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2017.03.19 (Sun)

≪背中の靴跡シリーズ≫ 『ひとり寝る夜の明くる間は』~vol.51~

≪ ひとり寝る夜の明くる間は~vol.51~ ≫背中の靴跡シリーズ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
  歎きつつ ひとり寝(ぬ)る夜の 明くる間は
   いかに久しき ものとかは知る
         右大将道綱母(53番) 『拾遺集』恋四・912
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



【More・・・】

≪ ひとり寝る夜の明くる間は~vol.51~ ≫背中の靴跡シリーズ


「……次は起きてる時に会いに来るからね」
眠ったままのマコにそっと声をかけると、笠原は部屋を出て行った。
笠原は、薬が効いて容体も落ち着いて眠っているマコ――――柴崎麻子のすっかり痩せ細ってしまった姿に涙ぐんでいたけれど、おずおずと優しく髪を撫でて頬に触れて……生きててくれたんだ、とその体温に安堵の溜息を零しながら、良かった、本当に良かった、と何度も何度も呟いていた。
本当は目を覚ますまで居たかっただろうが、図書隊メンバーも矢間竜士郎襲撃事件では犯人確保に一役かっているだけに、事情聴取や事後処理等、いろいろやらねばならないことが山積みで忙しい。後ろ髪を引かれるような顔をしながらも、そっと部屋を後にした。
手塚だけは、図書隊のメンバーの配慮で今日はマコの病室での付き添いを許された。大蔵優哉と言う不審人物が接触してきた――――ということで、マコの警護が必要だと玄田を始め図書隊の方から声が上がり、名目を貰って今日だけは警察への出頭を免除されたのだ。……もちろん、手塚の事情聴取も後日みっちりとされることは請け合いである。手塚の場合はナイトクラブでの矢間竜士郎とのやりとりもあるし(会話の内容に関しては、手塚の服のポケットの中に忍ばしてあった盗聴器から既に警察へ筒抜けの筈だが、やはり直接手塚の証言は必要らしい)、何より一部始終すべてを目撃し関係している唯一の関係者なのだからどれだけ警察に缶詰めされるかわかったものではないが。
とにもかくにも、今はこうしてマコの傍に居られるようにしてくれた図書隊の仲間達の配慮には感謝するばかりだ。――――あれ程、マコを精神的に苦しめた不審者にまた遭遇したのだ。……マコの、麻子の心の衝撃と苦痛、消耗を思うと、麻子が目覚めた時には傍に付いていてやりたかった。
それに、にわかにこの病院も安全な場所ではなくなっているのだ。矢間竜士郎が手塚慧の手配でこの病院に入院していることは極秘であり、警察が他言しなければ絶対に誰にも知られる筈のない事実ではあるのだが、万が一でも警察の方から情報がバレでもしたら矢間竜士郎を狙って襲ってくる犯人が居るかもしれない……。
警察の方でも極秘警備が始まってはいるし、元々、兄が極秘でSPを警備に配置もしている病院ではあるが、念には念を入れておく方がいい。玄田の一言に緒形がシフトから考慮して、あの短時間でマコの警護についても話がまとまっており、明日の朝には笠原と堂上がマコの警護に付くことになっていた。
――――もっとも、『柴崎麻子』を狙って出現していた不審者に関しては、大蔵優哉の確保でもう大丈夫ではないかとの見方が強い。柴崎麻子襲撃事件の直後の最初に運び込まれた病院での不審者情報は、それこそヤクザまがいの外見の者から役人風の地味な中年男性、マスコミやメディアの関係者などいろんな人物が病院に出没して、多数の目撃証言もあり、人物の特定などとても出来ない状態だったのだが、サイキマコとして転院してきたこの病院での目撃証言はいずれも、長身、細身、若い男性、イケメンっぽい…などというもので、マコが見たという綾野剛似という容姿にも大蔵優哉はすべて当て嵌まるのだ。――――サイキマコとなってからも付き纏っていたのは優哉一人ではないかとの算段が高い。それに、内臓出血による再入院後は、これまで不審者は現れておらず、今回なぜ今頃になって出現したのかは謎ではあるが、その大蔵優哉は既に確保済み――――現在は空いていたベッドに確保されて警察が付き添い監視している。意識が戻り医者の許可が下りれば、ただちにその場で麗華も含めて警察で事情を聴くことになっている。
――――当然、その際は手塚も同席することになっていた。目撃者でもあり関係者でもあると、麗華も居たので話は早かった。
これで、麻子の監視の理由もわかる筈だ。――――ようやく、麻子を狙う人物が浮き彫りとなって来るだろうとの期待が高まる。

