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2017.07.26 (Wed)

≪背中の靴跡シリーズ≫ 『ひとり寝る夜の明くる間は』~vol.70~

≪ ひとり寝る夜の明くる間は~vol.70~ ≫背中の靴跡シリーズ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
  歎きつつ ひとり寝(ぬ)る夜の 明くる間は
   いかに久しき ものとかは知る
         右大将道綱母(53番) 『拾遺集』恋四・912
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




【More・・・】

≪ ひとり寝る夜の明くる間は~vol.70~ ≫背中の靴跡シリーズ


――――やっぱ、無理をさせ過ぎた。

暑いな、と思って目が覚めた。
目覚めて一番に、麻子を腕の中に抱いている至福感に酔いしれそうになり――――麻子の身体の熱が高いことに気付いた。既に日は高い――――腕の中の麻子は逆上せたような頬の色をして、速く浅い呼吸を繰り返している。
――――無茶をさせ過ぎた――――……。
1回だけって思っていた最初の俺はどこに行った……?
頭を抱えるしかない。
いくら麻子から望まれた行為だからってやりすぎた。
麻子の中に入ってすぐキツイ締め上げに堪えきれなくて出しちまった後、そのままずっと繋がった状態で何回イッたんだっけ……。
思い出すと下腹部が疼く――――。
目も眩みそうな締め上げ――――動かずとも俺の激情を絞り出せと言わんばかりに蠢いて締め付けて来る刺激――――苛まれる快楽に我を忘れて、このまま一生麻子と繋がり続けていたいと望んだ。
麻子に無理な体勢は取らせまいと、それだけは唯一気を付けていたが――――麻子が意識を失う程に繋がり続けてしまった…………。
悪かった、と反省する一方で、最高だった、と思う自分が居るからまたどうしようもない。
――――最高に気持ち良かった――――それだけでなく。
最高に幸せだった。
身も心も一つになったような満足感と安堵感――――まさか、麻子の口から『好き』なんて言葉が聞けるとは夢にも思わなかった――――思い出しただけで下腹部がムズムズする。
『――――あたし、ひかるが――――光が、好き…………』
一生、この言葉だけを胸に秘めて生きていけるとさえ思う。
この言葉さえあれば幸せな気持ちに満ち溢れる。
――――思い出すだけで、感動に胸が熱くなる。
結ばれた想い――――。
思わず腕の中の麻子に抱擁したくなって、でも、そんな起こしてしまうようなことはしたらダメだと自分に言い聞かせる。――――出来るだけ、眠らせてやりたい。
昨日の麻子の疲労を思えば(情事のことだけでなく、杉谷に拉致された事件で麻子が精神的に受けた苦痛は相当なものだった筈だ)、少なくとも悪夢にうなされることなく眠れているならば、眠らせてやりたい。
情事より以前の昨日の事件に想いを馳せば、スッと頭が冷えて来て冷静に思考が回り始める。
抱いている麻子の身体から感じる熱――――37度台後半から38度台というところだろうか。
決して微熱ではない。
汗を掻いている感じはないが、麻子が起きたら水分を取らせて、出来れば何か食べさせて、薬も…………。
上体を起こすと、昨日麻子の中に居続け過ぎたせいで下腹部に甘い痺れを感じるが、幸せでしかなかった。
起きて麻子の薬と水分を用意して――――俺自身も喉の渇きを潤すようにコップに注いだスポーツ飲料をゴクゴクと飲み干した。

――――と。消音にしている携帯が震えていた。
図書隊からかと思ったが、見知らぬ番号――――怪訝に思いながらも出れば、警察だと名乗る。
「手塚光さんの携帯でしょうか。こちらは警察です。手塚光さん本人でしょうか」
「――――はい。警察が何か?」
「昨日の杉谷内閣副官房長官射殺事件について、捜査本部が新たに立ち上がりました。つきましては昨日の事件についての詳細を柴崎麻子さんに伺いたいのですが彼女の携帯が繋がらず――――今そちらにいらっしゃいますか」
冷たく慇懃無礼な声音――――思わず眉を顰めてしまう。
「居ますが――――体調を崩して眠っています。昨日の件については、事件現場に同行していた警察官の方がよくご存知だと思いますし、麻子も事情をきちんと説明して帰ってきました。警察内部には既に私達の事情聴取の資料があると思いますが」
「そちらももちろん参考にさせていただきますが、我々はまた我々独自でお聞きしたいこともありますので――――本日は出頭していただくことは出来ませんか」
「…………昨日の今日で、本当に疲れ切っているんです。発熱もしていますし――――無理ですね」
「……無礼を承知で聞かせていただきたいのですが――――ひょっとして今、体調を崩されている原因として『薬物の影響』ということは考えられませんか。柴崎麻子さんも薬物を使っていた可能性については」
思わず、電話口に向かって『ふざけるな!』と怒鳴りたくなるのを堪える。
努めて冷静に、淡々と…………怒りの滲む声音にならないように気を付ける。
「ありません。絶対にない」
「――――であれば、これから我々がそちらに行かせていただいて、尿など採取させて貰っても構わないでしょうか。柴崎さんの身の潔白を示す為にも是非――――」
――――容疑者かよっ!!
