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2017.12.01 (Fri)

≪背中の靴跡シリーズ≫ 『1つだけの願い』~vol.7~

≪ 1つだけの願い~vol.7~ ≫背中の靴跡シリーズ

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郁ちゃんを救出した手塚。少しでも早く小牧達と合流すべく歩きに歩くよ、どこまでも。
今回は短め……すみません、なかなか進まない……






【More・・・】

≪ 1つだけの願い~vol.7~ ≫背中の靴跡シリーズ


翌日も笠原を負ぶって歩きに歩いた。
笠原の足の具合は思っていたよりも治りが早そうだったが、この先を思うと完全に直して貰う方がいい。
今日はもう自分で歩けるよ、と笠原自身も言っていたが、小牧と合流してからのことを思えば今は笠原に無理をさせない方がいいことは明白だ。
合流したら笠原にも働いて貰わねばならない状況なのだから。
意識のない柴崎と重症の堂上――――柴崎の意識は戻っただろうか……。
ふと思って、美しい顔を思い出す。
眼帯を外した顔――――あの、眼帯をしていた方の目は開くのだろうか。
「――何考えてんの?」
すぐ耳元で笠原が聞いてきたのに焦る。
「……別に」
「柴崎のこと?」
「~~~~っ、ちちが…っ、ここ小牧少将の方はどうなっているんだろうって思っただけだ!」
「やっぱ柴崎のことか」
「違うって言ってんだろッ!!」
「ハイハイ。……あんたって結構、駄々漏れだよねー」
「~~うるさいッ!! 何がだッ!!」
「ま、いいけどさ。――――そういや前々から思ってたんだけど、なんで柴崎に出てこいって言わないの?」
「――――は?」
「だってもう、柴崎は精鋭部隊の構成員の1人みたいになってるじゃない。隠れてないで一緒に行動した方が何かとみんなも都合がいいし、あたしも嬉しいし、手塚だってそうでしょ? 手塚が言えば柴崎は従うんだしさ」
「…………従ったりしない」
「なんでよ? 柴崎はあんたの忍びでしょ?」
「――――俺の、じゃない」
「ええええっ?! そうなのッ?! なになに、国王陛下の忍びなの?」
「…………そうじゃない、けど」
「え?! そうじゃないの? じゃあ誰の忍びなの? 慧殿下――――なわけ、ないよね」
「…………」
どう言えばいいんだろうか。
――――上手い言葉がみつからない。
柴崎は俺の忍びだと思う――――ずっと俺の傍に付いているのは確実なのだ。だけど柴崎は俺の言うことを聞くわけじゃない。初めて姿を見た時はこっぴどく怒られた。『あたしは、あたしのものだ!』と言っていた。
…………どういうことなのだろう…………。
柴崎には一般的な【忍び】の概念が当てはまらない。
【忍び】には普通、浄化の力なんかない――――血を吐く程の訓練したとしても【忍び】は決して浄化の力は持つことが出来ない――――【忍び】は【非人】だから。
生まれ持って闇の血筋だったり、人の道理から外れた犯罪行為をした者――――穢れた血を持つ者なのだ。
穢れた血の保持者は、決して浄化の力を得ることが出来ない。
浄化の力は、司祭や巫女、それに匹敵する清らかなる血の持ち主でなければ使うことが出来ない力だ。
だけど饕餮の実体そのものすら消し去ろうとしたあの力は、とんでもない浄化の力だった――――……
「…………けどさ、昔は柴崎、一緒に遊んでたよね?」
「――――――――え?」
笠原の言葉に、唐突に思考の渦から現実に帰ってきた。
――――今、笠原はなんて言った?
「あれ? 違った? …………なんかさ、昔……ホントにまだ小さかった頃だけど、お父さんにくっついて宮殿に行くと決まってあんたと――――もう一人、女の子と――――よく3人で遊んでたよね?」
「…………女の子?」
「うん、……あれ? けど……うん、女の子だったと思う――――あたしのお母さんね、本当は女の子らしい女の子が欲しかったんだ――――あたしみたいなんじゃなくて。…………その子がお母さんの理想の女の子そのものみたいな子でさぁ――――だから、なにかって言うとその子を引き合いに出して【あんなふうになりなさい】【見習いなさい】って耳にタコが出来るくらい言われ……てた、気がする。うん、確かにそうだったと思う。
…………あれ? けど……そういえば…………その子、どうしたんだろ? どんな子だっけ? 名前とか――――あれ? …………なんかすっかり忘れちゃってるね。小さい頃の話だしなぁ……そう言えば、いつの間にか会わなくなったよねぇ。
でも、あれって柴崎じゃないの? 柴崎は小さい頃からあんたの傍に居たんでしょ?」
「…………小さいって言っても…………大体、忍びは【忍び】としての技能を身に付けてからでしか【忍び】とは認められん…………」
「あ、そっか! そうだよねー。じゃあ、誰だったんだろ? 宮廷にいる人達って身元が明白な人ばかりじゃない? …………けど、あたし達と同じくらいの女の子が宮廷に居たなんて記録なんてなかったよねぇ? あの子は、あたしみたいな訪問者じゃなかったよ、絶対!」
――――笠原の記憶は当てにならないが、手塚の記憶にもなかった。
だけど、妙に引っ掛かって――――というより、モヤモヤと霧がかったように何かが見えそうで見えない気持ち悪さを感じる。
――――確かに、居た、……ような気がするのだ。思い出してみれば確かに
同じ頃の年頃の娘と言えば……、「……中澤……じゃないのか……?」と言いながらも手塚自身スッキリしない。
中澤毬江は柴崎を初めて見た後で宮廷に来た娘だ。手塚は10歳――――もちろん、一緒に遊んだ記憶はない。記憶はないが、彼女くらいしか当てはまらない。
「毬江ちゃんじゃないよ。だってあたし達が5、6歳くらいの頃の話で――――その頃はまだ毬江ちゃんは宮廷には居なかったでしょ? ……それにあたし達が5、6歳って言ったら毬江ちゃんはまだ3つやそこらだし、とてもまだあたし達と一緒に遊べるような年齢じゃないよね。
――――居たんだけどなぁ、誰かが…………一緒にかくれんぼしたり、ごっこ遊びしたりしたんだよ――――うん、したよ、確かに――――すっごく隠れるのが上手くてさ、あたしと手塚で必死に探しても見つからない時があって……だんだん暗くなってきて、あんた、半泣きになりながら必死にその子の名前呼びながら探し回ってたこともあったじゃん! ほら……『なんとかちゃん、出てこいよう』って……。~~~~あー…誰だったかなぁ?! 名前……名前……【柴崎】じゃなくて――――」
「……………………」
妙に胸がざわつく。

