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2017.10.06 (Fri)

≪背中の靴跡シリーズ≫ 『わかっちゃいるけど』~『ひとり寝る夜の明くる間は』番外編~

こんにちはー。
こんな時間にアップップ~~~~苦笑
たった今、ようやく上がった出来立てホヤホヤです。誤字脱字、変な文章があってもスルーでお願います。

先日、「次は新しいお話で」って言ってた癖に、番外編……(苦笑)
すみません!!!
オフ本作業に手間取っていまして、新しいお話を書き出す時間と余裕がなくて★
まだ、オフ本作業が続いておりまする~~~~(大汗)
新しいお話は、パラレル世界のお話の予定なので、設定やら何やらいろいろと最初にある程度世界観を盛り込まないとまったく訳の分からないお話になってしまうために、やっぱりある程度時間がある時でないと書き出せないんですよね……。
今、その時間がなく…………。
あと、今月末に引っ越しが決まりましたので、引っ越し準備もしないといけなくなってきてアワアワしております。
ちょっと今月は全然読めない状況になってきたので、温かくのんびりとブログの方は見守って下さるとありがたいです。
ごめんなさいねー。

というわけで、申し訳ないので、今日はせめてもの……と思い、『ひとり寝る夜の~』の番外編です。
これまで、柴崎の体調を最優先にしてきた手塚ですけれど、晃ちゃんの出産を機に、麻子サンにベッタリになっていった光クン(笑)。
そのあたりの心情と言うか、どうして麻子サンへのスキンシップを隠さなくなったのかっていうあたりのお話。
まぁ、「こういう理由で!」っていう理由はないんですけど、なんとなくこういう日常を送っているうちに、どんどんと「俺の麻子だからな!」と周囲に主張したくなっちゃったのかなー? なんて思われる下りです。
なので、『ひとり寝る夜の~』の晃出産後、2カ月ほどあたりのお話です。
ちなみに、晃出産後の手柴初えっちは、晃ちゃん4カ月頃なので、断食状態の手塚です(笑)。
社会情勢的には、まだ武装解除までは言っておらず、検閲での武器弾薬の禁止、くらいの頃でしょうか。
(柴崎が図書隊復帰の頃にようやく、武装解除が決まった、くらいのお話ですので……)

こんなどーでもいー番外編ですが、お楽しみいただけたら幸いです(*^^*)
追記よりどうぞ♪






【More・・・】

≪ わかっちゃいるけど~ひとり寝る夜の明くる間は番外編~ ≫背中の靴跡シリーズ


静かに玄関を開ける。
灯りは点いているけれど静かな家。
心の中で、ただいま、と声をかけながら寝室を覗く。
――――今日は遅くなってしまった――――
夜の10時を過ぎている。
官舎はどうしても扉を開けるだけでもギイ…と軋んだ音が鳴る。
だけど、寝室の中の人は身じろぎもなくてホッとした。
大きなベッドの中の小さな人影を覗き込むと、1人だけじゃなかった。
麻子に抱き包まれるように、晃も。
肌蹴た胸元――――いわゆる添い乳をしていたんだろうと思う。
いやらしく麻子の片方の乳房だけが見え――――ゴクリと生唾を呑み込んでしまう。

正直、巨乳の類に入るよな?

出産で女性の身体は変化する――――それはお腹だけの話じゃなかったのだ。
妊娠後期に入って、麻子の胸元が明らかに大きくなった。
なんというか……もう、そこを見ずにはいられないくらい、目を引く程に大きいのだ。
元々福与かで柔らかい胸――――華奢な身体からすれば、想像以上に豊満と言えるバストではあった。
それが更に大きくなって――――大きいのに垂れたりせずに張って突き出しているから、余計にその大きさに目がいくんだと思う。
言わせて貰えば、俺は、別段巨乳好きというわけじゃない。
いや別に、貧乳好きでもないけど…………っていうか、バストとか本当にこれまではどうでも良かった。
けど、麻子のはどうしても気になるんだ。

そして、今こんなにまでも、麻子の乳房に気がいってしまうのは、今もすぐ傍にいる晃のせいだろうと思う…………。

情けない。
情けないけど、麻子のこの胸を独り占めしてる晃を見ると――――正直嫉妬心のようなものが湧く。
晃の為だけに大きく膨らんだ麻子の胸――――俺の為じゃない、と思えば、悔しさのようなものまで湧くんだからどうしようもない。
ああ、くそ……今も、晃の手は麻子の乳房に触れたままで……俺だってまだ、この乳房には触れたことがないのに!

