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2018.05.11 (Fri)

≪背中の靴跡シリーズ≫ 『1つだけの願い』~vol.30~

≪ 1つだけの願い~vol.29~ ≫背中の靴跡シリーズ

SD-magadama08.jpg

戴冠式の筈が、初勅でまさかの王制廃止と身分制度の廃止を宣言した手塚。





【More・・・】

≪ 1つだけの願い~vol.30~ ≫背中の靴跡シリーズ


舜国中が、手塚の言葉に、固唾を飲んで聞き入っていた。
手塚は国中を見渡すような視線をずっと国民に向けていた。
誰も身じろぎも出来ない。
柴崎もただ、手塚を見つめるだけ……。
ようやく、手塚の視線が柴崎に戻って来た。
柴崎を見ると少し安堵したような表情になって――――広場に背を向けた。
そっと抱えるように、硬直している柴崎の身体を促して、バルコニーを後にする。
大広間にも足を止めることなく通り過ぎると、そのまま真っ直ぐに自室に向かい、部屋に入ると扉を閉めた。
部屋の中央でようやく足を止め――――柴崎を引き寄せると、抱き締めた。

「……やっと言える……好きだ、麻子」

手塚の言葉に、溢れて来るものがあって言葉が出ない。
ずっと硬直気味の身体も相変わらずで、夢のような気すらする。
2人きりの部屋なのに、手塚は耳元で囁くように言う。
「好きだよ。……ずっと好きだった。ずっとずっと、お前だけ――――俺は、麻子が、麻子だけが好きだ。
…………けど…………。
……けど、俺…………もう、何も持っていない。…………好きって気持ちだけで…………今日から俺は、ただの『手塚光』っていうちっぽけな人間だ。
王であることも、財産も、何もかも全部放棄した。
あれは、本気だ。
だからもう、お前は俺を守る必要もないし、傍に居る必要もない。
お前が俺の傍に居る理由はもう、何もない。
だけど――――けど、地位も財産もなにもかも失くしても構わないのに、構わなかったのに、――――でも、お前だけは失いたくないんだ。
…………お前だけは…………お前だけは手放したくない、手放せない…………」
ギュッと縋るように抱き締められる力が強くなる。
それでも手塚は、柴崎が苦しくないように加減しているのだとわかる。
「…………傍に居て欲しい。俺と一緒に生きてくれないか。――――俺、俺がどれだけのことが出来るか、何が出来るかもわからないけど……、お前を守りながら2人で生きていけるように頑張るから――――だから、お願いだから…………俺と結婚して欲しい」
覆い尽くされるようにすっぽりと柴崎を包み込む程大きな手塚なのに、最後は自信なげな小さな声。
小さな――――幼い子供のような。
手塚の演説を聞いてから、思考も身体も固まってしまっていたものが、ゆっくりと動き出す。
ようやく、柴崎の口元が綻んだ。
ほんのりと身体が熱くなる。
「……そういう告白文句って…………すごく自分の立場が低い人の台詞よ」
「……立場なんか低くていい。…………お前を失わずに済むなら、なんだってする」
「本気であたしが、あんたを見捨てると思ってる?」
そう言うと、柴崎は腕の中から手塚を見上げた。
手塚は真っ直ぐに柴崎を見つめ返して――――、

