! い、痛む…のか…?」
優しく抱き締められる感触――――あたしを包み込むように回される腕。
また我に返って――――光に出血を見られるなんて、死んでも嫌だ!! と焦って、とにかく光から離れなくちゃとその一心で、必死に「大丈夫」を口走りながら、引き剥がすように暴れてそのままベッドから降り――――……ようとして床にへたり込んだ。
~~~~な…なに?!
腰や膝に力が入らない。
そして、立った拍子に自分の股を伝った感触にも泣きそうだ。
「~~だ、大丈夫か、麻子……無理するな。その……ごめん、やりすぎ……」
「~~ヤッ!! やだ…っ、来ないでっ、こっち来るな――――ッ!!」
「~~ご、ごめんって……ほら、ベッドに……」
「~~ヤダッ、見るなっ、来ないで!! ~~やっ、ち…血が…ッ」
「――――――――え? ~~そ、そんなに出血してんのか?!」
見られたくないのに、光ときたら逆にあたしの身体を肌蹴ようとするから大慌てだ。
「~~やめ…ッ、ヤダッ!! みみ、見るな…ッ」
「~~バカッ!! 見ないとわからないだろッ!!! 俺のせいで傷とか……ッ……」
~~~~~~~~あ……、
床に組み敷かれて――――その体勢。
一気に思い出した。

~~~~あ……たし、…………ッ!!!

顔が燃えるかと思うくらい熱くなる。
必死にあたしが怪我でもしたのかと思って焦っていた光も、その体勢と真っ赤に染まって固まってしまったあたしに、ふいに我に返ったらしく――――みるみる顔が赤くなる。

「~~~~あ……ご、ごめん……、そそそんなつもりじゃ…………」
突然弱腰になって、蚊の鳴くような声で謝りながら、目が宙を彷徨う。
あたしを優しく抱き起すと、目のやり場に困るのか背を向けて――――「~~そ、その…っ、出血って…その、酷いのか?」と聞いて来るから、ようやくあたしも深呼吸。
思い出した。
身体の疲労や疼きは――――光と『結婚の儀』をしたからだ。
光の指先があたしのありとあらゆるところに触れ――――あたし自身も知らないところにまで踏み込まれて、そして、あたしと光は一つに繋がった。
あの感覚は表現出来ない。
互いの熱が互いを溶かし合うように燃え盛り、「自分」という殻すら無くなったかのようにすべてを曝け出し互いに受け止め、1つとなる感覚だけに支配されていた。
そしてこのあたしの芯から流れる感触も――――光と身体を一つにした時に感じたアレだ。
~~~~そ、そうよね……大体、生理まではまだだいぶある筈だもの。
とはいえ、一応確認しておきたくて――――光が背を向けてくれているのをよいことに、(念のために光には背を向けて)襦袢の合わせを開いて自分の身体を見て――――……
「~~~~ッ?!?! ~~なななななによコレッ?!?!」
思わず声に出してしまい――――慌てて光があたしを背後から覗き込んで来て――――