麻子にとって、妊娠も出産も、本当に命を削るような大変な出来事だった。
麻子を失うようなことになるんじゃないかと、ずっとずっとただただ不安で、麻子の体調を気遣ってきた。
出産を終えてからも微熱や貧血が長く続いて、本当に産後の肥立ちも思わしくなくて心配していた。
二ヶ月を過ぎて、ようやく少しずつではあるが晃にも生活リズムのようなものが出来てきて、少しずつ少しずつ、麻子の体力が戻りつつある…ような気配がし始めたこの頃だ。
正直に言えば、二ヶ月も経ったけれど、今もまだ本調子ではない。
今朝も微熱気味の麻子を心配しながら仕事に出た。
日中は高山が来て家事・育児を手伝ってくれるから大丈夫と麻子が言い張った。
早く帰って来たかったけれど、夕方になってから武蔵野第二図書館へ検閲の通知が入って対策に追われた。今では暴力的な検閲は撤廃されたけれど、たまに闇討ちのように検閲と称して多勢で押しかけてきては嫌がらせのように図書館を荒らしていく。今回は先に布陣を取れたので大した被害もなく済んだことは幸いだった。
高山から連絡もなかったし置手紙もなかったから、麻子の体調が悪くなったことはないと思うけれど――――そっと額を寄せたら、麻子が身じろいだ。
胸元が更に肌蹴て――――ドクドクと血が顔に上って、熱を計るどころじゃない。
真っ白な肌――――暗い部屋の中でも、ほのかにそれ自身が光っているかのように浮かび上がる。
揺れた乳房が、その頂が、零れて目に飛び込んで来た。

…………ドクン…ッ…!!!

誘ってるわけじゃないだろう――――だけど、目が離せず――――あの先に吸い付きたい欲情に駆られる。
正直、麻子がずっと体調不良だから……かれこれもう1年近く、俺はあそこに触れてない。

麻子が身じろいだせいで、晃の手が乳房から離れた。
――――今は、晃のものじゃない…………よな?
晃は寝てる。
さっきまで、あの麻子の真っ白な素肌に手を置いて寝ていたんだ。
まるで自分のものだと、俺を牽制するかのように――――……。
だけど、その手も、今はない。
真っ白な――――大きくなっても相変わらず綺麗なその胸の形――――正直、大きくなった分、この胸に顔を埋めて見たくなるような欲望まで湧く。
この胸に包まれて眠るのは、晃じゃなくて俺でありたい――――なんてバカな事まで考えちまうくらい……。
だって、反則だろ?
――――乱れたように片乳だけ零れてるなんて、煽ってるとしか思えない。

晃が寝てる今なら――――俺が吸い付いても許されるんじゃないか?

そう思って、思った自分の愚かさにまた身が焦がれる。
触れたい――――
ずっと、ずっと、ずっと、触れたいと思ってた。
麻子に触れたい。
抱き締めたい。
麻子を俺の欲望で満たしてしまいたかった。
…………もちろん、そんなこと、出来なかったけど。
体調を崩して辛い毎日を過ごす麻子にそんなこと、到底出来なかった。
ただただ、麻子の体調が楽なように、少しでもしんどくないように、それだけを願っていたのも真実。

欲望を抑え込んで、麻子の身体のことだけを想うことも苦ではなかった――――のに。

晃が生まれてからだ。
晃が生まれて――――晃は麻子の体調なんかお構いなしだ。
……わかってる、赤ん坊はそんなこと、わからないからだって、ちゃんとわかってる。
だけど、麻子に熱があろうと、貧血でふらふらしていようと、晃はお構いなしに麻子に抱いて貰う為に泣く。
そして麻子も、どれだけ身体がキツくても晃のことは最優先にする。