思わず怒鳴り付けたくなるのをまた必死に抑える。
必死に冷静な思考を巡らせて、提案する。
「事件後すぐ、麻子は病院で医師による診察を受けています。本日再度来院するように言われていますので――――なんでしたら病院の方へ検査データや診察についてお聞きになってはいかがですか。
私達は、病院から許可が下りましたら、警察へ伺わせていただきます」
「病院の検査項目とはまた違う話ですので。これから我々がそちらに行くことを拒否されると言われるのですね」
「――――何度も言いますが、彼女は今、体調を崩して眠っています。警察という組織は、病人の枕元にまで押しかけて叩き起こしてまで捜査をなさるおつもりですか。
…………こちらは逃げも隠れもしません――――ただ体調の回復を待って欲しいとそれだけです。昨日の事件がどれだけ彼女を消耗させているかご理解いただきたいだけです。こちらとしては出頭する意志もあります。
――――警察というのは、病人の体調が回復することを待つことも出来ないのでしょうか」
最後はかなり嫌味の籠った言葉になってしまった。
電話口の向こうでも嫌な雰囲気が漂っている。
「…………わかりました。病院側にはこちらから連絡を入れさせていただきます。…………必要に応じてはそちらにお伺いするかもしれませんが、その際は已むを得ない事情とご察し願います」
最後は冷たく言い放たれると電話を切られた。
…………怒りを吐き出すように、溜息が零れた。
「――――光……?」
ハッとする。
顔を向けると、リビングダイニングの扉口に凭れかかるように立つ麻子が居た。
頬だけは逆上せたように桃色だったが、顔色が悪い――――。
舌打ちしたくなる――――いつから居たんだろう、気付かなかった。
慌てて用意していたペットボトルと薬を手に取ると、駆け寄って身体を支える。
「……起きたのか。――――ベッドに戻ろう……熱がある。補水液を飲んだ方がいい――――何か食べられそうか?」
軽々と抱き上げた腕の中で麻子が首を横に振る。
やはり熱い――――またやり過ぎた情交に反省の念が湧く。
ベッドに下ろして俺自身も腰かけ――――経口補水液を飲ませる。こくこくとしっかり飲めていることにホッとした。解熱鎮痛剤も飲ませる。
「ほら、もう少し寝ろ――――」
そう言って寝かそうとしたけれど、麻子は腰に枕を当てがい凭れてはいるが上体を起こしたまま。
「さっきの――――警察から?」
「…………ああ」
「公安?」
一瞬、言葉に詰まる。
漏れ聞いた会話だけで様々な想像を巡らせたのだろう麻子の思考に舌を巻く。
「――――公安かどうかはわからない。警察だと言ってた」
「……まぁ……公安も警察だもんね」
苦笑しながら言う麻子に俺の方が訊いてしまう。
「――――公安が動きそうな気配があるのか?」
「…………まぁ……内閣副官房長官が射殺されたんだし――――しかも、薬物事件でしょ。政界が騒がしくなるんじゃないかしら――――あたしが犯人扱い?」
「~~~~いや、その…………、」
一瞬口籠ったものの、溜息を吐いて真実を伝える。
「…………お前も…………薬物を摂取してるんじゃないかって疑いをかけてそうな感じだった…………検査をしたいと言ってた」
「…………あたしが薬物乱用者で、杉谷は被害者になるシナリオなのかしらね。それとも、入手経路の捜査からいよいよ松和会に捜査の手を伸ばそうってことなのか…………」
――――なんだよ、それ。と俺が問うた時には、麻子は自分の携帯で連絡を入れつつ、「まだ、どういう動きがあるのかわからないから――――可能性を言ってるだけよ」とサラリと言う。
電話が繋がったらしく、麻子が喋り出す。
「――――ごめんなさい、お仕事中――――、昨日はお疲れ様でした。その件で聞きたいんだけど、そっちに新しく捜査本部が立ち上がったの?」
連絡先は麗華のようだ。