「きゃ――――――――っ?!」

羞恥のあまりに思わず光を殴ったことは許して欲しい。
でも、女性の裸体を覗き込むとか、不意打ちなら誰でも驚くわよ!
もっとも、あたしにビンタされたくらいで動じる光でもなく、「……あ、すまん、つい…っ、けどその、怪我はッ?!」なんて言うもんだから、癇癪のままに拳を握り締めて光の胸をポカポカと打つ。
「~~ちょちょ…ッ、ななななによコレッ?! ひひ…人の身体にッ…!」
「~~な…、ななに――――……怪我酷いのか?!」
「怪我じゃな――――いッ!!! ああ、あんたというヤツはッ!! 人の身体になに『印』付けてんのよ――――ッ?!?!」
言いながら、自分の体中に付けられていたキスマークが頭に浮かんで真っ赤になる。
二の腕や鎖骨、胸元、臍、脇、下腹、内腿……それぞれの場所に無数に付けられていて――――とても虫刺されなんて言い訳が通じる数じゃない。
大体、いつの間に付けられたんだろう――――あの時はもう、光が触れてくる何もかもが刺激となってあたしに襲ってきて、まるで気が付かなかった。
殴られるままに受け止めていた光は、見れば嬉しそうに叩かれながら、口先だけの「ごめん」を繰り返している。
悔しくて、八つ当たりでもとにかく思いっきり殴ってやろうと腕を振り上げて――――それだけの動きだったのに立ち眩みがして、一瞬視界が暗くなった。
あたしの上体がふらついただけで、光が真面目な顔をして支えてくれた。
「――――ごめん。……ふざけてない。ホントにごめん。けど……けど、お前には悪いけど、俺…嬉しいよ。本当に永遠に残る印が付けられるならお前の体全部に俺の印を付けときたい。もうお前は俺のだって――――誰が見てもわかるようにしときたいくらいなんだ」
言いながら、横抱きの体勢にされて抱き寄せられ、「……見てもいい?」なんて宝箱を覗き込む少年みたいな顔で言われたら――――こんな光に、誰が駄目って言えるだろう。
必死に不貞腐れた顔を作ってみせるのが精一杯。
あたしが拒否しないのをいいことに、光の手が慎重にあたしの襦袢の合わせを開く。
赤い小さな花が無数に散らばり咲く、あたしの胸。
――――あ、と思った時には、光ったらあたしの胸にまた新たな印を付けていた。
昨日の余韻なのか、光があたしに口付ける感覚だけで、身体が熱くなって震えてしまう。
強く吸って印を付けた唇は、そのまま悪戯っこのようにあたしの胸の先端へ――――声を上げそうになって必死に堪えようとしたのに、あたしの奥から愛液が流れる感覚に声が漏れてしまう。
「~~~~んん…ッ、~~ゃっ……、ひ…かるっ……!」
思わず根を上げるように呼ぶと、慌てて光の熱が遠ざかる。
「~~~~ご、ごめん! つい――――」
「『つい』ってアンタはパブロフの犬か! 大体もう散々、飽きるくらい、あたしの身体には触れたでしょーが!」
肩で息をしながらなんとか叱咤するのに、光ときたら真面目な顔で、子供のように無邪気に言う。
「~~~~え、いや……出来ればずっと触れてたい」
「~~~~~~~~ッ?! あ、あああんたってヤツは…っ」
「いやけど、ちゃんと我慢してたんだぞ?! 大体寝てる時は、お前の方が俺に襲いかかって来て……」
「だだ、誰がよッ?!?!」
「だからお前――――暑いなって思って目が覚めたら、お前が俺に抱き付いてて――――『え?』って思って、でも寝てるお前相手じゃ流石に手も出せないから固まってたら、更に猫みたいに擦り寄ってきて俺の腕に顔を埋めてそのまま本気で寝てるだろ。…………息とか……まぁスースーしてる感じはあったけど、呼吸とかホントに大丈夫か? って覗き込んだら、お前、いきなり噛むし!! ほら、ここ証拠っ!!」
言われて見た腕には、確かに歯形っぽい痕がちょっとあって――――……
「~~~~けけけど…ッ!! そそ、そんな痕……たった1個じゃないっ! あ、あんたは一体あたしにどんだけの――――」
「……それは性交(セックス)の前に宣言しといただろ。……お前の全部、俺が貰うって――――お前の全部、俺のモンだって印付けて何が悪い」
「~~~~ひひ、開き直るな――――ッ!!」
「でも、お前も駄目だとは言わなかっただろ」
「~~~~だだ、だめ、とか……そ……、ここ、こんなことになるなんて誰も思わないわよ――ッ!!! 人の素肌に真っ赤な斑点を無数に付けてくれちゃって…ッ、どど、どうしてくれんのよ、これっ!!!」
「いいだろ。…………なんだよ、そんなに俺の印が嫌なのか?」
【これは自分のものだ!】と主張して譲らない頑なな少年のように、不貞腐れた表情と真剣な目でジッとあたしを見つめて来る。――――それだけじゃなく、熱く更に畳み掛けてくるから始末が悪い。
「……もう二度と他のヤツにお前を触れさせはしない!! 断じて、だ!! その誓いと証――――お前に触れてもいいのは俺だけだっていう『印』なんだ」
「~~~~~~~~っ……」

それって――――独占欲?
あたしを独占しようっていうの?
あたしをあんただけのものにしたいの?
『独占欲』
一歩間違えれば独りよがりで一方的な支配感情。
自分がすべてを――――……。

不思議。
……不思議ね。
誰かが誰かを支配する――――それを誰よりも否定して、王政すらひっくり返した光が。
おそらくは、誰よりも、誰かが誰かを支配するなんていうことに疑問を持っているだろう光が。
その光が…………あたしを自分だけのものにしたいと思ってるなんて。

ううん、……違うのよね。
光は本当にあたしを支配したいわけじゃない。
あたしを服従させたいんじゃない。

独占欲は、あたしを守る気持ちの裏返し。
もう二度と――――あたしが、あたしの望まない相手に触れられることのないように…………。
あたしの身体と心を守りたいから、あたしを独占したいんだ。

ふふ…。
おかしいな。
おかしいわよね――――だって、あたし……光になら独占されてもいいって思ってる。
光の口から零れた子供の我儘のような言葉が、嫌じゃないどころか――――むしろ嬉しい。
おかしいかな、あたし――――……あたしね、光のものになりたい。…………なんて。
――――そんな風に思えるなんて。

大切な人に触れられて、大切な人のものになる。
大事な人に大事にされて、そしてあたしも大事にしたい。
あたしは……あたし自身はもう二度と、光以外の人間に触れられたくない。
光の『印』の付いた身体。
ある意味破廉恥な今のこの身体。――――でも、そんな身体が、愛おしくて、嬉しいって思ってしまう。
あんなに嫌いだったこの身体が、光が好きだと言うのなら、あたしも好きでいてもいいかな、なんて思ってしまう。

…………不思議ね…………。

ふしだらで厭らしくて、戦闘能力では男達にまったく敵わないこの身体が大嫌いだったのに。
男を惑わす為にあるようなこの身体が大嫌いだったのに。

光がこんなに愛してくれるのなら――――あたし自身も自分の身体を好きだと思えるような気がする。
あたしは、あたしのこの身体を愛してあげられる気がする。
…………あたしは、あたしを、好きになってあげられる気がする…………。

「~~~~ご…ごめん、……熱弁を奮いすぎて…………その、自己本位だったよな、……その……ごめん」

言いながら光の手がそっとあたしの頬から目尻を掬って――――あたしは自分が泣いてることを知った。
相手が光でもやっぱりまだ平然と泣き顔を晒すことは出来なくて、俯くと、そんなあたしを丸ごと引き寄せて優しく包むように抱き締められた。
「~~本当に、その……ごめん! これからは『印』つけるのはもうちょっと控えるようにするし――――…。その…っ、こんなにお前が嫌がるとは思ってなくて――――ただ、お前はもう俺と結婚して――――もう俺の麻子だって何か証拠を残したい一心で…………その、俺も浮かれてたっていうか、だからそのっ、……これからは……もうちょっと……なるべくその、控えるから…………だから、機嫌直してくれよ」
言いながらゆっくりと光の手が、まるで子供をあやすように背中を撫でる。
本当に、――――本当に大事にされていることを認めざるを得ないような仕草と力加減で。
「…………ばか…………」
言いながら、あたしは光にしがみ付いていた。
泣きながらも笑顔が零れる。
朴念仁の癖に、普段はあんまり自分の欲求をあたしに言わない癖に、……でもこんな風に、大事なことは、ちゃんと言葉に出して伝えようとしてくれる――――直接的な言葉じゃなくても、あんたの想いが伝わってくる。