――――正直、麻子に付き纏っていた影が、麻子を怯えさせていた闇が、麗華の彼氏だとは思わなかった。

麗華に彼氏が居たことに驚いたわけではない。別に麗華にどんな彼が居ようが構わない――――が、そいつがこれまでずっと麻子を恐怖と失意のどん底に突き落とした人物と言うならば別だ。
だが、考えてみれば、麗華は最初から柴崎麻子がサイキマコとして生きていることを知っていた。麗華から情報を引き出していたとしたら、柴崎麻子が密かに生きていて身を隠していることをなんとなく感じて探していたとしても不思議じゃない。
優哉を目にして茫然とした麗華に対して手塚が詰問をぶつけるより先に、笠原が怒気を孕んだ声を上げた。
「……優哉って誰? あんた、こいつを名前で呼んだよね――――そういう仲なの?」
笠原の怒りの目――――麻子のコラ写真が出回っていた事実を知った時に、男達に向けた目と同じ色をしていた。
「……まさか、あんた、こいつに柴崎の話とかしてなかっただろうね?!」
「笠原」
麗華の胸倉を掴もうとした笠原の手を堂上が取って間に割り込む。
「~~なんとか言いなさいよ…ッ?! あんた警察なんだろッ?! あんたの知り合いが人を襲ったんだよッ?!」
「……………………」
「柴崎はねッ、自分がずっと狙われていると思って――――自分を死んだことにしてまであたし達周りの人間を守ろうとしてたんだッッ!!! あんたの知り合いが付き纏ったせいで、柴崎は死を選んだようなもんなんだよッ?! 自分が自分として生きられないって……別人として生きていかなきゃならないなんて、そんな悲しい決断をしなきゃならなかった気持ち、あんたわかってんのッッ?!?! 柴崎は柴崎である何もかも全部を捨てたんだよッッ!!! 大事なものも大切なものも、愛した人も愛した場所も、本当に何もかも全部……全部を捨てて、捨てることで大事なものや大切なものを守ろうとした悲愴な決断や絶望を、本当にあんたはわかってんのッッ?!?! 人がね、自分の生を自らの手で終わらせてしまう程のことをしたんだよッ、そいつはッッ!!!」
茫然としていた麗華は、笠原の言葉に蒼褪めて震えた。
ノロノロと顔を上げ……笠原の麗華を睨みつける目に合うと、射抜かれたようにふらりと上体が揺れて……仲間の刑事に支えられた。
笠原もそれ以上は言葉を畳みかけることはなく――――麗華も気絶はしなかったもののうなだれたまま茫然自失の態だった――――……。
緒形が事態を収拾すべく、病院に聞いてくれて、空いているベッドへ優哉を運ぶことになった。意識の回復をまって直ちに事情を聴くとのことで、当面大蔵優哉には警察からは麗華他2人の刑事が、図書隊からは緒形が付いている。
麗華は、笠原はもちろんのこと手塚とも目を合わすことなく項垂れたまま、覚束ない足取りで仲間の警察官にずっと支えられていた。緒形を残して図書隊のメンバーが引き上げる時になってポツリと、誰に向かうでもなく「…………ごめんなさい……」と呟いていた。

