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2017.10.25 (Wed)

≪背中の靴跡シリーズ≫ 『1つだけの願い』~vol.2~

≪ 1つだけの願い~vol.2~ ≫背中の靴跡シリーズ

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完全オリジナルパラレル。vol.1からの続きで【手柴、初めての出会い】シーンからです。
出会いは15歳。現在は、手塚・柴崎・笠原は18、19歳。それに伴い、堂上・小牧が23、24歳くらい。大体はそれに便乗する年齢で。……ただ、今回は出て来ませんが、毬江ちゃんは便乗年齢よりも少し上の15歳くらいでお願いします。






【More・・・】

≪ 1つだけの願い~vol.2~ ≫背中の靴跡シリーズ


濡れた衣服は急速に体温を奪う。
しかし、そんなことよりもその時の俺は、どう柴崎に謝ればいいのか、ただそれだけでいっぱいだった。
柴崎の名を呼びながら、謝罪の言葉を口にしながら、闇雲に森の中を彷徨い歩いた。
手足の感覚がなくなり、震えに歯の根が合わず言葉も上手く出せなくなってきた頃、護衛や付き人達が俺を見つけて保護した。
後から思えば、柴崎が連絡を入れてくれたんだと思う。
そうでなければ、そろそろ寝床に入る時間に誰にも見られずに外に出た俺を、そこまで時間は経ってはいないのにあの大人数で俺を探す為に森なんかに入らないだろう。
冷え切って動けなくなっていた俺は、そうして保護された。
…………情けなくもそれで風邪を引き、高熱が出た。
朦朧として見る夢は、柴崎が消える夢。柴崎が自らを剣で刺して死んでいく夢。等…
柴崎を失う夢ばかり。
怖くて飛び起きるのに、起きても夢を見る。
柴崎を失うのは俺のせいだと、すべて俺が悪いんだと、俺はわかってる。
わかっているのに、謝ろうと思うのに、まったく言葉が出ない。
怖くて怖くて、怖くて――――なのに、柴崎が消えていくのを、柴崎が死んでいくのを、ただ見ているだけしか出来ないのだ。

後から聞けば、丸2日間、俺は高熱にうなされていたらしい。
熱に浮かされて、寝ても起きても苦しげな寝言やうわ言をずっと呟いていたという。
手足の指先は凍傷まで起こしていたし、高熱だけでなく肺炎まで起こしていて、王室付きの医師に診て貰っていたが薬がなかなか飲めず、時間が経つに従ってどんどん体力を失っていく様子に周囲をかなり心配させたらしい。
命にも関わるのでは……と、重い空気が漂い始めた2日目の夕刻。父王の勅命で呼ばれた者が極秘で訪問し俺の容体を診てくれたらしい。
誰も姿は見なかったというが、その後、急速に俺の様子が落ち着いて、ようやく胸を撫で下ろしたんだそうだ。
――――それが柴崎のお蔭だと、俺は知ってる。
いや、知ってるというか――――あれが夢でないことを願っている

     *

喉が焼け付くようだった。
顔が熱くて堪らない。コメカミから汗が流れる。
なのに、汗が伝う感触すら、寒い。
寒くて全身の震えが止まらない。

柴崎が居れば……

それだけを思う。
思うと、柴崎の影が現れる。
ああ、居る……
居ると思って手を伸ばすと、俺が掴むところから柴崎の影が消えてゆく。
俺が触れると柴崎が消える。
俺が求めると、柴崎は消える。
慌てて手を離すけれど、俺が触れた所から順に柴崎の影が消えてなくなる。
消滅してしまう。

ごめん。

俺が触れなかったら。

俺が求めなかったら。

お前が消えたのは俺のせいだ。

謝ろうと思うのに、喉が焼け付く。
なんとか声を出そうとして、ヒュウ…ッ、と嫌な音が鳴る。
苦しくて咳き込む。

目を覚ます。

目を覚ますと、血塗れの片腕を持った俺に気付く。
どうなってるんだ、と視線を上げれば、悲しそうに笑う柴崎が居た。
柴崎の大丈夫な方の腕が優雅に動いた――――と思った次の瞬間には、躊躇うことなく自らの心臓を剣で貫いていた。
俺の視界が真っ赤になる程の、出血。
柴崎から噴水のように吹き出す。
柴崎の全身を真っ赤に染め、柴崎の足元には血の池がどんどんと大きくなってゆく。
柴崎の身体がその池の中に沈んでいく――――溶けてゆく。

柴崎…ッ!!!!!

