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2018.01.26 (Fri)

≪背中の靴跡シリーズ≫ 『1つだけの願い』~vol.15~

≪ 1つだけの願い~vol.15~ ≫背中の靴跡シリーズ

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気持ちを持て余し、1人隊を離れた郁ちゃんだが……。





【More・・・】

≪ 1つだけの願い~vol.15~ ≫背中の靴跡シリーズ


…………ああもう、だめだなぁ…………
思えば湿り気を帯びた溜息が出る。
だけど幾分か落ち着いてきた。
……手塚に当り散らして出てきた後、ここで一頻り泣いていた。お蔭で、というかなんというか、悶々としていた気持ちの一部は少し落ち着きを見せていた。
駄目だ駄目だ駄目だ。
こんなグズグズ泣いてるだけのヤツなんて、誰だって嫌に決まってる。
泣いてたって何も変わらない。
むしろ面倒くさくて鬱陶しくて、余計に悪い。
――――そうでなくてもいいトコないのに、これ以上ブスになってどうすんのあたし!
パチンと頬を両手で叩いて、少し背筋を伸ばしてみる。

うん、少しスッキリした。
もう大丈夫そう。

手塚にちょっと悪いコトしたな、って思える程度には回復してきた。
泣き顔は簡単には治まらないだろうけど、もう新しい涙は出ていない。
そろそろ皆のところに戻った方がいいんだろうけど…………だけどちょっとバツが悪いな。
せめて泣き顔が引くまで――――……

後ろ髪を引かれかけた思考に、もう一度ぱちんと両手で頬を叩いた。
「~~自業自得! 戻るよ…っ!」
自分で声を出して奮い立たせる。
うん、戻ろう。
なんて顔したらいいのかわかんないけど、手塚にどう謝ればいいのかもわかんないけど、取りあえず単独行動はよくない!
――――勝手に抜け出したことを、まずみんなに謝ることから、かな。
そう思って、重い腰を上げようとした時、ふと声がした。
「…………戻っちゃうの?」
驚いて辺りを見回すけど姿は見えない。
「戻らなくていいよ。みんなあんたが居なくたってうまくやってるもん」
「…………誰…ッ?!」
「ううん、むしろ戻ってくんなって思ってるんじゃない?」
「~~~~っ、出て来いッ!!」
「あんたの存在に意味がある? 役立たずのくせに。――――足が速いって言ったって、結局は戦闘になれば男に力で捻じ伏せられたら歯が立たないし、頭脳もないから作戦が立てられるわけじゃない。だからって日常生活で皆に細やかなケアが出来る訳じゃないし、料理なんか堂上班で一番下手なんじゃない? ほぉんと、なんの役に立つのかしら?」
「~~~~っ」
悔しいけど言い返せない。
まったく言われている通り。
と、気配がした。
臨戦態勢で伺う――――と、木の影から出て来たのは、黒装束に身を包んだ小柄な人影。
「…………し……しば…さき?」
「ずっと思ってたの。どうしてあんたなんかが精鋭部隊に入ったのかしらって。
――――まぁ入れたことも奇跡だけど、精鋭部隊に入りたかった動機には吹き出したわ。男が目当てとか」
「~~~~ち……ちが……」
「違わないでしょ? 堂上少将に会いたかったんでしょ? あんたのこと見て欲しかったのよね? ――――伯爵令嬢のあんたが平民の男と結婚することは出来ない――――なのにどうしてあんたは部隊に入ったのかしら? あの男の気を引いて何がしたかったのかしら?」
「~~~~ッ!!!」
「せめて身体だけでも欲しかったのかしら? 忘れられない熱い夜の思い出とか?」
「~~~~っ、違うッッ!!!」
「あら、初心(うぶ)なフリなんかしちゃって――――顔を真っ赤にして可愛いわねぇ。
……違わないわよ。だってあたしみたいな身体が欲しかったんでしょ? こういう……男が虜になるような女の身体が欲しかったのよねぇ?」
言いながら柴崎が自分の胸元を肌蹴させた。
黒い服から真っ白な素肌が覗く――――半分見えかけた豊かなバストは女同士でもゴクリと唾を呑みたくなる色気に満ちていた。
ふ、と艶めかしく柴崎が微笑んだ。
ぱさりと長い黒髪が解け――――真っ直ぐな艶髪が舞い降りる。
右肩から服がずれ落ちた。
片方の乳房がふるりと揺れる。何もかもが丸みを帯びた柔らかなライン。女性同士だというのにドキドキする美しさ。
美の女神(ヴィーナス)が目の前に居るとしか思えない。
柴崎の細い指先が伸びてきた。
柴崎に見入ってしまって動くことすら出来ない。
「…………この身体に憧れる理由なんてそれしかないじゃなぁい? あの男に貪られてみたかった? 上手くいけばあんたに首ったけになって――――ヒモとして、手塚との結婚後も肉体関係が続けられるかもしれないもんねぇ」
言いながら柴崎の小さな右手が、笠原の頬を包む。
触れられた瞬間、痛覚が痺れた。
――――冷たい手――――