ごめんなさい、との呟きは、やはり麗華が優哉に麻子のことを漏らしていたんだろう……。
それに関しては、麗華に対して憤りの念が湧く。
麗華と言う人間については一応知っているだけに、直接的に話を駄々漏れにするようなヤツではないことはわかる。わかってはいるが、彼氏となれば話はまた違って来るだろう。彼氏と言う立場で麗華を飲み潰し、その後、睦床で甘い言葉を囁かれる合間に、それとなくわからないようにそっと尋ねられていたとしたら…………。
アルコールの入った麗華の自尊心を擽りつつ感情を煽るような言葉や状況を作れば、麗華は自分の感情を割と表に出してしまいがちだ……。麻子とは警察で極秘調査で共に働いた経験もあり、記憶喪失中はマコのことは諦めて自分にしろと言っていた麗華だから、麗華にとって麻子の存在は大きかったことは否めない。柴崎麻子について情報を得たい大蔵優哉がそれとなく麗華の気持ちを絆して甘い言葉で探れば、言葉の端々や間接的な表現、様子からある程度推察したり、ポロリと零れた情報を手にすることは出来ただろう。――――事実、サイキマコとして入院している病院にも足を運んでいるのだから。
今更言っても仕方がないことではあるが、もし麻子の情報が漏れていたとしたら、…………麗華を許せない。
情報を漏らすつもりはなかったんだとは思うが、仕方がない、と許せることじゃない。
麻子が身も心も擦りきらした最大の要因――――床にのびてさえなければ、手塚だってヤツの意識が無くなる程殴り倒したかった。正直に言えば、殺してやりたい衝動さえ湧く。
ずっと、ずっと闇に怯えていた。手塚とは縁を切ると決めていたにもかかわらず、毎晩のように発作を起こして無意識に手塚に縋り付いてしまう程、麻子を恐怖のどん底に突き落としたヤツだ。未だに自分は狙われているのだと、麻子を絶望させた人物でもある――――殺したって憤りは治まらないだろう。
……だが、ヤツは証人でもある。
もし、手塚の考える通り、優哉が杉谷の指示で動いていたとしたら――――優哉のことを麻子はまったく知らないようだったから、優哉本人の意思でストーカーのように麻子に付き纏っていたとは考えにくく、誰かの指示で麻子のことを調べていたと考えるのが一番筋道の通る発想だ。その誰かを考えて真っ先に思い付くのは杉谷しか居ない――――。ブラックボックスに絡む情報を麻子が得ていたとはいえ、松和会の松山会長は『ブラックボックスに近づいた女』についてはさほどの興味も何もなかったようだ。松和会が麻子を狙うならば襲撃事件で麻子は矢間竜士郎の手によって確実に殺されていただろう…………。
ナイトクラブでの竜士郎との会話もそれを裏付ける。竜士郎はナイトクラブの時点でも、麻子は既に死んでいる前提で俺と話をしていた――――『死んだ婚約者』と。つまりは転院してからも病院に現れた不審者が松和会の関係者だとは思えない。……確かに麻子はメディア良化法の設立時の闇に近づき警戒はされたかもしれないが、それで麻子本人を殺す命令が出ていたわけではない、ということだ。
そう考えれば、一連の事件や麻子への付き纏う影の一番の元凶は、杉谷の持つ麻子への執着心ではないのか――――優哉はその手先として利用されていたのではないのか――――と手塚は考えている。会談した時に杉谷は麻子のことについては異常なまでに情報を集めていたし、麻子を手に入れたがっていた。――――ストーカーのように麻子本人に対する病的な執着心だったかもしれないと手塚は考えるようになっていた。
もし、手塚の想像通りであるならば、一連の事件での杉谷疑惑を上手く利用して、杉谷へ何らかの杭が打てれば麻子の身の安全は確保出来るということになる。

