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2018.01.19 (Fri)

≪背中の靴跡シリーズ≫ 『1つだけの願い』~vol.14~

≪ 1つだけの願い~vol.14~ ≫背中の靴跡シリーズ

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呪詛による【手郁の婚約】という【事実】が思いの外笠原の気持ちを酷く不安定にさせていた。堂上や柴崎はその事実を受け入れているように見えるが…。





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≪ 1つだけの願い~vol.14~ ≫背中の靴跡シリーズ


倒寿に柴崎を乗せると走り出した。
笠原は手塚と孟極に同乗している筈だ。…………何故だか今日は不必要にそれが気になる自分を振り払う。ただ前だけを見る――――。
だが頑なな態度とは裏腹に、思考は勝手に千路に乱れる。どうしても笠原と手塚のことに気がいってしまう。
元々、笠原と手塚は同期で入隊し精鋭部隊に所属した。同年齢で、幼馴染でもあったためか最初から互いに遠慮はなく、性格の全然違う二人は当初、訓練中の喧嘩や反発が多かった。笠原の鍛錬の仕方が荒削り(というか雑)すぎることで手塚が注意したり、真面目すぎる手塚の融通の利かなさを笠原が指摘したりして、やり合うことも多かった2人だ。けれど、最近では手塚も笠原に劣る点を自覚したりもしたようで、お互いを認め合い助け合うことも多くなり、気心も知れた仲間として友として一層信頼が深まったように思える。
そしてそれだけでなく、今ではもう、あの二人は婚約者なのだ。
そう思うと酷く重苦しくなる――――必死にその気持ちを振り払う。
【良かった】と思える結論だ。
手塚は少し頭が固いところもあるが、性格も真っ直ぐだしいいヤツだ。容姿や身分は男から見ても最高級。手塚以上に結婚相手として最上の男は居ないだろう。
そう思って――――、だが何故か痛む胸に素知らぬ顔をしていたら、柴崎がポツリと呟いた。
「――――堂上少将には悪いですけど――――あたしは、笠原と手塚の婚約を心から良かったと思ってます」
「…………俺もそうだが――――」
「あら――――笠原のこと、とても気に入っていたでしょう?」
「…………別に、気に入るとか気に入らんとか、部下をそんな目で見たりはせん」
「――――堂上少将にとって、笠原は部下というだけじゃなく特別な存在だったんですよね?」
柴崎に言葉を重ねられ、不服そうに口角を下げた。
「――――特別な存在だなんて…………」
「国東の都市に住んでいる里香さん――――彼女の告白を断った時に、堂上少将の頭の中に浮かんでいた女性は誰だったのかしら?」
突然の柴崎の言葉にギョッとする。
なぜそんなことを――――と柴崎をガン見した堂上を、見上げた柴崎はコロコロと笑った。
「あら、精鋭部隊で国東の近くに野営したことがあったじゃないですか。あの時、堂上班で買い出しに行かされて――――笠原は無邪気に再会を喜んではしゃいでましたけど、あの後、里香さんに呼び止められて彼女と話をしてましたよね?」
「…………お前、まさか盗み聞き…………」
「あら、そんな聞こえの悪い! 諜報活動の一環ですわ」
「~~~~盗み聞きだろうがっ!!」
クワッと目を向いた堂上を見て、柴崎は更に愉快そうに鈴のように笑う。
「…………言葉にしなくたって、里香さんも『堂上くんには大事な人が居る』ってわかったみたいですよ? 悪いですけど堂上少将ってそっちの面は駄々漏れなんで――――。……だから承知の上で言ってるんです。堂上少将には悪いですが、あたしは呪詛を完成させたこと――――手塚と笠原が婚姻を結ぶことになったことを、心から喜んでいます」
「…………いろいろとお前の言葉に言いたいことはあるが、結論だけ言えば、なぜお前がわざわざそのことを俺に言うのかがわからん。
――――笠原がいずれ部隊から抜ける日がくることくらい入隊時からわかっていた。ああ見えて笠原家の伯爵令嬢だからな――――将来はこの国の有力者と結婚するだろうことくらいわかっていた。それが、手塚になった、それだけのことだ。むしろ手塚で良かったと俺も思っている」
そう言って――――ようやく、猛極に騎乗している二人に目をやる――――と、ギョッとして思わず倒寿を猛極に寄せた。
「~~なんだお前ら! また喧嘩でもしたのか?!」
「~~~~い、いえっ!! 違いますッ!! こいつが勝手に……ッ!!」
「~~~~っ!! どど堂上少将にはかか関係ありません…ッ!!! ああああっち行け――――ッ!!! ててて手塚…ッ!! はは速くっ、速く行ってってばッッ!!!」
ギュウ…ッ、と手塚にしがみ付く笠原を見て、堂上がたずなを緩めた。
猛極と倒寿の距離がみるみる離れてゆく。
堂上は何も言わなかった。柴崎も何も言わずに黙ったまま。

