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2018.04.13 (Fri)

≪背中の靴跡シリーズ≫ 『1つだけの願い』~vol.26~

≪ 1つだけの願い~vol.26~ ≫背中の靴跡シリーズ

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刻一刻と削られる柴崎の命。遂に王宮へ手塚は足を踏み入れるが…。





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≪ 1つだけの願い~vol.26~ ≫背中の靴跡シリーズ


背負って行く、と言った手塚を頑なに拒否して、柴崎は手塚の横を走っていた。
心配は尽きないけれど、そうやって自力で動けている柴崎に安堵もする。
視界は暗い――――まだ夜が明けていない時間だからだ。
精鋭部隊が王宮の見張りをしていた憲兵達を片付けてくれた。
王宮に入る入り口は、どこも1中隊が配備されており――――そのうちの1つの入り口に集中して一点突破を図る。
凄まじい死闘――――国軍や国東軍だけではなかった。呪詛により身動きを封じられることも――――精鋭部隊とはいえかなりの深手を負う――――玄田がその場に踏みとどまり、小牧を筆頭に司祭達数人の浄化の力でもって呪詛を跳ね返した隙を突いて、進藤、緒形、手塚、柴崎、堂上、笠原が辛うじて王宮内に入り込んだ。
王宮内の地下道へとひた走る。
だがこの秘密の通路にも国軍の1小隊が配備されていた。
進藤、緒形の二人が国軍目掛けて切り込んだ――――「先を行け…ッ!!!」と叫びながら。
精鋭部隊でも玄田に匹敵するとも言われる剣豪の緒形が突進するのに、進藤が矢で援護した。相手が怯んだ一瞬を逃さず、進藤も刀で切り込む――――こちらは二刀流だ。
緒形と進藤が国軍の足を止めてくれている隙に、堂上、笠原、手塚、柴崎は一目散に駆ける。
目指す場所――――そこは壁に覆われていた。
「……ここよ」と柴崎が示し堂上がそこの壁を叩いた瞬間、一瞬で壁が回転した。
笠原は上げそうになった声を、手で口を塞いで堪える。
――――凄い――――見たこともない仕掛けだった。
そこが二重構造の内側の部分に入る入り口――――と、来た方向と逆方向から小隊の足音が聞こえてきた。
「早く行けッ!!!」と堂上が叫ぶ。笠原も堂上の横に並んだ――――と、その笠原の前にふらりと柴崎が出た。
「……笠原、手塚と、行って…っ!」と柴崎が静かに叫んだが、柴崎の腕を掴んだ笠原はそのまま投げるように柴崎の身体を手塚に向かって放る。
為す術もなく柴崎の身体はふらりと手塚の元に倒れ込んだ。
「~~~~笠原…っ、」
焦るように口を開いた柴崎を、笠原が口角を上げながらピシャリと遮った。
「悪いけど、今の柴崎には、堂上少将の横は任せられないッ!! 生き残るための戦い――――あたしと堂上少将なら、この修羅場だって切り抜けてみせる…ッ!! それに手塚には柴崎が必要なの――――手塚ッ、柴崎を担いで早く行って…ッ!! ここはあたし達に任せろ…ッ!!」
「……すまん、任せた…ッ!」
「~~かさは…ッ、ちょっ、て、手塚ッ!!!」
手塚は柴崎を担ぐや否や、壁の向こうへと消えた。
遠くから足音が近づいてくる――――かなりの人数だ。
「…………おい、大口叩いたからには覚悟しろよ」
堂上が口を開いた。――――厳しいけれど優しい声音が少し交じっている気がした。
「~~わかってます……けどあたし、堂上少将となら本当に大丈夫な気がするんです…ッ!!」
「修羅場どころか、地獄を見るぞ」
「例え地獄でも――――あたし、堂上少将となら最後まで同じ景色を見ます…ッ!!!」
笠原の言葉に一瞬目を見開いた堂上は、ふ、と笑んだ。
……足音がみるみる近づいてくる。
「バカか、お前は。――――俺が付いているのに――――これで最後にするか! もっといい景色を見せてやる――――2人で見に行こう――――行くぞ…ッ!!!」
「――――え? あ、は、はい…ッ!!!」
襲いかかって来た敵軍の剣先を交わし――――、堂上は稲妻のように敵軍へと切り込んだ。