…………あたし、あんたに大事にされてるなぁ……って。

その癖、凄くカッコイイこと言ったのに、その後すっごくヘタレになるなんて――――こんな男前でバカなあんたにあたしは目を奪われるのだ。
「…………ほんとに、あたしが嫌がってると思ってる……?」
あたしの問いに、宥めるように撫でていた光の手が止まって、少し強く抱き締められる。
「――――嫌がられていないといいな、と思ってる」
その言い草にまた笑みが零れた。
…………うん、もう大丈夫。
手塚の腕の中で顔を上げる。
手塚の真摯な瞳とぶつかって、――――わざとらしく半眼で睨み付けた。
「……嫌なんじゃなくて、怒ってるの!」
そう言って下から見上げて来る麻子の『作った怒り顔』は、手塚の目には拗ねた幼子のようにしか見えず、しかも可愛すぎて困る。
…………それじゃあ、怒られて項垂れるフリも出来ないだろ。
苦笑を浮かべながら、麻子の言い分に付き合ってやる。
「…………怒ってんのか?」
「そーよ。……こんなんじゃ、お風呂に入れないじゃない! 汗一杯掻いたし、今夜の前にちゃんと流しておきたいのに」
「なんで。入ればいいだろ」
「…………あたし今、お風呂に1人で入っちゃダメって言い渡されてるの。……その、体調崩してたし、食べられなかったからお風呂場で倒れることや発作もあったりして……だからその、郁か毬江ちゃんが必ず付き添うことになってて――――でもこんな姿、とても2人には見せられないでしょ!」
「1人が駄目なんだったら、俺と入ればいいじゃないか」

~~~~~~~~っ?!

サラリと切り返された言葉に、絶句した。
次の瞬間、自分でも顔が真っ赤になったのがわかった。
「~~~~ッ、なななに言って……そそ、そんなこと…ッ!!!」
「え、けど――――俺達もう夫婦だし問題はないだろ。――――お前の全部はもう見せて貰ったから今更恥ずかしがることもないし……」
「~~~~ふ…っ、夫婦って、まだあと、2日あるでしょッ?! 結婚の儀は3日続けてってしきたりで、今ならまだ結婚拒否もありえる……」
「…………なんだよ、お前、まだ結婚拒否なんて言葉を口にすんのか?」
今度は怖いくらい真剣そのものの顔で光が睨んで来た――――と思ったら、ベッドの上に下ろされて、あたしに覆い被さるように光が上から見下ろす。
~~~~な…っ、
焦る。
慌てる。
……まさか、まさか、光……、このまま、また……あの……っ……
光の顔が近づく。
思わず目を瞑ってしまう。

~~~~く…くちびる…?!
~~~~まさか、胸…っ?!

ドキドキする鼓動が耳鳴りのように木霊する。
やがて、唇に――――ぺろり、と舐められる感触。
ぺろ、と舐められて、すぐに離れてゆく。
離れるのに、またすぐぺろりと触れられて――――それもすぐ離れる。
その繰り返し。
たったそれだけなのに、恥ずかしいくらいにあたしの息が上がってしまう。
身体が熱くなって、勝手に震えが走る。
何度も何度も繰り返され――――遂にあたしの方が根を上げて、上擦った声で光を呼ぶ。
「~~~~ひ……か、る……」
薄っすら開いた瞳は、涙で潤んでる。
何もされてないのに――――子犬に舐められているように、ぺろぺろと舐められているだけなのに、その先を予感してか、あたしの芯は疼いて最奥からは愛液が流れる。
そんなあたしを見て、光は表情を取り繕うと、怖い顔をしてみせた。
「…………このまま……この先はしないままで――――麻子は本当にいいのか?」
そう言うと、また、あたしの唇を舐める。
思わず目を瞑ってまた震えてしまったあたしの目尻から、涙が零れるのがわかった。
すると、その後を追うように、光の舌が涙の後を舐める。
意地悪なことをしてる光が、でも、とても優しく涙を拭ってゆく。
おかしくなりそうなくらい身体が熱くて、心臓が壊れそうだ。

――――悔しいくらい、あたしの身体は光を求めてる…………。

「~~~~い…っ、いじ、わる……っ!」
思わず口を吐いて出た言葉はそんな言葉で。
完全に甘えた声音だった――――自分で自分が恥ずかしい。
「意地悪はお前だろ。――――ここまで来て、まだ結婚拒否とか言うし」
「~~~~だだ、だって……」
「『だって』じゃない。――――俺が朝からどれだけ我慢してると思ってんだ? 初めてなのに無理させた、と思ってお前に抱き付かれても手を出さないように苦労してたってのに、擦り寄られるわ噛み付かれるわ……。挙句にこの期に及んで『まだ結婚拒否もありうる』なんて言われるんだぞ! ……お前が素直じゃないのはよく知ってるけどな――――けど、流石に俺だって怒りたくもなる……」
怒りたくなる、なんて言いながらも、ぺろりとまた唇に戻って舐めていく光の感触はどこまでも優しい。
優しいだけの感触がもどかしくて、もっと触れて欲しくて光の首に腕を回す。
なのに、光ったら――――あたしが抱き締めた途端に動きを止めた。
どうすればいいのかわからなくて、混乱してくる。
「~~~~ひ…ひかる…っ、~~も…もう…っ」
「――――なに?」
「……………………も…………もう…………」
「――――――――なんだ?」
「~~~~いっ…いいいじ、……わるっ!」
「意地悪って――――だから、意地悪なのはお前だろ。俺が我慢してるのに――――」