そう呼びたいのに、叫びたいのに、声が出ない。
柴崎に向かって踏み出したいのに、身体が鉛のように動かない。
柴崎の身体はあっと言う間に溶けてなくなった。
柴崎の細い細い手首だけが、俺の手の中に残ってる。
白くて冷たい、細い手首。

柴崎……

しばさき……

「……だから、風邪引くって言ったでしょ。思ったよりあんたってバカなのね。……あら? それで言えばバカは風邪引かないのに変よね」
冷たくて小さな掌が額から去っていく気配。
ボーっとして考えられない頭に、これまでの夢にはなかった音が飛び込んできた。
のろのろと、何事かと考えようと思うけれど、まったく頭が働かない。
重い瞼をこじ開けると、白い小さな顔が覗き込んでいた。
相変わらず独眼で口元は覆っていて、よくわからない。
わからないけれど、柴崎だとわかる。

柴崎? どうしてここに……

尋ねようと思って、ヒュル…ッ、と息が鳴ったと思ったら息が出来ず咽る。咳き込みに胸が痛んで、苦しい。
――――焦る。
柴崎が居るのに、また俺は声が出なくて……

柴崎が…っ……

しば…っ……

声を上げたいのに、ゼェゼェとざらついたような吐息音が口を吐くだけ。

「…………確かに、これじゃあ薬が飲めないわよね」
そう言いながら、柴崎の手が俺の首筋に触れた。
冷たい――――だけど、心地いい。
ホッとする。
「――――先に、呼吸を楽にする薬を塗っておく方が良さそうね」
そう言うと、手早く俺の胸元を開いた。
外気の冷たさに全身に震えが走ったのも束の間で、すぐに柴崎の小さな手が俺の胸元を撫でた。
温かな軟膏を刷り込んでいく手付きに、寒さではない妙な感触にウズウズと変にこそばゆかった。
その手は胸元を塗り終えると、そのまま首筋の方へと上がってきて、首元まで軟膏を刷り込んでゆく。
奇妙な感触が下腹部の方でうねるように集まる気がしたが、変化を感じる前には離れていった。
何事もなかったように、俺の胸元も綺麗に整えてくれる。
…………なんだったんだ、さっきの…………
と思っていたら、柴崎が膝を付いて立ち上がろうとする気配がして、慌てた。
――――もう行ってしまうのかと思った。
柴崎を捕まえようとして起き上がり、捕まえたら消えてゆく悪夢の数々を思い出して躊躇った瞬間に、無理矢理起こした上体に関節がギシギシと悲鳴を上げるのがわかった。
痛みにまた呼吸が狂って、咳き込みが止まらない。
…………くる…し…い……