……………………ごめんね、笠原…………

笠原には決して伝えられない言葉を、ただ、柴崎は心の中で呟いた。

     *

――――まいったなぁ……。

溜息が零れた。
あれからどうにも居心地が悪い。
なんとなく全員がギクシャクとする――――その一番の元凶は当然笠原で、その笠原は、まったく別人のように意気消沈したままずっと俺の影に隠れるように傍に居る。
恐らく、醜態を晒した自分をどう取り繕えばいいのかがわからないんだろうとは思うが、俺を捲き込むな。
そう言いたいが、言いにくい程に笠原が沈黙してる。…………不気味なくらいだ。
時折、チラリと堂上少将の目がこちらを通り抜ける。――――だけど、なにも言ってこない。
敢えて堂上の方もまた距離を取っている――――まさしくそんな感じだった。
柴崎もまた俺の傍に来ることはなかった。
――――溜息が零れる。
これまでは姿が見えなくてモヤモヤしたけれど、姿が見えているのに距離を取られるというのが辛いなんて、初めて知った。

と、ズズ…っ、と笠原から鼻を啜る音がして、つい苛ついてしまう。

「~~~~っ、なんだよ、また泣いてんのか?」
「…………っ、なな泣いて……ない……」
相変わらず意固地な返事は完全な濡れ声。
はぁ、と盛大な溜息を笠原に見せつける。
「泣いてるだろ! いい加減、鬱陶しすぎるッ!!! 柴崎に言いたいことがあるなら、グズグズ泣いてないで直接柴崎に言えばいいだろっ?!」
「~~ししばさきに言いたいことなんか何もない…っ!!!」
「~~~~じゃあ、なんなんだよ、さっきから!! お前、柴崎を羨ましがってるかのような言葉のオンパレードだっただろッ?!」
「~~~~だって羨ましいんだもん…ッ!!!」
キッパリと言い切った笠原に、呆気に取られる。
見れば笠原は赤い顔をしてポロポロと涙を零しながら、本音を無意識に吐露していた。
「~~柴崎みたいに…っ! 柴崎みたいによく気がついて綺麗で女の子らしくて小っちゃくて可愛い女の子になりたかったッ!! ~~あたしだって好きでこんな――――こここんな、図体のデカいガサツで粗忽な女になりたかったわけじゃないもん…ッ!!!」

『…………あたしだって好きでこんな――――』

ふと、別の声が記憶の奥底で甦った。
…………誰だ?
笠原みたいな感情に任せた煩い声じゃなかった――――むしろ静かで儚くて、酷く悲しげな言葉――――……

…………誰だった?

