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2018.03.16 (Fri)

≪背中の靴跡シリーズ≫ 『1つだけの願い』~vol.22~

≪ 1つだけの願い~vol.22~ ≫背中の靴跡シリーズ

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筒井づつの手柴の回想、第4弾。





【More・・・】

≪ 1つだけの願い~vol.22~ ≫背中の靴跡シリーズ


「嫌だ、会いに来る」
低い声は――――だけど凛として譲らない強い声音だった。
「……何がいけなかった? 俺の何が気に入らなかった? 最近、俺のこと避けてただろう! けどお前が避けたって隠れたって、俺は絶対お前を見つける! そう言っただろ? ……なぁ言えよ、俺の何がいけなかったんだ? 直すように気を付ける――――だから遠慮せず言ってくれ」
続けて畳掛けるように言葉を重ねてきた。
思わず光の言葉に泣きそうになって、慌てて首を振って誤魔化した。
そんなあたしの行動に、今度は縋り付くように抱き締められる――――絞り出すような悲痛な声と共に。
「~~~~なんだよ…ッ!! 言えよッ!!! 俺のこと、嫌いになったのか?! 顔も見たくないくらい、大っ嫌いになったのか?! そんなに俺が嫌いかよッ?!」
言われて、遂に涙腺が決壊した。ボロリ、と零れた涙の後から次々と大粒の涙が溢れる。
堪えようと思うのに、しゃっくりが上がってきた途端、赤ん坊のような大きな泣き声が溢れ出た。
「うわああああああ……っ!」
慌てて思わず光の服に口を押し当てた。凄い泣き声が少しだけくぐもる――――だけど必死に声を殺そうとしても、堰を切ったようにあたしの身の内から次々と何かが込み上げて止められない。
涙で光の服はびしょ濡れになった。それでも構わずに光はずっとあたしを抱き締め続けて――――ずうっと優しく背中を宥めるように撫でてくれていた。
随分と泣いて泣いて…………ようやく少し落ち着いてきた頃にはしゃっくりが止まらなくなってて――――顔なんか絶対に見せたくないのに、光は少し抱き締める手の力を緩めた。
互いにしがみつくようだった距離感に、ほんの少しだけゆとりの空間が出来た。
あたしは恥ずかしくて顔をますます俯ける。
「…………落ち着いたな…………良かった、麻子が俺を嫌いになったんじゃなくて。――――けど、なんで俺を避けてたのかは教えて貰うからな! 俺がどれだけ悩んだと――――流鏑馬なんか見せたから嫌われたのかとか、あの日はなんでお前の体調の悪さに気付かなかったのかとか、どれだけあの日のことを後悔したか――――、もうあんな掴みどころのない闇の中を探すような想いは二度と御免だ」
「…………なんで、流鏑馬見て、嫌いになるのよ?」
恥ずかしさもあって、俯いたまま唇を尖らせて聞いた。
「~~~~いや、俺もわかんないけど…………けどほら、女の子の感覚ってよくわかんないし…………あんなのは野蛮だ! って思わないとも限らないしさ」
シドロモドロに、だけどいろいろと本当に考えたんだろうなって思うような答えを貰って――――あたしの口元が少し綻んだ。
「……バカね、そんなわけ、ないじゃない……」
「ん! そうみたいだな! 良かった…。お前に見守られた流鏑馬はホントに調子良くて――――お前が見てるんだっていう緊張感が良かったのかな、すっごい的に集中してて最後の最後まで本当に全矢百発百中だったんだよ。――――ううん、流鏑馬だけじゃなくって、お前――――お前は俺の幸運の女神みたいだ。……お前来てから、俺、自分でもすっごく急成長した気がするんだ――――勉強も武術も凄く良くなったって皆、すっごく褒めてくれるし――――昔はどんなに頑張っても全然兄上のように出来なくて、『慧殿下は慧殿下。光殿下は光殿下ですから』って皆に言われるのが、俺は兄上の足元にも全然及んでない、全然駄目だって言われてるみたいで凄くしんどかったけど――――今は違う。今は、俺は俺なりに頑張って成長して、いろんなことを身に付けて――――いつか兄上を支えていけるように……右腕となってお役に立つようになりたいって思えるようになったんだ。
……お前のお蔭なんだよ。お前がいろんなことが出来るのを見て、一緒にやってみて、お前はお前の、俺は俺の得意なもの、不得意なものがあって――――でも自分のベストを尽くせば、自分の持てる力や才能を最大限に伸ばして未来を掴むことが出来るんだって――――お前が巫女になった時に、お前が身を持って俺に教えてくれたんだ」