――――と。
鼻腔から柔らかな香りがした。
背中にくすぐったいような優しい手の感触。
「……バカね、ゆっくり息を吐いて――――少し口を窄めて」
驚いた――――驚いて一瞬呼吸を忘れた。
咳き込みが止まる。
俺の背中に腕を回して、距離感ゼロの距離に柴崎が居る。
「ゆっくり、息を吐くの――――」
…………そう言う、柴崎の吐息が俺のすぐ傍で――――柴崎に合わせてゆっくりと息を吐く。
そして、柴崎に合わせてゆっくりと息を吸う。
柴崎の香りが鼻腔から入ってくる。
魔法の香りのようだった。
気持ちが楽になる。
――――これは、少なくとも、悪夢じゃない。
俺が触れると、柴崎が消える夢ばかり見ていた。
だけど、この柴崎は違う。
俺が掴まなくても、柴崎の方から俺に触れてきてくれた――――
すぐ傍に柴崎が居る。
柴崎の方から寄ってきて、傍に居てくれている。
咳き込みが治まってくる。
はぁはぁと呼吸するだけで精一杯で息苦しさはあるけれど、だけど心は穏やかで安心する。
上体を起こしているだけなのにふらつく身体を、柴崎に少しだけ体重を預けてみた。
華奢なのに温かく柔らかい感触。
柴崎の優しい香り。
「……薬糖湯、飲める? 脱水も起こしてるわ。熱冷ましの前に、まずこっちから…甘くて飲みやすいしね」
そう言って差し出された湯呑。だけど受け取ろうと手を上げるのも億劫で、なんとか腕を上げてみたけれど震えが酷くて上手く受け取れる自信もなかった。
柴崎も気付いたのだろう、すぐに諦めて匙で救って俺の口元に運んできた。
柴崎に看病されるなんていう恥ずかしい構図。
まるでガキみたいじゃないか、俺。
――――そう思ったのも束の間で、数口は上手く飲めたもののすぐに咽込み始めるようになり、匙一杯の薬糖湯すら上手く呑めない。
はぁはぁと自分の呼吸音が耳鳴りのように木霊して、その雑音にどんどんと思考も何もかも奪われていき始める。
必死に見開いていた重い瞼も、ともすれば落ちそうになる。
…………いやだ、柴崎を見ていたい…………
それだけを必死に思って、なんとか抉じ開ける。
抉じ開けて柴崎を見つめていたいのに、気が緩むと意識が朦朧として遠退きそうになる。
またグラッと船を漕いだ。
慌てて必死に目を開けようとして――――
唇に、柔らかいものが重なる感触。
送り出される温かい液体。自分ではない舌の動きが自分の口内に感じる。
――――何が起こったのか、わからなかった。
ゴクリ、と俺の喉が鳴るまで、その温もりは離れていかなかった。
呑んだ後少し咽たけれど、すごく楽に呑み込めた。
離れた熱。
薄紅色の可憐な花のような唇が見えた。
口元の布を取った柴崎の顔――――絵画のように整った、完璧に美しい少女だった。
「……飲めたみたいね。じゃあ次は熱冷ましと呼吸を楽にしてくれる薬湯だから、味は悪いけど我慢しなさいよ」
そう言うと、その唇がまた液体を口に含んだ。
近付いてくるのを凝視する。凝視するのに視界に入りきらずに結局最後は目を瞑ってしまう。
確かに苦い薬湯だ――――なのに、その感触の甘美さに、口内を弄る柴崎の舌の動きに身を委ねる。
――――なんだ、この感触――――
ゴクリ、と飲み干すと、また柴崎は離れてゆく。
それが残念すぎるとか、自分で自分が良くわからない。
――――薬を飲ませて貰ってるだけだろ?
離れていった熱に、柴崎を見たくて目を開く。
なぜか、柴崎の唇から目が離せない。
もう薬湯はないのに――――苦い薬湯の筈なのに、もっと欲しいと思ってしまう自分が信じられない。
見つめる唇が動く。
ただただ見つめてしまう。
「……ん、ちゃんと飲めたわね、エライじゃないの。――――じゃあ横になって……」
「……………………いやだ……」
「は? 何言ってんの、ちゃんと――――」
「俺が寝たら行くんだろ? …………いやだ、寝ない……」
「何言って――――」
「いやだ。……せっかく――――せっかく傍に居てくれるのに。……寝ない、寝たくない、嫌だ…」
言いながら感情が昂る感じがして、身体が付いて行けずに咳き込む。
こんな感情のまま駄々漏れなんて恥ずかしいばかりなのに、形振り構っていられないくらい追い詰められた気分だった。
はぁはぁ、ぜぃぜぃと、また呼吸音しか出なくなる。
――――体調が悪いからだろうか、ガキみたいに、自分の感情に我慢が出来ない。
こんな自分勝手なことばかり言ってたらまた柴崎は行ってしまう、そう思う自分も居るのに、どうしても止められない。
「…………たのむ、よ……行くな…………いかないで、そばに…いて…………」
言いながら世界がグラグラと揺れだした。平衡感覚が怪しくなって、必死に柴崎を掴もうと手を伸ばしたら、上体が傾いて倒れてしまった。
「――――光ッ!!!」
はぁはぁ、と呼吸音が精一杯。
でも、どうしても柴崎に伝えたい。
朦朧とする意識の中で必死に言おうとしたことは覚えてる。
掠れた声、ぜぇぜぇと途切れる言葉。
果たして、ちゃんと言えたかどうかはわからない。