麻子が、柴崎麻子として生きていける。
麻子が、麻子として生きていける場所を取り戻すこと――――それが、最大最上の願いなのだから……。

優哉の意識が戻って事情聴取が出来れば、その辺りを詰問して明らかにするつもりだ。

ふと、包むように握っていた小さな手が強張る。
見つめていた白くて小さな顔の眉間が寄った。
――――泣き出しそうな顔――――
瞼が震え出し、見れば脳波が酷く振れていた…………夢を見ているようだ。レム睡眠の波形はこんなだと看護師が言っていた。
麻子が身じろいで、苦しげな表情を浮かべた気がして不安になる。
――――酸素マスクはまだしたままで、心拍数は跳ね上がっているけれど血圧はさほどじゃない。……けど――――…。
怖い夢なんだろうか。
起こしてやる方がいいだろうか。
「…………大丈夫だ……俺はここに居る……俺が付いてるから…………」
そっと静かに囁いて、覗き込む。
酸素マスクの中で、呼気が煙る。はぁはぁと早いリズムなのが見て取れる。
ビクリッ、と震えると同時にくぐもった声がして、全身がわななく。
悲鳴のような声がマスクの中で木霊する中、恐怖に見開かれた瞳が、何も映さずに宙を凝視して――――……。
「~~マコ…ッ、マコ…大丈夫、大丈夫だ、俺はここに居る――――」
まだ夢現なのだろう、グラグラと揺れて焦点の合わない瞳を必死に覗き込みながら、声をかける。震える手をギュッと握り締めて。
正面から見つめてもなかなか合わなかった視点――――朦朧とした中で、でも必死に縋るように何かを探していた目が、ようやく俺を見つけて――――途端に、ボロリと大粒の涙が目尻から零れた。
点滴に繋がれている意識も何もないのだろう、必死に縋り付こうともがくように腕を伸ばしてくるのに焦る。管も装置も外れてしまう――――。だけど、マスクの中くぐもった声で俺を呼びながら、俺へと上手く動かない上体を必死に起こそうとしてもがきながら、やみくもに手を伸ばしてくる華奢な身体が愛おしかった。
ナースコールを押しながらも、そっと手塚の方から抱き締めてやる。
「……大丈夫、大丈夫だから……落ち着け、ゆっくり息吐いて……もう大丈夫だから……」
ゆっくりと背中を擦ってやる。緊張のあまり固く強張っている身体を宥めるようにゆっくりと。
管が抜けないように点滴の方の腕はあまり動かないようにして抱き締め――――心電図を取っていた胸元の器具か何かが一部が外れたんだろう、機器がうるさく鳴り出した。けれど、ナースコールもしていたので駆け付けてくれた看護師が、俺達の様子を見てすぐに医者を呼びに走ってくれた。
マコは、しばらく抱き締めてやるだけで随分と落ち着いてきた。
医者が到着する頃には、マコの身体の異常な緊張感は失せて、安心したように身を任せてまたウトウトし始めていた。――――処置をしてくれたあの医者だったから事情がわかるのだろう、「……申し訳ないけど、身体の方の状態が見たから、サイキさん、横になれる?」とマコに声を掛けた。医者のそんな静かで穏やかな声にさえ怯えたようにまた身体に緊張感を走らせたが、「……大丈夫、俺はずっと傍に居るし……大丈夫だから診て貰おう」と背中を宥めるように撫でて言い聞かせる。
――――処置をしてくれた医者で、俺の傷の手当もしてくれたあの医者だ。
マコを無理矢理診ようとはせず、俺がマコを宥めている間は、これまでのマコのデータにざっと目を通しながら待ってくれていた。
ようやく意を決したように、マコがゆっくりと医者に目を向けた。まだ不安そうな目だ。
マコを宥めるように言葉を紡ぐ。
「……大丈夫。このお医者さんはわかってくれてる――――大丈夫だよ」
「……………………」
「……うん、数値的には大丈夫そうだけど……サイキさん、確認させて貰えそうかな?」
マコが顔を上げたのを見て優しげに微笑みかけながら言う医者の言葉を受けて、またマコの目が俺を見て――――大丈夫、と頷いた俺の顔を凝視したマコの顔がみるみる強張って蒼白になった。
訳が分からずに瞬いた俺――――次の瞬間、マスクの中で悲鳴が上がった。
マコの全身が震え出す。
どこにそんな力が、と思う渾身の力で暴れて引き抜いた腕。その震える指先が頬の包帯の境界線をなぞる感触――――しまった、と思った時にはもう遅い。
これまでは発作や朦朧状態で気付いてなかったんだろうが、俺の傷の処置に今気付いて怯えたのだ。
「~~あああああ…ッ…ヤアッ、あ、…ひかッ……ひかるッ、な…ッ、なん…っヤアアアアァァ…ッ…」
マスクの中で、ガクガクと震える悲鳴。揺れる瞳がグラグラと揺れながら、腕や目に見える傷の処置痕を追ってゆく。恐怖に見開かれた瞳から、ボロリと大粒の涙が零れ留まることなく流れ落ちてゆく。
マコの身体の震えが、痙攣のようにガクガクと異常なものへと急激に変わっていく……。