…………ゆっくりと、唇を重ねた。

柴崎の瞳が見開く。
――――何が起こったのか、わからなかった。
最初は軽く唇に触れるだけ――――柴崎の唇に軽く食むように触れただけ、と思ったら、次の瞬間には深く――――呼吸まで絡み取られるかのように、深く丹念に口内を貪られる。
身体の芯が溶け落ちそうな程に熱い。
思わず止めてしまった吐息――――苦しくなって鼻から漏れた呼吸音は喘ぐようだった。
それでも執拗に弄られて、身体までもが震えて膝から力が抜けた。
沈みそうになる身体は逞しい腕に支えられ――――ゆっくりと熱い唇から解放される。
唇を塞がれただけなのに、視界が潤んでぼんやりする。
「~~~~っ…、~~な…ッ…、なな…なに…………っ…」
「……今日の前に、ちゃんとお前とこういう話をしたかったのに…………お前、俺のこと避けてただろ」
仕返しだ、と、拗ねるような口調で言われた。……でも目は悪戯っぽく笑っている。
痛いところを突かれて――――ついでに笠原とのことまで思い出し、思わず更に潤みそうになる視界を俯けた。
「~~~~そ…れは……っ、~~そそそんなことより…ッ、あ、あたしのこと、より……その…っ、笠原、とは…………っ」
辛うじてなんとか強気な言葉を吐いたのに、手塚の手があたしの頬に触れて顔をあげさせられる。
狼狽えるように視線が泳ぐのが情けない。
きっと泣き出しそうな不細工な顔になっているだろうことも情けなかった。
目の奥が熱くなる。
そんなあたしの目尻にそっと、手塚が優しく唇を落とした――――ほんのりと柔らかな温もりに、どうしようもなくて涙が零れてしまった。
「~~~~~~~~っ、」
~~~~なにやってんのあたし。
笠原が受けた不完全な呪詛に『許嫁』の名を決めたのはあたし自身で――――そのあたしがなぜ泣く?
静かに手塚が口を開く。
「――――笠原家とは既に婚約解消で話がついてる。
先日、婚約解消の為に笠原家に行って来たんだ。
今日の初勅の内容にも触れて、俺は王であることも地位も財産も手放すから、笠原との婚約には意味がないことをわかって貰った。――――笠原伯爵はわかってくれたし、新生舜共和国への助力も約束して下さった。新政権で外務省の役職について貰うことが決まっている。経済や貿易、外交の強い力となるだろう。
外交防衛については堂上少将をトップに精鋭部隊の組織編成をする予定になってる。笠原も同じ部隊に配属となるだろうな。
…………しばらくは国内が荒れそうだから、緒形・進藤両大将が王都及び地方の自衛にあたる部隊を率いて貰うことにもなってる。もちろんすべての統括は玄田大隊長に仕切って貰うけどな」
どうだ? と言わんばかりの手塚の顔を、思わず見つめた。
ふ、と優しく微笑んだ手塚は、優しいだけの口付けをまた唇に落とした。
離れた手塚が慈しむようにあたしを見て微笑むのに、みるみる顔が赤くなる。
慌てて手塚の胸に顔を埋める。
ギュッとしがみついたあたしを、どこまでも優しく手塚が抱き締めた。
「――――ところで…………、麻子の返事は?」
「~~~~っ、……」
「俺は、麻子が好きだ。…………お前は?」
「~~~~ッ、~~そそそんな…ことっ、……ッ!!」
「聞きたい、今」
「~~~~っ、け、けど…ッ、ああああたし、ずっと、陰で…っ…、~~そそそうよ、あ、あんたあたしのことよく…っ、~~~~きき気の迷いなんじゃ…っ、」
「気の迷いなんかじゃない。……お前のことはよく知ってる。幼い麻子のことはもちろん、ずっと陰から俺を見守ってくれた温かな優しい目の存在もずっと気付いてて……ずっと焦がれてた。ようやくお前に会えて――――、お前が皮肉屋で意固地で意地っ張りで、だけど誰よりも俺のことを想ってくれてるんだってことも、全部知ってる」
「~~~~な…っ、ならもう……っ…!」
「ちゃんと聞きたいんだ、お前の口から。…………正面から向き合いたいんだ」
「~~~~~~~~っ、……」
ドキドキドキドキと心臓が壊れそうなくらい音を立ててる。
~~~~そ、そそそんなのもう、わかりきってるじゃないの!
そう詰りたいのに、それすら言葉にならなくてしがみ付く。
優しく回っていた手塚の腕が、ゆっくりと身じろいであたしを引き剥がす。
覗き込もうとする手塚がわかって、ギュッと目を瞑った。
あたしはもうパニックで、どうしていいのかもわからなくて――――……