命令じゃない。
願いなんだ。
お願いだ。
傍に居て欲しい。
気配だけじゃなくて、姿を見せて、隣に。
ずっとずっと傍に居ただろう。
ずっと一緒に居たじゃないか。
気配だけのお前の存在をずっとずっと感じてた。
感じてるのに、触れられないことがもどかしかった。
――――お願いだ。
命令じゃない、これは俺の願い。
隠れないで。姿を見せて。
傍に居て。
…………なぁ、柴崎…………


夢じゃないと信じたい。
俺が回復出来たのは、柴崎が来てくれたからだ。

…………夢の中で柴崎を失いかけると、夢ではない柴崎の手の感触がして『消えてゆく柴崎は幻覚だ』と『柴崎は生きている』と、安堵することが出来た。縋るようにその感触がする方へ目を抉じ開ければ、黒曜石のように綺麗な独眼が深く優しい色をして常に俺を覗き込んでくれていた。
夢か現実か、朦朧としすぎてまるでわからない。
だけど、柴崎はあの後、一晩中付いていてくれたと俺は思っている。
汗を拭いてくれたり、額のタオルを取り換えてくれる柴崎の姿も、途切れ途切れながら記憶にある。
あれは、願望の末の幻覚なんかじゃない。
声が出なくて、出ても自分ですら聞こえない程掠れきっていたりして、言えたかどうかもわからないけど――――夢だろうが現実だろうが、寝ても覚めても、とにかく柴崎に謝罪とお願いを繰り返し繰り返し伝えようとしたことも幻想なんかじゃない筈だ。
『――――バカね』
そのうち、夢なのか現実なのか、柴崎はそう言って微笑んでいた。
気付けば、柴崎はもう、夢の中でも消えたり死んだりすることはなくなっていた。
時には陰から、時には背中合わせで――――顔は見えないのになぜだか『バカ』って俺に言う柴崎は優しく笑っている気がして――――俺を許してくれた気がしてホッとした。
傍に居てくれ、と夢の中でも何度も懇願した。その願いには柴崎は笑って応えてはくれなかったけど、途切れる記憶の中で微かに覚えてる柴崎の言葉がある。
『……必要だったら、こんな風に出てきてやるわよ』
なんて――――
生意気な口調。

少し夜空の色が明るくなった頃、唇にあの感触が再びした気がするのは、夢か現実か――――。

苦い液体を流し込まれた気がする――――だけど、柔らかで甘美な感触の余韻にゴクリと飲み干した。
飲み干した感覚に、慌てた。熱が離れていく――――……。
夢現ながらも俺は必死で、唇と同じく柔らかな華奢な身体を引き寄せた気がする。
『……ばか…』って柴崎の優しい声がくすぐったい程すぐ傍でして――――掴んだその温もりに安堵のあまり、その記憶を最後に温かな闇が俺を包んでいった。
すう――――っとそのまま、夢も見ない程深く眠りに就いたのだろう。
次に俺が目を覚ました時、部屋に差し込む日の光の眩しさに目を眇めた。
もはや昼も過ぎて柔らかな日差しが部屋中を包んでいた。
ぼんやりと、ただぼんやりとして、よくわからなかった。
――――何か物足りなくて――――ゆっくりと、ゆっくりと、錯綜する記憶を辿った。
唇に手を触れてみる。
何も変わりはない俺の――――だけど、柴崎の唇が触れたと信じたい。

来てくれたよな?