「~~さ…っ、触って、よ…ッ!!!」

思わず光の言葉を捻じ伏せるように叫んでしまってた。
虚を突かれたように、光が固まった気配。
驚いて見開いた光の目。
悔しくて憎たらしくて、首に巻き付けた腕に体重をかけて無理矢理引き寄せて――――あたしからキスをした。
光の唇に噛み付くようなキス――――……でも、そのままどうしていいかわからず、ただただ重ねた唇に力を込めただけ。
引き剥がしたらもう、顔なんか見せられない。そのまま自分の身体が浮くのも構わずに光にしがみ付く。
「~~~~え…ッ?! ~~う、うわッ、わ…ッ?!?!」
本当に動転したような光の声と共に、ギシギシ…ッ、とベッドが悲鳴を上げた。
どうやら光はあたしごと倒れるのを必死に堪えたらしい。
「~~~~え…っ、えッ?! なな――――……」
「なんの生殺しよ…ッ?! ~~ひ、ひとの顔……舐めるだけ、とか、もうッ、もう――――っ」
言いながら、ふいに思い付いた仕返しに、しがみ付いた首筋に思いっきり強く吸い付いてやった。
――――仕返しだ!
なんて名案だろう――――あたしに光が付けたものよりも、もっとくっきりしっかりと刻み付けてやる。
縋り付く光の身体が強張るのがわかった――――呼吸すら呑み込む。
抵抗する余裕もないらしく、無言で堪える光の身体の芯は、細かに震えが走っていた。
「…………っ……」
随分と長い時間が過ぎ――――ようやく気が済んだらしい麻子の唇が離れた。
麻子の身体を包み込むようにして、光の身体もベッドに沈む。
肩で息をしていた光が、唸るように呟いた。
「~~~~っ、~~お…まえ…なぁっ!! ~~ひ、ひとがどんだけ…ッ…、~~朝からどんだけ我慢して――――……」
「ひかるのバーカ!!」
「バカはお前だろッ!! 自分の体調がボロボロだった自覚はどこに行ったんだよ?! 今、無理したらお前が壊れちまうだろッ!!」
「~~っ! ~~~~だったら、舐めるだけとか止めてよッ!! ~~そそ…っ、その気になっちゃうでしょッ?!」
いつもの麻子の強気な声音。…………だけど、麻子も多分余裕がなかったのだろう、いつもなら言わなかっただろう最後の言葉に手塚が突っ込む。
「――――――――『その気』って……」
言いながらすぐ傍で手塚に瞳を覗き込まれて――――狼狽えた大きな黒目がちの瞳。
思わず余計な一言を付け足したことを後悔した。
だけど時既に遅し、だ。
ゆっくりと光が身を起こした。
覆われるように見下ろされ――――視界に入りきらなくなると思うくらいの近さで止まる。
「…………また、性交(セックス)になると思った?」
「~~~~っ……!」
ゴ…クリ、と麻子が息を呑むのがわかった。
自分でも恥ずかしかったのだろう、麻子の顔から熱が伝わりそうな程熱い。
俺の吐息が麻子にかかるのか、何もしていないのに麻子の身体が震える。
…………こいつってば、ほんと…………、
麻子のすべてがヤバい。
ヤバすぎる。
今朝はもう寝ても覚めても麻子に翻弄されっぱなしだ。
こんなに可愛くて小憎らしい生き物がこの世にあるなんて思いもしなかった。
――――――――正直、理性と忍耐力を試されているとしか思えない。
俺自身はもうはち切れそうに固く大きく天を突く勢いでそそり立っていて、今すぐにでも麻子の中に突き入れたい…!!

