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2016.10.05 (Wed)

≪背中の靴跡シリーズ≫ 『ひとり寝る夜の明くる間は』~vol.26~

≪ ひとり寝る夜の明くる間は~vol.26~ ≫背中の靴跡シリーズ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
  歎きつつ ひとり寝(ぬ)る夜の 明くる間は
   いかに久しき ものとかは知る
         右大将道綱母(53番) 『拾遺集』恋四・912
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



【More・・・】

≪ ひとり寝る夜の明くる間は~vol.26~ ≫背中の靴跡シリーズ


麗華からの意味深な言葉に、俺は自分の過去を取り戻したくなっていた。
大事なことを思い出したい――――。
記憶を失ってから、考えてみれば、こんな風に切実に記憶を求めたことはなかった。
仕事をする上で必要な知識だとか、そのための人間関係だとか、そういう記憶を求めたことはあったけれど、過去の自分の記憶のすべてを欲したことはなかった気がする。
――――烏滸がましいかもしれないが、麗華の話から、俺の求めている記憶というのは“マコと俺”の過去の記憶だ。麗華の言い方だと、記憶を失う前から俺達は知り合いだった筈なのだ。麗華が『一発逆転のチャンス』と言っていたから思っていた以上に親密な関係があったんじゃないかと心が浮き立つ。
…………ひょっとして、マコは俺と付き合っていたんじゃないのか?
互いに想い合っていたけれど、何らかの原因があって離れざるを得なかったとか、兄貴が略奪したとか?
…………そんなメロドラマみたいな発想まで浮かんでくる自分に苦笑するしかない。
――――そんな都合のいい展開、ということはないだろう…………。そう言い聞かせる。
もちろん、もしそうだったとしても、今はマコは兄貴の彼女なのだから、今の状態を打破することにはならないだろう。麗華の言葉が意味深だったから、自分の都合のいいように考えてしまっているだけだとも思う。
過去は過去、今は今――――。……麗華はもう、俺の想いは成就することはないのだと、諦めた方がいいと言っていた。今のマコは俺になんの興味もないと――――。
…………そう考えると、かなり凹む。
――――結局のところ、記憶を取り戻したところで、今の現状は変わらないのだと…………。
だけど、もし、一発逆転の可能性がゼロではないなら――――……やはり、それにかけてみたい。
自分の記憶にヒントがあるのなら――――記憶を取り戻して、マコへ思い切ってぶつかってみてもいいのかもしれない。

…………ひょっとして…………マコって俺の婚約者だったり…………?

柴崎麻子。『麻子』って――――マコって、それは単純すぎないか?
そう思うけれど、その考えから離れられない。
死んだと聞いている。だけど、俺には記憶はないし、葬式に出てはいないし香典も焼香もしたことない。
もちろん俺は入院中で退院するまでひと月ほどかかったし、動きが取れなかったと言うことはある。
――――だけど、婚約者が死んだのだったら、後になったって柴崎麻子に対して手を合わせに行けと兄貴だって言う筈じゃないか?
そんなこと、入院中はもちろん、退院してからも一度だってない。
そこをこれまで不思議に思わなかった自分も不思議だ。
…………そういえば、婚約者が死んだと聞いても、それ以上の追及を自分の心にしてこなかった自分に気付く。
記憶にはないけれど、大事に想っていた女性(ヒト)だった筈だ――――俺って薄情なんだろうか?
そう思って――――思って、婚約者の記憶を追及しようとすると、自分の体温が少しだけ下がるような気がする。
…………彼女のことを思い出そうとすると、無意識に怯える…………
死んでなかったら? 生きていたら? …………彼女は、目の前のマコだったら?
――――それなら、どうしてマコは何も言わないのだろう。
マコは何も言わなかった。――――まるで俺とは関わりがないような顔をしていた。
闇に怯える無意識の時だけ、俺に縋る――――。

……まさかと思うけど、マコも記憶を失ってるとか……?

……いやけど、それはないよな……。
麗華のことを覚えているマコなんだから。
昔一緒に仕事をした仲間のことを覚えていて――――婚約者を忘れるって考えられないよな。

――――やっぱり、マコと俺は何も関係ないのか。

――――それとも、マコはもう、俺との関係を切りたいのか。

……その考えは、酷く消耗する。
その可能性が一番高い。
過去に俺となにかあったとして――――だけど、過去のことはなかったことにしたくて、だからマコは沈黙を守ってるのではないだろうか。
それが一番、今の現状にしっくりくる――――……。
…………かなり凹む。