今、ここに居ない柴崎を思うと胸は苦しくなるけど、だけど、確かに――――……。
その証拠に、熱はすっかり下がっていた――――呼吸も楽で苦しくなく、自力で砂糖湯や薬湯を飲むことも出来るまでになっていた。
あの夢が本当じゃないのなら、こんなに急速に回復するわけない。
縋るように、柴崎が来てくれたと信じてる。
回復を始めれば、後は早かった。翌日には自分の足で動けるようにさえなったのだから。

皆からは散々な誕生日だったと言われたけれど、俺にとっては忘れられない15歳の誕生日。

とはいえ、柴崎は、それからもほとんど姿は現さなかった。

それでも、以前以上に柴崎が傍に居る気配は感じるようになっていた。
時折、柴崎の影を見ることもある――――。
「…………柴崎?」と声をかければ、そっと陰で俺の言葉を聞いてくれることもある。
ほとんどの場合は返事はないが、柴崎が必要だと思った時だけはごく稀に意見やアドバイスをくれることもあって――――その柴崎の言葉で事態が好転することが多かった。

柴崎はずっと傍に居る。
姿は見えなくても、背中合わせで気配を感じる。
これまでそうだったように、これからも。


     ***


これまで、それを疑うことはなかった。

――――なのに、その柴崎が自ら俺の元を離れて王都へと行ってしまったのだ。
あの時、柴崎が自らそう決意したことに、酷く動揺する俺自身に驚いたくらいだ。
途方に暮れるような、酷く覚束ない気がした。
――――俺よりも、王都の情報の方が大事なのか?
思わずそう柴崎を詰りたくなって――――何を言おうとしてるんだと自分で自分がわからなくなった。
俺は、何を――――

…………初めて会った時から3年の月日が経っている。
俺の腕も更に磨きがかかり、上官達に匹敵する程になってきている。
当然、自分の身はもう自分1人でも何の問題もなく守れるし、柴崎の力なぞ頼りにしていない。
力や武術だけならもはや、俺の方が柴崎より遥か上に居る。
現に、数度襲われはしたが、すべて撃退している。
柴崎が居なくても問題はない。
大体、柴崎は姿を現さないんだから、いつもと何も変わりないだろ。
居なくなった最初の頃は、負け惜しみのようにそんな言葉を頭に浮かべていた。
変わりはない――――。
変わりない…………筈、なのに。

――――ぽかり、と何かが足りなかった。

その喪失感の大きさに愕然とする程だ。

そんなわけない――――。
そう思って、いつも通りに振る舞っていたつもりだけれど、小牧少将にはアッサリと見抜かれた。
「……柴崎さんを借りちゃってごめんね」なんて言われて――――「別に、あいつは俺のものじゃないです」と返したら「そういうところが、柴崎さんは気に入ってるのかな?」と言われてなぜかドギマギしてしまった。
お蔭で言わなくていい柴崎とのエピソードまで話す羽目になってしまい――――小牧少将と柴崎は、どこか似てると改めて思った。