けど。

今度は深くキスをする。
だけどグッと堪えて、キスだけに専念する。
丹念に麻子の口内を貪り絡み付き刺激する。
長い長いキス――――とにかく、俺の意識もキスだけに集中するように自分に言い聞かせる。
甘い唇から名残惜しく音を立てて離れれば、それだけで麻子の身体はグッタリとして、肩で息をしなければならないくらい乱れた呼吸。
逆上せたように濃桃色に染まった頬は煽ってるとしか思えないけれど、その頬に手を添えて麻子の熱を確かめる。
俺の手が触れるだけでも震える敏感すぎる身体――――ほんと、理性とかかなぐり捨てたくなる衝動を必死に堪える。
「…………この続きは、もう少し休んで、ちゃんとお前の体調を整えてから、な。
お前、今、少し熱があるんだ――――自覚ないか? まぁ…その、体調崩してるところに昨日の行為だったから――――身体が悲鳴を上げたんだろう。…………ごめん、無理させたし――――」
「~~む…っ、ムリとかっ……無理じゃないッ!!!」

~~~~ああもう、だから、煽んなって…………

熱を持つ頬に、触れるだけのキスを落とす。
それだけでまた麻子が震えるから堪らない――――欲情に駆られそうになるのを必死に堪える。
少し意地悪をしたくなって、頬から首筋へと移動して、首筋にキスマークをキツク付ける。最後にキスマークを確かめるように痕を舐めてから顔を上げると、早くて粗い息をしながら身悶えるような麻子の姿が見えて、もう本当にオカシクなりそうだ。
理性を総動員して、その先に進めたい欲望を抑え込む。
「――――うん……、なら、尚更、お前体力付けた方がいい。…………これだけのことで、息も絶え絶えだろ?
――――そうだな、ちゃんと食事して、ゆっくり休んで、体調万全だったら――――今夜は一晩中お前の望むだけ……最後まで付き合ってやるから。
別に今夜じゃなくても、明日でも、明後日でも…………もう俺達は、言い訳付きじゃなくてもずっと一緒に居られるんだ――――俺達、夫婦なんだから。そうだろ?
……だから、今のお前の最優先事項は、体調を整えることだ――――だろ?」
最後は少しだけおどけてみせると、まだ整わない呼吸をしながら悔しそうに麻子が顔を顰めた。
…………そんな顔すら可愛く見えるから、俺も重症かもしれない。
後ろ髪を引かれるように、名残り惜しすぎるけれど麻子の上からそっと降りる。
「滋養も付くような薬湯を持って来させるから――――飲めるよな?」
問えば、意固地に拗ねたように上目遣いで睨んで来る。
「~~~~当たり前でしょっ!! 食事も食べられるわよっ! ~~朝からあんたとバカバカしい話してて、お腹空いたしっ!」
「ハイハイ、仰せのままに」
「~~言っとくけど、あたし、体力はあるんだからねっ! 体調さえ戻ったら、あんた、今言ったこと後悔するわよっ!!」
そんなことまで口走って、どこまで嬉しがらせれば気が済むんだろう、この可愛い生き物は。
「しないよ。――――むしろ期待しとく」
「~~~~っ! ~~なにその上から目線…っ」
「……こと『コレ』に関しては俺に一日の長、だろ」
「~~~~偉そうに…っ!! ~~い、今に見てなさいよ…ッ!!」
悔しげに唸ると、拗ねたらしく布団にもぐりこんだ。
僅かに見える耳縁が真っ赤だ。

――――まったく、可愛すぎて困るよな。

柴崎を見つめる手塚の顔が、幸せに蕩けるように緩みっぱなしになっていた。
この時の手塚はまだ、この自分の感想が現実となって頭を抱えることになるとは、今はまだ知らない。


***


「……まぁ手塚は、小牧と張り合うくらい『嫁好き』だからなぁ」
ニヤニヤと笑う進藤に、小牧は否定もせず「進藤大将だって同じでしょ」なんてにこやかに笑う。
「いやいや、俺ンとこはもう連れ添って長いからな。お前ら程の危機感はない」
「年月は関係ないでしょう」
「若さは関係あるさ」
そう言うとちょっと真面目な顔をして
「……まぁ柴崎は何もなくても男が寄ってくるような美貌の持ち主だったからなぁ。……そこに手塚が手を加えたせいで、色気や可愛げまで出来たもんだから困ったことになっちまってるワケだ」
と肩を竦めてヤレヤレと首を振る進藤に、小牧が苦笑を浮かべる。
「……人妻なんですけどねぇ。人が育てたもんに指咥えるヤツらがこんなに世の中に多いとは、結構俺、ドン引きですよ」
「ドン引きっつーか――――お前さぁ、自分の嫁さんに迫ってくる男に対しては、足音だけでもはや威嚇どころか噛み付きにいってるだろ」
「人聞き悪いなー。……自分の大切な奥さんを守ってるだけですよ。それは亭主の役目でしょ」
「まぁ、そりゃそうなんだが…………お前の場合、怖すぎるんだよな」
……毬江に男が寄って来るたびに、顔色変えてすっ飛んで行くこの男の嫁への溺愛ぶりはもう周知の事実だ。今ではもう神教団体や政府関係者の中で、小牧夫人に手を出そうなんて命知らずはすっかり居なくなっている。
まぁ、遅かれ早かれ、手塚のトコもそうなるんだろうが。
ただ、手塚のトコロはまさに今柴崎への注目度が鰻上りの急上昇中であり、手塚は毎日のように鬼の形相で凄い警戒感を振りまきながら柴崎の傍に付いてることしばしばである。手塚自身、宰相としての仕事もある為、緊張感が半端無い感じだ。
「…………まぁ、柴崎さんが情報収集を得意とする外交官だってことも、手塚が頭を悩ませてるところでしょうね。世間に向けて顔は広がる一方だし、あの美貌、あの手腕ですからね」
そう小牧が言うと、進藤は苦笑した。
「まぁ大変だよなー。この前の外交なんか、一国の宰相が一外交官のSPしてたんだぞ。相手国の外交官は度肝抜かれてたな」
「柴崎さんもまた、上手く外交交渉に手塚を利用しますからねェ。……あんな怖い女性を嫁にする手塚は、時々凄いなぁと思うこともあります」