――――――――発作だっ!!

「大丈夫ッ!!! 大丈夫だ、これは違う…ッ、落ち着けッ!!! 落ち着けッ、マコッ!!! 俺は大丈夫だから……マコッッ!!!」
医者も慌てて看護師に指示を飛ばす。薬を貰いに走る看護師達――――。注射器を手に戻ってくる。
「手塚さんっ…サイキさんをベッドに、体勢を――――気道を確保して――――ああ、そう、それで……鎮静剤入れますから押さえて!」
折れてしまいそうに細い身体を、必死に力加減を気にしながら抱き押さえるように固定した俺の横で、医者が荒々しく白い細腕を掴んで力を込めて固定する。――――折ってしまわないかと俺が心配になる腕の掴み方で、躊躇いなく銀の長い芯を刺す。薬がマコの体内に入ってゆく……。
15分もすれば、怖いくらいマコの身体から力が抜け落ちた――――まったく意識もない――――。
「……薬が効きましたね。すみません、装置を付けるのでどいて下さい」
言われるがまま、少しマコから距離を取る――――正直、離したくはないけれど、堪えてマコを見つめる。
切なげに苦しげに寄ったままの眉間と悲しげに下がった眉尻。目尻にはまだ涙の粒が残っていて、行く筋もの涙の跡が残る。真っ白な肌の色――――白いと言うよりは青白くて――――生気が感じられなくて怯みそうになる。
かすかにマスクが時折曇ることだけが、ああ生きてる、と思ってホッと安心する…………。
医者は外れていた心電図やら脳波計やらとマコを、どんどんと繋いでいく。血中の酸素濃度を測る機具も外れていたのを戻し――――しばらくデータを黙ったまま見つめていた。
やがて、溜息を一つ吐くと、手塚に向き直る。
「…………一先ずは大丈夫でしょうが…………こうも頻繁に大きな発作が起こるのはあまりいい状態とは言えませんね。安定剤はしばらく使い続けることになるでしょう。――――さっきのは、明らかに手塚さんが原因ですよね? 怪我をするというようなことが、サイキさんの何かトラウマでも? ……さっきのあの状況を見せられると、手塚さんの怪我が治るまではサイキさんとの面会は差し控えて貰うようお願いするしかありませんが、そのあたり、何か心当たりは?」
「…………多分…マコは…………自分のせいで俺が怪我をしたんだと思って――――」
「? 手塚さんの怪我はサイキさんのせいではありませんよね」
「はぁ……そうなんですが、その――――勘違いしてるんだと……」
「……よくわかりませんが…………ともかく、サイキさんも落ち着いて、ちゃんと話が出来るようになるまでは――――サイキさんがちゃんと納得して手塚さんと会っても大丈夫になるまでは、しばらくは面会は差し控えていただきたいですね。そのあたり――――誰か、サイキさんが安心出来る方に付き添いをお願いして下さい。いつもの方でもいいし――――ほら、毎日来てくれる……ええと、高山さんでしたっけ? その方にでも頼んで下さい」
「…………は…い……」
「まぁ、しばらくは眠っていると思うので、一人にしておくのが心配なようなら今のうちに連絡して相談しておいて下さい。――――術後の経過は良くなってきてたんですがねぇ。……ここに来てまた精神科の方の病状が悪くなって来るとなると、サイキさん本人が辛いでしょう。身体が元気になっても心の病気で社会に戻れない人もいますから、周囲が気を配ってあげないとなかなか治療は難しいんですよ」
「……………………はい……」
まぁ、今はもう大丈夫ですよ、と言って、医者も看護婦達も部屋を出ていった。