…………わかってるんだ。
けど…………少し俺の中で感情が暴れちまう。

俺の麻子なのに、って――――そんなバカみたいな感情。

俺はずっと我慢してきたのに、って――――そんなガキみたいな激情。

もちろん、表には出さない。
わかってるんだよ、頭では。
わかってる。
それが母子の絆で――――とうてい俺なんか、入る隙もない。
父子の絆とは違う、もっと深い――――命を繋ぐ愛情だってわかってる。
わかってるんだよ。
それが当たり前なんだって、本当にわかってるんだ。
けど。
だけど。
どうにも感情がまとまらない。
麻子に無理はさせたくない――――大事にしたい。だけど、晃はそんなのはお構いなしで――――そして麻子の愛情を一身に受けてるんだ。

なんなんだろう、この感情は……。

自分の小ささを知る。
だけど、どうしようもなく湧き上がる感情は確かにあって――――途方に暮れる。

目の前に、晃の手から解放された麻子の乳房がそこにある。

――――触れたいんだよ、俺も。

懇願するように麻子の寝顔を見つめる。

触れたい――――どうか……、
――――と思ったところで、気付いた。
気付きたくないけど、気付いてしまった。

さっきまでの感情の熱が少し下がって、冷静に額を合わせる。
そっと麻子の頬に手を添える。
表面は冷たい――――だけどずっと添えていれば麻子の内に籠った熱が伝わってくる。
朝の微熱よりも高い体温。
流石に麻子が身じろいだ。
「…………る…?」
とろん、と寝惚けたような麻子の声。このまま抱き締めてしまいたくなるけど、優しく抱擁するだけに留める。
「ん…、ただいま。……遅くなってごめん」
「…………ん……」
重そうに開く瞼。
頬に添えていた手で、髪を梳く。
「……熱、少し出て来てる。そんな格好で寝てたら余計に悪い。胸をしまってちゃんと布団に入れ」
「…………あ……」
寝惚けながらも自分の格好に気付いたのか、暗い部屋の中で麻子の頬が赤らむのがわかった。
慌てて胸を手で隠しながら上体を起こす麻子に、正直俺の身体の中で血が暴れる。
ベッドが揺れて晃がむずがった。
片手で抱き上げると、俺の腕の中で何事もなかったようにそのままスースーと寝ている。
麻子はそんな俺の目の前で大きな乳房を寄せて、ブラジャーの中にしまう。
ゴクリ、と喉が鳴りそうになるのを堪える。
残念だと溜息が出そうになるのも堪える。
誤魔化すように晃をベビーベッドに置いた。見ていたら触れたくて堪らなくなる。
晃はスヤスヤと眠ってる。
振り向いて麻子を見れば、肌蹴ていた胸のボタンを閉め、気まずそうな顔をして上目遣いで「……おかえり」なんて言うから、ただいま、と素知らぬ顔して返す。
そのまま額を寄せて、やはり熱を確認してから、そのまま軽く唇にただいまのキスを落とす。
残念だけれど、やはりまだ麻子に触れるには、麻子の身体に無理がかかりすぎる。
「薬は飲んだか?」
「……熱はなかったから……本当に、ある?」
「少しな。それに、これから上がってきそうな感じだ」
「そ……うかな」
「ん。……ちょっと寝息のリズムが早くなってた……少し辛いんだろ、身体。メシは食えたのか?」
「それは……そんなこと……、……あ、それより、光の方こそ食事は?」
「これから食う」
「あ、じゃあ……」
言いつつベッドから降りようとしたんだろうが、ふらついて固まるのを支えた。
立ち眩みか眩暈か――――、そのままそっとベッドに身体を横たえさせて掛布団を掛けた。
「高山が作ってくれてるのを温めるだけだから自分で出来る。お前はこのままもう寝てろ」
「――――けど……」
「自分のことくらい自分で出来る。今は、お前は自分の身体のことを一番に考えればいいから」
「…………けど……」
「病人にさせなきゃならんほど、俺は出来ない人間じゃないぞ?」
少し軽口交じりにそう言ったのに――――麻子の顔は強張ったままだった。
まだ眩暈でも酷いんだろうかと心配になって、麻子の頬に手を添えて覗き込みながら尋ねる。
「……俺のことはほっとけ。……それより、薬持って来ようか? 晃のことはもう俺に任せておけばいいから。夜中に泣いたらミルクをやっておく」
優しくそう言ったのに――――ボロリと麻子の大きな瞳から涙が零れた。
慌てて麻子が逃げるように顔を引こうとするのを、頬に添えた手で阻止する。
「麻子?」
「~~~~っ…! み、見…るな…ッ!!」
「麻子? しんどいのか? 大丈夫か?」
「~~だ…大丈夫ッ!! ~~あ、あたしは腫れものじゃないッ!!!」
「麻子?」
「~~あ…たし、あたしはッ、ひかるの奥さんだよッ!!! ひ、ひか…るの…ッ!!」
「麻子?」
タイミング悪く晃がむずがり始めた。グズグズと泣き始める。
一瞬、気を取られた隙に、頬に添えていた手を振り払われて、麻子が布団に潜る。
困って――――取りあえず晃をあやしながら麻子に声をかけてみるけれど、麻子は布団から出て来ないし返事もない。
困った――――と焦っているからか、晃も泣き止まない。
とりあえず、晃だけでも黙らせようとミルクを作りに一旦部屋を出る。
随分と慣れた授乳作業――――だけど、麻子のことでうわの空になる。