だから――――俺にとってお前は、願いを叶える神様みたいな存在なのかも――――……

なんて、はにかむような光の声に包まれる。
「…………違う…………」
手塚の明るい言葉に対して、反対の声があたしの心の中に上がる。

…………違う…………あたしは、神様なんかじゃない――――
もしも神様だとしたら――――それは最悪の神様、死神だ。

俯いたまま、少し光の胸を押した。
光の傍に居てはいけない、とやはり思う。
「…………違うわ、あたしは…………あたしの傍に居ると、不幸になる…………」
「そんなことない」
「…………そんなことあるの! …………あのね、光……お願いだから、もうあたしのところに来ないで」
「嫌だ! 絶対嫌だ、嫌だって言ってるだろ! それは聞けない――――お願いでもなんでも聞かない!」
「…………あたしの傍に居たら、死ぬことになっても?」
「――――もちろ…ん…………え?」
光の言葉が止まった。
…………ズキリと胸が痛んだけれど、光には伝えなくちゃ…………
「…………あたしの…おばあちゃんね……あたしの身代わりみたいに死んだの――――国中で罹ると致死率のすっごく高かった死の病にあたしが侵された時――――あたしは生き延びて、おばあちゃんが死んだの…………おばあちゃんは病気じゃなかったのに、あたしの身代わりみたいに…………。
それだけじゃなくてね、あたしのお母さん――――殺されてるの。あたしが王宮に来て間もなく――――お母さんのお葬式で死に顔見てわかったの、お母さんは自然死でも病死でもなくて、殺されたって…………。お母さんを見た瞬間に何かが伝わって来て――――だからわかったの。
それにね、それだけじゃないの――――お母さんだけじゃなくて、その後あまり経たずで店の人全員皆殺しになったって…………襲撃されたんだって…………あたしを育ててくれた人達、皆――――……」
思い出す面影に涙が込み上げそうになって必死に堪える。
あたしのたくさんの育て親の皆の顔――――……。
「……戦闘でもないのに襲撃にあったんだって。働いていた全員が殺されたんだって。…………有り得ないわよね、有り得ない――――あの店を襲って、誰になんの得あるの? あの店が潰れたところで誰も得をする者なんか居ない…………居ないのに、どうして皆が殺されなきゃいけないの…っ!」
溢れそうになる涙を零さないように堪える。
考えれば考える程、あたしに関わったせいとしか思えない。
あたしに関わると死を招く――――もし、そんなことが真実なら。

アタシニカカワル者ハ、死ヌ。

「麻子のせいじゃない」

静かだけど凛とした声が、あたしの思考を遮った。
我に返って、思わず顔を上げた。
「~~~~なに言って…っ! あれはあたしのっ……」
「麻子のせいじゃない」
「~~~~あたしのせいなのよ…ッ!!」
「違う、麻子のせいじゃない。それだけはわかる」
「~~~~あんたに何がわかるって――――あんたにはわかんないわよ…ッ!」
「……わかるよ。お前はそんなこと望んでない。皆に生きていて欲しかった――――そう誰よりも願ってるのはお前だろ」
「願ったって――――願ってたって、皆は…っ!!」
「お前が殺したんじゃない。そうだろ? お前はこれっぽっちもそんなこと望んでない。お前のせいじゃない」
「~~~~ちが…っ、だって、あたしが…ッ…」
「絶対にお前のせいじゃない。その証拠にお前のせいだっていう証拠はない」
「~~~~そ…っ、それは……っ! ~~けど、それじゃあ、あたしのせいじゃないっていう証拠だってないじゃない…ッ!!」
「あるよ、証拠――――」
「…………え……」
「泣いてただろ、お前。――――今も、泣いてる……」
言われて慌てて顔を俯ける。
今は涙を零してるわけじゃないけど、さっき大泣きした顔はきっとすっごく不細工になっているに違いない。
「お母さんの為に、お母さんの魂を慰めるために、自分が倒れる程鎮魂の舞を踊ってただろ。天国に居るお前の母さんは絶対見てたと思うぞ。――――そんなお前のせいだなんて、天国に居るお母さんもお祖母さんもその他の人達だって誰も思っちゃいない! お前が勝手に自分のせいにして苦しんでるだけだ――――そんなこと、死んだ人達は誰1人望んじゃいない」
「~~~~ででも…だって、」
「今のお前見たら、むしろ悲しむんじゃないか? ……きっと、そういう人達だったんだろ?」
問われて、皆の顔が走馬灯のように次々と浮かんできて――――ふいに感情がまた湧き上がって止まらない。