「ラブシーンの途中、すまん」
「…………イイトコ邪魔してごめんね」
控えめなノックの後、玄田と小牧が顔を出した。
突然の状況に、慌てて手塚は柴崎をバッと引き剥がした――――が、へたり込みそうになる柴崎を、慌てて支える。
茫然としたようにつっ立ったままで、茹で蛸のように真っ赤に染まった。
小牧がくすくすと笑いを噛み殺している。
玄田が話を切り出す。
「すまんな、お前らでないと収拾がつきそうにない事態だ」
手塚は赤い顔を精一杯顰めて応じた。
「…………いえ別に…………なにかありましたか」
「国民が大騒ぎでな。【御魂の巫女】は本当なのか、証明して見せろと押しかけてきて、王宮の門が潰れそうだ」
「証明って――――見たでしょう、聖剣に呼応した光を」
「納得がいかんらしい」
「……納得って…………もう一度見せれば済みそうですか」
「済まんだろうなぁ――――稲嶺太尉とも話したんだが、どうするのが一番いいか読めんところでな。とりあえずお前さん達を交えて相談しようかと……」
玄田が言ったところで、柴崎がまだ俯いたまま口を開く。見えている耳の赤さはまだ引いていなかった。
「…………要は、あたしの中に【御魂】があることを証明しろ、ということですね?」
「まぁそうだ」
「――――ではあたしが出ます」
躊躇なくそう言った柴崎に、手塚が「麻子!」と抗議の声を上げる。
「~~危険だ、もし暴動にでもなったら……」
「あたしは『忍び』よ――――自分の身は自分で守れるわ。それに、国民が納得してくれなければあんたの演説も意味がないわ――――民意なくして共和国は成り立たないでしょ?」
「~~それは…っ、けど…ッ!!」
「――――あたし、出ます」
ようやく顔を上げ、玄田に真っ直ぐな目を向けた柴崎の言葉に、玄田も頷く。
「俺らが警備に付く」
「ありがとうございます」
「~~~~っ、麻子ッ!!!」
「……あんたは来ちゃ駄目。ちゃんと守られてなさい。――――大丈夫よ、見てて。ちゃんと証明してみせるから」
「~~駄目だ…っ、麻子ッ」
手塚を取り押さえようとした進藤を振り切ると、手塚は柴崎の細い手首を掴んだ。
「自分の撒いた種だ。――――最後まで責任を取る!」
柴崎が小さく溜息を吐いて口を開いたが、柴崎が言うより先に、玄田がニヤリと笑うと請け合った。
「任せろ、俺がお前ら2人共、絶対守ってやるさ」
扉の外には、緒形や堂上、笠原も控えていた。
精鋭部隊へ指示が飛ぶ。

正面の扉は人で埋め尽くされ動かすことも出来なかった。
秘密の出入り口から街に出て、王宮へと続く大舜門通りと天壇門通りの間にある大きな広場へと向かう。
柴崎と手塚の傍には、玄田を筆頭に精鋭部隊が厳重な警護に当たった。
【御魂の巫女】に気付いた人々が押し寄せようとするのを、国軍と精鋭部隊で必死に堰き止める。
広場は人々に取り囲まれ、罵声や怒声も飛ぶ異常な緊張状態に包まれた。
つい、と静かに柴崎が歩み出た。
神楽鈴を掲げて。
1人、人々の前に出る――――手塚は固唾を飲んで見守った。
シャリーン…、と澄んだ鈴の音が鳴る。
その音に、人々の騒々しい声が少し小さくなった。
淡く、柴崎の周囲に光が集まり始める。
また柴崎が鳴らした神楽鈴が響き、呼応するように光の粒が増えてゆく。
柴崎の姿が光り出す。
口々に騒いでいた人々もいつしか柴崎に見入り、静かになる。
穢れを払い、神を呼ぶという神楽鈴――――その音に、本当に今、神が集まっているのではないかというような澄んだ穏やかな空気が広場を支配し始める。
やがて、ゆっくりと柴崎が舞いを始めた。
鎮魂と祝賀の舞――――柴崎が舞うたびに、柴崎の光が溢れて天から人々の上にも降りかかる。
…………奇跡の巫女…………
奇跡の光だった。
舜国中に飛散する光は、人々を癒し、浄化し、清浄をもたらす光――――。
人間だけではない。
生きとし生けるものすべてに降りかかり、その命に恵みを与える。
……やがて、舞いがクライマックスを迎えると、柴崎から溢れる光が、少し碧白いような【御魂の輝き】へと変わった。
柴崎から溢れて天へと昇っていた光が、柴崎の頭上で巨大な御魂を形作る。
光り輝く巨大な御魂――――、最後の神楽鈴の音と共に、その御魂の輝きが一気に国中を駆け巡った。
真っ白な光が一瞬で国中を通り抜け、闇を浄化してゆく――――……

いつの間にか静まり返っていた広場。
人々は呼吸も忘れて見入っていた。
――――と、無粋な神楽鈴の音がして我に返った。
「~~~~麻子…ッ?!」
真っ先に手塚が駆け寄り抱き起す。
意識を失い蒼白な顔で柴崎が倒れていた。
慌てて小牧も駆け寄り、柴崎を見る。
「…………命は、大丈夫…………けど、安静にして癒しの力を注いだ方が良いね。光の力を使い過ぎて、消耗が凄い…………まぁあれだけの舞いだったから…………」
すぐに柴崎を王宮に運ぶよう、玄田も指示を飛ばす。
手塚が軽々と柴崎を抱き上げると、ようやくざわめき出した人々は、すんなりと手塚を王宮まで通してくれた。
暴動になりかけていた人々の不信を、柴崎の舞いが払拭したのは明確だった。
手を合わせて「御魂の巫女様…」と拝む人があちこちに居た。