だから、マコに直接、確認出来ない。
言ってしまったら、今の関係が壊れてしまう。

確認するなら、ちゃんと記憶を取り戻してから――――。自分でちゃんと思い出した上で――――その上で、マコとの関係にほんの少しでも展望があるのなら、玉砕覚悟でマコに正面から向き合いたいと思う。
自分の記憶――――。
まさかそんな所に、千載一隅のチャンスがあるかもしれないなんて。
図書隊の訓練に参加させて貰う際には、笠原にもう一度聞いてみるつもりだ。
婚約者のこと。以前に見せて貰った写真だけじゃなくて、他の写真とか――――……。

…………自分でも勝手だと思うけれど――――、そういう目で思い起こせば、写真の中の柴崎麻子とマコの目は非常によく似ている気がするのだ。黒曜石のように漆黒の瞳で、大きな瞳に占める黒目の大きさ。
ただ、絶世の美女にしか見えない柴崎麻子の写真とは、顔に占めるウェイトが違っていて躊躇う。マコの方が顔がやつれている分、異様に目が大きく感じるし、今みたいに昼間は眼鏡をしているからレンズ越しで余計に目が大きく見えるのかもしれない。顔の輪郭だって写真よりも随分頬がこけていて、愛らしい丸みを帯びた頬じゃない。
…………似てるとも思うけれど、違うような気もする…………。
その辺りの確証も、イマイチ持てない。
すべては、俺の記憶さえ戻れば、何もかもわかる筈なのだ。

――――しっかりしろ、俺。
――――思い出せ。

そう思うのだが、思い出せない。もやもやと霧の向こうの記憶は形を成してくれない。
このジレンマがまだるっこしくて、ともすれば苛々してしまう――――。


グッと手を握ったら、グニョッと手の中でコロッケのタネが潰れた。
「~~うわっ…?! くそ、また……」
「バカねぇ、なんでそこで力入れるのよ? 卵に付けたらそっと優しく持ち上げなさいよ」
「~~~~ぬるっとするから、つい力が籠るんだよ!」
「ハイハイ、言い訳はいいから。さっきからタネの柔らかさに悪戦苦闘してるんだから、タネの柔らかさは十分理解してる筈でしょ? なのにそこで力を込めるとか有り得ないじゃなーい!」
「~~~~っ」
「取り敢えず、ある程度形を整えて……まぁ大丈夫そうだし、次はパン粉ね」
俺の掌の上のコロッケのタネを、小さな手で横からチョイチョイと形を整えてくれる。
その感触がむず痒い。

今、俺達は二人でコロッケを作っている。
倉橋と高山には夕方早目に帰って貰い、晩御飯は自分達で作ることにしたのだ。
麗華を駅まで送り届けた“貸し”のお返しとして、「……お前が食べたいと思う料理を作ってみたい」と言った俺に、マコは呆れたように「なにそれ」と返した。
言い訳のように「……早く元気になって貰わないと、俺も迷惑だから」と言えば、少し傷ついたような顔をしたけれど承諾してくれた。
……マコが元気になったらこの家から出て行ってしまう、と思えば俺も複雑なんだけど。
…………だけど、今の状態がいいとは絶対言えないから、やっぱり元気になって欲しいと思う。

――――このあたりが、自分でも相当ジレンマではある。
元気になって欲しい、でも、離れたくない、と…………。

だけど、やっぱりマコの為には早く元気になって欲しいと、心から思ってるのだ。
――――元気になれば、夜中に怯えるマコを兄の代わりに抱き締めてやることもなくなる…………。
はあ、と俺の中の男の部分を溜息と共に吐き出す。
――――いろいろ大変なんだよな…………。
麗華との会話以降、時折、自分の男の部分を持て余してしまうようになった。
…………もちろん、マコに手を出すつもりはない。
だけど、触れてみたいとふと過ってしまうことが増えている気がする。小さな頭を撫でてみたいとか、抱き締めてみたいとか、キスしてみたいとか…………。
――――男ってヤツはやっかいな生き物だ。