     *

「~~~~て…づかっ、お、下ろして…ッ!」
「……駄目だ。お前、足元がふらつき始めてる。……自分でも気付いたんだろ?」
「~~ッ! ~~~~じゃあ、置いて行きなさい…ッ!! 誰が足手纏いなんかに…っ」
「足手纏いじゃない。――――お前は離さない」
「~~~~な…っ、も、もうすぐ、あたしは死ぬわ…ッ!! 行ったってなんの意味もな…ッ」
「……死なない、死なせないッ! ――――その為に行くんだ。命甦丸を貰ってお前に与える――――俺が兄上に会いたい一番の理由はそれだ――――お前が俺の原動力なんだよ。だから何があってもお前は連れて行く。お前が死んでも、死体でも、俺は離さない――――何か手がある筈だ! ……もう二度とお前を離さない、お前を忘れない、あんなことはもう二度と御免なんだ…ッ!!」
「~~て…づ、か……」
手塚の言葉に、胸が苦しくなる。


孟極(もうきょく)で王都に向かう途中、手塚と話をして――――手塚が思い出してしまったことを知った。
思い出したことで手塚は、兄の慧が魔に憑りつかれている可能性についても受け入れた。
手塚には思い当たる節もあり――――兄が国東の都市を治めるようになった頃、母の体調が急変したのは、兄に憑りつく魔の影響だったかもしれない、と思い至る。
江東や黄国の魔道士がそうだったように、慧に憑りついている魔は誰にでも憑りつく可能性がある【魔の力】だから……。
「……四凶という伝説があるの……」
柴崎は忍びとしての訓練を積みつつ、稲嶺の元で学んだ知識についても手塚に伝えた。
「黄国が建国した時にね、黄国の領土には暴虐の限りを尽くした凶悪な四凶神が存在したの。黄国の建国者である黄帝はなんとかこの四凶神を封印した――――饕餮(とうてつ)、窮奇(きゅうき)、梼杌(とうこつ)、混沌(こんとん)という妖魔がそれ。最強の力を持つ黄帝だからこそ、妖魔という実体の形にせしめ、封じることが出来たのだとも言われているわ。だけど四凶のうちでも混沌にはその実体化する術が酷く効きにくかったと言われている…………だって【混沌】の本質が【矛盾】だから――――我でありながら他者であり、存在すれども目には見えず、正義でありながら悪を行う――――それが混沌なの。光に照らされれば影が出来るように、魔でありながら神に近い存在――――だからこそきっと、慧殿下が混沌に特に気に入られたのね……。慧殿下は誰よりも強く舜国の発展を望まれていたから――――舜国発展の為にはその身を犠牲にしても、一時の苦難を国民に強いても、更なる高みの為には手段を問わない――――【混沌】が慧殿下の願いを聞き入れ、慧殿下に憑りついたのは、そこじゃないかしら。
なまじ、光の力が強かっただけに、慧殿下は混沌に呑み込まれることなく生きて来られたんだわ。
…………でも、少しずつ、【混沌】が――――【闇】が暴走を始めてる。
慧殿下から、もはや闇の気配が滲み出ていたわ…………。昔の慧殿下なら、国王陛下の御命を奪うようなことはなさらなかった筈よ。――――このままだと、慧殿下は【混沌】そのものになってしまう――――
舜国の為にも、慧殿下の為にも、慧殿下の身の内に存在する【混沌】を滅ぼすしかない。
だけどどうすれば【混沌】が滅ぼせるのか――――どこにも記載はなかったの……。
わからないの。
――――そう話したあたしの言葉を黙って聞いていた手塚だったけれど、沈黙したあたしのせいでしばらく2人で黙っていたら――――ポツリと零した。

【混沌】なんか、どうでもいい。

呆気に取られた――――そんなあたしに、淡々と手塚は口にした。
混沌を身の内に潜めていようが、兄上が王として国民の為に国を立てると言うのなら俺は構わない。兄上のやり方は時に痛烈で強行なこともあるが、兄上が統治した国東の都市は舜国でも随一の大都市へと発展したことも事実だ。……民を虐げ国を傾ける王となると言うなら話は別だが、兄上とは話をしたいと思ってる。
だけど【混沌】がお前の命を奪おうとするなら、俺は、混沌をなんとしてでも殺す――――兄上が混沌そのものになっていたら、その時は俺がこの手で兄上を討つ。
それだけだ。
…………もう二度と、お前を失うのは、御免だ。
静か過ぎる声音だった。
あまりに穏やかで――――だからこそ逆に、手塚の中の傷の深さを見た気がした。
記憶を失っていたこと、あたしが何も教えなかったことが、こんなに手塚を傷つけてしまったのだと、あの時気付いた――――。
忘れてくれればいいと、あたしなんか忘れてしまえばいいと、一人で勝手に死ぬからと……手塚の為と思っていたことは全部、ただの自己欺瞞だと気付いた。

