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2018.02.16 (Fri)

≪背中の靴跡シリーズ≫ 『1つだけの願い』~vol.18~

≪ 1つだけの願い~vol.18~ ≫背中の靴跡シリーズ

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忘れていた記憶が、手塚の元に……。





【More・・・】

≪ 1つだけの願い~vol.18~ ≫背中の靴跡シリーズ


優秀で綺麗な麻子。非の打ちどころのない神の化身のような少女。
そう聞いていたのに、少女は泣いていた――――。
――――それがどうにも気になって、翌日もまた会いに行ったけれど空振り。
なかなか会えない。
だけどあの泣き顔が気になって、周囲の者達に麻子のことを尋ねるようになった。
「……麻子って泣き虫なの?」とか「麻子ってよく怒られてるの?」とか……俺もガキだったからそんな内容。
でもあんまり俺が聞くもんだから、仲働きや世話人達は笑いながら麻子のことを教えてくれた。
「いえいえ、泣いたことなんかありませんよ。辛い修行でも泣き言一つ言わないと司祭様が言っておられましたよ」とか「麻子を怒ることなんかほとんどありませんよ。なんでもよく出来て、褒めることばかりだと聞いてますよ」とかそんな答えばかり。挙句に「光殿下はすっかり麻子が気に入ったんですねぇ。同じ年の子供はこの王宮には居ませんものねぇ」と皆が笑う。
そのうち、麻子と会えるようにしてあげましょう、と言ってくれる者も出てきて、アッサリと麻子に会う機会を作ってくれた。
会ってみると、麻子という少女は確かに泣き顔なんて想像出来ないような少女だった。
麻子が居るからと世話係に連れられて王宮の教会に行くと、司祭はお辞儀をして俺を迎え入れ、麻子に至っては床に平伏して頭を下げた。
「浄化の力を使えるようになりたいから、麻子の話が聞きたい」と言えば、麻子はようやく顔を上げた。ジッと俺を見て、それから「……一度、やって見せて貰えますか」と言った。
この前と別人のような落ち着き。
大人びた表情。
――――この前泣いていた少女とは雰囲気そのものが全然違っていた。まるで別人のようだ…………いや、同じ少女なんだけど。
言われるままに、なんとか身体に宿る光の力を掌に集めようとした――――光よ集まれ、と教えられたように念じるのだけれど、でも結局何をどうすればいいのかわからないから、何も起きない。
出来ない自分――――そんな姿を俺の付き人や司祭にも見られていると思うと余計に恥ずかしさや焦りが生まれる。
麻子が司祭に囁くと、司祭が付き人を連れて退出してくれた。
「もう1回やってみて貰えますか」
麻子にそう言われて繰り返すけど、小さな光すら集まらない。恥ずかしさと悔しさで苛立ちが湧く。
静かに麻子が尋ねてきた。
「身の内の光を感じますか」と。
何度も似たような言葉を聞いてきた。『内なる光を感じなさい』と…………そんなものがわかるならとっくにやってる。子供同士になったこともあって、少し苛立つ気持ちを思わず言葉にしてしまった。
「…………感じない。俺には光の力がないのか?」
「ありますよ。流石は王子――――先程ここに居た上位司祭級の光の力を身に宿しておられます」
「~~~~っ、ならなんで感じないんだ?!」
「光殿下は、どうして浄化の力を使いたいんですか?」
「~~~~どうしてって……使える方がいいだろ?!」
麻子の質問の意図がわからず、更に苛立つ。
「光殿下は、将来、司祭のような職に就きたいとお考えですか」
「~~~~そんなことは思ってないけどっ!」
「なら、使えなくていいんじゃないですか」