随分昔の――――遠い遠い昔の記憶。
あれは誰だっただろう…………。
なんだっただろう、思い出せない……

――――でもなぜか、あの時そいつが消えてしまいそうな気がして、消えないように必死に言葉を紡いで言った気がする。

「『……お前はお前だ。……俺は、お前がお前で良かったと思う……』」
「――――――――え?」
「え?」

――――――――――――――――

思わず笠原の目と目が合って――――笠原の顔が朱色に染まって我に返った。
「~~~~ななななに言ってんの…ッ?! なによ突然、そんな歯の浮いたような台詞ッ!!!」
「~~いいいや…ッ!!! 違う、違うんだ、今のは…ッ!!!」
「~~~~そそそうだよね、違うよねッ!!! だってあんたは柴崎が好きだもんねッッ!!! 別にあたしなんかどうでも――――っ、」
「~~~~なッ?!?! ~~勝手にいじけて八つ当たりして俺を捲き込むなッ!!」
「~~~~ッ!!! わわわ悪かったねッ?! わかったわよっ、しばらくほっといて…ッ!!! 独りにして…ッ!!!」
そう言うと笠原が駆けていった。
呆気に取られ――――というか混乱しすぎて何も考えられなかった。
笠原の台詞が胸に刺さった。

――――柴崎が好き?

俺は――――……。

急に頬が火照る。
鼓動が変に跳ねて早いリズムを打ち始める。
「――――手塚」
困惑している最中に呼ばれ、咄嗟に返事も出来なかった。見れば堂上が酷く険しい顔をして近づいてくる。
「…………今、笠原が飛び出していかなかったか。まだ喧嘩してるのか」
「~~~~っ、あ、いえ……喧嘩などではなく、笠原が一方的に感情的に――――」
「…………あいつが感情的なのはいつものことだろう。お前まで捲き込まれるな」
「~~~~あ、……はぁ……」
なんだか理不尽なことを言われている、とは思ったものの、初めて見るような苛々と少し冷静さを欠いた堂上をマジマジと見た。手塚の凝視に気付いた堂上の方は気まずそうに視線を外す――――堂上自身、自分の台詞が不合理だと気付いたのだろう。
少しの間を置いて、溜息と共にボソリと低く謝罪した。
「…………すまん……八つ当たりだ……」
「…………いえ……」
八つ当たり?
どういう意味なのだろう、と答えを見つける前に堂上がまたボソリと呟く。
「…………迎えに行ってやれ」
「~~~~迎え……って……、いや、今は止めた方が…………あいつも感情的になってますし、行ったところで所詮繰り返すだけです」
「…………繰り返すな。…………繰り返さないように包み込んでやれ」
「…………いやけど俺の言うコトなんか聞かな……、…………え?」
否定しようとした言葉が途中で止まる。
――――包み込む?
包み込むって…………それって……、――――と思ったところで思考が止まりかける。
「~~~~え…っ、…いやその、それは…っ、」
……額面通りに受け取れば、抱き締める、ということだろうか? だけど自分で言うのもなんだが……笠原を手塚が抱き締めてやる、という想像が出来なくて言葉に詰まる。なのに、堂上ときたら少し遠いところを思いつめたように見つめながら続けるのだ。
「…………口で納得させようとするな。――――行ってやれ」
「…………え……っと……」
堂上に言われても、なぜか足が出なかった。困って堂上を見つめるものの言葉も続かない。

――――途方に暮れそうになって――――そんな手塚に、思わぬ助け舟が来た。

……もっとも、助け舟と言えるのかどうか。

「堂上! 手塚! …………あれ? 笠原さんは?」
小牧が少し厳しい表情で顔を出し――――笠原が居ないのでキョロキョロとあたりを見渡す。
「…………笠原はさっき駆け出して行った。どうした?」
「――――闇の――――妖魔の気配がする。饕餮クラスだと思うから皆で固まっておく方がいいと思うんだが……笠原さんはどこへ?」
小牧の言葉に堂上は鋭く舌打ちをすると笠原が駆け出した方へと走り出した。
「ちょ…ッ?! 堂上ッ?! ~~あっ、手塚は柴崎さんと笠原さんを探して!!」
「はいっ!」
小牧の後から顔を出した柴崎に、詳しい状況を聞きながら笠原を探す。
妖魔らしき気配がするのに場所の特定が出来ないと言うのだ。
「――――空間を歪ませるような妖魔かしら…………そんなとんでもない力の妖魔なんて記憶にないんだけど…………」
とにかく嫌な感じだから早く笠原を見つけましょ! と柴崎に促され、笠原が身を隠しそうな場所を虱潰しに探し回った。



……To be continued.