――――付いていてやりたい――――……。

だが医者の言う通り、確かにさっきの発作は、俺の怪我を見て起きたのは明らかだった。

――――お前のせいじゃない――――

そう言って納得して貰いたい。だが、麻子の性格や襲撃事件以降の麻子の思考、行動を考えると、それを納得してもらうには酷く時間がかかるだろうことはわかる……。
俺が傍に付いていることで、麻子を、麻子の気持ちを追い詰めてしまう――――発作を起こさせてしまうかもしれない……。それを思えば付き添わない方がいいのかもしれない、と思えてくるが、だが、怯えて苦しむ麻子をとても放っておけない…………。
――――他のヤツに託したくない、と思うのは、自分勝手な想いだろうか?

――――どうしたらいい?

答えのない真っ白な顔に向かって、答えの見えない問いを自身に問い続けながら、手塚は唇を噛み締めた。



……To be continued.



********************



「またグルグルターンか!(怒)」という怒りと言うか呆れると言うか、皆様のお声が聞こえてきます……すみません。
まぁでも、今回は手塚がグルグルする余裕もなくなってくる展開なので、記憶喪失編の時のような当てもないグルグルはないので安心して下さい(?) あんなに長い嫌なターンは続かないです。
とはいえ、まぁしばらくは嫌なターンが続きますが、先を見ながら書いてる私の中では、ようやくひとり寝る夜が明けてきそうな感じが少しだけ見えてきました!(ホントか?爆)
ひとり寝る夜が終わっても、まだまだお話の完結は先になるのですが、ふたり寝る夜になってからお話が続く分には皆様も安心かと思いますので、後少し、嫌なターンにお付き合いくださいませ……(大汗)






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05:10  |  *『図書館戦争』二次小説  |  TB(0)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

★名言ですね

Sauly様

> 郁に頼めばいい(至言
確かに名言ですね!!
郁ちゃんに頼むのがよいでしょう!!
まぁ今は警察へ事情聴取に行っているので、帰りを待って頼みましょう(笑)
郁ちゃんからそれとなーく言って貰えれば、郁ちゃんなので安心安心♪……おっ一件落着ですね♪


> sopranosについて、
詳しく教えて貰ってありがとうございます。
しかし、きっかけが「カモ」とは…!!笑 その素朴さに笑いますね。
いやもちろん、それまでに積み重なっていた重圧があってこそなのですけれど、しかしカモ……(笑)
可愛いキャラクターでおもあるわけですねー。

> 2007年のファイナルシーズン最終回あんまりにも(笑笑)後味が悪い終わりなので次回作が期待されてたのですが...
そうなんですかー。後味の悪い最終回ってやっぱりみんな、それはちょっとってなるんですねぇ。。。
でも2007年にファイナルシーズンで5年以上空いてたようなので、後味の悪いままで終わるつもりだったのかもしれませんね。
51歳で心臓発作って…………体系的にも思う通り、メタボだったのでしょうか。高血圧や高脂血症も実は怖いものですもんね。

> 締めに私の好きなシーンです。トニーがダメ息子アンソニーJrを叩いてしまい傷ついてしまうシーンです。暴力を生業にする男が息子を叩いてこのざま笑。彼を表すシーンです
ああ、ダメ息子そう…!!とそっちに気がいっちゃいました…(ヲイヲイ)
奥さん、しっかり育てなきゃー(そこ?!)

