fc2ブログ

≪背中の靴跡シリーズ≫ 『1つだけの願い』~vol.12~

2018年、開店で~す\(≧∀≦)/ヤッタァ♪
今年も、ひとつ、ご贔屓に。
さて昨年から引き続き、『1つだけの願い』です。今年の目標は、まずこの話を半年以内に終わらせること(苦笑)。
プライベートでは資格を取ることと、並行して仕事についてどうしていくか考える年にしようと思ってます。
皆様はどんな年にしようと思ってますか? どんな年にしたいですか?
皆様にとって、よりよい2018年になりますように!!
では、早速昨年の続きから★


≪ 1つだけの願い~vol.12~ ≫背中の靴跡シリーズ

SD-magadama08.jpg

王都帰還を目指すことが決まった堂上班。でも、郁ちゃんの心は少し揺れて…。




≪ 1つだけの願い~vol.12~ ≫背中の靴跡シリーズ


「――――綺麗……、柴崎ってホント綺麗だよね……」
着替えをする柴崎を見て、ほう…っと溜息まで付いて笠原がそんなことを言うので、柴崎が苦笑した。
「なによ、今更? 別に綺麗じゃないわ。胸の傷だって見たでしょ?」
「あ――――うん……。けど、肌は白いし顔は小さくて胸は大きいし――――」
「胸が大きいのは邪魔なだけよ。これは遺伝」
「なのに身体付きは華奢だし……そのなんつーか……そう、ボン、キュッ、ボンッて感じじゃない!」
笠原の表現に苦笑する。まぁ、女性としてのプロポーションは悪くはないとの自覚は柴崎にだってある。
だけど。
「細いのはあんまり食べられないから――――体型は遺伝みたい。男好きする身体なのはそういう家系で――――母はそれを商売にしてたくらいよ」
「~~~~しょ…商売って…………」
笠原の顔が赤くなった。初心な笠原の反応に柴崎はコロコロと笑う。
「あら、平民界や下界ではそういう商売も普通にあるの。母はそれ以外、なんの才能もなかったから――――だから、あたしの父は本当は誰だかわからないの。あたしを産んでからも母はあたしを預けて、男に抱かれて稼いでくれてたらしいわよ。――――そういう遺伝なの、……汚らわしいわよね」
そう言う柴崎の口調は、まるで天気の話でもしているかのように淡々としていて――――キッチリと晒を締めた。
そうすると柴崎の胸にあった呪詛の印はもう見えない。
真っ直ぐで綺麗な黒髪も、後ろで一つに束ねてしまった。
そんな話を聞いても――――笠原にはやっぱり柴崎の容姿は綺麗で美しくて――――。

――――理想の女の子だ。

あたしがこんな風だったら――――堂上はもっとあたしを見てくれるだろうか?
そう思って、出てきた名前に更に顔が熱くなって、ブンブンと頭を振る。

ああもう、そういうんじゃなくて、そうじゃなくて、あたしは!