王宮に戻ると、毬江が柴崎に癒しの力を与えてくれ、少し頬に血の気が戻ってホッとした。
手塚がずっと傍に付いて見守る。
柴崎はなかなか目を覚まさなかった。
安静にして身体を休める方がいいから、と小牧に言われたので大人しく見つめていたが、流石に丸一日目を覚まさない柴崎に心配になる。
握る小さな手はほんのりと温かかったから大丈夫だとはわかっているけれど、やはり気が気じゃない。
もう少し力を注いでやれないかと、そっと口付けてみる。
口付けながら、自分の光を麻子に、と念じる。
最初はなかなか自分の身体の中の光を感じられなかったが、念じるごとに少しずつ自分の中に渦巻く力を感じた。
やがてその力を唇を通して麻子の中へと吹き込む。
ゆっくりと吹き込むこと数秒――――僅かに麻子が身じろいだような気がした。
慌てて顔を上げて見ると、柴崎の長い睫毛が震えている。
ホッとして、もう少し、とまた口付ること十数秒で、ふいに麻子が身を捩り抵抗しているような気配がして唇を離す。
見れば、真っ赤な顔をして睨みつけながら、
「~~~~な…っ、…なにし…ッ…、このバカッ!!」
なんて言う。
ホッとして思わず抱き締めると、思いっきり暴れられる(暴れられたって全然ビクともしないけれど)。
しばらく暴れていた麻子だったけれど、諦めたのか、最後に少し文句を言うように背中をポカリと叩いた後、ポソリと尋ねてきた。
「――――あたし――――どうだった? 皆にわかって貰えたかしら」
「……ああ、信じてくれたと思う」
「そ……良かった」
そう言うと、柴崎の身体から少し力が抜けたから、慌てて顔を見る。
穏やかな黒目は開いたままだった。焦ったような手塚を見て苦笑を浮かべる。
「……舞い……久しぶりだったから、途中から力をセーブ出来なくなっちゃった…………」
「凄かった…………あんな凄い舞い――――神が降臨して皆に光を与えてるみたいで……御魂の力も国中に降り注いでた」
「そう? まぁ…良かったわ、国民が一先ず納得してくれたなら」
そう言うと静かに目を閉じる柴崎に、手塚はその黒髪に触れる。
撫でるとするりと指の間から滑らかに逃げてゆく。
「…………ごめんな……」
ぽつり、と零した手塚の言葉に、柴崎が目を開いて見た。
「なにが?」
「……俺がこれからしようとすることは…………お前に苦労をかけるばかりかもしれん」
ジッと見つめてくる目に、少し目を伏せる。
「俺は――――精鋭部隊に入って、あの玄田大隊長ですら、部下の意見を求めたり耳を貸したりするのを見てきた。――――1人の力には限界がある――――皆で知恵を出し合い、時に采配を委ねて各部隊にとって最高の戦術を取らせることで最良の結果を生んだこともある。
なにより――――精鋭部隊では、俺はまだまだ下っ端だ。技術も戦術も戦略も、上官達には遠く及ばない。
そんな俺が王になって――――王として最善の方法で、舜国を導いていけるとは思えなかった」
「…………あたしは……あんたが王になったら、それはそれで名君になれたと思うけどね」
そう言った柴崎を驚いたように見つめ――――ほわりと柔らかく笑んだ。
「……サンキュ。……けど俺は、皆と対等で有りたかったんだ――――少なくとも今のように。
そして、お前との関係は特に、な。…………王としてお前を強引に娶ることはしたくなかった。
……それに、この先……舜国の為に他国の姫と婚姻を結ばなきゃいけないとか、そんなこと――――俺は絶対に嫌だ」
「誰も咎めないわ。舜国の為にあんたが婚姻を結んでその女性(ひと)と身体を重ねたって、なんとも思わないわよ、あたし」
サラリと言われた言葉に撃沈しそうになるのを堪えて、苦々しく叱る。
「~~俺が嫌なんだ! なんでお前との時間を潰してまで、どうでもいい女を抱かなきゃならない?! そんな時間があるなら全部お前と過ごしたいっ!!!」
柴崎を睨みつけると――――少し怒った声で問うた。
「~~そういえば、お前の返事聞いてない。……お前はどうなんだっ、俺のこと、どう思ってる?!」
「~~~~そ…っ、…なななに急に…ッ?!」
「……急じゃないだろ。お前はどうなんだよ――――俺のこと、どう思ってる?」
「~~~~っ、~~も、もう……わかってるでしょ…ッ!!! ~~知ってるクセに…ッ」
「聞きたい。――――ちゃんとお前の口から。
…………これは大事なことだから」
そう言って、グッと顔を近付けた。
唇と唇が触れそうなのに触れていない――――でも、手塚の唇が動くのすらわかる距離。
「…………お前の気持ちを…………ちゃんと、聞いておきたい」
吐息がかかる。
熱い……甘い……。
互いの体温までわかりそう。
ドキドキドキドキと壊れそうなくらい脈打つ鼓動はきっと手塚に聞こえてる――――