バッサリと切られて、一瞬言葉を失くした。なんだこいつ――――麻子と話していると苛立ちが増す。
「使えないより使える方がいいから、教えて貰ってるんだろ?! 教えて貰っても出来ないから、司祭が同い年のお前に教えて貰う方が感覚が似てて出来るようになるかもって言って…………出来るようになった方がいいってことだろ?!」
「出来るようになった方がいい、出来るようになるべきだ、と司祭様が仰ったのですか?」
「~~~~っ、そこまでは言ってないけど言わなかっただけで!」
「光殿下自身が、出来ないことに酷く拘っておられるから、司祭様はアドバイスしただけではないでしょうか」
~~~~っ!!!
なんだ、こいつ――――っ!!!
一々、苛々する。
思わずそれ以上言えなくなった俺を、静かにジッと見つめた。
しばらく見つめ合って――――麻子が小さな溜息を吐いた。
そして口を開くと、今度は遠慮ない言葉でピシャリと言い募る。
「……人には向き不向きがあります。光殿下は光の力をたくさん持っていますが、その力を神に捧げるつもりはないでしょう。正直、神に頼る前に自分の力でなんとか出来ると思ってる。――――そういう人は、光の力が全身に散らばるんです。自らの身体を使って何かを守ろうとする人は、身体全体に光の力が宿るんです。……全身に分散した光の力を感じるのは難しい……光の力を感じないのはそのせいですね。
あたし達は、この身を神に捧げます。身体は神様のもので、だから自分の命の部分を光の力として感じます。その力を使うことが出来ます。――――光殿下は神にその身を捧げることが出来ますか」
「~~~~っ、俺だって神様を信じてる!」
「信じているかどうかではなく、その身を神様に捧げられるかと聞いてるんです」
「~~~~っ……」
「苦しい時に神様に縋りますか? 光殿下は縋らないでしょう。自分の力でなんとかしたいと思ってる。自分ならなんとか出来ると思ってる。自分を信じてるんです。
――――ああ、こう言うとまるでそれが悪いことみたいに聞こえるかもしれませんが、それは決して悪いことじゃない。自分を信じることは素晴らしいし、それも勇気なんです。
光殿下は、神に身を捧げるよりも自分の力を信じてる。それはとてもいいことで――――光殿下にとってはその力を伸ばす方がいいとあたしは思います。
……きっと司祭様もそう思ってらっしゃる筈です。――――司祭様が浄化の力を使えるようにならないとダメだなんて、仰ったことはないでしょう?」
~~~~ッ…!!!
一々ムカつくけれど、麻子の言うように、司祭は浄化の訓練からはアッサリと手を引いた。その司祭の態度に更に俺が出来ないからだとの意識が湧いて、ますます意固地にその力を欲したようなところはあった。神教など一通りのことを教えてくれた司祭は、でも、光の力をコントロール出来ずに浄化の力を使えない俺に何度か助言をしてくれはしたが、使えなくてもそれ以上は言わなくなった。
悔しい……。
出来ない自分が。
出来ない自分を許してくれる司祭の態度が。
麻子の言うことは正しいとわかっているけど、どうにも悔しかった。
「…………お前は…………そこまで言うお前はどうなんだよ?! 神にその身を捧げてんのかよ?!」
思わず噛み付いた俺に麻子は、ふ、と笑って「ガキねぇ…」と呟いた。
その態度に更にムカつく。
同い年とは思えない不遜な態度――――俺にそんな態度を取るヤツなんか、これまで誰も居なかった。
睨みつける俺に「わかりました」と言うと、何がわかったというのか、神の前に額ずいた。
急な麻子の態度の変化と――――その雰囲気の変化に、一瞬気圧される。
…………と、ゆっくりと麻子が舞い出した。
息を呑む。
麻子の身体の周囲に光の粒が舞う。
麻子の身体からは白く眩い光のようなものが発せられ、麻子の周囲を覆う。

