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≪背中の靴跡シリーズ≫ 『われても末に逢はむとぞ思ふ』~vol.1~

平成も、残すところ、後10日になりましたねー!
平成最後、平成最後、とずっと言われ続けた1年でしたが、本当に最後……さぁてどうやって過ごせばいいんだろ? と今更自問自答です(笑)。
きっと平成最後も令和最初も、日常の中に流れていくのさー。
だって。
平成のリクエストを、終わらせることが出来ずに、令和へと持ち越すツンデレラ。
もはやこれ一つとってもダメダメやん!

というわけで、平成から令和へのバトンタッチの場面で、新連載開始(苦笑)
中途半端だろーが、区切りもへったくれもなかろーが、いいのいいの、これは、若者達の話だから(笑)。
図書戦メンバーが高校生になって青臭くでも一生懸命に奮闘するパラレルです。


◆◆◆2017年サンキューリクエスト祭りから◆◆◆
みほ様
********************
学生時代の同級生が読みたいです。手塚は成績優秀、スポーツ万能の人気者。柴崎は成績優秀で美人だが、自信が無い目立たない女の子。少女漫画によくある設定の手柴版が読んでみたいです。
********************

すみません、柴崎の設定は、『自信がない目立たない女の子』ではないです。ごめんなさいです。
手塚はまぁ…そんな感じで書けると思います。
一応、設定とか読まなくてもわかるようにお話の中で書くつもりですが、念のために書いておきますね(((((((^^;)

◆場所◆開明成高校
  有名私立名門校ながら、高校での門戸は広い。
  小学校から存在するが、小学校から入る人は裕福な家庭(小学校は少数で学費が結構かかる)ながら学力にも力を注ぐ。
  中学受験で入学してくるものは成績優秀者のみ。一部学費免除制度があり、小学校からエスカレーターの生徒とは別クラス。
  現在、文科省からの要請もあり高校受験では少し門戸を広げている(とはいえ全国レベルで偏差値の高い高校ではある)。
  開明成大学も存在するのだが、エスカレーターで上がる人は半数で、成績優秀者はまず間違いなく旧帝国大学や有名私立大学へと進学する。

◆年齢◆
  高校1年  手塚光・笠原郁・柴崎麻子・中澤毬江
          〇柴崎麻子・中澤毬江は小学校からずっと開明成
          〇手塚光は小学校と高校は開明成
          〇笠原郁は高校から開明成  
  高校3年  堂上篤・小牧幹久
          〇堂上篤は中学校から開明成
          〇小牧幹久は高校から開明成
    ※人物の関りについては、お話の中で出していくつもりなので、おいおいに……
     わかりずらくなったら、またまとめて記載しますね。
    ※物語当初はカップリングなし。

というわけで、高校生ですよww
全員青いですし、いろいろやらかすかもしれませんが(笑)、それもまた青春なのでww(笑)
とはいえ、残念ながら、学園生活がほとんど描写にないお話になりそうな気もする……(ヲイ★)
なんせ、前回も書いたように、お話の中心が『かるた』なので。
相も変わらず、ツンデレラはリクエストして下さる方の期待を大きく外す人間で、本当に申し訳ございません。
そして、初めはどのカップルもくっついていない設定ですので、途中は堂郁じゃなく堂柴(柴堂?)に見えたり、手郁(郁手?)に見えたりするかもしんない…………そういうの嫌いな方は、申し訳ないですが、そっと読むのをやめてひっそりと立ち去って下さいね。
最後はちゃんと王道のカップリングになることは最初に宣言しておきますが、うだうだと他のカップリングになりそうな絡みは見たくない、という人はいらっしゃると思うので。
寛容な方で、ツンデレラの書くお話を、温かく見守ってくださる人に読んでいただけたら嬉しいです。
では初回。
登場人物、まだ3人しか出てこない……ごめんなさい。
だんだんとちゃんと登場させて、ちゃんと絡ませていきたいと思っています!

とりあえず、どんなもんか見てやろう、というチャレンジャー精神のある方は追記からどうぞ~♪
そして、ちょっとでも続きが見たいと思って下さるなら、またお暇な時に覗きに来て下さいね。





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≪背中の靴跡シリーズ≫ 『空駆ける靴 オマケ(完)』

長らくお待たせ致しましたーっ!!
入学式も終わり、始業式も終わり、でもずっと午前で帰宅してくる我が子達でしたが、ようやく金曜日から日常が戻ってまいりました。
新年度、皆様はいかがお過ごしですか?
ようやく、このお話も完結することが出来ましたー!!
もうホント、頭が上がりません……。こんな大したことのないお話で随分随分お待たせしてしまって本当にすみませんでした。
結ばれた二人のその後……ということで、幸せな二人をずっと追っていったつもりです。
無事に完結、ということで、私もホッとしています。

次回からは新しいパラレルのお話を始めるつもりです。
リクエストお応えで! いよいよ、最後のリクエストになりました!!
これでようやくすべてのリクエストを終えられる……と思うと感無量です!(って、まだ書いてもねぇ(爆)!!)
……そして、多分おそらく、相当長くなんじゃないですかね?(((((((^^;)(聞くな!)
↓↓↓
◆◆◆2017年サンキューリクエスト祭りから◆◆◆
みほ様
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学生時代の同級生が読みたいです。手塚は成績優秀、スポーツ万能の人気者。柴崎は成績優秀で美人だが、自信が無い目立たない女の子。少女漫画によくある設定の手柴版が読んでみたいです。
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↑↑↑
こちら。
というわけで、高校生ですよww
またまた青い手塚が見れるわけですよねww(笑)