端的に要所を突いて話をする麻子は、とても体調を崩していて熱があるとは思えない。
だが、あまり詳細な返事は返って来ていない雰囲気――――また詳しいことが解ったら連絡を貰うことにして通話を切る。
立て続けに、また電話――――
「……柴崎です。――――はい、大丈夫ですわ。…………ええ…………では、杉谷の射殺については、内閣府の方でもまだ極一部だけにしか連絡は回ってないんですね? ――――ええ、そうですね、時間の問題かとは思いますが――――はい、ではマスコミは動くことはないですね。…………ええ…………そうですね。
…………それでお兄さんの方は――――、ああ…………なるほど。…………はい、また近々…………ええ、そうします。そちらの方は――――ああ、お兄さんから手を回して貰えると…………はい、わかりました。――――ええ……」
今度の相手は兄だとわかって、それだけで苛立ってしまう。
柴崎の問いに兄は雄弁に答えているようで――――時折、麻子がふっと微笑むことにすら嫉妬心が湧く。――――心が狭いってわかってるけど、相手が兄貴だとどうしても平静で居るのが難しくなる。
ふと麻子が俺を見た。俺を見て――――相好を崩したから、仏頂面になってしまう。
「――――はい、大丈夫です。では…………」
ようやく切れた通話に、麻子から携帯を取り上げると、抱き締めてベッドに寝かす。
「~~~~もういいだろ、熱が上がる…………もう寝ろ」
「――――大丈夫よ。気分は悪くないの――――光、朝御飯…………ってもう昼御飯ね。何か食べて」
「俺のことはいいから、お前も何か――――お粥でも作ろうか?」
「…………いらない…………ごめん、今は胃が受け付けないと思う…………。吐くとそっちの方がしんどいから――――ね、光はお昼食べて。光が食べたら一緒に病院に行って? ――――しばらく入院になると思うから、準備もしなきゃ」
「――――え……入院って…………」
「お兄さんから宮澤先生に手を回して貰って、手続きを取ってくれることになってるの。――――警察があたしの取り調べを希望していることは間違いなさそうなのよ。でも…………今のあたしは、1人じゃ多分、体力的にも精神的に無理だと思うから――――入院となれば、いつでも光が傍に居てくれるでしょ? 光が居てくれたら大丈夫だと思うから…………」
そう言うと、携帯返して、と言われたから、どうして、と問うてしまう。
「……隊長にお願いしようと思って――――しばらく、手塚をあたしに貸して下さいって。駄目?」
~~~~そんな可愛いこと、言うなバカ、と言いたくなる。
駄目もクソもない…………正直、麻子の発熱が続くようなら明日も休みが貰えるようにお願いしようと思っていたくらいだ。
「――――それは俺から連絡するから――――とにかくお前は一眠りしろって。本当に熱が上がるぞ」
「…………光じゃ駄目。ちょっと隊長の耳に入れときたいこともあるから――――あたしに話をさせて」
…………溜息が出る。
結局、麻子が電話した内容を隣で聞いていて驚愕するしかなかった。
内閣副官房長官の空席を巡り、政界再編に乗じて、兄貴が行動を起こすつもりだという内容――――杉谷と松和会の繋がり、松和会と麦秋会の繋がり、麦秋会と良化隊の繋がり――――武器弾薬の不正密売ルートの言及から良化隊を叩き、強いては良化委員会の存在を問いかけ潰す方向への賭けに出る――――
要するに、一気にメディア良化法の法改正及び良化委員会の解体を目論むというのだから――――もちろん、兄貴自身の入閣も見越しての話だろう――――聞いていて震えそうになった。
時代が変わる――――まさに、時代を変えようとする動きが目の前で繰り広げられようとしている――――……。
麻子からの端的で簡潔な話を聞いた玄田は、これだけの話をいきなり聞いてもまったく動じずにいつも通りだった――――流石である。