その柴崎が帰ってきたと笠原は言う。
帰って来た柴崎が一番に会うのは俺じゃないのか?
…………なんて思って、思ったことにまた凹む。
~~~~なんなんだ、一体!
自分で自分がわからない。
「手塚も一緒に覗きに行く?」
俺の葛藤なんか露とも知らず、能天気な笠原はそんな風に尋ねる。
その言葉に酷く迷う。
柴崎は、俺じゃなく、小牧少将に話をしに行ったんだ。
俺じゃない。
更に話から堂上少将も呼ばれたという。
――――柴崎がここに戻って、一番に会うのは俺じゃなかった。その上、二番ですらなかった。
その事実に、湧き上がる感情を持て余す。
…………汚い感情だ。
どうしていいかわからなくなる。
「――――どしたの、怖い顔して。……ああ、覗くって言っても遠くから見るだけだよ――やっぱ話までは柴崎と少将に悪いしさ。必要だったら教えてくれると思うし。……でも久しぶりだし柴崎のことはずっと心配だったし、会えるなら会いたいでしょ? いつもみたいに姿を隠して話をしてるのかもしれないけど――――けど、小牧少将と堂上少将だけ会ってたらズルイじゃん! 手塚は柴崎に会いたくないの?」
笠原の言葉に動揺する。
会いたくないの? と聞かれたら、即答する自分が居る。
会いたい。
会いたい――――けど…………。
…………けど、柴崎は俺に会いにきたわけじゃなくて…………
「ああもう、まだるっこしいなぁ! ほら、行こッ!!」
そう言って笠原に腕を取られて引き摺られる。
いや、本気で嫌なら引き摺られたりはしないのだが、迷う気持ちが足元の甘さに出た。
「~~~~い、いや…っ、俺はっ…!」
慌てて口では言い訳がましい言葉が出る。
が、ピシャリと笠原が途中で言葉を奪った。
「バレバレ! 会いたいって、モロ顔に書いてる! 柴崎のことをあんたが心配してたのは皆知ってるんだから、会いたいって言っていいんだよ!!」
事もなげに言う笠原に反論を試みようと思ってはみたものの、何も言葉が思い浮かばなかった。



……To be continued.







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05:10  |  *『図書館戦争』二次小説  |  TB(0)  |  CM(3)  |  EDIT  |  Top↑

★ファンタジーはご都合主義ですからね(苦笑)

yikumi様

今回もコメントありがとうございます!
いやー……このお話、まだ2話にして、書いてていいのかな?とかなり焦る程反応がないので、本当にコメント頂けて嬉しいです!!
【ひとり寝る夜~】も後半は反応少なかったですけど、なんとなく水曜日になると訪問してくれるアカウントは他の日より上がってたんで、【……一応、反応ないけど続きは読もうと思ってくれてる人が居るのかな?】と思っておりましたが(私にしたら結構前向きだなー(笑))、今回はそういうのもないんで(まぁ引っ越しもあるし当面不定期になるって自分で書いたのが悪いんですが★)、【……大丈夫? 続き要る??】とビクビクしてしまいますねー(苦笑)
あ、でも、こんなところで終わったらホント悲しすぎるので、ちゃんと最後まで反応なくてもいきますケドね(((((^^;)

> 最終回まで読み続けていくので、宜しくお願い致します。
ありがとうございますー!!!
yikumi様が付いて来て下さるのなら、それを励みに書きますよー!(笑)

> 互いを想い合う(?)というか気にし合っている微妙な関係の手柴がこれからどうなっていくのか非常に気になります。
ありがとうございますー!!
あ、まさにピッタリ★って思いました!!
気にし合ってる関係、なんですよねー。15歳当時。
18歳当時も、結局はまだ気にし合ってる度が増してるだけで、まだあんまり進んでない…………まぁこの場合、柴崎がほぼ現れないんで仕方ないんですけど!!
なので、もう少し今後は柴崎が現れるように仕向けないと…と思っております。
影に対してだと、淡い想いしか抱けないッスからねぇ……ヤレヤレ★(ってそんな風に書いてる私が悪いんだろってことなんですケド★)

> ファンタジーはある意味何でもありな世界ですから、考える幅は広すぎて、、、
ですよねー。ですよねー。
ファンタジーはホント、ご都合主義になんでも出来るので「えっ……そんなところに落とし穴が!!」的なストーリー展開とか、ホント、ファンタジーのお話に惹かれる所以だと思います。
私の頭では大したモンは書けないでしょうが、ホント、ファンタジー好きです、私ww
図書戦もある意味ファンタジーですもんねぇ…。あんな矛盾が合法化してる世界ないわっていう……(苦笑) でも、その矛盾をなんとなく肯定できる世界観を広げているところが、有川先生の凄いトコロですよねー!!

> 私が昨年リクエストした「記憶喪失」というワード……
「記憶喪失」というワードは魔法だな!と最近私は思っています。
なんていうんですかねぇ……大事なことを忘れてて、でもそれでも大事な人が大事な人だとわかるのか? っていうホント、その人自身を試されるようなことなので、とっても壮大でドラマティックにストーリーがなるのだと思います。