なんだ?

笠原に言われて――――確かに、誰かが居たような気がする。
笠原の話は俺をからかうような内容になってきたけれど、気にする余裕がなかった。

まったく思い出せない。

…………柴崎、なのか?

いや――――けど……そもそも柴崎は―――― 一体いつから俺の傍に居たんだ?
5歳や6歳――――そんな頃から俺の傍に居たんだろうか?

正直、柴崎がいつから忍びとして傍に居たのか、俺は知らない。
いつから気配があったのか――――思い起こそうとしても、あまりに小さな頃の記憶で思い出せない。

なんだろう…………。
胸騒ぎに似た感覚が湧いてきて、息苦しくなるくらいだった。
笠原を下ろして少し休む。
俺の頭の中はすっかり混乱してるのに、笠原ときたらお構いなしに追い打ちをかけてくる。

「そういやさ、……あたし達ってホント柴崎のこと、何も知らないよね――――柴崎の名前すら知らないとか。……ちょっと寂しいなぁ……まぁ【忍び】ってそんなもんなんだろうけど。本人達も生まれや育ちを知られたくない人が多いもんね――――。そういえば柴崎、あの時、眼帯と一緒にこんなの持ってたよ? 眼帯外してたじゃない? 外して自分で手に持ってたみたいで――――饕餮がこっちに向かって倒れた時に小牧少将に抱えられた柴崎の手から落ちたのを見て、拾いに行って――――それでヘマしたんだけど…………。あの時は一瞬、キラッと光ったように見えたんだけど、気のせいだったみたい。なんだろうね、この石――――忍びの印みたいなものなのかな?」
そう言って胸元から取り出した。
笠原が差し出したものを受け取って――――見つめる。

柴崎の眼帯。そして――――水晶?