「まったくだ。あんな喰えねぇ嫁は、そうそう居ねぇよなぁ。……ある意味、手塚はあんな鬼嫁で良かったのかって、たまーに思う時もあるぞ」
進藤の台詞に、何かを思い出したらしく小牧が笑った。
「いやいや…、ああ見えて、柴崎さんにも可愛いトコロがあるんですよ」
「そりゃ、あるだろうよ。もしなかったら家庭内恐怖専制政治――――それは夫婦としちゃ辛いだろ」
「そうじゃなくてね――――知りませんか、柴崎さんのツインテール事件」
「…………ツインテール? なんだそりゃ」
「長い黒髪を二つに分けてこう…くくる髪型なんですけどね」
「へぇ? ……柴崎が結ぶとか珍しいな」
「いや、つい最近の柴崎さんのその事件のせいで、今、また新たに男どもが狂っちゃって、玉砕組が急増してるんですよ。だから手塚は連日鬼の形相をしてるってわけです」
「なんだ、それ。――――見栄えを整えるためっつっても、柴崎もメンドクサイことしてくれたなぁ」
「いやいやそれがね、柴崎さんはそういうつもりじゃなくて――――なんていうか、柴崎さんらしくもなくビックリするくらい可愛い発想だっただけなんですけどね。
その……手塚がこの前、女性に待ち伏せされて告白されたんですよ。――――それを運悪く柴崎さんが目撃してしまったみたいで。もちろん、手塚は嫁命ですから歯牙にもかけなかったんですけどね。だけど、柴崎さんにとってはショックな場面だったみたいで……まぁ元々、そんなに恋愛に関しては自信のある方じゃないでしょ、柴崎さんって。だからその女性が手塚に言った言葉もどうやら胸に刺さったみたいで――――柴崎さんのことを色仕掛けの女だとか仕事の為ならなんでもするとか、家庭を省みない奥さんだとか――――。
珍しく動揺している柴崎さんに毬江が出会って――――柴崎さんを励ましたみたいなんです。『柴崎さんはとても可愛い女の子です』って。『柴崎さんが本気で健気に手塚さんを想ってるってこと、いつかはその女の人だってわかると思います』ってね。
――――まぁ確かに、自分の旦那さんに女性が告白したシーンを見て動揺する奥さんってだけで、十分可愛いと俺も思いますけどね。
柴崎さんは柴崎さんなりにいろいろ考えたみたいで――――手塚との待ち合わせの時に、凄く可愛らしく見えるように一生懸命お洒落して、手塚を待ってたらしくて。……まぁ……可愛いこと考えて行動してること自体可愛いのに、その上、柴崎さんの見た目で『より可愛らしく着飾った』ものだから、手塚が行く前に既に凄い大騒ぎになっちゃってね――――その時の柴崎さんの恰好が、ツインテールにふわりと可愛い白いワンピース姿だったらしくて……野郎どもの鼻血の水溜りで床が惨状だったとか★
騒ぎを聞いてすっ飛んで行った手塚の鬼の形相も凄かったですよ。『見るな、近づくなッ!! 俺の嫁だッ、手を出すんじゃねぇッ!』って凄い殺気立ったらしくて。
お蔭で群がっていた男達から『手塚宰相は怖い。嫁のことになると殺人すら犯しかねない』って薄ら寒い噂が立ち始めたその翌日にね、手塚ときたら、頬に手形つけて出勤して来て皆の失笑を買ってたんですよ」
小牧の話に、進藤も思い出して笑った。
「ああ、それは知ってる! 柴崎に怒られたんだってな。『あたしはあんたのじゃない』って」
「それは手塚が誤魔化すために言ってるだけですよ。本当は、手塚が着飾った柴崎さんに『俺以外にそんな姿見せんなよっ!』って怒ったらしくて――――まぁ手塚の気持ちもわからなくはないですけど、一生懸命手塚の為に着飾ってみた柴崎さんにしてみれば腹が立ったんでしょうね。
――――まぁけど、犬も食わないってやつですよ。
なんたってその日、柴崎さんの方は体調不良で仕事を急遽休んでるんです――――まぁ恐らくは、一晩中手塚が可愛すぎる妻相手に流石にストッパーが掛けられなかったんでしょうね。毬江ちゃんが様子を見に行ったんですけど、薬湯とかそういうんじゃないからって柴崎さん本人が気怠そうに言ってたそうですから」
既婚者同士のキワドイ話題に、進藤が引き笑う。
「……手塚は、結構止められなくなるタイプだからなぁ。結婚の儀も、3日3晩どころか、1週間くらいずっと柴崎の部屋から出て来なかっただろ」
「まぁ、あの時は柴崎さんの体調不良のせいもありましたけどね」
「けど、契った途端、風呂まで一緒だったって聞いたぞ」
「……それは事実です」
「若ぇなぁ!」
「いや、かなりセーブしてたみたいですよ。あの頃は本当に柴崎さんの体調が良くなかったですからね」
「セーブしてたっつってもなぁ。――――ったく、お前ら堂上班は揃いも揃っての嫁好きだからよ!」
「いやいや、進藤大将の嫁好きには完敗ですよ」
「負けてると思っちゃいねェ癖に言うな。――――まぁいいんじゃねェの、ここは“愛の国”なんだから」
「愛の国?」
「だろ? ――――身分とか家の為の結婚じゃなく、すべての人が自由に好きな人と愛し合える国にしたいと、ヘタレ初恋王子が言い出して出来た国だ」
進藤のクサい台詞に小牧も笑う。
「確かに! 初勅でまさか愛を語ると思いませんでしたからね」
「だろ? ……そして今、この国はいい国になりつつある――――。国民一人一人が幸せになりたいと願う気持ちや、自分の大切な誰かを守って幸せにしたいと願う気持ちが、よりよい国の未来へと導くのかもしんねぇな。
国っていうのは、国民一人一人がよりよい未来を願って進めば、きっといい国を作っていくもんなんだろうよ」
「……いいですねぇ、愛の国」
「他人事じゃねェぞ。俺やお前が作る国だ」
笑って進藤が見上げた空を、小牧も見上げた。
澄み渡る、晴れた青空がどこまでも広がっている。