…………育児ってこんなんだっけ?

なんだかつまらない。
閑散とした部屋。
温めたミルクを晃の口にあてがうと、一応飲み始めた。
お腹が空いて泣いたわけじゃないからだろう、その飲みっぷりに必死さはない。
晃をぼんやりと眺めながらも、なんだか虚しさのようなものを感じる。
いや、晃が哺乳瓶から飲んでくれるのは可愛いとは思う。思うけれど、何かが物足りない。
少しミルクを飲んだだけで、晃は途中で寝てしまった。
ゲップだけはさせて、そのまま少し抱いてるとまたスースーと寝る。
座っていたリビングのソファーにそのまま寝かしてブランケットをかけてやると、麻子の薬と水を手にそっと寝室に戻る。
麻子はまだ布団に潜り込んだままだった。
眠っているかもしれない、と静かに声をかけてみる。
「麻子?」
返事はなかったけれど、掛布団を捲ろうとしたら抵抗されたから起きているらしい。
「麻子? どうした?」
布団の上に手を添えて、麻子を緩く抱くようにして話し掛ける。
しばらくそうしていたら、布団の中でしゃくり上げる気配がして驚いた。
まだ泣いてるのか――――。
「麻子? どうした? 言ってくれなきゃわからない」
そう言いながら、麻子の入った布団の塊を慈しむように包み込む。
随分と、そうして――――、どれだけそうしていただろう、くしゅん、とわざとくしゃみをしてみせた。
すると抱いていた布団が解けて、ようやく涙でぐちゃぐちゃになった顔が出てくる。
「~~ば、ばか…っ、か、風邪、」と言いかけた麻子を捕まえる。
「捕まえた」
慌てて「~~だだ、騙し…ッ…」と暴れる麻子だったけど封じ込めると、「こうでもしないと出て来てくれないだろ?」と覗き込む。
「……それに、俺が風邪引くかもって思ったら慌てて出て来てくれるとか…………嬉しすぎるだろ」と畳み掛ければ、頬を染めるから可愛い。
この可愛い奥さんをどうしてやればいいんだろう。
愛おしくて愛おしくて堪らなくなる。
布団ごと抱き締めて麻子の自由を奪うと、温かなその頬に軽く口付ける。
思わず、心のままに言葉が零れた。
「…………俺……幸せだよなぁ……」
――――と、突然、麻子が爆発した。
「~~~~どこがよ…ッ?!」
悲鳴のような言葉に、思わず唇を離して麻子を見つめる。
再び、ボロリとまた涙が零れた麻子は――――涙を隠す為か俺の胸に顔を埋めた。
「~~あ…たし……、なん、にも、……なにも、出来て、ない…っ!! あんたにッ!! ご、ご飯、も、高山さ……っ、あたっあたし…ッ、何も…ッ!!! ああ晃だって、あた…っ、あたし、だと、…な、なかなか寝、寝て、くれな…ッ!! あ、あた、あたしなん…かっ…」
うわあああああ、と堰を切ったように麻子の激情が溢れる。
麻子の激情を受け止めながら、麻子を包み込むように抱き締める。
――――産後、自分の体調が良くないのに、必死に晃の世話をしている麻子を知ってる。
微熱もずっと続いたし、眩暈や貧血に襲われている時でも、晃が泣けば授乳したり抱いてやったり、麻子自身まとまった睡眠が取れない日々だった。
麻子の体調が良くない時に限って、晃はよく泣く。
ひょっとしたら母親の体調の悪さを感じて泣いてるんじゃないかと……最近俺はそんな気がしている。