以前からこちらに来ていた方にはチラリと漏らしましたが、『ちはやふる』みたいな感じのお話になる予定です。
なんで『ちはやふる』なの?! と文句が聞こえてきますが、男子も女子も同等に出来る部活なんですよ、かるたはww
そこに惹かれましたww
性別に関係なく体当たりして欲しいです! なんせ高校生……若いのですから!(←)
なので、ストーリーが『ちはやふる』をなぞるわけではないです…………って、これまでのリクエストお応えでもなぞった話は一つもないので、皆様ご承知のことか(笑)。
まだこちらに来て日の浅い方はご存知ないと思いますから、ツンデレラ、お話を踏襲することが出来ない体質ですので、その辺は申し訳ないのですが諦めて下さいませ。
素晴らしい『ちはやふる』のお話を図書戦で、というわけではございません。所詮、ツンデレラの書くものなので知れております……。(反省)
とはいえ、『ちはやふる』がモデルでありますので、今回は、堂郁、小毬も登場でガヤガヤと賑やかにいこうと思っています。
ちなみに、最初はどのカップルもくっついていない設定で(ああでも小牧さんと毬江ちゃんだけはくっついてるかもしれないけど)、ごちゃまぜ状態からそれぞれくっつけていきたいと思っております。
なので、途中は堂郁じゃなく堂柴(柴堂?)に見えたり、手郁(郁手?)に見えたりするかもしんない…………そういうの嫌いな方は、申し訳ないですが、そっと読むのをやめてひっそりと立ち去って下さいね。
最後はちゃんと王道のカップリングになることは、最初に宣言しておきますが。(ツンデレラはそれしか書けませんので)

というわけで、次回からの話の宣伝が長くなり過ぎましたが、『言の葉の空番外編』ついに完結です。
ここまでお付き合いくださいました皆様、本当にありがとうございました!!

もし気が向けば、もしなんでも読んでやるよって言う寛容な方は、よろしければまたお暇な時に覗きに来てください。
本当に亀更新で申し訳ないですが、ちまちまと頑張って書きたいと思います。
では、完結話は追記からどうぞ~♪



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≪背中の靴跡シリーズ≫ 『空駆ける靴 オマケ』~vol.1~

ほんっとーにご無沙汰してます。
桜、開花宣言も出て、あちこち華やかになってますねー。
皆様いかがお過ごしですか?
私の方は子供達がすっかり春休み……いやもう、ずっと家に居るから書く暇がない!
あうううう…という感じです。
仕事も普通にあるし、春らしくすぐに眠くなるし、本当に困った困った……。

前回のお話の完結は3月10日だったんですね!
驚き!!!
20日間も放置……過去最高では??(大汗)
このブログは閉じるのかな~と思われている人も多そうですが、なんと、前回の完結話のオマケを今更……。
もはやすっかり忘れちまったよ! という方は、もう一度読んで下さるとありがたい~~(大汗)
本当にすみません。
もう一つ言えば、再開するものの、春休みが終わるのは4月8日、その後もその週くらいはバタバタで書く暇なさそうなんで、ぼちぼち更新になりそうで、本当にすみません!!
まぁ…生温かく見守ってくれるとありがたいです。
生温かーく見守って下さると、ありがたいですうううう。
皆様の温かさに甘えつつ、皆様の温かさあってこそで、このブログは細々と続きまーす。
よろしくお願いしまーす。





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≪背中の靴跡シリーズ≫ 『空駆ける靴』~vol.7(完)~

≪ 空駆ける靴~vol.7~ ≫背中の靴跡シリーズ


ぐらりと身体が傾く感じがして――――そして、浮遊感。
眩暈が起こって倒れたんだろうか、とぼんやりと思って目を抉じ開ける。
……そのわりには痛みはなかったけど……。
と、バンッと車の扉が閉まるような音の後、すぐにエンジン音がして遠ざかる。
突然の騒音に身体はビクッと震えて固まる。
何が起きたのか――――だが働かない頭とぼんやりと霞みがかったような白い視界では、まったく状況が理解できなかった。
…………な、……なに……っ、
わけもわからないのに怯えてしまう。
咄嗟にもがくように身じろげば、光の匂いに包まれていることに気づく。
ホッとする。
ひかる……光…?
…………居てくれた。
縋るように手を動かせば、優しい声が降り注いでくる。
「…麻子? 起きたのか?」
…………起き…た……って……。
重い身体はイマイチいうことを聞かないが、なんとか首を回して光を探す。
ぼんやりとした視界に、すぐに光の顔が飛び込んできてくれた。
光――――ひかる、だ……。
安堵にほぉ…っと吐息が出た。勝手に口元が綻ぶ。
――――と、グッと抱き締められる感触がして、視界に映る端正な顔に朱が差した。
少し乱暴に玄関を開ける音――――…。

玄関?

家?