少し考えた挙句にマコが口にしたレシピは、『コロッケ』だった。
――――頭を抱えた俺に、「出来るの?」なんてからかってきた。――――わかってて敢えて難しいレシピを選んだんだろう! と思えば癪に障る。こういうヤツなんだよな!
ネットで簡単でおいしいと書いてあるコロッケレシピを探し出し、俺が休みの今日、午後からずっと悪戦苦闘だ。……簡単って書いてあるのに、もう7時前になっている。
大体、最初の玉ねぎの微塵切りからして躓いた。皮を剝き包丁で切り始めて――――しばらくもしないうちに、目が潤んで涙が滲んだ。そんな俺を見て、「うっわ…! レアな顔が見れた…!」とマコは大爆笑だ。くっそー! と思うけれど、切れば切る程目の刺激はきつくなり、涙が零れる。
「~~~~笑ってないで、お前も手伝ってくれよ!」と遂に弱音を吐けば、「~~ハイハイ。仕方ないわね~、じゃあ“貸し1”ね!」なんて言うから、ホントに癪に障る。
だけど、トントンと軽快なリズムで包丁を操る姿はホント様になっていて、見惚れた。
悔しいけど、口だけの奴じゃないんだ。
あっと言う間に切り終えて、フライパンで炒めだしたけれど、マコの目も薄らと涙目になっていて、ドキリと心臓が跳ね上がる。…………そっと後ろから包み込んで抱き締めたくなる。
もちろんそんなことを出来る筈もなく、負け惜しみを言って誤魔化したけれど。
「~~~~なんだよ、お前だって涙目になってるだろ」って。もちろんそれに対しては倍返しだ。
「元々誰かさんが散々、玉ねぎの目に浸みる成分を空気中に放出し過ぎなのよ! のたりのたりと鈍くさーい包丁捌きをしてた誰かさんのせいで、切る前からもう目が痛くて最悪。幼気な女性を泣かせた罪で“貸し2”ね! いっとくけどあたしの涙は高いから!」
なんて言うから、「鬼の目にも涙だな」って言えば、「なぁんですってー! 手伝って貰っといてそれ?! 今の言葉で“倍貸しの4”ね!」なんて目を剝いて言い出す始末だ。
まったく、ああ言えばこう言う――――俺の台詞が何十倍にもなって返ってくる。
…………なのに、楽しいんだよな。…………これも惚れた弱みなんだろうか。
辟易するのに、マコの台詞に言葉を返してしまう。スパイスの効いた辛口トークが楽しいなんて、俺もどうかしている。