……って、そんな大そうなモンを私は書けませんが、それでも記憶がなくても大事な人を大事に想えるのかどうか……と言う点は、妄想するだけでキュンキュンします。
キュンキュンが形に表せるといいんですけどね…………ちゃんとそう書ける技量が欲しいトコロです。
今回は、「記憶喪失」と言う程ではないんですけど、まぁ……今後のお話を追って下さいね。

私もyikumi様と同じく、やっぱり、手柴のあの、お互いのことだけはとても不器用になるトコロが愛おしいです!!
とても気にかけてるのに、かなり近い距離にいるのに、なんとなくその距離をお互いが踏み込むのを躊躇う不器用さと自信のなさが、普段のなんでも卒なく熟す二人から想像出来ないのに納得出来てしまって、その不器用さも愛おしい……
いやもう、yikumi様の仰る通りのところが、大好きです!!!
手柴がマイナーとは思っておらず、世間の堂郁主流の中、堂郁があまりに多すぎてマイナーになっていますけど、手柴は王道ですよねぇ(((^^;)
もちろん、小毬も王道ですし(笑)
今回は、もちろん私なので手柴のお話ではありますが、堂郁や小毬のカップリングも出てくるので(まぁ……ちょびっとかもしれないけど)、いろんなカップリングも楽しんで貰えたら嬉しいですが、今後はちょっと渾沌としてくる展開を書いていくので(書いている最中が一番、【嫌なこと書いてる】って自分でもわかるので、なのに書くという、もうどうしようもない事態になりますが……★)…………また嫌だなァ、と思われる人が出てくると思いますが、絶対私は王道は王道で違いませんので…………。
yikumi様には、最後までお付き合いして貰いたいです。
到着点は、幸せな手柴を目指して書いていきますね~~~~!

ツンデレラ |  2017年10月26日(木) 07:08 | URL 【コメント編集】

★基本、わからない手塚(笑)

ママ様

いつもありがとうございます♪
> まだこの気持ちが恋だと知る前のお話。まぁ未だに解ってないようだけど(笑)
笑!
ですねー、もうウチの手塚にはセオリーになりつつある(?)【自分の気持ちがわからない手塚】(笑)
初対面の時は、恋というには淡すぎてわからなかった、と言われれば、まぁそうだろうな……と思うけど、3年経った今もわからないのはどうかと(笑)
でも、わからない手塚が好きwと思う、頭のイタイ私でした(苦笑)

> 多分生い立ちから女性は寄ってくるもので追い掛ける存在とは思ってない
これも、ウチの手塚にはセオリーですし、これは、どこの手塚にもセオリーですよね!(笑)
なので、このパラレル手塚もそれは当て嵌まっております~~基本的には性格は変えずにいきたいので★
まぁ、話が進めば、原作とは立場も違うからどうしても少しズレてくる部分はあるかもしれませんが……出来るだけズレずに書きたい!というのが私の希望なので……出来るだけ違わないように頑張りますねー!!

ようやく、ちょっと不思議な立ち位置の柴崎の説明が出来たということで(もちろん、これで全部を明かしたとは私も思ってないので、おいおい……まだ不思議なトコロは今後も出てくると思うし……)、次回から、ちょっと現在(18歳)の時代も動かしていきますねー。恐らくはちょっとずつちょっとずつ、な更新になりそうですけど…………
ママ様も言ってましたけど、元々手塚って女性の扱いがあまりに雑なんですけど(苦笑)、初めて出会ってから3年。精鋭部隊に入って3年なので、15歳の手塚よりは他人を想う気持ちは芽生えてます。
ちなみに、郁ちゃんとも3年の付き合い…………ですが、郁ちゃんのことは幼馴染設定(幼馴染って言っても、年に1~2回顔を合わす、と言う程度ですが)なので、それについては今後またどこかで書きますねー。
もうちょっと話が進んでくれないと、私もの方も、ママ様のコメントに受け答えしにくいトコロが多くてすみません…………なんせ、これから書くよー、と言うトコロが多すぎて(苦笑)
ちなみに、ママ様のコメントの最後の言葉が大爆笑でした!!

> 他の人にもバレてる自分の気持ち。ちょっと恥ずかしいよね(笑)
ですよねー!!!
超恥ずかしいですよ!!!
多分堂上さんにはバレてないけど(堂上さんは手塚と同じ括りだからなァ…(((((^^;))小牧さんにもモロバレだし、郁ちゃんにもモロバレ……郁ちゃんは自分の気持ちと堂上さんの気持ち以外のことは、よく見てますからねー。
まぁ、そのあたりも今後と言うことであんまり言えないので、なんせ更新していけるように、書きたーい!!!
引っ越し終わったら、書く書く書く書く……と只今呪文のようでゴザイマス(笑)

ツンデレラ |  2017年10月26日(木) 06:40 | URL 【コメント編集】

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 |  2017年10月25日(水) 08:13 |  【コメント編集】

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