だけど悪循環で、晃が泣くとますます麻子は休めない。体調が良くないのに休めないから、熱が高くなったり、起き上がれないくらいの眩暈に襲われたりするんだ。
そもそもが悪循環から始まった麻子の育児だった。
産後、麻子の体調はずっと良くなかったけれど育児は待ってくれない。授乳――――体調が悪いと母乳の出も悪くなるという。その上、晃は早産児だったせいもあるのか吸う力がそんなに強い方じゃなかった。満腹になる程母乳を吸うわけではない晃は、必然的に授乳サイクルが早くなる。2時間も経たずに起きてむずがる晃の世話のせいで麻子は休む暇がなかった。体調は悪くなるばかりで――――体調が悪いから、ますます晃の育児が麻子を苦しめた。
…………産後の入院中にも、こんな風に自分を責めながら泣いたことがあったよな。
育児は一筋縄じゃいかない。
まして、赤ん坊にとって、母親は特別な、特別すぎる存在だ。
麻子の手から離れて、例えば高山や母さん、俺が世話をしてやる方が、晃は大人しい。
高山が最近、よく口にするのが、晃は二ヶ月にしてもはや母親に甘えてるんじゃないかと言う。
まだよく目も見えないというけれど、赤ん坊は母親が匂いでわかるらしい。
麻子が抱くと、ずっと麻子に抱いていて欲しいから泣くんじゃないかと言うのだ。しかも麻子の体調が優れなくて麻子から晃を離そうと思っている時に限ってよく泣く。
麻子以外の人間しか周囲に居ない時は諦めるのか割とすぐに寝てしまう癖に、麻子が抱くとなかなか寝ない上、一旦麻子が抱いているところを引き離すと酷く泣くから結局は麻子が堪えられずに晃を抱くのだ。
『……30分もすれば晃ちゃんも諦めてくれると思うんですけどね。その30分を麻子さんが我慢出来なくて、結局麻子さんがまた晃ちゃんを抱いちゃうから、晃ちゃんも泣けば麻子さんが抱いてくれるって思ってるんじゃないですかね』
そう言って苦笑する高山だった。
結局は、今の麻子は晃を放っておけない。
麻子にとって、今は晃が一番だ。
だから自分の体調が悪くても、微熱や貧血くらいだとふらふらしながらも晃の世話をする。――――今日だって、熱が上がってきて恐らく身体がきつかったんだろう。普段は添い乳で寝かしつけるなんてことはしない。あまり母乳が出ないとの自覚もある麻子だから、いつもはゆったりと座って時間をかけて晃に接するし、足りない分はミルクを足したりもしてる。
今日はそれすらもキツイくらい、身体がしんどかったんじゃないだろうか。
身体を起こすのもしんどいなって思うような体調で、それでも晃の世話をしようとあんな体勢で晃を寝かしつけようと添い乳までして、寝てしまっていたんじゃないだろうか。
――――悔しいくらい、母親なんだよ。
そんなに自分の体調が悪いのに、更に俺のご飯だとか、そんなことまで気にして――――……
「…………バカだなぁ……」
思わず零れた言葉に、俺の胸にギュッとしがみ付きながら麻子が唸る。
「~~~~ば、ばばか、って、なに…っ」
「――――バカだよ」
「~~~~な、ななに……っ!!」
少し荒っぽく胸に縋る麻子を引き剥がすと、麻子に圧し掛かるようにして唇を奪う。