担がれて運ばれるあたし――――下ろして、と暴れていた気持ちが少し萎えた。
代わりに、……躊躇いながら手塚の背中をそっと撫でた。
あたしの手には大きすぎる背中――――抱き締めるには大きすぎる背中。

ごめん。

あたしがずっと止まっている間に、こんなに大きくなっていたんだ。

あたしが守りたかった。
ずっと守ってあげたかった。
守ってあげようと思っていた。

でも、いつの間にか、あたしよりもずっと強くなってたんだね…………。

……見ていたかったな……
きっとあんたは、まだまだ成長するんだろう。
強くて大きくて眩しい大人になるだろう。

ずっとずっと、出来ることなら……ずっと…………見ていたい……

手塚の温もりが手から伝わる。
感覚がない筈なのに、手塚の温もりがわかる。

…………あたたかい…………

目を閉じて闇に包まれた筈なのに、優しい光が差し込む気がした。
その陽だまりの温かさに、すう――――…っと意識が遠のいた。

     *

柴崎の身体から力が抜けた――――慌てて足を止め、柴崎を胸に抱く。

…………まだ、息はある…………

確かめて安堵の息を吐いた。
思ったよりも穏やかな表情を浮かべていることにもホッとする。
眠っているような雰囲気――――でもこうして、体勢を変えて小さく名前を呼んでも応えがない……意識が戻らない。

――――急がないと…………

急く気持ちに顔を上げると道は二つ――――…。
……どっちへ……
迷った気持ちに答えるように「近道はそちらですよ」と声が掛かって驚く。
慌てて振り向けば、小柄な老人が立っていた。
気配もなく存在していることに慄くと、老人はほわりと柔らかく笑んだ。
「はじめまして。稲嶺と申します。
――――麻子は……命が尽きましたか」
静かに問われ、思わずカッとなる。
「~~麻子は生きてる…ッ!! 死なせないッ!!」
「…ほう……それは良かった」
そう言って微笑んだ顔に嘘はなさそうだった。だけど近づいてきた老人に警戒し、麻子をグッと抱き締める。
「……そんなに警戒しなくてもただの老いぼれです。それに私は麻子の命を救った者――――救ったという表現は烏滸がましいですけれどね……【混沌】の闇をその身に受けた瀕死の麻子を延命させながら、ずっと見てきた者ですよ。世を捨てた私でしたが、麻子との出会いによって再び私をこの国の未来に関心を持つようになりました。神がこの子に与えた試練の行く末を見守りたいと思うようになったのです。…………まだ生きているのなら、麻子を見せてくれませんか。光を……命のエネルギーを、与えられるなら与えてやりたいですから……」
そう言いながら老人の周囲がぼおっと少し明るく感じた。
いろんな生命の光の力が集まってくる――――それはとてもたくさんの光の結集なのに、その光は酷く穏やかで柔らかいものだった。
少しだけ迷ったが、稲嶺から発する光の力が本物だと感じ――――麻子を胸に抱いたままではあったがそっと下ろして稲嶺に見せる。…………もし光の力を与えられるなら――――と藁にもすがる想いもあった。
「……おや……こんなにも穏やかな麻子の表情は初めて見ましたね。…………もう……ほとんどこの身体に光は感じられないというのに…………麻子?」
言いながら稲嶺の皺がれた掌が、柴崎の額に置かれた。
ふむ、と頷くと、今度はその手を胸元の方へと移動する――――慌てて手塚が拒否しようとしたが、それより先にもう、柴崎の胸元の晒がふわりと勝手に浮かび上がり解けていく。それと同時にくっきりと深く刻まれた呪詛の黒い痣の上に柔らかい光が降り積もってゆく。積もっても積もっても雪が解けるように闇の魔法陣が浮かび上がって来るのだが――――稲嶺の周囲に集まっていた光がすべて柴崎の胸元に吸い込まれるように降った後には、刻み込まれた傷跡が少し薄くなった気がした。
――――ゆっくり……柴崎の長い睫毛が揺れて、薄く目が開いた。
「~~~~麻子…っ」
「…………ひ…か…る……」
微かな声だが、確かに呼んでくれた名前。――――もうそれだけで泣きそうだ。
「麻子。……よくここまで持ち堪えましたね。…………後少し……もう少しです。――――私が光殿下を慧殿下の元へお連れしましょう……だから、後少し――――最後まで、光殿下のお傍で見守って差し上げなさい。
麻子が、光殿下の励みになっているようですから…………麻子も、その為に、これだけの苦しみに耐え忍んで生きてきたんでしょう。……よく……よく頑張りましたね」
「……い…なみね…………た…い……ろ……」
「……もう少し眠りなさい――――最上階まで上らねばならないですから、もう少しかかる……少しでも、身体を休めなさい。――――もう敵は出ないでしょう、慧殿下は最上階で光殿下の到着を待っていらっしゃる……」
深く慈しむような眼差しで柴崎を見ていた稲嶺の手が上がる。柴崎の額の上を通ると、稲嶺の手に倣うように柴崎の目が静かに閉じた。
すう…っ、と柴崎の寝息のような吐息を感じる。
「――――急ぎましょうか。…………麻子が持ち堪えている間に――――私だけでなくこの世の生きとし生けるもの達のエネルギーですら、もう麻子に、麻子の中に存在する闇の力をほんの少し抑えてやることしか出来ませんでした。…………麻子にはもう、他人からの光を受け取る為に必要な光の力すら残っていない…………よく、よくぞ今、まだ生きていると褒めてやりたいほどです…………もう……もう、本当に、時間がない……」
言いながら、稲嶺が歩き出した。
まるで、宙に浮かんでいるかのように静かに――――。
柴崎を抱き抱えると、後を追った。
駆け足で追い駆けるのに、稲嶺の姿にはなぜか追い付かず、稲嶺の背中を追い駆ける。
やがて、行き止まりが見えた。
その少し手前の壁を稲嶺が叩くと、ふいに天が割れ――――信じられない程の光に向かって、身体が急浮上した。