「……意外に、笠原はこういうグラマーな体型の方が憧れてるわけ? 笠原だって十分スレンダーだし足も長いからすっごく綺麗じゃない。そういう体型が好きな男だってごまんと居るわよ」
柴崎に声をかけられて引き攣る。
「~~~~えっ?! ~~いやいやいや、そそそんなことは……っ、あたしなんてただのツンツルテンだしッ!!」
笠原の言葉に柴崎が吹き出す。
「つんつるてん…って、そこまでじゃないでしょ」
「~~いいいや、ホント、胸なんか全然……っ、こここんなんじゃ、女って感じじゃ……ッ!!」
「ふーん、女を感じさせたいんだ? …………堂上少将に?」
ボンッ!!! と笠原の顔から火が噴いた。
「そそそそんなわけ…ッ!!! そそそそうじゃなくてッ…!!!」
パクパクと口を開けたり閉めたりしながら言葉にならないようなことを必死に口走る、茹蛸のように真っ赤な笠原に、柴崎は一頻り笑い転げていたけれど――――やがて笑いを収めると、少し真面目な顔で笠原に告げた。
「…………ね、笠原……。笠原が堂上少将に憧れとか好意を持ってることはもう随分前から知ってたけど――――だけどこんなことになった今、王都に戻れば笠原はもう王妃なのよ。――――多分、そんなに時間を空けずに手塚との婚儀を求める声が上がるでしょう。…………手塚の御魂が光ったと言うことは手塚は国王になる――――手塚は正当な後継者として認められたの。周囲からすれば手塚の父王がキナ臭い謎の死だっただけに、国の安泰や安定を求める民は余計にあんた達の婚儀を求めることでしょうよ。
…………だからね、そろそろ……堂上少将から卒業しなくちゃいけない時期が来てると思うの」
最後は少し言い難そうに、柴崎はそう告げた。
――――わかってる。
柴崎から言われなくたって、ずっと前からわかってた。
伯爵家の娘である自分は、いずれは親や血族が決めた相手と結婚することになる――――その相手が王族の第二王子である手塚であったことは、笠原家にとっては最高の伴侶だろう。
元々は貿易商だった笠原家が、商売に成功してからここまでの地位を築くまではどれだけの長い年月を費やしただろうか。伯爵家の名誉を受けてからももはや十数世代と月日は過ぎていると言うのに、未だに由緒正しき伯爵家からは軽んずられるような発言をされることもある。
王族との婚姻。
それは笠原家には悲願だろうし、手塚との結婚は受け入れているつもりだ。
だから、堂上少将と結婚出来るなんて、全然思ってない――――
――――結婚したいとか、そういうんじゃなくて、ただ、あたしは。

「…………笠原は…………手塚と、結婚するのよ…………」

そう言った柴崎が辛そうに見えて、苦笑した。
「わかってるよ。――――あたしは手塚と婚約してるんだもんね。大丈夫、ちゃんと結婚するから。
…………ただね、柴崎はもう知ってるんだと思うけど――――あたし、ずっと堂上少将に憧れてたの。あんな人間になりたいって――――弱い人を助けて守ってあげられるような人になりたいって……そう思って、ここまで来たの。いつか堂上少将みたいになりたいって――――同じくらい力を付けたいって。
――――あたしをここまで強くしてくれたのは堂上少将だと思うし、あたしをここまで導いてくれたのも堂上少将だと思う――――あたしはこの部隊を離れることになっても、一生堂上少将のことは忘れないと思うんだ。
――――けど……、もちろん、堂上少将にとってはあたしはただの部下の1人に過ぎないから、いつかはあたしのこと忘れちゃうと思う。――――それは仕方がないと思う…………それもわかってるんだけど、だけど!
…………だけど、出来れば忘れて欲しくないなぁ……って。
初めての女子の部下はあたしだったって、そんなバカな理由でもなんでもいいから覚えていて欲しいなぁって。
――――すんごい我儘だよね…………わかってる。けど――――けど、ほんのちょっとでも何か堂上少将の心の中にあたしが残ってくれればなぁって思っちゃうんだ。すっごい傲慢な望みだよね――――だけど……。
だけど、ひょっとして柴崎みたいに絶世の美女だったら覚えていてくれるかなぁ、とか…………そんなつまんない考えまで浮かんじゃって――――あたしってば…………なに、考えてるんだろ…………」
…………言いながら、わけも分からないけれど、胸がキュッと締め付けられる気がした。
目の周りが熱くなって、視界がぼやけてきて慌てる。
手で目を覆って、なんとか涙が出ないように堪える。
――――と、優しくて甘い香りがふわりと鼻腔を擽った。
華奢な細い腕があたしを包もうと絡んでくる。
「…………ごめん…………」
小さな小さな柴崎の声がした気がした。
空耳だったんじゃないかと思うような――――だけど、確かに柴崎はそう言ったと思う。
どうして謝るの、と聞きたい気がしたけれど、次の瞬間には、あたしを抱き締めている柴崎が小さな手であたしの背中を撫でながらキッパリと言い切った。
「――――大丈夫よ。堂上少将は笠原のこと、一生忘れないわ。
…………あんたみたいな突拍子もない部下、忘れられるわけないじゃない! もっと自分に自信を持ちなさい。笠原が笠原であること――――笠原らしくあることが、何よりもインパクトがあって――――素敵なんだから」
いつもの雰囲気で、わざと明るく茶化すようにそう言うと、下から見上げてくる。
柴崎の大きな漆黒の瞳がキラキラと輝いていて本当に綺麗だと思った。
「…………ホントに……柴崎は目まで綺麗だね。……本当に綺麗…………」
感嘆してそう言ったのに、何を思ったのか柴崎は、慌てて片目を手で隠した。
「…………今、変に光ってた?」
「え? ううん。綺麗な黒目だったよ――――黒目がめちゃくちゃ大きくて、宝石みたいにキラキラしてるよね」
「~~~~っ……、眼帯……どこに落としちゃったのかしら!」
「眼帯? 眼帯ならここに――――けど、本当に普通に綺麗だよ! 隠さなくていいって!」
「~~~~返してっ! ……嫌なのよ、時々自分の意志と関係なく光るし……、この瞳さえなかったら……」
こんな目なんか生まれた時に潰してしまえば良かったのよ! とまで、本当に嫌悪するように柴崎が言うから、また着用された眼帯にそれ以上何も言えなくなる。
笠原が知る由もないが――――やはり非人である柴崎には柴崎の、辛い生い立ちが娼婦の母という以外にも何かあるのかもしれない。
眼帯と共に柴崎のものだった石についても取り出して尋ねる。
「…………それとこれ…………これも柴崎の、だよね?」
相変わらず煤けた石。
その石を黙って受け取ると身に付ける柴崎。
「…………あ、あの…………それ……大事な石なの?」
「全然大事じゃないけど――――そうね、戒めみたいなものかしら。身の丈もわきまえない望みを持ったバカな自分を……」
「望みは大きく、が普通でしょ? いいじゃない――――」
そう言うと、不思議な目をした。
笠原には読み取れない――――悲しむような微笑むような色だった。