――――神の…………化身。

仲働きがそんなことを言っていた。
今、目の前にまさしく女神が舞っている。
光の粒が麻子に集まってくる。
ほんの数秒で、その場がこんなに眩くなる程の――――……

と、その光の粒が、麻子の掌に操られるように俺の身体を覆った。
温かく、優しい力。
全身に力が注がれる。
みなぎる。

――――と、麻子がまた神に額ずいた。
光が静まる。
光の粒は世界に還り――――麻子が発していた光も身の内へと戻ってゆく。

茫然と立ち尽くした。
ただ、体中に溢れる力だけが、さっきのことは夢じゃないと物語っている。

静かに起ち上がった麻子は「…………これで口先だけじゃないって信じて貰えました? あたしから光殿下に教えることはなにもありません。光殿下は光殿下の信じるものがある。ご自分を鍛錬なさった方がいいとあたしは思います」と言うと、スタスタと扉を開けた。
扉の外には司祭や付き人が居て、彼らに何か話すとそのまま司祭と共に行ってしまう。
茫然としたまま、それを見送ることしか出来なかった。

完敗。

そんな言葉が頭に浮かんだ。
生まれて初めての『負け』意識。
…………悔しい。
生まれた時から憧れで尊敬している兄に対しては生まれなかった感情(兄には勝てなくても当然と思っていたから――――他は、当時同世代の子供が王宮に居なかったので比べられることもなかった)で、自分と同年齢の小さな少女だったから余計に芽生えたのかもしれない。
それからは麻子の存在が気になって仕方がないのに、相変わらず麻子とは会えなかった。
悔しいけれど折れる気持ちで司祭に問えば、司祭は笑って教えてくれた。
1日の勤めが終わる夕方頃に旧教会に居ることが多い、と。…………司祭が口添えする時以外は、麻子は王宮の教会には来たがらないのだそうだ。
「王宮の雰囲気に慣れないのだと言っておりました。……ここに来るまで麻子は平民界の中でも貧民窟に居たようですから、光の集まるこの場所は眩し過ぎるのだとも言っていましたな」
「…………貧民…窟……」
「生まれてすぐは祖母に育てられたようですが、その祖母が亡くなられて――――母と2人の生活だったようです。母親の稼ぎだけでは食べるものもままならなかったようで、麻子が占いで家計を支えていたようですな。その占いが良く当たると評判になったせいで江東伯爵の目に留まったようです」
「…………麻子は江東家の者ではないのか?」
「いえ、江東家の血筋だと江東伯爵は申しております。麻子の祖母が前江東伯爵の第三夫人だったとか――――そう言われれば昔、緑なす黒髪の巫女が居たという話を聞いたことがあるような…………その、私の記憶も曖昧なので申し訳ないのですが…………」と司祭にしては妙に歯切れの悪い話だった。
「ふうん。…………江東家の血筋ではあるけど、なぜか貧民窟で育ったってことか。――――道理で麻子の物言いに遠慮がないわけだ」
「これは失礼を致しました。……麻子は光殿下に失礼をしたのでしょうか? 後で叱っておきます」
「~~~~あ、いや、失礼ってことはないけど! ~~一応その……口調は丁寧なんだけど、けど内容は結構ズケズケしてるって言うか…………」
「麻子が、ですか? それは本当に失礼しました。…………普段は必要なこと以外はあまり話したがらない子なんですが…………よりによって光殿下には不遜な言葉を?」
「~~え、いや不遜っていうか…………いや、こっちもちょっと腹を立てたから――――その、今のはナシ!! よく考えたらお互い様なトコロもあるし!」
「光殿下に対して『お互い様』な言いようはいけません。麻子には話をします」
「~~ち、ちがう! ホント、いいから! 麻子は悪くないし――――教えてって言ったのは俺の方で、麻子は教えてくれようとしただけで、だから…っ!!」
……居心地が悪かった。苛々したのは俺で、考えてみれば麻子の態度にまったく落ち度はなかった。――――唯一あったとすれば溜息と共に零れた独り言(ガキねぇ…)くらいのものだが、思わず零れた1言のせいで司祭に説教されることではないだろう。
焦って、なんとか司祭が麻子に話をしないようにと言葉を紡いでいると、司祭が微笑んだ。
「…………光殿下はお優しくていらっしゃいますな。光殿下だからこそ、麻子も普通に話が出来たのかもしれませんね。…………本当に麻子は話したがらない子ですから…………」
そう言って、麻子に会えるように祈っておりますよ、と言ってくれた。
司祭が祈ってくれたからだろうか、その日の夕方、旧教会で麻子に会えた。
1人、神の前で鎮魂の舞を踊っていた。
足を踏み入れた俺はあまりの美しさにそれ以上足を進めることが出来なかった。
やっぱり麻子の周りには白く光るオーラのようなものがある。それだけじゃなく、光の粒が麻子に寄ってゆき纏わり付く。
綺麗――――あまりに美しくて荘厳な雰囲気。
見惚れて――――見惚れていたのでどれ程の長時間麻子が踊っていたか気付かなかった。
気付けば辺りは薄暗くなっていて――――最後に神に跪いた麻子はいつまで待っても起き上がらない。
暗くなった教会に少し怖くなって、慌てて麻子に駆け寄って抱き起こした。
同い年なのに、手塚でも簡単に上体を抱え上げられるくらい麻子は小さくて軽い。