…………だけど、優しい所もあるんだよ。

パン粉を付けてコロッケの形になったものを、油で揚げてゆく。
スッと鍋肌に滑らせるように、とのマコの指示通り、そっと油に入れていく。マコが作った小さめのコロッケはふっくらとして綺麗な狐色にカラリと揚がり、売っているものよりも美味しそうに出来た。
俺が作ったコロッケも……と、そっと油に落としたのだけれど、ひっくり返す前に突然ピチピチと油が飛び跳ね始めた。どうやら、皮の一部に穴が開いて中身が飛び跳ねてしまってる。
「~~~~ッ?! あつ…ッ…!!」
なんとかしようと箸で引き上げようとしたのだけれど、グニョリとコロッケが真っ二つに折れて、油に落ちて飛び散る。――――散々だ。
それでも何とか菜箸で折れたコロッケを取り上げて、しばし息を吐く。中身は飛び散って半分くらいになってしまっている。
「~~バカッ!! この…バカっ、ちょっと、早く冷やして!!」
マコの切羽詰まったような声と共に、小さな手が俺の腕を掴んで水道へと導く。冷水に晒すとピリッと痛みが走った。
「~~~~もうっ、手や腕に火傷してるじゃない!!」
「…………あー……、まぁ、大したことないよ」
「わかんないでしょ! 火傷を侮らないで! とにかく冷やして!」
冷たい水に晒されているのに、マコの手が触れている部分に熱が籠る気がした。
俺の意識は火傷じゃなくて、すぐ目の前にある金髪に集中してしまう。俺の腕を掴んだまま、俺の前に立つなんて無防備過ぎないか? 左手をそっとその身体に回せば、華奢な身体は簡単に包み込まれてしまうんだぞ?
俺の鼻腔はマコから発せられる甘い芳香で満たされてゆく。
こんなに近くちゃ、俺の鼓動の音が伝わりそうでヤバい…………。
「…………もう大丈夫だろ、痛くなくなった」
動揺が伝わらないように、努めて素っ気なく言えば、冷水から俺の腕を出して患部を見る。
「……水ぶくれになっちゃってる……。もうちょっと冷水に浸けてて」
そう言うと、するりと俺の前から擦り抜けるように離れてゆく。
あーあ、と溜息だ。…………もちろん、無防備だからって、抱き締めることなんか出来ないんだけど。
救急箱を手に戻って来たマコは、幾つか出来た小さな水ぶくれのところに化膿止めの軟膏をちょんちょんと塗って、手首をくるっと包帯で巻いてくれた。こんな風に触れられるのもくすぐったくて堪らない。
「……大袈裟だろ?」と言えば、「幾つもあるのに一々ガーゼするのも面倒だし、とりあえず今はそうしてて。またお風呂の時に様子見ましょ。……大丈夫だと思うけど、もし痛みが強かったら病院に行った方がいいしね。火傷も侮ると怖いから」
そう言いながら、あっと言う間に処置してくれる。――――結構面倒見が良くて、実は世話好きなんだよな。
口調は素っ気無いけれど心配してくれているのがわかるし、嬉しくなってしまう。
俺が作ったコロッケが、後2つ残っていた。
「……あんたのコロッケ、デカいから割れやすいんだろうなぁ……」
ブツブツ言いながら、まだ上げていない俺の作ったコロッケをチェックしてパン粉を付け直すと、そっと両手で包み込むように取り上げて静かに油に入れる。
さっきより少し強火で心配したが、マコに言わせればこの温度で先に表面を揚げてしまいコーティングしてしまう方がいいらしい。
それからカス揚げ用のメッシュの掬い網を上手く使って、そっと引き上げる。
「~~~~そんな裏ワザあるなら、先に教えろよ」
と言えば、「あんたの失敗を目の当たりにしたから思い付いたのよ! あたしのコロッケは問題なく揚がってたから、まさか破裂するとか思わないでしょ?」と唇を尖らせる。
…………だから、その口元、ヤメロって…………そんな顔でも可愛いと、キスしたいって思ってしまう。
なんとか残りの2つはマコが上手く揚げてくれた。なんとか7時半には食事にありつける。
マコがチャチャッと作ってくれた“野菜と豆腐サラダ”に“お味噌汁”。
彩もよく栄養も考えて作ってくれているのがわかる。
コロッケの味は自分で作った欲目もあるのだろうが、絶品だった。
俺が作ったデカいコロッケをマコが食べてくれる。俺も自分のデカいコロッケと、マコが作ったコロッケに手を出す。…………美味い。
「……ふう……、美味しかった! お腹いっぱいよね」
「お前、俺の作ったコロッケ1個しか食べてないだろ。もっと食べろよ」
「~~あのねぇ! あたしの作ったコロッケの3つ分はゆうにあったわよ! デカすぎんのよ、もう! あんたのコロッケ1個で十分、これでも最後は結構苦しくてお腹はち切れそうなくらいパンパンなんだから! 最後まで食べきったあたしを褒めて貰いたいくらいよ! ……次はもっと小さめに作ってよね! その方が揚げるのも楽だし、火傷もしなくて済む筈だから」
「――――次は? また一緒に作ってくれんの? 次の俺の休みの日?」
「~~~~そ、そうじゃなくて…っ! そ、そうだ、次は大槇さんも呼ばない? もう作り方わかったでしょ?結構大量に出来ちゃったし――――」
「――――え? 丁度二人分……と朝御飯分くらいだけど?」
「…………」
コロッケを山積みしていた皿を見て、マコの目が点になった。それが可笑しくて吹き出しちまう。
美味いな、と思うと、箸が止まらなくなってどんどん食べちまった。残っているのはマコの作ったコロッケが3つ……明日の朝に2つ、3つ俺が食べたらもうなくなっちまう。
「……ほんっとに、戦闘職種はこれだから…………」
「…………ん?」
思わず呆れたように零れたマコの言葉を聞き返すと、慌てたようにマコが言葉を続ける。
「~~~~た、食べ過ぎよっ!! 今のあんたは図書館協会の仕事をメインにやってるんだから、こんなに食べたらぶくぶく太るわよ! 図書隊の訓練に参加させて貰う時に身体が重くて思うように動けなくったって知らないからね!」
「大丈夫だよ。ちゃんと身体は毎日鍛えてる。筋トレやジョギングもちゃんとしてるしな。その辺りで手を抜いたことはない――――って、家でもやってるからお前だって知ってるだろ? ……まぁ確かに今日は、想像以上に上手く出来たし美味かったから、いつも以上に食っちまったけど、これくらいで太るとかは有り得ん」
「…………ったく……。まぁいいわ、体調管理は自分の責任だし、あんたのことはあんたが管理すればいいんだしね。……でも3つ残ったんなら、本当に大槇さんを呼んであげれば良かったわね」
「…………いやに大槇に拘るな? 別に次も麗華を呼ぶつもりはないけど」
「…………呼んであげたっていいじゃない。大槇さん、ここでの晩御飯、楽しみにしてんのよ。彼女はあんたに好意を寄せてるんだから、あんたが作ったなんて聞いたらきっと喜ぶ――――…」
盛大に溜息を吐いて、マコの言葉を途中で遮った。
「――――麗華は呼ばない。麗華にはこの前、ちゃんと話をした」
そう言ってマコを真っ直ぐに見つめる。
「この前、麗華を送って行く時に、麗華に告られた。――――だから、断ったんだ」
マコの大きな目が、驚きで更に大きくなった。
「~~~~な、なんで…………、いいじゃない、…………別に、好きな人が居ないんだったら試しに付き合ってみても…………」
動揺してるらしく躊躇いがちの声が少し掠れて、マコの目が酷く揺れているのを、ジッと見つめた。
マコの言葉を真正面から受け止めて、真っ直ぐにその言葉を返す。
ドクンドクンと俺の鼓動が少し緊張しているらしく大きく感じて――――だけど、マコに言い聞かせるように、静かな低音で穏やかに言い切る。
「――――俺……好きなヤツが居るんだ」
「――――――――っ……」
見つめ合う。
マコの目が、更に落ち着かなく揺れる。
しばしの沈黙が俺達を包み――――マコの目が泣き出しそうに潤んだ。