あれ、なんで帰って――――……。

と思ったところで、いろいろと思い出す。
「~~な…っ…………ひかる、仕事――――…」
縺れそうになる舌をなんとか動かして尋ねようとした言葉は、玄関を閉じる音と共に重ねられた唇によって物理的にぶった切られた。
息を吸われ、舌を絡めとられて、急激に熱を注がれる。
「~~~~っ…、~~ぁ……っ……!」
散々堪能された後、ようやく解放された時にはあたしの息はすっかり上がってしまっていて、指先にまで血が巡って火照っていた。
はぁはぁと荒い呼吸の合間に光を見れば、明らかに熱を帯びた目であたしを見つめている。
「~~~~お前なぁ、…んな無防備に、嬉しそうに……。……なんでそんなに可愛いんだよ」
はぁ、と熱の籠った溜息を吐きながら、ずんずんとリビングである和室へ――――。
乱れた呼吸、混乱したままの頭では、さっぱり今の状況が理解できない。
「~ちょちょ…っ、……ちょっ……、し、仕事、は…っ?!」
「終わった終わった。今日は2時までで終了だ」
「~~~~え、え…? ~~なななんっ……っ、あたしのせい…っ?!」
「違う違う。――――あんまりにも客が殺到したからだよ。夜まで客の相手してたら、いつまで経っても受注した靴を作れないだろ。受注した靴を作っていかなきゃ、次の受注も取れないしな」
ホントにお前のせいじゃないから、とそう言うと、雄の目から優しい瞳へと変わり――――優しいキスを落とされる。
唇を食むだけの優しいキスを何度も。
やがて、和室に辿り着くと、光はあたしを下ろしもしないで横抱きのまま座り込んだ。
ゆっくりと唇を舐めるように食まれて――――離れた。
「…………ごめんな」
「――――?」
突然の謝罪に、なんのことか理解出来ない。
怪訝な目を向けたあたしに困った微笑みを浮かべると、優しく髪を撫でた。
撫でながらゆっくりと口を開く。
「お前が発作起こしかけてるの見て、頭に血が昇ってぶっ飛んじまった――――。……せっかく来てくれたのに……本当に、ごめん」
そこまで言われて何の話か理解する。
無様としか言いようのなかった自分の姿を思い出し、情けないやらみっともないやら、消えてしまいたい。
「~~~~っ…こっちこそ…………そ、その、迷惑…っ、……み…んな、に……」
ふいに目の奥が熱くなって、泣くまいと言葉ごと飲み込む。
こんなところで泣くのは卑怯だ。
間違いなく迷惑をかけたのはあたしで、せっかくのオープン記念日に泥を塗ったのもあたしで、だからちゃんと謝らないといけないのに、涙を堪えてる為に言葉を出せないなんて――――
「いや、違う…」
光の言葉に慌てて首を振る。
優しい光は庇おうとしてくれてる。
でも。
違わない。
迷惑かけた。
あたしは駄目だ。
やっぱり、あたしは全然駄目だ。
そう思えば涙が滲んで、でも自分が悪いのに泣くとか、みっともなくて卑怯で情けない。
と、グッと引き寄せられて振っていた首を止められたと同時に、優しいキスが落とされる。
くすぐるかのように唇を軽く舐めて離れてゆく。
「…違うな、お前が、……俺が居なくても立派に歩けたお前に、……俺が傍に居なくてもちゃんと歩けるお前に、俺……不安と嫉妬と焦りと……なんかグチャグチャになって、お前に八つ当たりしたんだ。……本当にごめん」
「…………な……ぜんぜん……あたし、全然、大丈夫、じゃない……」
言い掛けたあたしの言葉を光は眉を下げて遮った。
「――――知ってるか? ……お前の反響って、ホントすげぇ……。今日だって、あんだけの客――――お前のポスターのおかげだし、そもそもそれ以前も、お前がホームページの靴モデルしてくれてから閲覧数や受注数が鰻上りで……俺達の靴が世間に広く知られるようになったのって、ホントお前のお陰なんだ。本当に本当に感謝してる……けど、その一方でお前が世間の注目を集めていくのが酷く不安だったんだ。――――いつかお前が俺の手から羽ばたいてどっかにいっちまいそうで――――」
そういう光の瞳は本当に不安そうに頼りなく揺れていた。
あたしは、光の言葉に驚きすぎて、咄嗟に言葉も出なかった。
消えてしまいそうに弱い微笑みを浮かべながら、寂しそうに光は続ける。
「……そしたら今日、ホントに――――俺が居なくても、お前、自分の力で歩いてきたもんだから――――俺が居なくてもお前はもう外を歩けるようになったんだって証明されたみたいな気がして――――そしたらもう……なんか、俺はもうお前にはいらない人間なんだって言われたみたいな気になって、勝手に焦燥感に駆られて、カッとなっちまって――――……、ホント情けないよな……ごめん。ごめんな」
項垂れるように頭を下げる光に、必死に首を振る。

違う。
――――それこそ、違う。

知らなかった。
光がそんなこと、思ってたとか。
光がそんなこと、気にしてたとか。
だって、あたしだよ?
今日だって、結局、ちゃんとおめでとうも言えずに倒れた。
こんなあたしが羽ばたいていくなんて、ありえないのに。
どこかにいくなんて、ありえないのに。
光が傍に居なくても大丈夫なんて、そんなありえないことを、本気で心配していたなんて。