「――――柴崎?」

「…………ちょっと喋りすぎたわ…………笠原、足は大丈夫?」
「え? ――――うん……」
と呟いた瞬間、空間が光った。
魔道士が作ろうとした魔法陣を小牧の力で跳ね返した光だった。
「――――笠原ッ!! 柴崎ッ!!」
鋭い堂上の声―――― 一瞬で臨戦態勢に入った笠原と柴崎は、堂上と手塚の元に走る。
国東軍が、いつの間にかすぐ近くまで忍び寄っていた。



……To be continued.






スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

明けましておめでとうございます!

Sauly様

明けましておめでとうございます!
こちらこそ、本年もどうぞよろしくお願いします。

新年に「君の名は。」を実は見ておりません……そういや、テレビでやってましたねー。
なんせ、旦那の実家に3日朝まで居て、3日は私の実家に顔を出し、3日の晩に京都に戻って来たんでテレビとか見てる暇が……(汗)
「君の名は。」も3日やってましたよねー、確か★
でも実はレンタルで「君の名は。」を借りて、子供と旦那はしっかり見ていて、私も大体は見てるんですが真ん中らへんを見てないんですよねー(((((^^;) 主婦は何かと家では用事があるんで、ホントムカつきます。
なので、イマイチ設定が…………っていうか、まだ知り合ってないのに女の子が会いに来たとかいう台詞とかが最後、意味がわからなくて(そういうシーンのトコロが抜けてる私です)、しかも最後の方で前前前世が流れるのかと思いきや全然流れなくてビックリだったり、そういう方に気を取られてイマイチストーリーが頭に入って来ず…………
ちゃんともう一回全部見ないと……と思っております((((((--;)
まぁレンタルでいくらでも、もう流石に借りられると思うんで、ちゃんといつか見ます。
なんで、感想っていう感想がまだ言えないんですよねー……ヤレヤレ★