ただ1つ、折口のスクープ写真からも使える物があれば提供を願いたい旨の話が出た時だけ、玄田らしくもなく、ややこしいことに巻き込まないようにだけしてやってくれ、と余計な一言を添えた。図書隊への飛び火についてはこちらはこちらで対応するから心配するなと言ってくれたらしいのとは少しだけ違ったところだ。
現段階ではまだ詳細な話にはならないので、必要な事項の伝達が済むと、さほど長くもなく電話を切った。
麻子はまた少し経口補水液を口にすると今度は大人しく布団に横になり、そっと背中を擦ってやれば、すぐに眠りに落ちた――――。熱は相変わらずという感じで、解熱剤を飲んだと言うのにさほど下がってこない。
――――無理をしてるからだな。
思えば溜息が漏れる。――――だが、流石としか言いようがないことに、体調を崩していても熱があっても麻子は麻子だった。情報戦――――ここに居ながらにして、社会を動かすのだ。
穏やかに眠る麻子の寝顔をしばらく見つめていたが、自らを戒めて踏ん切りをつけると、俺も俺の出来ることをすべく動き出す。
腹ごしらえをして、麻子の入院準備(もちろん俺も泊まり込むから自身の用意も)、堂上にも連絡を入れ、父と実家にも連絡した。高山には明日から病院に顔を出して貰うように手配して、この家もすっかり片付けるとベッドに戻る。
――――解熱剤を飲んだというのに、むしろ少し熱が上がってきてる感じに、眉を顰める。額を合わせて――――確実に上がっていることを確証する。
額を離すと気配を感じたのか麻子が身じろいで、こじ開けるように重そうに瞼を開いた。
「…………ひ……か…る…………」
「…………ここだよ。――――少し水分を取るか? 熱が上がってきてる――――」
いらない、ということだろうか首を横に振りながら、また、ひかる、と呼ばれて細い腕を伸ばして来たから抱き締めてやる。
熱いな、と眉を顰めるしかない――――38度台後半くらいまで上がってるだろう。
「…………病院に行こうか。――――大丈夫か?」
言えば、頷く。
少し朦朧としてるかもしれないな、と麻子の反応にそう思う。
いつもなら嫌がるおんぶにも、麻子自身抵抗する気力もないようで、俺の言うままに背中に身を預けてくれたから麻子を背中に負ぶった。荷物を手に、早足で病院に向かう。
病院で受け付けると、そのまま個室に案内された。――――今回は精神病棟の方で――――ナースステーションの前を通った時、スーツ服の男2人に呼び止められた。――――警察だと言う。差し出された警察手帳をしっかり拝見させて貰い(確かに警察官だった)、事情聴取を、と言って来たけれど、負ぶわれたまま眠ってしまったらしくグッタリとしている麻子を見て、少し態度を軟化させた。――――本当に体調を崩しているのだとわかったらしい。
宮澤医師もやってきて話をして――――警察の疑う、麻子の薬物使用の嫌疑を晴らす為に、毛髪検査と尿検査は提出することで合意して――――麻子の容体を見て宮澤医師が看護師に点滴の準備等の指示を飛ばし――――。

「――――光?」

ふと呼ばれて、振り向いて――――驚いた。
「…………母さん…………」
入院している母が立っていて、俺を見ていて――――それから、俺が背負っている麻子に目を向けた。
信じられない物を見る目。
その目に、みるみる涙が盛り上がり――――と思った時には溢れる。
「…………あ…さこ……さん? ……あさこ、さん、…………なの? …………まさか…………し…………死ん、……あ、あさ……っ」
言いながら感情が爆発したのか、母の身体がぶるぶると震え出して、母に付き添っていた看護婦が慌てた。
「手塚さん! 大丈夫ですよ!! 落ち着いて、手塚さんっ!!! 柴崎さんは眠ってるんだけですよ!!! ほら、大丈夫――――手塚さんが騒いだら起きちゃいますよッ!!! 手塚さんっ、落ち着いて!!!」