バカね。

バカで愛おしい人へと手を伸ばす。
「あたしが今日歩けたのは――――今日、頑張ったのは――――光が居るから、だよ。光が居るって、光に会いに行くって、……だからあたし、歩けたの」
ギュッと愛おしい人を抱きしめる。
大きな大きな背中を抱きしめる。
するとグッと強く抱きしめ返された。
「…………あのね……今も、昔も、……あたしを動かすのは光なの。……光だけ、光だけだよ。あたしを動かしてくれるのは――――」
光だけなの。
想いを込めて囁いたら、光の香りが強くなった。
互いにギュッと抱きしめ合ったままで――――……と、光ごと平衡感覚がおかしくなって、あたしの背中に床の感触が――――と思った時には、覆い被さる光から、激しいキスが襲い掛かってきた。
息もつかせぬ勢いとうねりに、呼吸も意識も何もかも持っていかれそうになる。
――――猛烈で長い長いキスの後、ギュッと光がまた仰向けのあたしを抱きしめる。
「~~~~お前、……可愛すぎんだろッ、――――俺を殺す気か……」
「…………な……に、言っ……」
「いや、今死んだら本望だな――――幸せの絶頂で死ねる」
「~~な、」
「俺も、お前だけだ、麻子」
「――――――――」
息が止まる。
本当に心臓を撃ち抜かれたかと思った。
熱の籠る、だけど真剣な目に射抜かれる。
「お前が俺なしでは生きられなかったらいいのに、って思うくらい、お前だけだ。――――けど、お前が少しずつ羽ばたいていく姿を見るのも本当に嬉しくて誇らしくて――――けど、心配で、不安で……気持ち、ぐちゃぐちゃだけど……けど、俺――――どっちも俺のホントの気持ちだ」
光の言葉に、胸の奥が熱い。
熱が瞳から溢れて零れそうになる。
「~~~~っ……、あ…たしも…っ、~~ひかる、がんばって……い、いそがしく、てっ! ~~が、がんばって…って思う、のに、あ、あたし達のためって、わかるのに、……けどっ! ~~な、なんに…も、役、立たず……あ、あた…し、重荷にしかっ…」
百貨店の出店が決まってから、忙しい光を目の当たりにして、でも何も出来ない自分が情けなかった。
忙しいのに、忙しくても、時間を切り上げて必ず帰宅して、あたしや晃の為に必ずご飯を作ってくれた。
その分、自宅で仕事をするようにもなっていた。
――――忙しいのに、なんの手伝いも出来ない。
――――ううん、それだけじゃなくて――――夫婦の営みもない日々を寂しいとすら思う自分が居て……。
そんな自分勝手な自分が、どんどん嫌で。
やがて、百貨店のオープンが近づくと、光があたしを見て溜息を吐くことが増えた気がして(……今なら、それは広告に起用された反響の大きさから、光があたしの身を心配してくれてたんだとわかるけど)、あたしは光の負担なんじゃないかと、事実、重荷にしかなっていない自分に、ただただ不安で…………。

でも。

――――お前だけだ、麻子。

ほんとに?
いいの?
こんなあたしで、本当にいいの?

「重荷なわけない。――――言ったろ? 俺が羽ばたきたいって思うのは、お前が居るからだ。お前が羽ばたけるように、その為に俺は羽ばたきたいんだ」

頬を伝う涙が止まらない。
ボロボロと滝のように零れてゆく。
「……結婚式で誓った筈なのに、プロポーズでも言った筈なのに、――――けど、こうやって、何度も何度も確認していくんだろうな、俺達」
光の瞳は、慈しむような愛情に溢れる色になっていた。
優しく、温かく、だけど激しい程に熱い。

熱い――――……。

離れられず、求めるままに光と繋がる。
体力がないあたしは、その日、おそらく最初の繋がりで意識を手放したんだと思う。
恥ずかしいことにその後の処理なんかは全部光がやってくれて――――母が晃と帰って来てくれた時には、二人して寝室で、光があたしを抱きしめながら仲良く寝ていたらしい。
起きた時にはすっかり部屋着に着替えていて――――身体も綺麗に洗われていた感じだった。
光の気配がしなくて目が覚めて――――芯が疼く身体を押してリビングに行けば、母と晃が部屋で遊んでいた。
「やっと起きたの――――光さん、晩御飯買いに出かけてるよ。……あんたも無事に百貨店に行けたんだってね」
あたしを見て晃が嬉しそうに抱き付くのを抱きしめてやりながら、母の言葉に誇らしく頷く。
「『凄いサプライズ貰いました』って光さん、嬉しそうだったよ。――――今日はあんたの為に晩御飯も奮発するって――――今日は光さんの出店記念日だって言うのにねぇ」
ふふ、と笑う母も本当に嬉しそうで。
「……晃を1日、ありがとうね」
感謝の言葉を述べると、更に母の顔が緩む。
「こんな日は大歓迎――――いつでも頼って頂戴」
「ホント? じゃあまた頼りにするね」
晃とじゃれ合いながらそう言ったあたしを、母が見つめていた。

「――――麻子。…………本当に、光さんに会えて、良かったね」

想いの籠った声に、心が震えた。
「――――うん」
目の奥が熱くなって、それだけ言うのが精一杯。
抱き付いていた晃が「…あーたん?」と小首を傾げる。

と。

玄関の開く音に「とーたん!」と晃が飛び上がる。
トタトタと走る足音。
ゆっくりとした光の足音。
「ただいま――――お、麻子起きたのか。…………麻子?」
晃と抱き上げながら光があたしを見て眉を顰める。
そんな光が愛おしくて堪らない。

「――――うん、幸せ…………本当に、幸せ」

光を見たあたしを見て――――光の目が見開いた。
違うよ、あたし、幸せなの。
想いを込めて光を見れば、――――思う間もなく光に包まれる。
抱き締められた。――――と思った時にはキスされていた。
長くはないけど、短くもないキス。
光が離れると途端に晃の声がした。
「~~~~ずるいっ…! ちゅー!! あきらも…ッ!!」
そう言って光の頬にキスしようとする晃。
ギュウギュウな三人の距離。
幸せで幸せで、あたしは幸せの泣き笑いだ。