「~~~~じゃあ、どうして……死ななきゃいけなかったの?」

溢れる想いが渦巻いて、声が震える。
「あたしが――――王宮に来たせいじゃないの? あたしがあのまま遊郭に居れば誰も死ぬことはなかったんじゃないの? ねぇ――――あたしだけぬくぬくと生きてるの。巫女にすらなって――――。
…………あたしなんか、本当の巫女じゃない…………。
むしろ、【死神】みたい――――そう思わない?
あたしが離れた途端、優しく育ててくれた人達は死ぬの。
…………王宮になんか、来なければ良かった…………あたしだって好きでこんな――――」
言いながら、また涙が盛り上がりそうになって、必死に堪える。

…………好きでこんなところに、来たわけじゃない…………

続ける言葉にしゃくりあげそうになって、消えるような声で呟いた。
――――と、力強くまた引き寄せられた。
ギュウッと抱き締められた腕は痛いくらいの力だった。
「~~~~そんなこと、言うな…ッ!!!」
悲痛な叫びのように、大きくはない光の声があたしの中に響いた。
「~~そんなこと……そんなこと、言わないで。麻子が来てくれて良かった――――俺、麻子に会えて良かった。麻子が頑張ってるの見て、麻子がいろんなことをしてるのを見て、俺は自分がいかにぬくぬくと育てられ、甘やかされてるのかを知ったんだ。教えて貰う勉学や武術を頑張ってるだけで褒められ、それなりに出来れば皆認めてくれる。――――それだけがすべてで、自分のことしか見てなかった。
麻子が来なかったら、それもわからなかった。
麻子は、巫女だよ。麻子が居たから、俺は今の俺になれた。
言っただろ――――麻子は俺の、幸運の女神なんだ。ここ(王宮)に来てくれて――――麻子が居てくれて、俺、本当に良かった。そんな言葉で言い表せないくらい、本当に良かったんだ!
お願いだから…………そんなこと、言わないで。
傍に居て。俺の傍に居て。…………ずっとずっと、俺の傍に居て。
…………俺……麻子に、傍に居て欲しいんだ。
巫女だからとか、そんなの関係なくて――――麻子がいいんだ」
あたしの心の中に、光の言葉が溢れて――――あまりに温かくて眩しくて、思考が奪われる。
あたしとしたことが答える言葉を持ってなくて――――ただ光の言葉だけが頭を〆る。顔も身体も突然火照り出して、急に心臓がドキドキとして口から飛び出そうなくらいだ。
どうしたらいいのかわからない――――でも、さっきまでとは違う涙が溢れそうだった。
ギュウッとあたしも光にしがみ付く。
…………ただ、しがみ付くしか出来なかった。

随分と長い時間、そうしてあたし達はしがみ付いていて――――日が傾き出して教会に黄金色の光が差し込む頃になって、ようやく光が身じろいだ。
「……――――麻子?」
少しあたしと距離を取るように身体を離して、あたしを窺うような気配に、あたしは顔も合わせられなくて俯いた。
泣いてすっごい不細工な顔で――――しかも今はとてつもなく顔が熱い。自分がどんな顔になってるのか想像も出来なかったから見られたくなかった。
それなのに、光ったら顔を覗き込もうとするから、必死に俯いて見られないように逃げた。
「――――麻子? 麻子、あの…………顔見せて?」
そんなこと言われたって、顔なんか上げられない。俯いたままブンブンと頭を横に振る。
「……お願いだから…………その、……出来れば、顔見て言いたい…こと、が……」
「~~~~ゃ…やっ…! ……な、涙、で、…っ……ぐちゃ、ぐちゃ……っ……から……っ…」
それだけを言うだけで、またしゃくりあげてしまう――――感情が上手くまとまらなかった。
ずっと頭を振り続けていたら――――光が今度は優しくあたしの頭を胸に引き寄せて止めた。
顔を見られなくて済むから――――あたしは大人しく頭を包まれたままにした。少し光の心臓の音を感じるような気がした。