手塚も麻子を背負いながら、母がパニックを起こしそうになっているので必死に言葉をかける。
「――――母さん、大丈夫だから! 麻子は生きてる――――でも、身体を悪くしててね。体調を崩してるから今日から入院することになったから――――お医者さんにちゃんと診てもらうし、もう大丈夫。……大丈夫だから」
看護師や手塚がそう言っても、手塚の母は全身を震わせながらボロボロと泣き出した。
「~~~~あ…あさこさん…っ!! ~~~~あ、あさ……っ……ご、ごめッ、ごめ……さい、…ッ!!」
泣き崩れるように床にへたり込む――――と、背中で少し身じろぐ感触。

「…………お…かあ……さ…………、?」

小さな声だったのに、麻子の声だけは母に届いたらしい。
「~~~~あさこさん…っ!!」
伏せていた顔を少しだけ横に向けて、ぼぉ…っとした様子で視線を宙に彷徨わせていた。
床にしゃがみ込んでいた母が起き上がって、麻子の視界に入るように覗き込む。
「~~~~あさこさん…! 大丈夫? 苦しいの? ~~~~ああ……こんなにやせて…………」
言いながら震える手で麻子の髪を撫ぜた。
朦朧としたような声で、か細く、麻子がまた母を呼んだ。
「…………お…かあ……さ…………、…………ご、ごめ…な……、……さ……」
「~~~~あさこさん、あさこさん、あさこさん…………! ……よく…………よく、生きて…………あさこさ…っ、良かっ……
「…………ご…め…………」
はぁはぁ、と、麻子の熱い吐息が肩にかかる。必死に話をしようとしているんだろうが、頭も身体も付いて行かないというような感じだ。
手塚が2人に割って入った。
「――――母さん。……麻子を早く寝かせてやりたい――――本当に調子が悪いんだ、わかるだろ?」
ゆっくりそう言い聞かせるように言って、そっと母の背中を撫ぜれば、うんうん、と言いながら頷く。
麻子が声を発したことで――――生きてるとわかって、少し落ち着いたようだった。

こうして、しばらくの間、麻子は入院することになり――――結果として麻子の入院が母の容体を一転して快方に向かわせることになる。
どうやら、麻子の入院という事実が、母の気持ちにスイッチを入れたらしい。
麻子の面倒を見ることに生き甲斐のようなものが生まれ――――結果として、みるみる母の容体が良くなった。
鬱で塞ぎ込むことがほとんどなくなり――――麻子の食事の面倒を見ることで、自分もしっかり食べないといけないという意識に繋がったらしく食事もしっかりと取れるようになったのだ。
麻子の方は、あの後、1週間程高熱が続いて大変だった(俺自身、猛烈に反省するばかりだ)。解熱剤を入れてもあまり下がってくれず、食事もほとんど取れない状態で、上官の好意で1週間ほどは図書隊の勤務に融通を利かせてくれたので、ほぼずっと病院で過ごしていた。
熱に浮かされながら朦朧として麻子が呼ぶのは俺の名で、時々縋るように甘えて抱き締めて欲しがるのに俺自身の忍耐力も試されたりもしたが、それが嬉しくて可愛くて懸命に看病し――――ようや容体が落ち着いて来ると、今度はこれまでが嘘のように甘えて来なくなった。
――――まったく、中っ腹だ。
付き添いなんかいいからちゃんと仕事に行けとか、図書隊に顔を出して情報を教えろとか口煩く言い出し、あげくに、病人なんだから大人しくしとけと思うのに、あちらこちらに連絡を入れては精力的に情報を収集していく。
――――病院に居ながらにしてあらゆる場所の動向を探りだし、遂には俺に、図書隊へのパイプ役まで押し付けてくる。
「あんたが居なくてもお義母さんが来てくれるから寂しくないし、あたしは大丈夫よ」
なんてニッコリ笑って言われたら剥れるしかない。…………事実、母は麻子に構いたがってよく顔を出すし、顔を出したら麻子を独り占めにしてずっと楽しそうに話をしている。母が来ると麻子は俺より母を優先するから、俺が居るって言うのにまったく俺の方を見てもくれない――――拗ねるような気持ちが湧いたって仕方ないよな? …………溜息を吐くしかない。