一瞬、なぜだか水晶のような気がした。
いや、絶対に水晶じゃないけど。
水晶といえば司祭や巫女が身に付けておくもので――――王族の御魂と同じく、聖職者であるという証だ。
だけど、そういう代物だから正式な手続きを経て譲渡されるわけで――――水晶の持ち主は身元も素性も明確にわかっている。記録として過去の人々の名前まで残してある程の代物なのだ。
中澤が水晶を受けた時に記録を繰ってみたことがあるが、最近の記録に見知らぬ人物の名が記載されていたなんてことはなかった。そこに名を連ねているのは、手塚も見知っている現在も(いまも)宮廷に居る人物の名前ばかりだった。
それに――――それに、これはどう見たって水晶じゃない。
なんで水晶みたいだって思ったんだろう?
澄んでもないし輝いてもいない。
そもそも球体ですらなく半分程は欠けている。――――綺麗に割ったのではなく、落として無造作に割れたような歪な半球――――ヒビも何本か入っているのがわかる。
煤けたような濁った石だ。
なんなのだろう…………だけど、笠原が気になったように、確かに自然界に存在するその辺にある石ころとは絶対的に違う。違うが――――だけどアクセサリーとして柴崎が好んで身に付けていた、というものでもない気がする。
マジマジと見つめた。
見つめていると、煤けた石の中――――煤が蠢くような気がしてゾッとした。
ゾワリと煤が集まり闇色が深くなったような気がして――――思わず放り投げたくなって、必死に堪える。
悪寒だろうか、嫌な感覚が身体を突き抜ける。

――――と、突然、目の前の笠原が、トサリと前のめりで地面に倒れた。

我に返って、慌てて笠原へ駆け寄ろうとして――――急に目が霞んだと思ったら、膝から力が抜けて手塚も地面に倒れ込んだ。



……To be continued.






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05:10  |  *『図書館戦争』二次小説  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

★12月ですよ、恐ろしいですね((((((--;)

ママ様

ホント、もう12月……11月からなぜだか忙しかった私には恐怖です。
今年やり残したことのないように、後1か月頑張りましょうね、お互い…。
このお話は年内には終わらないのは確実ですね…………うーん、早くラストが見えるところまで辿り着きたいものです。。。

恐らく、背負われてた郁ちゃんは、(暇だし(笑))手塚の顔を覗き込んだりしながらてくてく歩かれる道を過ごしてたんだと思うんですけど、ぼーっと手塚が歩いてることが多いから「ははーん、考えてるな」って思ったとか思わなかったとか(笑)
まぁ、ふっかけたとかもあるでしょうけれど(苦笑)
良く考えたら、このお話の中の手塚も郁ちゃんも、恋愛経験ゼロなんですよねー。
ああ柴崎もだ★
なので、恋愛経験ゼロの3人が、既に恋心は持ってるのにって状態でモヤモヤしてるんですよねぇ(苦笑)
このモヤモヤに気付くのは最後の方になると思いますが、気付く前に、もう少ししたらちょっとややこしくなりますが…………まぁ、ウチは安定に揺るぎはないので最後はちゃんと元鞘です(ネタバレかいっ!)

柴崎のヒミツはまだヒミツで(苦笑)
今回は郁ちゃんでしたが、ポロポロと少しずつ「柴崎」のエピソードは今後も出て来ます。
なかなか明かせずごめんちゃいです★
> 柴崎が忍びになったのは浄化の力を持ってる事から闇の血というより……
ここ! 丁寧に読んで下さってありがとうございます!
そうなんです、浄化の力を持ってるってことは、闇の血筋ではない、ということは間違いないです。
そのあたりの説明がなかなか入らないし、ホントパラレルモノをちゃんと世界の説明もしながら話を進めていくって難しいな……と痛感してる私です。わかって下さって嬉しい…!!
ということで、続きは次回。
そうですねー、ママ様の心配が私も心配です。
でも、最後はハピエンなので大丈夫ですよ(ってネタバレかいっ)

ツンデレラ |  2017年12月02日(土) 05:50 | URL 【コメント編集】

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 |  2017年12月01日(金) 10:10 |  【コメント編集】

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