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05:10  |  *『図書館戦争』二次小説  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

★思うトコロはアリアリです(苦笑)

Sauly様

そうですねぇ。堂上さんがもっとGOGOすれば、何も問題ないのですが、こっちの朴念仁も蓋をしてるところがマズイですね。
でも正直、蓋をしてると思ってるだけで、全然駄々漏れで周囲にはわかりまくりなんですが、郁ちゃんだけがわかっていないトコロがまた堂郁の悩ましいトコロでございます!(笑)
まぁ……郁ちゃんの悶々は、次回までということになりそうですのでー。
考えると、堂郁って郁ちゃんあっての堂郁(当たり前ですが、、、、、うーんなんというか、実は郁ちゃんが主体で回ってるんじゃないかと思う今日この頃です)な気がします。
郁ちゃんが、これからどう気持ちを整理していくのかが堂郁のこれからにかかってる……敷いては手柴にもかかってるのではないかと思うような★(苦笑)
なんせ、郁ちゃん以外が、このお話では能動的に動きそうな人が居ないというトコロがネックでしょうか(((((((--;)
ガンバレ、郁ちゃん! みんなの為に!!

しかし、wanimaはいい歌を歌いますよね~~~!!!!
大好きです、私も!!!
ツンデレラ |  2018年01月22日(月) 09:39 | URL 【コメント編集】

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 |  2018年01月22日(月) 01:06 |  【コメント編集】

★そうなんですね、心折れる程…………って、そうなんですねー…

ママ様

コメントありがとうございます!
ほぼほぼママ様の想像通りですねー。なんで、あんまりレスらしいレスは出来ないと思いますけどごめんなさいね。
郁ちゃんは、原作でもそうですが、やっぱり手柴にはなくてはならない人です(笑)
なので、こちらでもやっぱり郁ちゃんは手柴になくてはならない人です(笑)
郁ちゃんあっての手柴ですよー♪(*^^*)
堂上さんは今回、駄々漏れ堂上炸裂でしたね(笑)。…なのに、バレてないとでも思ってた堂上さん(笑)。そりゃもう、小牧さんの上戸が止まりませんよー!(残念ながら妖魔出現でそれどころじゃなかったけど★)
堂上さんの想いに手塚が気付く日が来るのかどうか…………は、もう全然わかりませんね(苦笑)
手塚は鈍すぎますからね!!(笑) 果たして気付く日は来るのか……?(苦笑)

> 前作の時に書いた堂柴。
……そうですかー。ママ様の心が折れるってことは、本気の堂柴だったんですね。。。
関わった全員の心が壊れそうなお話って…………堂柴が幸せでも、報われないお話ですね(TT)
目にしたことがなかった私は幸せなのでしょうか。
このお話で、そういう気分になるような人が出ないように願うばかりです。
最後は手柴で堂郁は確実でも、途中でもこういう回は嫌だー!って人は居るとは思うんで…………そういう方は、心折れる前にそっと去って下さればいいな、と思います。
ママ様、いつも丁寧に読んで下さってありがとうございますね。
(途中、こういうお話展開になるウチのお話も付いて来て下さって、本当に感謝しています)
ツンデレラ |  2018年01月19日(金) 21:33 | URL 【コメント編集】

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 |  2018年01月19日(金) 10:23 |  【コメント編集】

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