「……………本当に、仲いいねぇ……本当に、良かった……」

光が晩御飯を作ってくれている間、さんざん母に揶揄われたけど、恥ずかしくて恥ずかしくて、でも幸せだった。
あたしたちは、互いの翼。
互いが互いを支えて、力強く羽ばたく――――これがあたし達の幸せの形。



 < Fin >



********************



すみません!! 3月9日、サンキュー祭りのこと、すっかり忘れていました!!!Σ(°Д°)
申し訳ございません!!!
どうもどうも、最近はもう、めっきり書く時間もとれなくなり、しかもまだ、後一つリクエストも残っているので、昨年に引き続き、リクエスト受付は致しません。
今年はその予告すら忘れていたという、体たらく……。本当にごめんなさいねーm(__)m
リクエスト受付あるかも!と思って覗きに来てくれた人が居たら、本当に申し訳なかったです、すみません。

これにて完結。
ですが、この話の番外編をちょっとだけ書こうと思います。短編になるかな?

…………そして、その次の話の予定は…………予定は…………予定はまだないです。ごめんなさい。
学園パロの方は、多分、少し書き始めるの時間が掛かるかと…………その時間がなくて、本当にごめんなさい!!







≪背中の靴跡シリーズ≫ 『空駆ける靴』~vol.6~

≪ 空駆ける靴~vol.6~ ≫背中の靴跡シリーズ


百貨店のリニューアルオープンの広告が張り出されてから、店舗としての注目も集め始めたことは、ホームページのアクセス数だったり問い合わせから気づいていたが、予想を上回る大盛況に開店からずっと行列は絶えず、休憩もなく駆けずり回っていた。
正直、1足1足を大切に手作りするスタンスを変えるつもりのない進藤・緒形・手塚にとっては、1日に受注出来る人数は本当に限られる。
受注の方は早々に限度数を超えたために締め切り、店内で製品だけでも見たい、オーダーシューズの説明を聞きたいという客の対応に追われていた。
「……おー…、明日からは1日の来店顧客数も決めておくことにしようぜ。『先着20名限定!』とかさ。俺もう喉がガラガラ」
「無駄口叩く余裕があるなら、まだいけるだろう」
進藤と緒形のやり取りを耳に入れ、進藤に賛同したくなる手塚だった。
これでも今日はオープン初日ということで、革専門店の店長の小牧にも手伝って貰っている。小牧は当然革の材質や特徴について詳しいし、ある程度靴作りについての知識もあるので本当にありがたい人材だ。
朝一番は受注も受け付けていたので、細かな事務作業を小牧にやって貰い、採寸等の実作業を職人3人で行うようにしていたのだが、広くはない店内から溢れるほどの人が集まり、慧が手配して警備員と整備員が導入されたほどだ。
受注受付は終了とわかっていても、一目店内を、という客で行列はなくならない。
ありがたいと言えばありがたいのだが、流石に開店から1時間をすぎても次から次へと新たな客対応に迫られることに辟易し始めていた。
慣れない事態に疲労感が漂い始める。
受注した靴にも取り掛かりたいのに、これじゃ何も出来ない。
とりあえず、客対応も2時までということで進藤が百貨店側へ打診してくれた。
とはいえ、まだ3時間弱はある。
そんな折、行列の方から歓声と大きなざわめきが起こった。
整備員により整然と並んでいた筈の場が、大波のように蠢いた。
「見て見てッ!! あの子ッ!!」
「ポスターの子じゃないッ?!」
「キャー! マジ綺麗ッ!! ヤバいッ!! 超美人っ!!」
「細ーいッ!! 顔ちっさ…!!」
「ねぇねぇ、一緒の子もめっちゃ可愛い…モデル仲間?」
「写真撮らせてくださぁい!!」
「あ、あたしもっ!!」
騒々しく、よく聞き取れなかったが、店内に居ても何かがあったのだとわかった。
何事だろう、と親方達と怪訝な視線を交わした手塚。
ちょっと様子見てきます、と店の外へ出た瞬間、耳に飛び込んできたその名前。
「~~ちょ…ッ……麻子ッ?!」
「麻子さん…ッ?!」
弾かれたように外に出た。
さっきまでちゃんと2列に並んでいた筈の行列が崩れて、人だかりが出来ている。