とはいえ、過度のストレスをずっと抱えていたせいもあってか麻子の回復は思ったよりも時間がかかり、3週間もの入院の後、ようやく退院の許可が下りた。それでも血液検査で少し腎臓機能に心配な項目はあるとのことで、麻子は遠慮したが母のたっての希望で当面手塚家の方で面倒を見ながら通院することになった(母も退院の許可が下り、2人同時に帰って来た)。――――確かに手塚家に居れば、家事については倉橋と高山がすべてしてくれるし、世話好きな人々に囲まれて麻子も甘えざるを得ず、無理をすることなく体調管理に専念することが出来た。(とはいえ手塚家に居ながらにしても麻子は情報収集は怠らなかったし――――兄も時々やって来ては政界の動きや警察の動向などを麻子に伝えたりもして(俺自身はこのことにはすこぶる不満だ)――――結果として手塚家に慧が時々出入りするようになったことで、母の体調が更にまたすこぶる良くなったのだ)
麻子は半年ほどかかって、ようやく検査結果もすべて正常値へと戻りだし、日常生活だけでなく社会復帰も出来ることになった。
――――図書隊ではなく、図書館協会へ。
笠原は残念がったけれど、これからの図書隊の有り方を見直す上で全国の図書館に通じる図書館協会に所属し、全国の図書館の状況について把握することがまず不可欠となった。――――政界の動きに通じる麻子がその任に当たるのは本当に最適なことだったし――――仕事に追われて体調を崩したりしないように父がフォローしてくれたり、俺も図書館協会の方の業務を再び兼任することになったから、麻子が無茶しないようにサポートしてやることは出来た。(父の仕事ぶりを見て、確かに兄の言う通り、父はなかなかの狸だと知ることにもなる)
やがて時代が大きく動き出す。
世論に後押しされて検閲反対の動きが大きくなり、兄の手腕もあってメディア良化法の改正に向けて政府与党でも動きが出始める。やがてその流れは確実なものとなり、良化委員会の不正問題が明るみに出たと同時に、一気に法改正に向けて走り始めた。
そして3年後――――信じられない速さでメディア良化法の法改正が国会で承認されることになる。
検閲に関しては必要最低限のみの範囲に限局されることになり、遂に日本国民は、言論の自由・表現の自由を勝ち取ったのである。
行き過ぎた武装制圧の項目も削除され、良化委員会には武装解除を命じられた。それに伴い図書隊に対しても武装解除の命が下り、人命を奪う程の良化隊と図書隊の対立は、ここに終止符を打つことになったのである。



……To be continued.



********************



夏休み突入~~~~ι( ̄ロ ̄ll)
ようやく引っ越しの後、生活リズムが出来て来たと思ったのに、なんてこった…………
お話の方は、ようやく終わりも見えて来つつあるってところで、夏休みに入り、まさかの足止めを食らってマス★
なんせ、私が家に1人きりで、このお話をガーッと書ける時間がまったくない…………゚(゚>Д<゚)゚
せっかく早起きして書こうと思っても、何故か、私の起きた気配を感じて水を飲みに来たりとか誰かが起きて、早起きした意味がないじゃんかよ……ヾ(・ε・。)ヲイヲイ ってな日々で、本当に、書けない日々が続いています…………。
日中は夏休みなので、確実に子供が居るし…………(。≧Д≦。)
今回は“書き溜め”もあまり出来ておらず、夏休み中にどの程度書いていけるかがまったく予想できないので、週一更新が突然滞ったら「…………ああ、書く時間がなかったんだな」と思って、生温かく見守って貰えたら…………すみません。
神様、どうか私に1人きりで思う存分書く時間を下さい……!!! 1人の時間を与えて下さい……!!!