あ、と開いた唇から一瞬にして舌を割り入れて口内を弄れば、やはり熱い――――微熱ではない熱を感じる。
だけど今は少し荒く口内を貪って麻子の舌の動きを封じて、その熱とは別の熱を煽る。
喘ぐような声が吐息に混じるまで執拗に攻めた。
「~~~~ん…ッ、……ゃ、ん…っ……」
麻子の体温が上がる。
まだまだ貪りたい気持ちは募るがようやく唇を離すと、麻子の潤み切った黒目がちな瞳が俺を映す。
ドクン、と血が滾りそうになるのを堪えつつ、だけど細くて綺麗な鎖骨に口付けを落とす。
「~~~~ぁ…っ、……んっ……!」
発熱とは違う熱が麻子の身体を巡り、麻子の身体が震える――――敏感すぎる愛おしい身体。
舌で麻子の素肌を辿るだけで乱れた呼吸の狭間に喘ぎが混じり、甘く熱い吐息を零す。
先に進めたくなる欲望を麻子の発熱を気遣うことで封じ込めつつ、鎖骨から首筋へはしっかりと欲情の印をいくつか刻み付けた。
麻子の身体から匂い立つような艶めく方向が漂う。くたりと力の籠らない身体を完全に俺に委ねてる――――。
ああもう、本当に堪らない!
……だけど、熱のある麻子にこれ以上のことは出来ない。
名残惜し過ぎるけれど、最後の印をつけて麻子の首筋から唇を外した。
「――――家事も育児も何もしなくていい、お前は自分の体調のことだけ考えてくれれば」
「…………っ、…な、……そ、そん…なの……」
「本気で言ってる。――――お前の体調が完全に戻ってこの続きが出来るようになるまで、お前が周りに甘えてくれる方が嬉しいんだ」
「~~~~なッ、ヤ、やだっ、そんなのッ!!」
「ヤダじゃない。それがお前の一番の仕事だ」
「~~~~仕事なわけないじゃない…ッ!! そん…ッ……」
煩い唇を塞いだ。
一度貪った口内は熱く、麻子の弱いところばかりを狙った。
麻子は全身で身悶えて鼻から喘ぎが抜ける。
すぐに呼吸が乱れて苦しげな吐息になるから、あっさりと唇を解放してやる。
咄嗟に麻子は言葉も紡げない。
「…………キスだけでこんなだろ? 自分で思ってる以上に今のお前は体調が悪い。自分で無自覚だから身体が悲鳴をあげてるのに気付かないで無理に無理を重ねる。本当に始末が悪い。
――――なぁ……俺や晃の為にも今は甘えろ。自分の体調だけに気を遣え。俺も高山もお前が早く回復してくれることを望んでるんだ。無理して大丈夫そうなフリをするお前を見たくないんだよ。むしろ、家事や育児は俺達に頼ってお前自身はゆっくり休んでくれた方が、俺達も嬉しいんだ。
……晃だってわかってるんだよ。お前の体調が良くないことを感じてるから、晃も泣くんだと思う。心配なんだよ、きっと晃も――――お前のことが心配だから、お前の体調の悪い時に限ってグズグズ言うんだと思う――――晃の為にも本当に万全になってやれよ」
「…………っ…………」
静かに、切実な想いを口にした俺の言葉に、麻子がしゃくりあげた。
ボロリ、とまた大粒の涙が零れる。
麻子の細い腕が、ギュッと俺に縋り付いてきた。
再び包み込むように抱き締めてやれば、胸を濡らしながら麻子の熱い体温と涙を感じる。
しばらくは声を殺して泣いていたけれど、う…、と小さく零れたらもう子供のような泣き声が止まらなくなった。