…………まさか……。

来る筈がない――――こんな人混みの中、来れる筈がない……。

「~~通して…っ、通せッ、~~麻子ッ?!」

客ではあったが、手加減する余裕もなく、強引に掻き分けて中心へと進む。
笠原が見え、笠原に抱きかかえられるように支えられた麻子の黒髪が――――。
「麻子ッッ?!?!」
「~~手塚っ!!! 良かった、麻子が…。麻子、手塚が来てくれたよ、もう大丈夫だよッ!!!」
奪うように笠原から麻子の身体を受け取る――――力の入らない身体とヒューヒューと異常な呼吸音。
麻子の顔を覗き込めば、唇は真っ青で、開いた唇から必死に息を吸おうとしているのにまったく吸い込めずにいる。
抱き締めた細い体はブルブルと震えている。
過度な緊張からくる過呼吸――――…。
まだ発作は起こったばかりといった感じ。
今なら唇を塞いで息を吐き出させ、ゆっくりと呼吸のリズムを導いてやれば、治まって来る筈。
一瞬で判断して、麻子に呼びかけながら、そっと震える冷たい唇を塞ぐ。
ただ塞ぐだけ――――苦しさの為に、唇を解放したがって離れようともがくのを、しっかり押さえて離さない。
しばらくそうして――――やがて喘ぐような音が漏れた。
呼気。
苦しくて苦しくて、でも吸わせてもらえないせいで、鼻から呼気が零れる。
麻子の吐息を感じて、今度は鼻から吸い込んだ吸気をそのまま少し吐き込んでやる。
咽る気配。
漏れる吐息と喘ぎ。
ゆっくりとしばらくそれを繰り返し――――やがて、麻子から呼ばれた気がして、ゆっくりと唇を離すと、確かに「…………る……」と掠れた声がした。
声にもなっていない声だったが、それでも随分と落ち着きは取り戻していた。
「麻子。……大丈夫、もう大丈夫だから…な」
「…………ひ…………る……?」
「うん。……ゆっくり息を吸って――――ゆっくり吐いて――――……」
震えながら、苦しそうにではあるが、なんとか俺の声に合わせようと、息をする麻子がいじらしい。
しばらく二人でゆっくりとした呼吸を合わせ――――ようやく呼吸が落ち着き始めたので、力の籠らない華奢な身体を横抱きして立ち上がる。
「「「「「キャー!!!!!」」」」」と金切り声が上がって、ようやく今の状況を思い出した。
さっきまでは麻子のことしか頭になかったから、外部の音を遮断していただのだろうか。
それとも周囲も固唾を呑んで見ていたのだろうか。
「お似合いッ!!」
「素敵――――ッッ!!!」
「ドラマみた――いッ!! ヤバすぎ――――ッ!!」
「やっぱ…イイッ!!! ポスターよりナマ、サイコーッ!!!」
「理想のカップル――――ッッ!!!」
胸の中で麻子がビクッと慄き、隠れようとするようにその身を縮める感覚がした。
大丈夫、と声を掛けながら、俺が居ると伝わるように抱き締める手に力を籠める。
キャーキャーと五月蠅く騒ぐ客達に怒りが湧いてくる――――怒鳴りつけようとしたその時。

「静かにッ!! すまんが、他の迷惑にもなる! ……それに、その嬢ちゃんには安静が必要だ――――頼むから静かにしてやってくれ」

手塚が口を開くよりも先に、そう叱咤してくれたのは、背後からの進藤の声。
驚いて振り返れば、ニッ、と笑って「嬢ちゃんを裏の休憩室で少し休ませてやれ」と顎であっちへ、と指示する。
ありがたく頷いて、麻子を抱えたまま手塚は裏へ。
進藤は客達に割り込むと、「さぁさぁ、元の列に戻ってもらいたいんだがね」と声をかけつつ、そのまま、麻子と一緒に居た笠原と毬江に声を掛けて店内へと誘導する。
「おー、お前さんたち、嬢ちゃんと一緒に来てくれたのか。悪いが、良かったら少し手伝ってくれ。予想外の来客数で、小牧が受け付けてくれた受注記録の整理ができてねーんだ。小牧の嫁さんなら材質のことはわかるような?」
コクリと頷く毬江に目を細める。
「堂上ンとこのカミさんは、客相手に慣れてるだろ? 客を誘導する係をやってもらえねぇか?」
「喜んで! お手伝いします!」
キリッと笑顔で受ける郁に、ありがたい、と進藤も笑い返す。
「よぉ――――しッ!! 2時までの辛抱だッ!! 終わったらうめぇランチ食いに行こうや!」
「…ほう、お前の驕りか?」
進藤の言葉に緒形が突っ込めば、進藤が鼻で笑う。
「アルバイトしてくれるっつーんだから、お前も感謝感謝だろ。今日は俺達年長者の務めだと思わねぇ?」
「お前が勝手にアルバイトに引き込んだ感じだったがな――――まぁだが、今日は確かに俺も感謝する」
「だろ? ってなわけで、手塚の分まで頑張ろうぜー!!」
気合を入れるためにバシッと音を立てて、進藤が緒形の肩を叩く。
いてぇな、と文句を言いながらも、緒形も客対応に戻っていった。