――――いっそ、今、打ち明けるべきか?

耳鳴りのように煩い自分の鼓動を聞きつつ、自問自答する。
今打ち明けて――――だけど、断られたら、今のこの関係は崩れてしまう。
マコは出て行く、と言うに違いなかった。
だけど、この気持ちを隠して接するのももう限界の気がする。

――――それなら――――それなら、今のままでいいのだと説得して、ただ俺の片想いを伝えるだけにすれば――――
片想いは承知の上だ。
想いを伝えたからと言って、マコに俺を見て欲しいとか、付き合って欲しいとか思うわけじゃない。
…………いやもちろん、マコも俺が好きになってくれたら、とそう望む自分が居ることは否定出来ない。
だけど、そういうことじゃなくて――――
ただ、元気になるまで、見守って居たい。
傍に居たい。
俺の想いは想いとして――――だけど、ただ、お前が元気になってくれれば、今の俺は十分で――――

それを伝えることも罪だろうか?

「――――マコ……?」

俺の声も緊張に震えたが、俺の呼びかけに明らかにビクリとマコの身体が震えた。
「~~~~っ…! ……そっ……、そそ、そう、なの……」
ぎこちなくギクシャクとしたマコの固く震える声。
あまりに緊張感が高くて、逆に俺の方が落ち着いて来る。
「マコ?」
「~~~~あっ……、あああの…っ、……あ…たし、……ごめ……、ちょちょっと休んでくる……ッ……」
「…え……」
慌てて立ち上がったマコの泣き出しそうな顔。だけど、その顔に釣られて俺が腰を浮かすと、俺から逃げるように踵を返したから追い駆けるのを躊躇してしまう。

…………あー…………。

やっぱり、失敗だったかな?

マコがリビングから出て行くのを見送りながら、そんな言葉が頭を過る。
あんなにも動揺したマコは初めてだった。
麗華は、俺の態度はわかりやすい、と言っていた。……ということは、マコだって薄々察してて……今ので、俺がマコのことを好きだって確証させてしまっただろうか。

――――あんなに動揺して逃げ出すくらい、俺のことが嫌だったとか……?

思うと凹む。
さっきもしきりに麗華を勧めようとしていたくらいだし、マコにとって俺はそういう対象じゃないのは確実だ。
…………と思えば、大きな溜息が出る。

いや、わかってたことだったけど。
マコは兄貴の彼女だし、例え昔どんなことがあったとしても、今は兄貴のことがマコは好きなんだ。
もし俺が『片想いでもいいから』っていくら言ってみたところで、所詮、男の俺があいつを好きだとしたら、二人でここでの共同生活に身の危険を感じるかもしれない――――。
――――ここを出る、と言い出すかもしれない――――。

……やっぱ、口にするべきじゃなかったか?!

いくら後悔しても後悔しきれない思いで、打ちのめされる。
どうすればいいのか、どうしたらいいのか、まるでわからない。
記憶を失う前の俺なら――――現状を打破する何かを持っているんだろうか?
ふとそう思ったけれど…………それに応えてくれるものは、結局、誰も居なかった。



……To be continued. 






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05:10  |  *『図書館戦争』二次小説  |  TB(0)  |  CM(8)  |  EDIT  |  Top↑

★「初めての共同作業……」

ママ様

笑!
確かに!!!
ママ様からのコメントを見て、私の名でもボンッと妄想が湧きました!(笑)