「そうですね。大切な人が笑顔で居られるように――――そんな未来を作りたいと思っています」
そんな想いがこの国には溢れてる。
――――こうしている今もまた、この国のどこかでは、誰かが誰かのことを大切に想っているのだろう。



 < Fin >



********************



……完結しました!
最初からここまでお付き合い下さった方には、本当に感謝しかありません!!
皆様のご訪問があって、ここまで来れました。
本当にありがとうございました。

最後は本当に書く時間がなくて、随分お待たせしてしまいました。
このお話が終わって、次はどうしようか、、、、、とまだ未定です。
書く時間は夏休み中は減る一方なので、この1か月でお話が上がるかどうかも分からない状況です。
本当にごめんなさい。
忘れた頃に覗きに来て下さると、ひょっとしてひょっとするとなにかがあがっているかもしれません。
夏休みの宿題のように、夏休みの終わりには何かがあがってるといいな♪ ってなカンジ☆
こんな状態で、本当にごめんなさ--------い!!!((((((((^^;)







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★今さら、WELCOME(*^^*)

しおしお様

嬉しいです~!
今さらじゃないですよ!
やっぱり感想を聞かせて貰えると、書き手は嬉しいんです♪本当に嬉しい!(*^▽^*)
「「一つだけの願い」番外編」は、処女ちゃんと童貞くんの初夜が書きたくて書いた話ですけど、やはりというか、私の書く話は辛い要素が入ってるもので、すみません。
でも、しおしお様も仰って下さったように、それを2人だからこそ乗り越えてくれての幸せwなので、お互いが好き過ぎる気持ちとかが溢れちゃって大変でした(笑)。もちろん、特に手塚が(笑)
体調不良もあったので、3日の通い婚が通例の筈が、1週間居ずっぱり(笑)
居すぎだよ、手塚(笑)
いやもう、そりゃ、甲斐甲斐しく1週間お世話してたんだと思いますけどー(笑)
1週間ともなると、しおしお様も指摘したように、仕事なんかも持ち込んだりして、周囲からも結婚の儀を済ませたんだなー。3日どころかずっとベッタリとかどんだけラブラブだよー、と周知の事実にしましたね、確かに!(笑)
まぁ、口ではどうこういいながらも、麻子サンも、初めての性交にドキドキで、手塚が触れてくるたびにドキドキして、手塚を煽りまくってたんだろーなー(笑)
手塚も大変★(笑)
ヤリたいけど、麻子の体調考えるとヤレない、というような状況にはなってたことでしょう(笑)
ガンバレ光クン!(笑)

そうですね、しおしお様も仰るように、手塚は(原作もですけど)柴崎さんに対する手塚自身の態度を決めた後の手塚は、胆がすわる気がします。
迷いがなくなったら、後はすごく素直に前面に出してくるんだと思うんですよね。
もちろん、全く強引ではなく、どうやったら柴崎さんが身も心も自分にみせてくれるのかを探りながら、確認しながら。
この相手の気配に気を配るところがまた、手塚らしいとも思います。
だからこそ、柴崎は手塚のことが好きになっていて、離れられなくなってたんでしょうね。
「好き」と思う気持ちを自覚するのはお互いに遅かったと思うんですけど、「好き」と思う気持ちはずっと育んできた二人だと思うので!
だからこそ、手塚は余計に、柴崎を気遣ったり気配を感じる術を身に付けていったともいえるかもしれませんね(笑)

> そして、進藤さんと小牧さんの会話がいいですよね~🎵
ありがとうございますー!!!
この番外編で一番の拾いモノは進藤さんでしたー!!
いや、元々面白い人だけれど!
ここまで面白い人物になるとは、私も思っておらず、番外編の進藤さんは超お気に入りです(笑)
そうですよね、第三者の会話は想像が膨らむので一層面白くなったりしますよねー!
ことに進藤さんが語ると、面白おかしく語ってくれますし(笑)
いやー、良いモン出てきました!(笑)
でもみんな、温かく手柴を見守っていくんだと思います。
そして、堂郁もね(笑)
ちょっと後には、緒形さんも。
隊長も。
進藤さん、突っ込みどころ満載過ぎて困っちゃいますねー(笑)
幸せな国に成長していくところで終わりたかったので、本当に良かったと思っています。
お付き合い下さって本当にありがとうございました!!!

ツンデレラ |  2018年08月14日(火) 05:55 | URL 【コメント編集】

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 |  2018年08月12日(日) 18:11 |  【コメント編集】

★君がずっと幸せでありますようにw

りんご様

いつも励まされるコメント、ありがとうございます!
すみません、まだ次の話は全然出来ていませんが……夏休み中に何か上げたい……上げたいのにずっと子供が(誰かは)居るので書けない、っつー状況に悶々とします(苦笑)
夏休みですねェ。。。
今年は猛暑の夏休みになりそうなので、とりあえず、体調第一にりんご様もお過ごしくださいね!
そういえば、この夏は、北陸の方へ2回も行くことになりそうです(笑)
天気予報見てたら、京都市内よりも5度近く低い北陸……35度いってない感じっぽくて、すぐそこなのに違うんだな~と妙に感心した私でした★

おっと話が随分それましたが、幸せなお話で無事ハッピーエンドw
もうお決まりのセオリー通りのお話ですが、いつもいつもそうですが、それでも幸せで嬉しいと言ってくれるりんご様に感謝ですww
コメントを頂けた私が幸せだ-----ッ!!!(//∇//)