手塚の呼気が肌を撫でる。自分の呼気が乱れないように平静を装うとすればするほどに震えるような呼吸になり、心臓は今にも破裂するんじゃないかってくらいバクバクと音を立てていて――――
遂に、根を上げた。
「…………す…っ、…………す…………き…………、よっ、」
必死に言った言葉は、自分でも聞き取れないくらい掠れた小さな声で――――だけど、絞り出すように必死に呟いた柴崎の様子に、手塚は満足そうに微笑んだ。
「――――うん」
~~~~と、吐息、が……っ、手塚の香りに鼻腔を満たされ、柴崎はプチパニックになる。――――とっくにわかっていただろうに安堵したように手塚がホッと息を吐いたから。
手塚の唇の動きが気になって仕方がない。
――――と、手塚がそっと指で柴崎の唇をなぞった。
思っても見ない感覚に、ビクリッ…と柴崎が震えた――――そのまま小刻みに震えっぱなしの柴崎に、手塚は目を見開く。
可愛すぎる反応に、また笑みを深くすると、堪らず引き寄せられるようにその柴崎の唇に唇を重ねた。
「…………俺も、好きだよ」
呟いた手塚の言葉は、直接柴崎の中に響き渡りしっかりと刻みつけられた。

まさか、この一言で婚約の承諾とされるなんて、この日から手塚の婚約者として扱われることになるなんて、この時の柴崎はまだ、知る由もなかった。



……To be continued.



********************



というわけで、一応一件落着…?(苦笑)
すみません、次回はもう最終回に!
長かった需要のないパラレルでしたが、遂に次回完結!
→→→→→って言いながら、番外編突入ですが(笑)。





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05:10  |  *『図書館戦争』二次小説  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

★ですよね、やっぱり言葉にしないとね!

ママ様

そうですよー♪ この柴崎も先制攻撃に弱いです(笑)。私の中で、柴崎は恋愛に関しては先制攻撃に弱い、がセオリーです。ただ、このお話の柴崎は、原作の柴崎よりも更に純情無垢な仕上がりになっているので、本当に先制攻撃に弱いです(笑笑)。
今回の手塚は、特にちゃんと聞き出したのは、ここでちゃんと柴崎の意思確認をして「相思相愛→結婚の意思がお互いにあり」というトコロにどうしても漕ぎ着きたかった、といこともあると思います。
手塚自身も言っているように、柴崎が手塚を守る意味はない世界になるわけですから、それでも側にいて欲しいし側に居たい、となれば、手塚も流石に何かしらの約束をしておきたかったのだと思います。
堂上さんや、柴崎の、うまく言葉に出来ないところは、恋愛に関してはダメなところですよねー。相手が郁ちゃんで手塚だから上手くいったのであって、普通はウヤムヤで「わかるだろ」は何かあった時に相手を不安にさせちゃう元だと思いますね。
今回は多少強気に手塚が出たのは、本当に大事なことだからで、このお話の柴崎は、こうやって学んで成長していくのだと思います(恋愛面で…。原作では手塚よりマシな柴崎ですが、このお話の柴崎は初恋の処女なので、手塚よりも恋愛音痴ですね)。
こういうお返事関係は小牧さんが一番でしょうね。これまで、相思相愛の恋愛もしてきた人だから、やはり気持ちは言葉にしないと伝わらないと思ってると思います。3年後の呪縛の彼女は、ちゃんと自分の気持ちを説明して別れていったから、今の小牧さんはその彼女の気持ちもわかった上で、本当に自分が誰よりも大切に思っていたのは誰かに気づいた訳ですし、好きって言葉以外でも、相手に伝える大切さを身にしみて経験している人でもある気がしますね。だから小牧さんが1番ちゃしてるのでしょう。

一応、「好き」と伝えたことで、手塚は半ば強引に「状況が落ち着いたら柴崎と結婚する」ときっと周囲に宣言して、婚約、という形で認められたんだと思いますが、柴崎はまさかの婚約だったでしょうし、この2人は実はすぐには結婚していません(苦笑)
そこら辺はまた番外編でするとして、次回は一応の最終回で、大団円で終われたらと思っていますw
ツンデレラ |  2018年05月11日(金) 22:55 | URL 【コメント編集】

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 |  2018年05月11日(金) 10:09 |  【コメント編集】

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