せっかくようやく終わりも見えてきて、何とか、夏が終わるまでには書き上げたかったのですけど…………週一更新が出来なかったら、ごめんなさいね…………(;д;)=3=3=3=3





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05:10  |  *『図書館戦争』二次小説  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

★怒涛の最後(苦笑)

Sauly様

> 終わり!?じゃなかったw

最後、ダダダーっと、今後の流れを書いたので終わりそうな勢いでしたね(笑)
終わってません(笑)
いや、一応、社会情勢はこんな感じに流れていったんだよこの後~~~~ってのを読者様に示したかっただけです(笑)
この後も、話の中心は手柴なので、手柴のお話の中に社会情勢は今こんな感じ……って書き込むのはきっと無理だろうと思って、とりあえず今後の社会情勢についてなんとなく読者様の頭に入れておいてほしくて、最後にダダダーって書いちゃいました★
終わりそうな勢いで、時間が最後に進んだので、「終わりか?!」って思われても仕方ない(笑)
終わってませんよー(笑)
まだまだ手柴のエピソードは(もう少し)続きます(笑)
まぁ、手柴のエピソードだけが残ってるだけなんですけどね(笑)

> 自分の中で色々辛いことがありまして...
って、ちょっとビックリです!
ちょっと前に旅行行ってませんでしたか?!
あの彼とは違う人ですか?!
夏はこれからなのに…………ひょっとして、留学とかの期間が終わって、彼は帰ってしまったのですか?
以前のコメントでチラリと出てきた感じでは、とてもとても仲良さそうな感じがしてましたので…………
詳細はわかりませんが、今は辛いですが、人生の中で見たらそれも必然だったと思う日が来るかもしれません。
Sauly様に楽しく嬉しいことがたくさんこの夏に訪れることを、そっと祈りながら応援しています!

> ではラスト2人!ジョニーサック
マフィアなのに、とってもいい人に見えるシーン…………奥さん確かにめちゃめちゃ太ってますねェ…………オペラ歌手とかかな?
でも、太ってても愛してくれる旦那様が居て、奥さんはきっと幸せww
娘2人も愛してるなんて、なんていい人なんだ!ジョニーサック!(…でもマフィアなんですよねぇ…(((((^^;))
ある意味、手塚の正反対?!(笑)
生死の境を彷徨ってガリガリにやつれてしまった麻子サンを見ても「綺麗」とか「可愛い」と思える手塚(笑)
丸々と太った奥さんに向かって「綺麗だ」と言えるジョニーサック!
似てるじゃん!(笑)
そういう言葉に、そんな彼に惚れている女性は更に惚れちゃうんですよね~~~~(笑)
そして、真実とっても綺麗になるんですよね。
やはり女は傍に居てくれる男性によっても変わることもあるのですよーうんうん。
ジョニーサックの家族の愛が深まってくれて、とってもいいシーンでしたよね。奥さん、泣くほど嬉しかったんですねぇ♪
しかも周囲は甘いチョコレート臭漂う空間…………うーん、臭覚的にも甘い!!(笑)
トニーとは盟友とのことで、マフィアの世界も友情とかあるわけですねぇ…………奥が深い(苦笑)

ツンデレラ |  2017年07月27日(木) 06:25 | URL 【コメント編集】

★脳内妄想(笑)

ママ様

ホントですよねェ♪
> 今の手塚は脳内妄想だけで~~
ええええ! イケますね!(爆笑)
麻子サンの発熱がなかったら、起きてからもかなりヤバかったでしょう(笑)
ある意味、麻子サン、発熱してて救われた?!(笑)
ヘロヘロに疲れていた身体がある意味、イイトコロで防衛反応を出したのかもしれません(笑)
あからさまに病人相手では、流石に脳内が蕩けきってる手塚でも、(身体は本能的に欲望に動いても)絶対手塚の性格的に手は出しませんからねェ!(笑)
ある意味発熱に救われた麻子サンかもしれません(笑)