ソプラノズは奥が深そうなんで、ゆっくりと時間が取れるようになってから調べますねー。
今調べても全部忘れちゃいそうです(苦笑) 長いみたいですしね(笑)

ツンデレラ |  2017年03月21日(火) 06:43 | URL 【コメント編集】

★ぐるぐるズ

ママ様

そうですね、郁ちゃんはやつれ果ててしまった柴崎に胸は痛かったでしょうけれど、でも凄く安堵したことでしょうね!
生きてる、と手塚から聞いて知ってるけど、実際に自分の目で見られたというのは大きいですもんね!
麗華さんに対しての怒りも、ママ様の仰るように、柴崎の気持ちを蔑ろにした怒りの方が強いのかもしれません。
一応、記憶喪失中に変な三角関係の1点であった麗華さんという認識は郁ちゃんにもありますしね。
詳しいことまではわからないでしょうけど、郁ちゃんなので、なにかしら感じ取っていたものもあるでしょうし……。
いろいろ諸々あるけれど、郁ちゃんにしてみれば、一瞬爆発した怒りは頑張って抑え込みましたしね。

手塚だけでなく、麗華さんもしばらくはグルグル期です。
あんまり出ては来ないですけどね…………麗華さんがどうやって乗り越えるのかは少し先になりますが、少し触れたいと思うので、そっと見守ってあげてください。
ママ様も仰るように、麗華さん自身が一番よくわかって責めていると思いますし。
麗華さんはこれまでの人生で、小さなミス、些細なミスはこれまでの人生であったでしょうけれど、ここまで誰かを傷つけるようなミスには遭遇してこなかった女性です。……というか、割と自分を中心に世界は回ってる感のある女性ではあるので、自分に致命的なミスがない限りは全然気にもしてこなかったでしょうし。
柴崎と一緒に仕事をした時にデータを消去されてしまうミスも、結局は柴崎が1日で復活してくれたので、些細なミス程度の認識だったでしょうし、そんな感じで生きてきた女性ではあるので…………。
なので、今回、自分が漏らしていたことで、「柴崎麻子」という人物の人生が狂ったというような重大なミスをしていたことを生まれて初めて感じた麗華さんなので…………麗華さんも生まれて初めて傷ついたのではないでしょうか。。。
傷ついて、一つ成長して、何かを麗華さんも見つけて欲しいと思います。

手塚グルグル期は、今回も深刻ですがまぁ短期なので!
やることも山積みだし、手塚は大変です(苦笑)
まぁ…………やることがあるだけマシ?(苦笑)
少しずつ、「柴崎麻子の人権復活」に向けて情報は集まって来ますので。
あくまで、図書隊の最終目標はそこなので、そこを忘れずに頑張って欲しいもんです(苦笑)
そして、人権復活した時に、「柴崎麻子」として元のポジションに戻れるように、柴崎はとにもかくにも体調回復をしてもらわねばなりません…………って、今またどん底に落ちたので、そこがなかなか大変で話が長くなる要因ですね……(苦)
まぁでも、今回は傍に手塚が居るので!!!
そして、早く二人で寄り添って眠れる夜になって欲しいです、、、、、私が!(苦笑)






ツンデレラ |  2017年03月20日(月) 07:29 | URL 【コメント編集】

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 |  2017年03月20日(月) 01:52 |  【コメント編集】

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 |  2017年03月19日(日) 13:07 |  【コメント編集】

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