と、思うより先に剣を抜くと切り裂いた。

…………残念ながら、黒髪が数本切れただけで避けられたが。
「~~~~あんた…柴崎じゃない…ッ!!! 誰だッ?!」
「……ひどいわー、笠原。あたしは柴崎よ?」
「柴崎じゃない…ッ!!! 絶対違うッ!!!」
言いながら攻撃の手を緩めない。
柴崎はずっと不気味に笑っていた。笠原の攻撃を避けつつ言霊に闇を込めて投げつけて来る。
激しい攻防戦。
至近距離、空中と互角だった。柴崎も剣を抜く――――深い闇色の太刀から闇が膨れ上がった。振り下ろされる圧力の凄まじさ――――必死に笠原は剣で剣を受け――――次の瞬間、跳ね飛ばすと同時に距離を取った。
2人の間に距離が出来た。
――――と、笠原の剣先が僅かに下を向いた。
鳶色の瞳が見開く。
「…………笠原。もう止めろ」
笠原の視界の先に居るのは――――堂上になっていた。

――――――――違う。……違う、あれは堂上少将じゃない…………。

さっきまで【柴崎であったモノ】が堂上の姿になっているのだ。
頭ではわかっているのに動揺してしまう。
堂上が一歩踏み出すと、一歩後ずさりしてしまう。
距離は保ったまま。
ジリジリとした時間。
「…………笠原。逃げるな」
そう堂上が言った瞬間、笠原は身を翻した。
逃げる――――が、疾風のように堂上が追い付き、木の幹で挟まれる。
下の方から見上げる堂上の鋭い目。
ゴクリ、と喉が鳴った。

「――――郁」

ドキン、と鼓動が跳ねた。
違うとわかってる――――これは堂上少将じゃない!
わかってるのに、剣を持つ手が震える。
殺さなきゃと思うのに、身体が動かない。
…………堂上少将の声で、甘い響きで名前を呼ばれる。

「――――郁……お前が欲しい」

違う違う違う違う違う違う違う違う…………
違う、これは堂上少将じゃない。
わかってるのに。
なのに、近づいてくる堂上の顔から目が離せない。
顔が熱い。
心臓が壊れそうなくらい音を上げてる。
わか――――……