はぁはぁと肩で息をする麻子は、額に汗を滲ませながら(鍛錬と同じくらい『舞』で体力を使ったのだと思う)グッタリと消耗しきったように目を瞑ったまま。
意識もないようで――――そう言えば、浄化とか神の力は体力や生命力を消費するのだと教えて貰ったことを思い出す。
司祭か巫女か、とにかく誰か大人を呼びに行こう、と思った時――――麻子が小さく呟いた。
「…………お…かあ……さん……」
目尻から涙が零れ落ちる。
薄暗くなった教会の中、光の粒のように涙は光って落ちた。次から次に零れる。
ギュッと手を握ってやると、麻子の大きな目が薄らと開いた。
「…………お……か…………ぁさ…………」
涙のせいか、キラキラと光る宝石のような瞳が僅かに見える。
「――――大丈夫。誰か呼んで来るから! ちょっと待ってろ……な?」
開きかけた朦朧とした瞳が、重さに耐えかねたようにまた閉じる――――反動で涙がまたポロリと零れた。そっと麻子を床に寝かせて――――迷って涙だけ拭いて急いで呼びに走った。
司祭や巫女――――とにかくそこらへんに居た大人が駆けつけてくれた。
「まぁまぁ、麻子ったらまたやり過ぎたのね。麻子はもう力のコントロールが出来るんだから、こんなに根を詰めて練習しなくても大丈夫なのに」「まぁでも、奢らずにこうして鍛錬するトコロが麻子の可愛いトコロよね。麻子になら負けても仕方ないかって思えるもの」「そうよねー。素質もあるけどちゃんと訓練もして――――偉いなぁ、見習わないとなぁ、って気持ちになるものね」
そんなことを話しながら巫女頭が慣れた手つきで麻子を抱きあげた。まだ意識のない麻子を部屋へと連れて行く。
心配する俺に、皆がいつものことだから大丈夫、と笑って言う。
…………いつものこと? こんな倒れる程に自らを酷使することが?
心配そうな俺の様子に、「ほら、眠ってるだけですから」と麻子の顔を見せてくれた。
もう涙は零れていなくて、疲れ切った顔で昏々と眠っているだけ……。それでもなんとなく心配で、巫女達の後を付いて歩いていたのに「光殿下は王宮に戻りましょう」と促され、でも、と呟いたけれど「もう夕食の時間ですから」と言われれば従わざるを得ない。
後ろ髪を引かれるように麻子を見る俺に、司祭が微笑んで「大丈夫ですよ」と言ってくれたけれど、どうにも気になって仕方がなかった。そんな俺の心を見抜いてくれたのか、司祭が夜に麻子の様子を伝えに会いに来てくれた。
麻子はあの後少し目を覚まして、また今は眠ってると――――。光のエネルギーを回復するためには休養が一番いいらしい。
安堵と同時に、少し戸惑いながらも麻子について司祭に尋ねた。
特に麻子の母親について。
「お母さん」と呟きながら麻子は泣いていた。そう言えば王宮に来たのは麻子1人。麻子の母はどうしているんだろうとあれから気になって仕方がなかった。
司祭が教えてくれたことには、麻子が王宮に来てしばらくして、麻子の母は死んだのだそうだ。
貧民窟にたった1人残された母の最期は変死だったと言う……。江東が麻子に伝えて、巫女頭と共に葬儀にだけ出席――――母の変わり果てた姿と対面した麻子はショックのあまり失神したらしいが、葬儀の前にはなんとか意識を取り戻し、蒼い顔をしながらも気丈にも静かに葬儀に立ち会い続けたそうだ。
王宮に戻ってもしばらくは心の傷は大きくて――――ほとんど誰とも話もしなければ、食事も摂れない日々が続いたそうだ。
「…………母の死、という事実は幼い麻子には厳しすぎる現実ですから…………。私達は麻子を優しく見守るつもりだったのですが、麻子は静かで――――涙一つ零さずで、逆に私達は麻子の心が壊れてしまったのではないかと心配した程です。3日間喪に服している最中は、麻子は部屋から出てくることもなくて――――私達が入れ替わり立ち代わりで様子を見ていたのですが、麻子は周囲への関心も失ったように茫然とした様子で3日を過ごしました。
喪が明けても巫女頭が麻子を勤めに出すことを躊躇う程だったのですが、麻子から巫女頭の元に出向き、頭を下げたそうです。『喪が明けましたので、お勤めに出させていただきます。本日よりまたよろしくお願い致します』と――――。『無理はしなくていいですよ。体調が優れない時は休み休みでいいのですから』と巫女頭からも声掛けはして下さったのですが、麻子はこれまでと同じようにお勤めを黙々と果たし――――いえ、むしろこれまで以上にお勤めや勉学に励むようになって――――今日のように倒れるまで根を詰め過ぎることもままあるようになったのです。
母を失った寂しさを、神教に集中することで忘れようとしているのかもしれませんね。
麻子がこれまで以上に神と向き合うようになったので、今ではもう、麻子の力の方が巫女頭や私よりも強いかもしれません。母の代わりに神がお傍に居て麻子を守ってくれているのでは、と思いますよ」
「……………………」
…………そうかな?
珍しく司祭の言葉に納得がいかなかった。
神様は傍に居てくれているかもしれないけれど、本当の麻子は悲しみや寂しい気持ちを抱えたままなんじゃないのかな……。
麻子は「お母さん」と呟いて、泣いていた。
初めて会った時も、教会の隅でたった1人で泣いていた麻子。
司祭には(他の大人達にも)見せないようにしているけれど、本当の麻子は母親を求めているのではないのか……。