「……お前はお前だ。麻子が巫女だろうと死神だろうと……麻子は麻子だ。俺にとってたった1人の――――麻子なんだよ。……あの…………本当に俺は、…………俺は、お前がお前で良かったと思う……」

あの、な。

光がとってもたどたどしく…………でも、あたしの身体の中に、光の言葉が響いた。

今のままのお前でいい――――ううん、今のままのお前がいい。
俺、お前が――――麻子が、好きだ。

その言葉に、またわけもなく感情が溢れて――――またボロボロと泣いてしまった。
泣いて泣いて泣いて……あたしはそのまま光に抱き締められたまま眠ってしまって、光があたしを負ぶって巫女達に知らせてくれたそうだ。――――いつの間にか、光の方がずっと大きくなって力も強くなっていた。
数日体調を崩したけれど――――涙があたしの中にあったわだかまりを流してくれたようで、あたしは今のあたしを許してあげてもいいのかなって思えるようになった。
死んでしまった大事な人達に祈りを捧げながら、その命の重みを背負いながら、あたしは生きていきたいと思えるようになった。
…………出来ることなら、光の傍で。
光は相変わらず顔を出しにきて――――これまでと変わらずにあたしが振る舞えば、光もこれまでと変わらないように振る舞った。あたし達の関係はこれまでと何も変わらなかった。あれ以来、お互いの想いを口に出すこともなく――――だけど、あたし達はこれまでよりも誰よりも傍に居るお互いをずっと感じてた。
喧嘩しながら、意地を張りながら、切磋琢磨しながら、……笑ったり怒ったり、誰よりも傍に互いが居た。

呪詛を体に刻まれるあの時まで――――あたしは、烏滸がましいとは思いながらも、光と共に歩いていけるような未来すら――――心に秘めながらも願い続けていたのだった。



……To be continued.






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05:10  |  *『図書館戦争』二次小説  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

★そうですねぇ……(考)

ママ様

おったまげー!の3月半ばですよ★
先日、上の子の卒業式が終わり、来週は3番目の卒業式です。
3月はいつの間に通り抜けてるんでしょうか……怖い★

そうですね、ママ様のコメント読んでて、ふと
忘却は罪
って言葉があったっけ、なかったっけ、って思いました(苦笑)
光くんの真っ直ぐな想いを、手塚は思い出ごと忘れちゃったのかなァ……。
そこらへんはよくわかりません(←ヲイ)
まぁでも、次回が過去編のクライマックス……ようやく現代(?)に帰って来れる?!
きっと皆様、現代はどこまで進んでいたのかスッカリ忘れられている気がしてきました……。
ええ、もちろん私も読み直します(ヲイ★苦笑)
あっちこっち時間トリップしていたのが悪いんですけど、現代もようやく妖魔3匹目を倒したところだったのですが、、、皆様覚えてらっしゃるかなァ。
まぁまだ次回は過去編だから、まだ現代に戻れないんですけどね(苦笑)

麻子の頭にインプットされている【自分は賎しい人間】思考は結構頑固です。
実は、手塚はこの麻子自身の考えを撃破しないと、一緒に居られないのでは……と私も密かに(?)思って危惧しています。
それはきっと堂上さんも同様で…………堂上さんの方は郁ちゃんが恐らく撃破してくれるとは思うのですが(しかも本人無自覚で(笑))、手塚は肝心なトコロの押しが弱いからなァ……。
柴崎の意見を尊重していると、このお話の手柴の場合は、絶対に添い遂げられない2人ですよね~~~~困った困った。
と、今から困っていても仕方がないので、とりあえず続きを。
とりあえず、先へ。

麻子にとっては、光はその名の通り【生きる光(ひかり)】だった、というママ様の名言、恐れ入ります。
そうですね、だから、麻子は結局は離れられなかったのかな、と思います。
表に出なくなって、でも影からずっと光の傍に居たのは、無意識に光の傍から離れられなかった自分が居るのかも……。
そういう自分の気持ちに、ちゃんと気付いて欲しいと思うのですが、さて、どうなるんでしょうね(泣)
って自分で書かなくちゃいけないんですよねぇ。。。。。(楽しいけど、難しい……苦笑)


ツンデレラ |  2018年03月17日(土) 07:24 | URL 【コメント編集】

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 |  2018年03月16日(金) 09:54 |  【コメント編集】

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