> 自分達の捜査~~
まぁ警察の本分は、事件の犯人をしっかり把握して取り締まることなんで、ママ様も仰るように、自分達の捜査を進める為なら~~ってことになるんですが、まぁ今回の電話での応対は印象悪かったけど、別に警察を敵に回すつもりはないので(苦笑)、一旦は疑われたかもしれない麻子サンですが病院側の検査結果等もありますし、麻子サン本人も警察の捜査協力はするつもりでしょうから(ただフラフラすぎて事情聴取は難しいかもしれないけど)疑いは割と簡単に晴れたと思います(そのあたりは書いてませんでしたが……申し訳ない★)
まぁ、麻子サンが潔白であることは麗華さんも警察の内部で話をしてくれたと思いますしね。
拘束されていた状態の写真証拠もあるわけですから。

> 郁ちゃんの回りには柴崎のような女性がいっぱいだけど、手塚の回りにもいっぱいです(笑)
ですよねぇ(笑)女性に限らず男性もですが(笑)
なんせ、恋愛音痴なので、ヘタレっぷりについつい周囲もアレコレと手や口を出してしまうんですよねー(笑)
手塚のお母さんの場合は、息子相手だから余計に手塚には気を遣わないだろうし(笑)
手塚は、「…それは俺が麻子にやりたかったのに!」とか「俺の立場は!」とか思いながらも、しっかりと麻子サンの隣に座って世話を焼きまくるお母さんは気付かずに「あら、光はそんなところでどうしたの?」とか「何を剥れてるのかしらねェ、この子は」とか呟いて、熱も下がってしっかりしてきた麻子サンを笑わせていそうです。(そして麻子サンが笑うから余計にお母さんは調子に乗って「…私と一緒に居る方が、麻子サンも良く笑うでしょ?」とか手塚に言ってまた手塚を不機嫌にさせてそうです(笑))
まぁ、麻子サンも手塚が傍に居てくれる大前提があるから、お母さんとも仲良く上手くやっていけてるんですけどね(笑)

> 武装解除といっても良化隊側は素直に応じたんでしょうかねぇ。というか繋がってた賛同団体を切るのが大変そう。
これは大変だと思いますねー。
一応、3年かかって法案成立にこぎつけたので、この後武装解除まで3年計画とか5年計画と言う形で進んでいきます。
流石に3年で法案整備と武装解除の両方まで完了することは無理だと思うし(良化委員会側も抵抗したでしょうし、法務省も出来るだけこれ以上の失点を、メディア良化法関係で見せたくないでしょうし、こういうのは少しスパンを見越して行われると思います)、最後にダダダーっと情報だけを連ねましたけれど、とりあえずメディア良化法改案になった3年ほどのお話を少しこの後に入れていく感じになります。なんせ、3年間はメディア良化法を改正するために手塚慧がものすっごく頑張った3年間なので(ってことは話の筋に関係がないのであんまり出てこないけど(笑)……すまぬ慧(笑))、その間に手柴がどうなって来たのか、少し振り返りな感じで読んで貰えれば~~~~
ブログでブチブチと切っているので、若干そのあたり、話が前後するのが読んでてわかりにくいと思うのですが、一応の時系列の目安になるような何かはその回に入ってるので、今後は「この話はいつごろの回想なのか」を想像して読んで貰えると、少しわかりやすいと思います。
すみません、時系列的に並べろよって話なんですが、ツラツラと時系列で並べて書くと、面白味のない文章になりそうなのでこんな形にしようと思ってます。読み辛いところは質問して下さいねー(って、自らの文章力のなさを、他力で処理しようとしている私……苦笑★ いやでも、今すぐに文章力があがるわけもないので致し方ないと思って諦めてやって下さいませ)



ツンデレラ |  2017年07月27日(木) 06:05 | URL 【コメント編集】

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 |  2017年07月26日(水) 17:29 |  【コメント編集】

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