司会「……では新婦のお色直しも出来たようですので、入場の際にはここでお二人初めての共同作業……」
郁 「キタキター! このタイミングならキャンドルサービスか?!」
小牧「キャンドルサービスは結構試練の場だから、柴崎さんがチョイスするとは思えないな」
郁 「なんですか、試練って……」
小牧「あれ、笠原さんも洗礼受けたじゃない。ほら、ローソクの芯を完全に切られて火が付かないってやつ」
郁 「おおお思い出したー!!! あれか…っ!!!」
堂上「…………隊長と進藤三監のトコ、芯じゃなくてローソクをぶった切られてたんだぞッッ!!!!」
小牧「やっぱり? 俺らはキャンドルサービスは止めとこうね、毬江ちゃん」
毬江「………………」(必死にコクコクと頷く)
郁 「……じゃあやっぱり、デフォルトでこのテーブルのローソクもやっちゃい…………あれ? ローソクがない…………」
小牧「だから、柴崎さんがそんなチョイスするわけがないって。入って来てケーキ入刀なんじゃないの?」
司会「…………コホン……。あーえーっと……その、入場の際には、お二人初めての共同作業……で作った、思い出のコロッケを……皆様に配布します? え? マジ?」
(扉バーン!)
女王然とした柴崎の姿が浮かび上がり(手にはトンク)、柴崎の後ろから執事よろしく(いや下っ端台所係よろしく)手塚が、山盛りコロッケが乗ったワゴンを押して入ってくる。
郁・毬江・堂上「……………………へ?」
小牧「わはははははははー!」

当然、戦闘職種には、手塚のデカいコロッケが。女性には柴崎の形の良いコロッケが配られたのであった。
郁 「えー!!! あたしも女性だよっ?! 柴崎の綺麗なコロッケがいいー!!!!!」
柴崎「アンタは戦闘職種なんだから、これくらいペロリでしょ? 中身は同じなんだから文句言わないの!」
郁 「いや、そうだけど! そうだろうけど! けど、見た目が違い過ぎるだろー?!」
柴崎「そっくりそのまま、あんたんちで食べたコロッケに当てはめてお返しするわ。あんたのと堂上教官のコロッケ、見た目でどっちがいいと思う?」
郁 「…………う……………」
柴崎「まぁ、精進しなさいよー」

なんて。
(笑)
結婚式なのに、手を組んで二人で入ってくることもなかった手塚は、この柴崎のチョイスを一生後悔することになるのであった。
(笑)

結婚式前夜は、2人で延々コロッケ作りで、実は一睡もしてないとか…?(爆笑)
深夜になって、
柴崎「…………ああ駄目、これ以上起きてたら、明日に響いちゃう…………あとヨロシク光」
手塚「え? え?! おいっ!!! 残り30個、俺が一人で揚げるのか?!」
柴崎「んー…。お願い、光。……あたし眠い………」
手塚「・・・・・・・・・・」
(真っ白になりつつも、ベッドの中から上目遣いでお願い、と言われた日には、何も言えない手塚であった)
とか?(笑)

だめだ、妄想が……………
面白すぎる!!!!!

コメントありがとうございました!



ツンデレラ |  2016年10月07日(金) 06:22 | URL 【コメント編集】

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 |  2016年10月06日(木) 10:23 |  【コメント編集】

★男ですから★?

アリアアリス様

すみません、昨日、入稿関係でトラブって、コメレス出来ないままにまたコメントをいただいてしまって!!!
いつもありがとうございます(*^^*)

> 手塚に一言
> 「凹みながらコロッケは作らない(笑)
> 悶々としながら、コロッケは作らない(爆笑)」
爆笑!
ですよねー!!!
だから、イマイチちゃんと衣ついてなかったりするんだよ!←ソコ?(笑)
ビチビチコロッケを、なんとか自分で取り出したことは褒めてあげますが(上から目線だな!苦笑)、その前にモヤモヤしすぎ~~~(苦笑)
だから天罰が!
…………まぁ、マコさんに触れられて、手当されるなんていう羽目になったので、天罰かどうかは知りませんが(笑)

> 前回の麗香さんが蒔いた種が手塚の中で芽吹きましたね。
ですねー。
早かったです! 私もアリアアリス様と同様、驚きました!(笑)
いや多分、マコさんが部屋に籠ってる時間とか暇だから、めちゃめちゃ考えたんですよ、短期間で(笑)
元々、ウチの手塚は若干、グルグル考えがちですから、それこそもう、マコさんが居ない時間はひたすらグルグル考えてたんじゃないですかね?(笑)
「一発逆転のチャンス」ってやつについての考察(笑)
いやもう、中坊の恋愛のようですから、そりゃもう、どうやったらマコが振り向くか、そこに自分の記憶が絡んでるってどういうことだ? あんなことやこんなことがあったりとか…………だったら俺がマコと付き合って…………なんてもう、それこそ笑えるグルグルっぷりだったのでは!と思います(笑)