     *

そのまま休憩室のソファで寝ればいいと、そっと静かに華奢な身体を横たえたのに、麻子は身じろいで身体を起こそうとする。
「寝てろ」
「……大丈夫、もう…落ち着いてきた……」
そうは言うものの、ソファーに付いた手はまだ、頼りなく震えてる。
「いいから寝てろって」
「……ほんとに……もう大丈夫だから」
そう言いながら、ふらふらと上体をなんとか起こそうとする麻子の意固地ぶりに渋面を作りながら、しぶしぶと支えてソファーの背にもたれさせる。
治まってはきているけれど、まだ身体の芯の震えは微かに感じる。
顔色も真っ白だ。
まだあまり力は入らないんだろう、ぐったりとソファーの背に沈み込みながらも、震える声で謝罪を口にする。
「…………ごめん、……迷惑、かけ…ちゃった、ね……」
「迷惑なんかかけられてないけど――――驚いた。正直……来る、なんて…思ってもみなかった」
俺の言葉に、顔も視線も俯ける。
サラリと零れた横髪が少し麻子の顔を隠す。
「…………うん……、……ごめん……」
「いや、別に謝ることじゃないだろ。――――って言うか、来るなら言ってくれれば…」
「…………ん……でも……光は、仕事…だし……」
「だからって無理するから、こんなことになるだろ」
麻子がいまだに、人混みに恐怖心が湧くことを知ってる。
未だに、近くのスーパーにだって、必ず俺が、麻子と一緒に付いて行っている。
俺が一緒でも人とすれ違う時は麻子の緊張感が酷く高まるのを感じる。
その麻子が、電車に乗ってここまで来た――――道中の無理を考えると血の気が引く。
もしも俺の知らない所で麻子が発作でも起こしたりしたら――――そんなことになったら、俺は。
思わず、八つ当たりのように言葉が出た。
「――――ともかく、さっきみたいな姿を突然見せられるこっちの身にもなってくれ。金輪際、こんなことすんなよ!」
そう言った俺の言葉に麻子の表情が歪んだ。
だがすぐに俯いて髪で顔を隠してしまって、見えなくなる。
「……ごめん。…………やっぱり少し、…横になる……。……光は、仕事に戻って……」
「…………ぇ、あ…」
――――しまった。
そう思ったけれど、もう麻子は完全に俺を拒否していた。
「――――ちが――――…」
「~~あたしのせいで…これ以上、迷惑…かけたくないッ! 戻ってってばッ!」
「~~あ…いや、そうじゃ…」
「戻って…ッ!! あっち行ってッ…!!」
掠れた涙声で拒絶された。
情けなくも狼狽える。
そうじゃない。
麻子を責めたかったわけじゃない。
そうじゃなくて――――……。
慌てて麻子を抱きしめたが、胸の中で暴れられる。
とはいえ、力の差が歴然なので、難なく封じ込むのだが、かなり声もなく抵抗された。
抵抗されてもそれでも抱き締めて――――声もなく攻防を繰り返していたけれど、そのうち麻子が意識を手放した。
無理をしてここまで来たことを想えば疲労困憊だった筈で、更にさっきの発作で、精神的にも体力的にも限界だっただろう。憔悴しきっているような寝顔には、目尻に涙が滲んでいる。
俺の胸元も少し濡れているから、必死に抵抗しながら、声も立てずに泣いていたんだろう。

俺が、泣かせた。

その事実に胸が痛い。
――――そんなつもりじゃなかった。
「…………ごめん…………」
そっと艶やかな髪を撫でる。
するりと俺の手から逃げるように髪が零れる。
『仕事に戻れ』と言われたけれど、麻子から離れる気になれない。
麻子にこんな顔をさせたまま、仕事になんか戻れない。
詫びるように髪を梳きながら、グルグルした自分の気持ちと向き合う。

責めたかったわけじゃなかった。
ただ――――ただ、麻子が、俺以外の誰かと外に出た、という事実に衝撃を受けたんだ。
俺だけ。
俺と…だけ。

……独占欲、……だよな。

気づいてしまえば、随分と自分の器の小ささに嫌気が差す。
そんなことの為に、麻子を傷つけた。
けど。
……でも。
だけど、俺の知らない所で、麻子が外に出るなんて――――…。
急に、わけのわからない感情が湧く。
心配。不安。苛立ち。
麻子と一緒に外出すると、本当によく通り過ぎる人たちが振り返る。
美人でスタイルも抜群。
非の打ちどころのない容姿。
店のホームページで、靴を履いたイメージを…と、麻子に靴を履いて貰って、その写真を掲載したところ顧客数が急増した。
もちろん、あくまで靴をメインにした紹介であり、麻子の顔はわからないように気をつけていたにも拘らず、だ。
それが――――兄の策略だったのだろう、百貨店のポスターに結婚式の写真が使われた。
あの美女モデルはどこの誰だ、とあちらこちらで騒がれているのを実際に耳にしたことも多々。
どうしてバレてしまうのか、この店に関係する人物だとすぐに広まり――――ホームページのアクセス数は鰻上りに増え続けている。
今日のこの繁盛も騒動も、恐らくそれが関係していることは間違いない。
麻子のお陰で今日のこの日がある――――だが、良くも悪しくも、麻子の容姿は目立ち過ぎる。

……もしも……もしも、また。

思っただけで、血が凍る。
駄目だ。
もしも麻子の身にまた何かあったら、と想像しようとするだけでも震えと怒りが湧く。

絶対に、駄目だ。

「……もうすぐ終わりそうだよー。麻子はどう?」
ノックと同時に、笠原がひょいっと顔を出した――――突然のことに、思わず威嚇するように睨みつけてしまう。笠原は驚いて顔を引きつらせながらも、拗ねるように捲し立てる。
「ちょちょ…っ、~~な、なに怒ってんのよ! 様子見に来ただけで――――別に二人の邪魔しようってわけじゃないわよっ!」
ドギマギと不貞腐れたように唸られて、現実に引き戻されて、少し気持ちが解れる。
「――――あ、いや…。……すまん、気が立ってた」
「あのねぇ…あんたがそんなんじゃ、麻子も落ち着けないんじゃ――――って、……あれ、ひょっとして寝てるの?」
「ああ」
「嘘、ビックリー! 見知らぬ場所での麻子の緊張感、半端なかったのに……まぁけど、あんたにそうやって抱かれて安心したのかもね。……ここに来るまでさぁ、麻子すっごく頑張ってたんだよ――――かなり無理してたし、すっごく疲れたんだと思う。……本当によく頑張ってたから」
笠原の言葉に、嫉妬と不満がないまぜになる。
「…………なんで……こんな無茶なこと」
「そりゃ、あんたに『新店おめでとう』って言いたかったからでしょ」
「そんなの、家でも言える」
「わかってないなぁ、麻子の気持ち」
「…………なんだよ!」
「どうして麻子が、わざわざここまで来たかったか、本当にわかんないの?」
ジッと上目遣いで見つめられて居心地が悪い。
なんで、ここまで来たか、だって?
無理して、無茶して、でも来たかった理由。
「…………」
「はぁー…、麻子、報われない」
呆れたように溜息と共に言われてムッとしてしまう。
「…………なんだよ……」
「朴念仁」
「…………」
「本当に、わかってないんだ! あー、麻子、カワイソー!
あ・の・ねぇ! 麻子はあんたに見せたかったのよ!!」
「…………なにを?」
話が見えず、苦虫を噛み潰したように唸る俺に、ヤレヤレと肩を竦める。
「決まってるじゃない! あんたが作った靴が、歩けなかった麻子をここまで歩けるようにしてくれたんだって、それくらい素晴らしい靴なんだって、あんたに――――それから靴を買いに来てくれるお客さんに見せたかったのよ!」
「……………………え……」
笠原の言葉に、雷鳴が轟いたように、しびれて動けない。