…………バカだなぁ…………

愛おしい。
胸元を濡らされながらも、麻子が泣いてくれることにホッとした。
こうして、俺には弱い自分を見せてくれるようになったことに感動すらする。
泣きじゃくる麻子を抱き締めながら、俺の心は温かく穏やかさに満ちていた。
時折、泣き濡れた声で小さく「ひかる」と俺を呼んでくれるから、嬉しくて可愛いくて堪らない。
――――体調が悪い時くらい、自分のことだけを考えてくれればいいのに。
でも、それが出来ないこいつの優しさや気配りは、身に染みて知ってる。
周囲のことにはいろいろと気がついてしまうこいつのことだ。本当はこんな風に動きたいって思う理想はあるのだろうが、自分の頭で思うようには麻子の身体が付いていかない。思うように出来ない自分自身を、麻子は責めてしまう。
それが積み重なると、時折こうして、麻子は負の連鎖に絡み取られて身動きがとれなくなってしまう……。
甘えてくれたらいいのに。
頼ってくれることが嬉しいのに。

「……ひ…かる……」

呼ばれる声が、だんだんと呂律が回らなくなってきた。
くたりと体重を預けるように俺に凭れかかってきている。
そっと少し麻子を抱き締め直して、少し麻子の体勢を横向けにした。
御簾のように顔を隠していた黒髪を手で梳いて避ければ、涙で濡れた顔が半分見える。
火照ったように熱い頬。
また少し熱が上がってしまったかもしれない。
だけどその顔は穏やかに眠っている。
無垢な少女のような、あどけない天使のような、和やかな寝顔――――だけど、麻子の首筋を辿れば、さっき俺がつけた印が赤い花弁のように散らばっている。
鎖骨から下は、以前にも増して豊かな膨らみ――――大きな大きな胸が、俺の胸や腕に密着している。
抱き寄せているから胸の形が変わってますます大きく突き出しているような――――と思ったら、ゴクリと喉が鳴りそうになる。

……この胸に触れることは出来るのかな?

麻子の体調が戻るまではお預けだとわかってる。わかってはいるけど、晃はこの胸に縋り付いて乳を吸っている訳で――――正直、晃と同じように吸ってみたい、なんて欲望が自分に湧くなんて思ってもみなかった。
だけど、ふと晃の授乳を見るたびに思ってしまうのだ――――麻子の乳はどんな味なんだろうなぁ…とか……。
麻子の乳の味を知ってるのは晃だけで――――俺だって麻子のすべてを知りたいのに――――なんて…………。
ゴクリ。
思わず喉が鳴って、慌てて思考を振り払う。
~~~~な、なに考えてんだ、俺…………。
だけど、無防備に腕の中で眠る麻子は愛くるしい。
このまま触れたってわからないんじゃないかとか、眠っている今なら大丈夫なんじゃないのかとか、俺の中の悪魔の囁きに唆されそうだ。
~~~~いやいやいやいや、……駄目だろっ……!!!
熱が上がってきてるんだ。
今だって、桃色の頬は発熱の証だ。
無理はするなって、今さっき俺自身が麻子に説いたところだろッ!
「…………る……」
ドキン、と胸が高鳴る。
まだ俺を呼んでくれてる。
――――呼ばれたその唇に、キスくらいなら許されるんじゃないか……?
どきんどきん、と鼓動が煩くなる。
麻子の可憐な唇に視線を奪われる。