> まぁ、考えが安定のヘタレボーイでしたけど(笑)それが手塚の良いトコロ(?)
それが手塚です(笑)
普段は卒なくこなすんですけどねー。
こと、「好きな女」が絡む恋愛にはトコトンヘタレですよねー(笑)
そして、そんな手塚がとても可愛く大好きだなァ。。。。(笑)
きっと本人はスマートにいきたい筈ですけどね(笑)
一見、恋愛事にはスマートで卒なく熟しそうな手塚のヘタレっぷりが愛おしい限り(笑)

> あーしかし、マコさんが可愛いかったです(///ω///)♪
良かったです!!!
いやもう、この回が多分、マコさんが可愛い最後の回(…………おおっと!!!ノーコメントで!!!)なので…………
あ、いや、、、、今のはスルーで★
今回は、マコさんのマコさんなところを全面に出しました!!!
そりゃもう、手塚がメロメロになるのもわかるわって、皆様にも思って欲しかったし(苦笑)
案の定、手塚と来たら、2人っきりをいいことに、完全にメロメロになっていましたが(笑)
そりゃもう、このいい雰囲気、
「ここで告白するべきか?!」
…………いや、今しないといつするんだ、とホント突っ込みたかったですけれど、手塚には難しい難題でしたねー。
相変わらずのヘタレっぷりに、マコさんに逃げられちゃって……………(呆れ)

いやもう、部屋に飛んで帰ったマコさん、ドッキドキだったと思います。
言わなくても露骨すぎ(笑)
扉締めて、その扉から手塚が入ってこないように背中で扉押さえつつ…………でも膝から力抜けて、へなへなって扉のトコロで座り込んでしまっていそうです!!!
もちろん、顔、真っ赤で。
心臓、ドッキドキで。

…………やっぱ、あそこでもう一押ししておくべきだった!!!と手塚に本当に助言したいです!!!!!
絶対、落とせたな、と(笑)

まぁ……手塚本人ももうすっかり自覚しているように、手塚の意思は決まってますからね。
不器用だから、それを直球で、完全に矛先をマコさんに照準合わせているのをついつい見せてしまうあたり、これまた中坊の恋愛ですが……………

いやもう、ホントに…………………
「そこは押しておくべきだったよ!!!!!」と手塚に言いたいです。



ツンデレラ |  2016年10月06日(木) 06:16 | URL 【コメント編集】

★手塚を調教するのは間違いないでしょう(笑)

ママ様

手塚と柴崎が結婚したら、そりゃもう、家事の方は麻子サンが調教しますね!
もちろん、柴崎が自分でやった方が早くていい出来なわけですけれど、そこは今後の事も考えて、柴崎は手塚に仕込むことが間違いないと思います。
そういう手間は、手塚にかける麻子サンだと思うなーwww
そりゃまぁ、官舎に居れば、ご飯なんかは食堂に行けば済むといえばそうなんですけど、もしも自分が不在の時にいつもいつも食堂で済ますような夫は調教しそうですから(笑)
最低限、必要なことは出来るようにしておくのが麻子流(笑)
手塚も、麻子サンに「させられてる感」はゼロで、なんだかんだと口やかましく言われつつ一緒にやっているうちに、気付けば出来るようになってて、ある時そんな自分にビックリするような気がする(笑)
そんで、料理とか作って麻子サンの帰り待って…………麻子サンに「……美味しい」なんて言って貰った日には舞い上がっちゃうんですよーきっと(笑)
でも、麻子サンから間で「……あと、ここをこうしたら完璧ね」なんてボソッと言われたら、手塚の負けん気が顔を出して、そこをまた改めてより良いものへと上達していくという魔法です(笑)
意欲を掻き立てる麻子流…………私も子育てに活かしたいと思えど、なかなか現実は上手くいかず………ですけど(苦笑)

> やっと麻子=マコじゃないかに辿り着きましたね(笑)
(笑)
まだ、とりあえず思い付いただけ、くらいの手塚ですけどね(笑)
大分遅いですけど、手塚なりに、今自分の考えに「おおっ」って思っているかと(爆笑)
まぁけど、まだ今は「そーだったらいいのにな♪ そーだったらいいのにな♪」程度の思い付きですけどね!(笑)
多分、記憶のない手塚に「婚約者」の話をする時ってみんな「真っ直ぐな黒髪が特徴的な」「物凄い美人」「小柄だけどスタイル抜群」そのあたりの容姿説明だったと思うんですよねー。
その人のことを知らない人物に、「人」の説明をするって難しい…………。
手塚の中では、「婚約者」は、「真っ直ぐな黒髪が特徴的な物凄い美人で、小柄なスタイル抜群の女性」としてインプットされたんだと思います(刷り込みだな!笑)
なので、目の前にマコさんが来ても…………まさか自分の婚約者と一致する要素があるなんて思わないし、そもそも、慧もマコさんも何も言わないあたりで、そこがイコールになることはないかなーと思いますねー。
記憶って大事だな!(……当たり前だ!!!)