「笠原ッッ!!!!!」
ハッ、と一瞬で、堂上に引き寄せられるように俯けていた顔を逸らした。
偽堂上の鼻先を霞めた矢が空間を通り抜けて行く。
と次の瞬間には堂上に堂上が襲いかかる。
偽堂上が飛び退いた――――と、射抜くように矢が続けざまに飛んで来る。必死に身を交わした偽堂上はそのまま消えた。
弓を抱えた小牧が後を追う。
一瞬の出来事についていけず茫然としていた笠原の膝が笑った――――と思ったら、へなへなとそのまましゃがみ込んでしまった。
慌てたように堂上が覗き込む。
「大丈夫か、笠原ッ?!?!」
「~~~~だ、だい、じょ……」
「~~くそ…ッ!! よりによって顔に傷なんか付けられやがって…ッ!! 他にはッ!!」
堂上は懐から布を取り出すと無骨な手でそっと頬の傷にあてがってくれた。身体のあちこちに出来た手裏剣の切り傷も確認する――――身体の方は大した傷ではないことを確認すると、堂上からホッとした溜息が零れた。
次の瞬間、叱責が飛ぶ。
「1人で勝手に行動するなといつも言ってるだろうがッ!!! お前にもしものことがあったらどうするんだっ?!」
本気で怒ってる堂上を見て――――なぜだか涙が出そうになって、慌てて笑顔を貼り付けた。
自分でも上手くいってないのがわかって、取り繕うように口を動かす。
「大丈夫ですよ。あたしなんか別に――――自業自得だし、傷が残ったって別に構いません……」
「~~~~構わないわけないだろうが…っ!」
「本当に構いませんよ…、自分のガサツさや無鉄砲さは自分でよくわかってます。傷の1つや2つ出来たって想定内のことで……」
「お前に傷なんか付けさせるか…っ! お前は俺が守ってやるって決めたんだッ…!!!」
「…………、――――――――~~~~へ?」
思わず激昂したように口走った堂上の言葉が笠原の脳に届くのに幾分かかかった。
届いたものの意味を呑み込めず、キョトン、と目を丸くする。
――――と、笠原が理解するより先に、堂上自身が自分が口走った言葉に気付きみるみる顔を赤くした。
あからさまにソッポを向くと、睨みつけるように宙を見る。
「~~~~っ?! ~~~~い、いや、その…っ、おお俺の部下は俺が守るって、そういう意味だッ!!」
「~~~~は…、…あ、えーと、そそそうですよね、はは…」
「笑ってる暇あったら、自分でもちゃんとケアしろ! 傷なんか残されたら後味が悪いだろうが…ッ!!」
クワッ! とまた目を向いて怒られ――――なんだか複雑な気持ちが笠原の胸に湧いてくる。
そうだよね、ふーん。…なんていう拗ねた気持ちと、でもずっと頬に布を当ててくれてくれてる優しい手の感触に嬉しくなる温かい気持ち。
自分でもよくわからなくて、唇を尖らせて悪態で誤魔化した。
「…………でも、人のことばっかり言ってますけど、そー言う堂上少将なんか傷痕いっぱいあるじゃないですかぁー」
「俺に傷跡があったって、誰も気にせん」
「あたしだって同じですよーだっ! 誰も気にしやしませんって!」
「俺が気になるんだっ!」
「上官だからってそんなに部下に気を遣わなくて大丈夫ですっ!! この傷が自業自得だってことはあたしが一番よくわかってますから!」
――――どう言い切ったところで、小牧が笑いながら現れた。
「……鈍感同士の言い合いって痴話喧嘩としか思えないんだけど? いい加減、堂上は言葉が足りなすぎ。笠原さんはそっち方面は疎そうだし、ちゃんと言わなきゃわからないよ。そろそろ自分の気持ちをきちんと伝えたら?」
「…………うるさい。余計なこと言い過ぎだ」
「……大事なことだと思うけどね」
「~~~~それより、傷薬を先にこいつにやってくれ。俺は手塚達を探す」
「待って。――――笠原さんの傷に薬つけるのなんてすぐだし一緒に動こう。…………さっきのは恐らく妖魔――――窮奇(きゅうき)だと思う。人の心に宿る闇の声を聞き出して惑わせ、人を喰らう妖魔――――。1人だと窮奇の術にかかりやすいからね。
――――笠原さんに化けた窮奇に迫られたら、いくら堂上だって大変だろ?」
「~~~~えっ、ええッ?! ああああたしはそそそんな…ッ!!」
「~~~~なななななに言って…ッ!!!」
「だってほら、窮奇は、笠原さんに堂上の姿で迫ってたでしょ? なんで堂上の姿だったんだろうね――――ってことを考えたら、別の方面の答えが見えてくると思うんだけど…………残念ながら今はそのことは置いとくとして、じゃあ逆に堂上に、笠原さんに化けた窮奇が迫ってきたら堂上は躊躇いなく殺せるかい?」
「~~~~っ!!!」
「窮奇は人の心の弱いところを突いて来るんだよ。大事な気持ちが逆に弱点になることもある」
「~~~~もういい小牧ッッ!!!!! 黙って早く手当てを済ませろ…ッッ!!!!!」
「ハイハイ、まったく回りくどいよねぇ」
「~~~~お前うるさいッッ!!!!!」
「はーい」

……え? え? え?