――――キス、くらいなら…………

ドキドキしながら、そっとそっと顔を寄せた。
――――後、15センチ…………10センチ…………。

と。

向こうの部屋で晃の泣く声がする。
グッと堪えて、横抱きの麻子をそのままベッドへと寝かせる。あまりに晃が泣いていたら、またきっと麻子は起きて気にするだろうと思うからだ。
麻子はくたりとベッドに沈んで起きる気配はなかった。
――――多分、今日は相当身体が辛かったんだろう。
溜息が出た。
名残惜しくて、麻子の額にキスをして離れる。

~~~~くそ…っ、晃のヤツ、わかって泣いてるんじゃないよな?

思わずそう思いながら晃の元に向かう。
もちろん、赤ん坊だしわかってないとは思うのだが、タイミングが悪すぎるだろ…っ!
晃を抱いてやると、それだけでスーッと眠りに就きやがった。
可愛い寝顔なのに、なぜだか憎たらしく思える。

…………まさか、わざとじゃないよな? ――――なんて。

わかっちゃいるけど、なんだかそんな風に思えてくるんだ。

――――ひょっとしたら一番のライバルは晃なのか?

すやすやと腕の中で眠る我が子を見て、複雑な気持ちが湧く手塚だった。



 < Fin >






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13:57  |  *『図書館戦争』二次小説  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

★まさしくそうなんですー!

ママ様

> わーい番外編。だけど読み逃してたぁ(泣)

今、見にくくなってますからねぇ……すみません。
総集編Ⅲ発送までは、見にくい状態が続きますが、よろしくお願い致します…。

> 心中お察しします…というような出だし(笑)
ですよねー!
柴崎はコラ写真にて、C65とわかっていて(バストは85)、結構、3サイズがバッチリ暴露されているので、体型がよくわかるんですよねー(苦笑)
実在の人物だったらプライバシーの侵害!と訴えられそうです(笑)
なので、元々がCカップで、出産後は普通でEカップを想定していて、ブラジャーによってはFカップのものもある、ということになっています(「ひとり寝る夜の~」の世界では…★ やりたい放題だな!苦笑)

> 妊娠中も出産後も体調が悪かったから致す事なんか考えもしなかったけど、生乳を見たら……
ですよねー(爆笑)
生乳はアカンよ、麻子サン!!と私自身、心の中で叫んでおりましたよ!!(笑)
まぁ……しんどかったからこその麻子サンの姿で、高山さんでも見れない姿なのでしょうけれど(苦笑)
でもまぁ手塚に見られたことは、麻子サンにとっては一生の不覚!という感じではあったと思います(笑)
柴崎にとっては「~~~~っ! こ、こんな恰好見られるなんて、色気も糞もないじゃない…っ、あたしったら!!」と自分を叱咤だと思いますけどねー(苦笑)
でも、そうやって恥ずかしがるところがまた手塚には堪らんのでしょうけれど(笑)

基本的には、何でも出来てしまう柴崎なので、本当だったら自分が家事育児の主導権をキッチリ取った上で、手塚に手伝って貰う、という風にしたい人なんじゃないのかなって思うんですよね。
手塚を夫として父として、ある程度教育しようって気持ちはあるけど、それはあくまでも自分がキッチリとやって主導権を完全に取ってる上での話で。
でも、このお話の中の柴崎は、とてもそれが出来るような体調ではないので、そこが柴崎にとってのジレンマであり、悔しいトコロでもあり……という感じになってるんだと思います。
でも、このお話の柴崎は、きっと原作以上に「他人に甘えること」をこういう日常の中で身に付けて覚えていくんじゃないかなァ。そうやって柴崎に甘えて貰うことが他人にとって嬉しいことだったりするって学んでいくんじゃないかなァ。と。
そういう意味では、このお話の手塚の方が、原作の手塚以上に、柴崎のパートナーとしても父としても、柴崎と本当に対等にな存在になるのかもしれませんねー(苦笑)

> 子育ては親育てなんだから手塚を何でも出来る立派な父親にしてやって(笑)
名言ですね!!!
子供が出来て初めて「親」として0才からスタートですもんね!!
手塚も柴崎も、どっちも同じ「親」としてまだ2カ月…………これから、子供と一緒に成長していくんですよねー、親としても。
本当にそうだと思います!!!



ツンデレラ |  2017年10月11日(水) 06:27 | URL 【コメント編集】

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 |  2017年10月10日(火) 04:18 |  【コメント編集】

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