――――麻子。

ドクン、とその名前に鼓動が跳ねる。

麻子。

隣に座る柴崎は、キュッと小さく自分の膝を抱えたまま。
初めて麻子を見た時と同じ姿勢――――……。

麻子、だ。
柴崎は、麻子だ。

『……こ…こうとう……あさこ、です。……よろしくおねがいします……』

幼かった麻子の声が甦る。
――――柴崎、じゃなかったからわからなかったのか?
なぜ忘れていたんだろう……。
俺はどうして――――……、と考えようとしたら、ズキッ…と頭が痛んだ。

ふいに頭に甦る。
『…………やめて! 止めて、麻子……お願い、麻子、殺さないで…………』
ついさっきの映像。
柴崎の母の姿に化けた窮奇がそう言っていた。
麻子によく似た美しい女性だった。
『……ごめんね、お母さん』
そう呟いて柴崎は躊躇いもなく剣を振り上げた。
『…………ごめんね、あたしがお母さんを殺した――――』

――――違う。

またズキリと頭が痛む。
違うだろ。
幼い麻子に母親を殺せるわけもない。
――――泣いていた。
初めて会った時も、鎮魂の舞を踊った後も、麻子は泣いていた。
母親を慕って求めて、幼い麻子は泣いていた。
あの時――――窮奇に対して冷静な対処と剣を向けながらもまた、手塚には柴崎が泣いてるようにしか見えなかった。
子供のように泣きじゃくる柴崎が重なって見えたんだ。

違う――――。
「…………お前が、お母さんを殺したんじゃない…………」
そう呟いた俺の言葉に、柴崎はますます自分の膝を抱えて小さくなった。
ズキズキと頭が断続的に痛み出す。
「…………お前に母親は殺せない」
そう言う俺の言葉に、麻子の口端が自嘲気味に吊り上がった。
「……あたしが、殺したの。あたしが――――」
「…………違う、幼いお前に母親が殺せるわけがない」
言いながらも、幼い麻子の姿と今の小さくなった柴崎の姿が頭の中でグルグルと入れ替わる。
割れそうに頭が痛む。
記憶が入り乱れてわけがわからなくなってくる。
「…………麻子は…………母親を、求めて…て…………」
麻子との思い出が溢れ出すのに、見えては消える。千路に乱れて纏まらない。
自分の鼓動の音が頭の中で警鐘のように響き、抱えきれない想いに頭が破裂しそうで――――。
記憶の映像が巡り渦巻いて、今の柴崎の姿が掻き消そうされそうな程で…………。

…………お前…………麻子、だろ……?