クエッションマークが飛びまくっている笠原を見て、小牧がニッコリと笑った。
「堂上がうるさいから、サッサと済ませようか。多分この程度なら痕も残らないと思うよ、良かったね堂上」
「~~~~お前いちいちうるさいッ!!!」
「ハイハイ。じゃあ手早く――――柴崎さんが付いてるから大丈夫だとは思うけど、手塚もちょっと心配だからね」
「…………あ……はい…………」
小牧の手当てを受けながら今の会話を反芻してみたものの、やっぱりよくわからなかった。……まさかね、と思って見た堂上は目が合うと目尻を吊り上げて睨みつけて来たから、やっぱり違うんだと思う。
ダメダメ。すぐに自分の都合のいいように考えるのは悪い癖だ。そんな筈、ない。
部下を目の前にしたら、堂上少将だって簡単に殺せないっていう、そういう話なんだ。
自分を戒めつつ手当てを済ませると、手塚達を探しに向かう。
追い駆ける堂上の背中が、あの時のようにとても大きく感じて、胸がドキドキする笠原だった。



……To be continued.






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05:10  |  *『図書館戦争』二次小説  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

★窮奇設定(笑)

ママ様

ありがとうございます、そうなんです! 窮奇はその上をいく発言をしてます……って言うのも、別に窮奇は『心の闇の鏡』ではないからです~~★
わかりにくいのに、丁寧に読んで下さっていつもありがとうございます!
窮奇の設定としては、人間を食べるのですが、『苦しんでいる人間』『心の闇に染まった人間』を食す方をより好む、という設定にさせてもらってて、なので『心の闇に付け込んで、食す人間がより美味しくなるようにそそのかしている』と思って貰えれば。
なので、郁ちゃん自身はママ様がおっしゃるように柴崎に対して『あんな風に綺麗で女性らしい感じになりたかったなぁ』くらいの羨望で、窮奇が突っ込んだほどは考えたこともなかったと思うのですが、あの状況で『お前はそう思ってるんだろ?』って迫られると(しかも柴崎の顔で)、つい自分はそんなことを考えていたのか?と迷ってしまったのかな、と。
…………しっかしひょっとすると、最初のシーンは柴崎が郁ちゃんを苦しめる発言をしてるようにしか見えないから、今回途中まで読んで嫌になった人とかいそうだなぁ……(((((^^;)
柴崎は、郁ちゃんの気持ちも堂上さんの気持ちもわかってるから、あんな風に苦しめたりしないと思うんですが…………ね。
ただ、柴崎も堂上さんも、身分の差をわかってる人達だから、手郁の婚約に関しては『よいこと』だと思ってると思います。そこに気持ちがなくても、政略結婚が当たり前の時代という設定ですし。
というわけで、郁ちゃんと手塚がどう思い、どう動いていくのかが、今後は『恋の行方』を左右するんでしょうね~~★柴崎や堂上さんから能動的に動く訳ではないと思います。
小牧さんはどちらの気持ちもわかってるし、小牧さん自身、司祭になれる才能はあるけれどそれを捨てて部隊に入ってる人なんで…………ある意味、現在の堂上班の中では唯一自由な人です。(親もそれを認めてくれた訳ですし)
ちなみに小牧さんは、天罪の巫女の事件後しばらくして、毬江ちゃんに巫女の才能があってそちらの道を選ぼうということになった時に『もしも何か毬江ちゃんの身に何かあった時に、守れる力が欲しい』と司祭の道ではなく武人としての道を選んだというふうに現在設定しております(…現在って…(笑)★まぁなにかあったら設定変わることもあるかもしれません(苦笑))
もちろん、司祭になるにしても武人になるにしても、どちらも才能はあったんですけどね。
というわけで、小牧さんは割と自分の意志を貫いて現在の位置にいる人なんで…………なので、堂上さんの恋心を本当は押してあげたいと考えているんだと思います。
さて、今後…………の前にはやはり窮奇を倒して貰わねば。
というわけで、郁ちゃんの悶々回は一先ず終了ですので(苦笑)、手柴に戻りますね!
打倒窮奇で頑張って貰います!

ツンデレラ |  2018年01月27日(土) 06:45 | URL 【コメント編集】

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 |  2018年01月26日(金) 19:37 |  【コメント編集】

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