マコさん、ここに来て、麗華さんプッシュが少し露骨になって来ていますねー。そりゃまぁ、手塚もイラッとするわな(苦笑)
手塚にとっては、もう、麗華さんにいくことはないと、自分でもわかってるのですが、マコさんは手塚がそこまでいってるとはまだそこがわかってないのかもしれません。
そうですねー。
記憶喪失で、マコさんが現れる前の手塚に、麗華さんが告白していたら(「好きな人居ないなら付き合わない?」とかサラリと言われたら)「…………まぁ……いいけど」ってなってたかもしれないな、と私は思ってます。
うわー…………その状態の手塚と麗華さんの前に、マコさんが現れてたらもっと修羅場だったね!(大汗)
仮に付き合ってる人が居る状態で、手塚がマコさんを好きになったら…………やばいー…………
今思えば、相当冷や汗です★
ああでも、その頃の手塚は、体力取り戻すのに必死だったから「…付き合ってお前に時間潰すより、身体鍛えたいからごめん」とか言って、こっぴどく麗華さんに怒られてそうな気もする(笑)
…………その辺りのデリカシーのなさとか、好きでもない女への対応の素っ気なさはお墨付きの気がするし(笑)

結局のところ、手塚が好きになる、ということが大事なことで、麗華さんは諦めない、と言ってるけど、結局マコさんにフラれても手塚が麗華さんにいくことはないなぁ…とは私もママ様と同じで、そう思いますね。
だって、本当に好きな人への想いと、明らかに違いすぎますからね(苦笑)
そういう意味では、手塚って、好きになったらホント一途だなぁ………ってその豹変ぶりにも驚きますね(苦笑)

> 手塚の思わぬ告白(好きな女がいる)に動揺したマコさん。
こちらに関してはノーコメントで。
次回、マコさんの様子がわかる回なので、そちらで~~~★
ただ、ここからマコさんの印象がどんどん悪くなっていくので、私的にも少し苦しいところです…………。
(本質は悪くなってはいないのですけれど、恐らく当分最悪かなー…………)←←←ヲイ★

……………すみません、ノーコメントって言いながら、かなり口が滑ってますが…………ノーコメントで!!!
ツンデレラ |  2016年10月06日(木) 05:50 | URL 【コメント編集】

★コロッケ!…………です(笑)

こじこじ様

> コロッケ!コロッケ!コロッケ!
> しかも、作ってあげるんじゃなくて、作ってもらってる!!
> …態になってる(笑)

(笑)
です(笑)
手塚が作る、という態になってますが、半分くらい口出し手出しをしているマコさん(笑)
かんたんレシピではありますが、要所要所ではマコさんによって、簡単レシピ以上に「おいしいコロッケ」に変身させられているものと私も見受けております!!!(笑)
かなり美味いんですよー!!!
何故か手塚好みの味付けで(笑)
そりゃもう、バクバク食いすぎるわ、ってね!(笑)

最初に、堂上家のコロッケが出てきたあたりで、既にこのお話の中で手柴でコロッケも作ろうと思っていたので(当然2人の共同作業で(笑))、今回ここに私の夢も叶いました!(笑)
良かったです~~~♪

> それにしても、手塚おしい!!
> (以下中略)
> 色々と考えて、そのひと押しを躊躇してこそ、手塚だ(笑)
爆笑!
ですね!!!!
そのひと押しが出来るなら、柴崎相手にジレジレと5年もやってないわなー(笑)
最後のひと押しをするにあたって、ものっすごく考えちゃうあたり、手塚のヘタレ満載です(笑)
「ここ!」って時がいつなのか(今だよ!)わからないんだろうなぁ。。。。。
よっぽど切羽詰まって、どうしてもって状況に追い込まれないと、手塚から言い出すのは至難の業なのかもしれません★
どうでもいい相手(タスク入ってすぐの郁ちゃん)には「付き合わないか?」っていともあっさり言えるのにね(笑)
この辺、手塚の頭のネジが若干、少しオカシイのですけれど、それが手塚でしょう(ヒデェ★)

…………ってことは、こっちの手塚も、追い込まれなきゃ無理なのか?(って聞くな!)
どうなんでしょうね?
(…って、質問で終わるな!★逃★苦笑)


ツンデレラ |  2016年10月06日(木) 05:14 | URL 【コメント編集】

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 |  2016年10月05日(水) 22:55 |  【コメント編集】

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 |  2016年10月05日(水) 14:09 |  【コメント編集】

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 |  2016年10月05日(水) 07:25 |  【コメント編集】

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