……To be continued.



********************



次回、遂に慧との対面!

ようやく、新年度が始まり本日より小学校も給食が始まりました。
少しはまとまって書く時間が取れる……かな?(大汗)







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05:10  |  *『図書館戦争』二次小説  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

★ホントだ!

ママ様

ですよね、昔はホント、給食までもっとかかっていましたよねぇ。。。
最近はいろいろと早くしてくれるのでありがたいです!
とはいえ、今日は午後から中学の修学旅行と進路の説明会があり、まだまだ書ける時間は取れませんでしたが……

> 手塚という光(ひかり)の側に居たから身に巣くう呪詛に乗っ取られずに済んでたのでしょう。
それは私も思いました!
多分、手塚も麻子の光(ひかり)に癒しとか安心とか思慕とか……何かを感じ続けてきたんだとは思うのですが、それは麻子も一緒だと思います。麻子は麻子で、手塚の中の光(ひかり)に救われていたところは絶対あったかなって思うんですよね。
記憶がない間も、ずっと、互いに互いを支えて励ましていたんだと思います(意識はなかったですけどね(苦笑))

> 麻子を離さない手塚に稲嶺老はおやおやって思ってたかな。
爆笑!!
言われて気付きましたが、ホント、手塚は麻子をまったく離していませんよね!!!(笑)
どれだけ麻子を離さないんだろう手塚は(笑)
もうこのまま麻子を離さないまま話は終わるんじゃね? なんて思わずツッコミを入れたくらい、手塚が麻子を離さないことに笑っちゃいました~~~~気付かせてくれてありがとうございます、ママ様!!(笑)

> 郁ゃんの爆弾発言に堂上さん、遣られちまったな(笑)
私、郁ちゃんのこの台詞、本当に好きです。
どんな惨状でも、好きな人の傍でなら見れると思える郁ちゃんが凄いと、本当に感心するばかりの言葉です。
このお話でも思わず出たこの台詞……郁ちゃん、ホント男前…!!!
そりゃもう、堂上さんが惚れるのも仕方ないって!!(笑)
これまではやっぱり身分が……ってのが全面に出ていた堂上さんですが、ちょっとは自分の気持ちをしっかりと自覚してくれたかな?
堂郁も、最後は堂郁で!!がモットーなので、堂上さんにも頑張って貰わないと、ここもハッピーエンドになりえないので、堂上さんには自分の気持ちにちゃんと向き合って貰いたい…!!!
ホント、朴念仁1号と2号には手を焼きます(苦笑)

いよいよ、次回は慧登場…!!!
ようやく大詰めに…………物語も後半です。


ツンデレラ |  2018年04月13日(金) 23:11 | URL 【コメント編集】

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 |  2018年04月13日(金) 12:30 |  【コメント編集】

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