俺の作った靴が、麻子を――――…。

ふと麻子の足元に目をやれば、結婚式の時の靴。
歩けるようになった麻子に、機能性第一の靴から、少しお洒落な要素を含ませながらも足に優しい靴を、とそう思って作った靴。
麻子がもっと歩けるように、走れるように、遠くまで飛べるように……そう願って作った靴。

俺の靴が、麻子を外へ――――…。

ドクン、と胸が熱くなる。
バカだ。……俺はなんてバカだったんだろう。
麻子が他の人のように、自由に歩けるようになる靴を、と願っていたのは俺なのに。
誰よりもそれを願っていた筈なのに。
なのに、麻子がこうして俺の知らないところで外に出てみたら――――俺の知らない麻子に醜い嫉妬心が湧き上がって独占欲で麻子を閉じ込めようとしていた。
――――違う。
――――それは、俺の本当の望みじゃない。

「まったく……今初めて気づきましたって顔して……ホント、麻子が報われないよ」
「…………すまん」
「あたしに謝られてもねー。……あ! ひょっとして手塚、無茶した麻子を責めたりしなかったよね?」
「…………」
「うわー! ほぉんとサイテー!!」
笠原がそう切り捨てた言葉に、もう一人、同じ言葉を吐きながら入ってきた人影。
「それは駄目だろ、お前」
見れば、シシシ、といつもの引き笑いをしながら進藤がずかずかと入ってきた。
「終わった終わったー! ってことで、手塚は今日はもうこのまま上がれ。柴崎さんを家でゆっくり休ませてやれ――――」
言いながらもう傍まで来ていて、柴崎の顔を覗き込む。
手塚と同じく視力のいい進藤の目にはすぐ、麻子の目尻の涙が見えたらしい。
「おいおい、せっかく来てくれたカミさんと喧嘩してんじゃねーよ。大事な大事な彼女だろーが。泣かせんな」
「…………あの、」
「言い訳は俺じゃなく本人に言うこった! ……大体、結婚式で悪戯が過ぎた俺に、二度とあんなことをさせないようにってその嬢ちゃんの病気のことを俺に教えてくれたのはお前だろ。
ずっと傍で支えて助けてきたお前が、俺に諭されるなんざ、カッコ悪いよなぁ!!」
言われて、俯くしか出来ない。
「…………まぁ手塚も突然の予期せぬサプライズに動揺したんだろうが――――ちゃんと謝って――――そんで、褒めてやれよ? こんだけ人混みの中を必死に来てくれたんだぜ?
責めるどころか、――――自分がどんだけ彼女に愛されてんのか、自覚しろ。
健気にお前の作った靴履いて、必死にお前に会いにきたんだろ。――――おめでとうってお前に言いたくて、頑張ってわざわざ来てくれたんだろ? お前のことを心底好きだからこその無茶だろうが」
進藤の言葉に笠原まで畳みかけてくる。
「そうだよー! 麻子ね、『あたしなんかが行ってもいいのかな』ってずっと心配してたんだから――――あんたに責められたら、麻子の心が折れちゃうよ!! 本当に、ちーゃんと、しっかり、謝ってあげてよねっ!!!」
ぐさりと心臓が槍で貫かれたように痛む。
耳も痛い。
まったく…………どうかしてた。
自分の狭量に反省しかない。
そっと髪を梳く。

ごめん。

ごめんな。

麻子の想いを知れば、嬉しくて申し訳なくて、本当に『ごめん』しか浮かばない。
麻子の想いを、気持ちを、踏みにじってしまった自分が、本当に情けない。

「…………ごめん……」

零れ落ちた言葉に、笠原と進藤が笑った。
「その言葉は、麻子に言わないと」
「嬢ちゃんが起きたら言ってやれよ。『ありがとう』も付けて、な」
「――――はい」
二人に頭を下げる。
あまりに傍に居すぎて、あまりに一緒に居すぎて、一緒にいることが当たり前すぎて、忘れてしまっていた相手への思い遣り。
相手の気持ちを想像して寄り添う気持ち。
大切なことを改めてそのことを思い出せば――――麻子が愛おしくて愛おしくて仕方がない。
自分の胸で無防備に眠る麻子を抱きしめながら、想いを込めて髪を撫でた。



……To be continued.







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 管理人ツンデレラが妄想の赴くままに、自由奔放に二次小説やホームパロディを書き綴っています。時々、近況をぼやいたりもします。
 現在、二次小説としては、アニメ『こばと。』と『図書館戦争』を書いています。
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