なぜ、忘れていたんだろう。
あんなに一緒に居たのに――――。

「~~ッ?! て…手塚っ?! 手塚ッ!!!」

急に視界が霞んだ。
世界がグラリと横に傾いて――――ただ、麻子と柴崎の映像だけが頭の中で目まぐるしく入れ替わり続けていた。



……To be continued.







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05:10  |  *『図書館戦争』二次小説  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

★身分の縛りは続くよ続く★

ママ様

本当に早いもので、バレンタインも過ぎちゃいましたね~~~~
まぁ、pixivで過去のバレンタインはやったから、許して貰いましょう……(苦笑)
リアルでは娘も居る(2人)から、友チョコ、友チョコ、と大変でした。
職場でも言っていたんですが、バレンタインはすっかり【女子がチョコ(お菓子)を楽しむ日】になったねって(笑)。
【女子から告白する日】ってのがメインだった筈なのに?(笑)

そうですね、原作では手塚の【なんでも一番】を潰したのは郁ちゃんで、このお話では柴崎ですね。
もちろん、郁ちゃんとも幼馴染だし、郁ちゃんにも折られますが(笑)。その過去話もまたしたいです。いわゆる【かくれんぼ】下りあたりの話ですね(笑)
そうそう、過去編は、1つ気付いたことがあって(今頃?苦笑)、過去の話は手塚目線では駄目だなって。
手塚目線だと、ザル過ぎて話が見えてこないんですよねー。
手塚は、見えてたことと見えてないことがあるので、過去を手塚目線ですると、よくわからない、というまま、説明できないままで終わっちゃうんで……(苦笑)
柴崎目線でも、よくわからないことはあるんですけど、柴崎の方がちゃんと見えてるので(苦笑)
まぁ、近々、柴崎目線で柴崎の過去を語って貰いたいと思います(ネタバレかいッ★苦笑)
柴崎の口達者は、原作のまま移行しているんで、口達者です(笑)
貧民窟で育ったせいもあって、あまり行儀もよろしくはない(礼儀作法とか、細々としたところまでの自信がない)ので、王宮に来てからはあまり口数多くなく、煌びやかなトコロは苦手としています。
自分を隠してる感じです。
『光殿下』に対しても、身分の差はすっごく卑屈なくらい感じているんですけど、なんせ相手は子供で、実は柴崎も同世代の子供との接点が少なく育っているんで、子供相手ではどう接していいのかがちょっとわからない感じもあって、光殿下に対してちょっと不遜な態度になっちゃってる、っていう感じです。
敬語を使う、身分が格上の相手に対しては平伏する、とか、柴崎の中ではそういう風に身分の高い人相手は接していく、と思っているのに、身分の高い人が自分に教えを乞いに来て、教える、という立場になるなんていう想定が柴崎になかったんで、柴崎の想いとは裏腹に光殿下に対して『地』を見せてしまった感がありますね。
出会った頃は3~4歳設定なんで、流石の柴崎もそこまで上手に自分を隠して取り繕えません(苦笑)。
でも、『光殿下』に対しては敬語を使うよう、身分が上の方だという意識は、柴崎の中で結構長く続きます。
そのあたりは手塚の方が、自分が身分が上というのもあるけれど、最初は当然のものとして受け止めていますが、郁ちゃんをきっかけに意識が変わっていく感じです。意識が変わると、手塚の方が身分の意識に対しては簡単になくなるわけですが、これは身分の高い者だから故で、柴崎にとっては身分は身分で、自分が酷く低い場所(貧民窟)で育っている意識もあるので、なかなか抜けませんよね。
そういうあたりも、今後出していけたらな~~~~。
柴崎が自分の母親に対する想いあたりも、柴崎目線で追えたらなって思ってます。
とりあえず、柴崎目線で過去を見る必要性を痛感ですねー(苦笑)
うーん、思ったよりもこのお話、長くなる?(苦笑)
いやいや、今年の目標は、このお話を半年以内で終わらせることなんで、頑張りますー(後4カ月半か……)


ツンデレラ |  2018年02月17日(土) 07:21 | URL 【コメント編集】

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 |  2018年02月16日(金) 11:27 |  【コメント編集】

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