> 最後、柴崎の体調を心配しておろおろしてる手塚が、ぐっと柴崎に「期待してる」っていうところ大好き!!!
そうそう、ヘタレ手塚はセオリーで、ヘタレなのに変な所でグッとカッコイイ手塚もセオリーですよねw
そのグッとくるところに柴崎もグッと来て、また手塚が好きになっちゃうんですよねw(……という柴崎の本心はなかなか見えにくいですけど(笑))
そして、また2日目の夜も熱い熱い夜を過ごすんですよww
多分、食事して、お風呂入って、手塚の傍で安心しきってしっかり眠れて、またご飯食べれて……そうやって体力を回復した柴崎相手の2日目は、初夜よりももっと熱く長く濃厚…………そしてまた目覚めて少し体調崩した柴崎にオロオロ……(エンドレス!爆)
そんなこんなで、1週間、手塚は柴崎に浸り切っていたんだと思います(笑)
なんだかんだで、そうやってベタ甘な手柴が好きだww
そして、そのベタ甘は2人っきりの時にしか見せないようにしているところもww
暑い夏ですが、こういう熱さはどんとこい!ですよね~!!
手柴妄想を繰り広げる夏にしようと思いますww(もちろん、ホントは書きたいですが!)

ツンデレラ |  2018年08月01日(水) 07:12 | URL 【コメント編集】

★ずっとずっとありがとうございました!

ママ様

最初っからずっと、本当にありがとうございました!
ファンタジーな話だったので需要が少なく、需要のない長編ってどうなんだろう?と途中自分自身にツッコミを入れながらも、ママ様が毎回コメント下さっていたのを励みにここまで来ることができました!
完結出来て良かったです。
このお話では、原作と結婚順は真逆になってます(笑)
小毬→手柴→堂郁、の順です。
小毬の結婚式は、手塚の初勅から2か月くらいで速攻結婚式を挙げた感じなので、まだまだ柴崎もいくら「小毬の身内だけの結婚式」だったとしても、まだ涙とか絶対見せたくない頃だな~と思って書きました。
原作でも、結局、郁ちゃんにすらほとんど弱いトコロは見せてない柴崎ですしね。
手塚にだけはずっと見せてきたってトコロが、手柴のキュンキュンするところの1つですねぇw
でも手塚は、その意味を全く正しく理解出来てない朴念仁……苦笑。ジレジレ期の長さは、手塚が踏ん切りをつけなかったせい!(笑)
多分、もっと早くに体当たりしてたら、手柴は堂郁と同じ頃には「付き合おう」ってなってた気がします。プリティドリンカーの時に気持ちに気付いて告白してたら、絶対上手くいってたと思うしなー(苦笑)

おっと、話が逸れましたが。

なので、小毬の結婚式ではまだ意地っ張りな柴崎……ではあるけど、もう、小毬が幸せ過ぎて、結局はこの時に初めて人前で「感受性豊かな」柴崎の片鱗を身近な人達には気付かれたんだと思います。
毬江ちゃんは、巫女としてのことでの相談とかは、柴崎にしてそうだと思って。
(もちろん、小牧さんも司祭としての知識は豊富だから相談してますけど、女同士の、巫女としての仕事なんかは柴崎にかなぁ…と)
なので、結婚式で柴崎にブーケを手渡しw 婚約もしたことだし、次は柴崎さん頑張ってね、という気持ちでw
原作と逆転もいいなぁ~と書いてて思いましたです(自己満足☆笑)

> 麻子の内腿を伝ったモノは手塚の…ですね(笑)
このお話では、若いし、新婚さんだし、手塚興奮のあまりに致しちゃう経験初ということで、もう1回1回の量が凄いかと(笑)
それを初夜なのに、抜かずに何回もイッちゃってしまわれた手塚殿下ですので~~~~(笑)
ドンだけ★(爆笑)
そりゃ、柴崎も知恵熱出すわ!(苦笑)

手塚に向かって告白してきた女性は、若干、原作の水島タイプの女性だったのでは、と思います。
とりあえず、今すぐ手塚と付き合うことは出来なくても、柴崎の良くないトコロを手塚に植え付けて目を覚ましてあげねば!みたいな感じ? ……柴崎の事、全然知らない女なんですけどね。
柴崎は美人だから、自分の美貌と色仕掛けで手塚を落とした、とでも思ってる女です。当然、手塚と柴崎が小さい頃からお互い想い合っていたとか、陰からずっと見守り続けて来たとか、そういう事情は一切知らないで、自分の思い込みで行動するタイプ★
柴崎に愛想が尽きたら、自分にもチャンスが!とでも思ってたんでしょうね。
そういう心根が既に「汚い」とは思わないモノなんでしょうかねー。

> 小牧さんと進藤さんの会話には笑っちゃいました(笑)
良かったですw
嬉しーww
最後は明るく、楽しく、終わりたかったので、小牧さんと進藤さんに登場して貰いました!(笑)
このお話では(特に番外編)進藤さんの立ち位置が結構私のツボです(笑)
面白いし、進藤さん!!
きっと、この2人が今2人で語らってるのは、緒形さんはデートだからwじゃないでしょうか(笑)
進藤さんもバディが居なくて、小牧さんと井戸端会議(笑)
でも、意外にいいコンビかも?(笑)

本当に、最後まで丁寧にお付き合い下さりありがとうございました!!
いつもいつも、コメントに励まされて完結することが出来ました!!
ママ様のお蔭です(*^^*)
実はこのお話の影の立役者は、ママ様なのではないでしょうか。コメントが私の栄養源でした!!
本当にありがとうございました!!!





ツンデレラ |  2018年07月27日(金) 05:54 | URL 【コメント編集】

★管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
 |  2018年07月26日(木) 23:24 |  【コメント編集】

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