RADWIMPSは、前前前世が売れすぎたことが少し可哀想だと思いますねー。あの超ヒットを終えての活動になるんで…………RADメンバーがどう思ってどう曲を作っていくかによるのではないでしょうかね?
まぁなんせ、メガヒットをしてしまうと、その後の活動がなかなか辛いし比べられるし大変ですよねー…((((((^^;)

というわけで、相変わらずな私ですみませんでしたー。
うん、なんとか「君の名は。」も全部見ようと思います。なかなか設定があちこち時空を超えて飛ぶんでちゃんと見ないと意味がわからなくって感想のいいようが…………まぁ彗星のせいで死んだけど最後は生きてて(と子供らが私に説明してくれました((((((^^;)意味わからん……)、怖くはなさそうだし良かったです!(←そこかいっ★笑)

「1つだけの願い」もようやくポロポロとネタ晴らしが始まって来ましたねー。
まぁこれからもポロポロとやっていきます。
ポロポロやるうちに大詰めを迎えると思います(苦笑)
大丈夫ですよー。娼婦の娘であることは確実ですけど、そのあたりはうまいことやりますね(苦笑)

> Super beaverの証明で!
この曲は知らなかったですが、いい曲ですよね!
すごく素敵な曲でしたー!
新年、素晴らしい曲を教えてくれてありがとうございましたー♪(*^^*)

明けましておめでとうございます!

ママ様

明けましておめでとうございます。
こちらこそ、本年も拙いお話ではありますが、温かく見守って貰い、読んで貰えたら嬉しいです!

さて、そうなんですー。
意外に(?)郁ちゃんが柴崎の着替えの場に居るだけなんですけど、多少ポロポロと情報を零しております(笑)
そこを欠かさずにしっかりと読んで貰えて嬉しい限りです!
ありがとうございます(*^^*)
ママ様も整理して下さったように、郁ちゃん家は、伯爵家とはいえまだ新参者…との意識で見られている家柄です。
ママ様のご想像通り、郁ちゃんのお父さんは爵位にはそれほどの拘りはないと思うのですが、お母さんは「笠原家を由緒正しき伯爵家に!」という意識が強そうな気がします。
なので、唯一の娘である郁ちゃんには「いい家」へ嫁いで欲しい筈…………ってことは郁ママにとって堂上さんは論外ですよねー(((((--;)
まぁ……郁ちゃんの恋の行方がどうなるのかも温かく見守っていて下さいませ。
このお話、実は堂郁の方が確実に両想いなのにくっつけないお話になってるのかもしれませんね、と今気づいた私です(((((^^;)
あ、大丈夫です! 最後は手柴で堂郁は確実なので!
(ってだからネタをばらすな!(苦笑))

というわけで、こんな感じでまだまだ過去の話や謎の部分についての話も今後出てきますので、いろいろ想像してみて下さいね~~~~。
堂郁の方は、堂上さんをどう陥落させるのか(苦笑)が難しいトコロでしょうかねぇ…………。原作には身分の差はなかったからなー(苦笑)



管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
最新記事
カテゴリ
最新コメント
リンク
*リンクはフリーです(^-^)/
プロフィール

ツンデレラ

Author:ツンデレラ
*ツイッター
 @tsunderera_go
*ブログの紹介
 管理人ツンデレラが妄想の赴くままに、自由奔放に二次小説やホームパロディを書き綴っています。時々、近況をぼやいたりもします。
 現在、二次小説としては、アニメ『こばと。』と『図書館戦争』を書いています。
 共に、原作者様とは一切関係のない、非公式ブログです。
 ブログの詳細につきましては、カテゴリの「はじめに。」をお読み下さい。
 ネタバレ有り。無断転写・無断複製厳禁!
*管理人ツンデレラの紹介
 PCのみならず機械全般にオンチ☆ 若干常識もない……でも、4人の子供の親です(~_~;)
 現在、書きたい!という熱い想いで爆走中★

月別アーカイブ
最新トラックバック
検索フォーム
FC2カウンター
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR